Applewatchがスマートウォッチ市場で圧倒的なシェアを拡大
ウェラブル端末と言えば、以前はGoogle Glassといったグラスタイプが話題で先行していました。しかしいつの間にか、スマートウォッチが急速に普及し、現時点ではウェラブル端末の代表格となっています。
スマートウォッチの分野を開拓したのは、またしてもAppleです。今回の記事では最新のスマートウォッチの市場シェアについてまとめてみました。
この記事でわかること
・圧倒的な市場シェアを継続するApple Watchについて
・スマートウォッチ市場の動向
・Google VS Appleのスマートウォッチバトルについて
圧倒的な市場シェアを継続するApple Watch
スマートウォッチは今や成熟市場になりつつあり、日常的に見かけることが多くなってきました。
その中でも一番多く目にするのは、やはり「Apple Watch」ではないでしょうか。実感としては、かなりのシェアをとっているように感じますが、実際のところどうなのでしょう?
まず、調査会社であるカウンターポイント社が発表した、2021年の第一四半期のシェアについてみていきましょう。
Apple Watchは、前年同期の30.3%から33.5%へとシェアを伸ばしています。スマートウォッチ市場全体が大きく出荷台数を伸ばしている中でのシェア拡大ですので、実数はかなり拡大しているということになります。*注1
スマートウォッチの総出荷台数は35%増加であり、Apple Watchの出荷台数は前年同月比50%の大幅増加となっています。
まさにスマートウォッチ市場を牽引しているのが、Apple Watchであることがわかります。
一方のHuaweiやSamsungはシェアを落としており、明暗の差がはっきりと出ました。
とはいうものの、Samsungも決して不調という訳ではなく「Galaxy Watch3」と「Galaxy Watch Active」の出荷台数自体は伸びています。
スマートウォッチは単体として使うのではなく、スマートフォンとの連携が重要となります。
Appleは、iPhoneとのシームレスな連携が利便性を高めている要因であり、世界に10億人存在するiPhoneユーザーがApple Watchの有力なバックボーンとなっています。
逆にHuaweiはセキュリティ問題がネックとなり、市場影響力を低下させてしまいました。
Samsungの場合、スマートウォッチ自体の性能や人気はそれなりにあるものの、やはりOSレベルで統合されているAppleに比べ、競争力の面で一歩及ばないという状況です。
最新情報ではさらなるシェア拡大でAppleの一人勝ち状態
最近になって、2021年第二四半期に関する情報が発表されました。
これによると、スマートウォッチ市場は前年同月比47%の増加となっており、急速に拡大していることがわかります。
その中でApple Watchの出荷台数は75%増加し、市場シェアは驚きの52%となっています。
数多くのメーカーが参入し、一般にも利用者が広がる成熟市場となりつつあるスマートウォッチ分野において、Apple Watchが過半数を占めています。一人勝ち状態とはまさにこのことでしょう。*注2
少し話は変わりますが、日本のいくつかの産業や製品と比べて、Apple Watchがなぜここまで強いのだろうと疑問に感じることがあります。
例えば、液晶TV。これは日本が世界に先駆けて製品化し量産販売に成功したもので、まさしく「市場を作り出した」と言って良いでしょう。
しかし今や日本は世界での地位も低下し、シェアは海外に奪われ続けかつての栄光は失われてしまいました。
よく話題になるのは、日本が世界に先駆けて製品化し、市場の黎明期には大きなシェアを確保するものの、海外勢が参入してくるとあっという間にシェアを奪われるのはなぜか?ということです。
半導体・液晶・有機EL・リチウムイオン電池など、最新技術の開発力と製品化力はあるのに市場シェアをキープできずにいます。
このような歴史を眺めてみると、「市場を新たに創造する」こと(=画期的な新製品を開発すること)と「市場支配力をキープする」ことは全くの別物であると考えられます。
しかしAppleは、その両方を圧倒的なブランド力で成し遂げていることを、Apple Watchの現在の市場シェアが物語っています。
Appleは間違いなくスマートウォッチ市場を新たに創造した企業であり、拡大する市場の中でいまだに過半数のシェアを確保している企業でもあります。
ここでキーになるのは、やはりiPhoneなのでしょう。
世界に10億人のユーザーが存在するiPhoneがあるからこそ、AirPodやApple Watchなどシームレスに連携できる画期的なデバイスが、市場支配力をキープ出来ていると考えられます。
