Android版Kindleアプリでも書籍が購入できない日がついに来てしまった
Kindleアプリから直接書籍の購入ができなくなる。ついにこの日が来てしまいました。
iOSでは2011年時点ですでに、Kindleアプリから直接書籍を購入することができない状態でした。Androidユーザーは、Googleの寛大な措置でシームレスで快適な書籍購入・閲覧ができていましたが、それも過去の話となりました。
今回の記事では、このKindleアプリの事情についてまとめてみましょう。
この記事でわかること
・Kindleアプリからの書籍購入について
・周辺事情のまとめ
・アプリからの書籍購入の裏技
GoogleのアップデートでKindleアプリから書