このエコシステムの中にいさえすれば、選択肢はそれほど多くないものの、一定の快適さと満足が得られることが、ユーザーにとっての最大のメリットと言えます。
一方Android陣営の場合、まず選択肢が多すぎるためどれをチョイスするのか?から悩まなければいけません。
ある時期、画期的な製品が出たとしても、その後継機がデビューする頃には、また魅力的な選択肢が市場に溢れています。
買い替えのタイミングで再び、いくつもの類似製品の中から見極める必要がでてきます。これは、ユーザーにとってはデメリットになることもあるでしょう。
特に日常的に利用しているものであれば、これまでと変わらない操作性は非常に重要な要素です。
あまり意識せずに必要な情報にアクセスし、必要な操作を完了できる。Appleのデバイスに一度慣れてしまうと、機能的には不足だと感じることはあっても「使いにくい」と思うことはほとんどありません。
買い替えタイミングでも、同じ操作性を求めるユーザーが一定数いるため、Apple Watchのシェアが落ちない大きな要因となっていると言えます。
いよいよキャズムの谷を超えたスマートウォッチ市場
日本の産業が世界市場で苦戦しているという話題が出たついでに、今や使い古された感のある「キャズム理論」についてもちょっと触れてみましょう。
キャズム理論とは、マーケティング理論という分野で登場し、CDやDVDの急速な普及を説明するものとして一時期良く使われていました。
まずは、製品・サービスの市場への普及率について、ユーザー層を5段階に分割した「イノベーター理論」から始まります。
新しい製品やこれまでなかった機能やデザイン、時には市場すらないようなものが登場した時のユーザーの行動を中心に分類します。
最初は「イノベーター」と呼ばれる人たち。一言でわかりやすく表現すると「新しい物好きの変わり者」です。
とにかく新しい技術や製品が大好きで、それが実生活の中で役立つかどうかは二の次であり、出たら飛びつく人たちのことを表します。
この「イノベーター」が人口の2.5%程度存在すると言われています。大体クラスに一人ぐらいでしょうか。
「イノベーター」は、ある程度お金を持っており、生活にも余裕がある層だと思われます。「必要かそうではないか」ではなく「画期的かどうか」が購入の原動力になっているのですから。
しかし、残念ながら「イノベーター」層は、市場に対してそれほど大きな影響力は持っていません。
次に重要なのは、人口の13.5%程度を占めるとされる「アーリーアダプター」と呼ばれる人たちです。
この人たちは「新しいもの好き」であることは同じですが、きちんと製品の価値を吟味してから購入します。
自分の生活やビジネスに役立つと判断した上で、価値のあるものを積極的に購入する人たちのことを表しています。
この層が「○○リーダー」とか「インフルエンサー」と呼ばれる人たちに相当します。
「ファッションリーダー」とか「オピニオンリーダー」などが有りますが、SNSが普及したことで、インフルエンサーの方がよく耳にするようになりました。
この層の人たちに製品が訴求すると、市場に大きく影響するようになります。
その次が「アーリーマジョリティー」と言われる層です。人口の34%ほど存在するとされています。
この層になると、もはや特別な人ではなく「一般人」と言えます。普通の人たちの中でも、比較的新しい製品やサービスに拒否反応を示さない層であり、アーリーアダプターほどではないにしても、やや積極的に買い求めることができる層です。
ここで「キャズム理論」が登場します。
「キャズム理論」とは、新しい製品やサービスが広く一般に普及するかどうかは、「アーリーアダプター」から「アーリーマジョリティー」へと購買層が広がるかどうかが決めてである、というものです。
この2つの層の間には深い谷(キャズム)があり、この谷を越えることができない製品やサービスは、結局普及せずに終わってしまうとされています。
逆にこの深い谷を越えることができれば、あっという間に製品やサービスが一般に普及し、確固たる市場を形成します。
CDやDVDが急速に普及した事実を説明する理論として有名です。最近ではスマホなども「キャズム理論」のモデルにうまく適合しています。*注3
冒頭で紹介したスマートウォッチの販売台数の増加は、すでに市場がキャズムの谷を超えて、アーリーマジョリティーへと普及していることを証明しているように感じます。
もはやスマートウォッチは「目新しいガジェット」ではなく、広く一般の人が日常的に利用するアイテムになりました。
この先、市場が飽和するまでは、成長が見込める魅力的なマーケットになることでしょう。
今年の秋が注目? Google VS Appleのスマートウォッチバトル
Apple Watchのライバルとして気になるのはGoogleの動向です。
Googleは、スマートウォッチに関しては「WearOS」を提供していますが、市場シェアは低く現在のところ全く勝負になっていない状況です。
スマホ市場において、AndroidはiOSよりもはるかに多くのユーザーを確保しているにもかかわらず、スマートウォッチOSの分野ではその影響力を活かすことができていません。
Appleは、ソフトとハードの両方を自社で設計しているというところに大きな優位性があります。ソフトとハードの親和性は抜群で、それがスマートウォッチというデバイスでも大きなポイントとなっています。
ここでGoogleも、拡大を続けるスマートウォッチ市場への本格的な戦略を見直すことにしたようです。
Galaxyシリーズが好評なSamsungと連携し、SamsungのOS「Tizen」と「WeaOS」を統合することが発表されました。このことにより、明確にAppleへ対抗できる製品を市場に投入することができるため、シェアの奪還へと舵を取ります。
SamsungのTizen OS、GoogleのWear OS、Googleが買収したFitbit OS、この3つのOSの現在の市場シェアを合計すると15.7%となります。Apple Watchの現在のシェアには及びませんが、十分に影響力を発揮できるボリュームになると考えられます。
新しいOSが搭載されたGalaxyのシリーズ4は今秋の発売が予定されており、ちょうどApple Watch7と同時期になりそうです。
今まさに、ホットなマーケットで繰り広げられようとしている「Apple VS Google」の戦い。今後どうなるのか非常に楽しみです。
Googleの新戦略で、AndroidOSが成し遂げたように市場を席巻するのか、圧倒的なブランド力を発揮し続けるAppleの栄光が続くのか。
2021年から2022年にかけてが、最初の見どころとなりそうです。*注4
今回の記事では、直近のスマートウォッチ市場の過半数を占めている「Apple Watch」の凄さに驚嘆する内容となってしまいました。
元になる調査は販売台数でシェアを算出していますが、これを金額ベースに換算した場合、もっと凄いことになると考えられます。
Apple Watchはどちらかというとミドルレンジからハイエンドの価格帯ですので、金額ベースで計算し直すとシェア50%を大きく上回るのではないでしょうか。
明確な数値は資料で見つけられませんでしたが、成長するスマートウォッチ市場に投入される金額の多くを、Apple一社が確保している可能性が高いでしょう。
しかも、ラインナップを絞り込むことで、非常に高い利益率を叩き出しているAppleです。Apple Watchがもたらす膨大な利益が、Appleの重要な収益源となっていることは確実です。
まだまだAppleの快進撃は続きそうです。
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注1
IT Media Mobile 「世界のスマートウォッチ市場調査、Appleの出荷台数は50%増でシェア33.5%」
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2105/28/news077.html
Counter Point ”Global Smartwatch Shipments Jump 35% YoY in Q1 2021”
https://www.counterpointresearch.com/global-smartwatch-shipments-q1-2021/
注2
engadget 「スマートウォッチ市場が今春47%拡大の報告 パンデミック以前のレベルに」
https://japanese.engadget.com/smartwatch-share-120022746.html
Strategy Analytics ”Global Smartwatch Shipments Leap 47 Percent to Pre-Pandemic Growth Levels in Q2 2021”
https://news.strategyanalytics.com/press-releases/press-release-details/2021/Strategy-Analytics-Global-Smartwatch-Shipments-Leap-47-Percent-to-Pre-Pandemic-Growth-Levels-in-Q2-2021/default.aspx
注3
IT Media エンタープライズ 「キャズム(きゃずむ)」
https://www.itmedia.co.jp/im/articles/0706/01/news142.html
注4
Forbes 「世界のスマートウォッチ市場、アップルが33.5%で首位を維持」
https://forbesjapan.com/articles/detail/41589/1/1/1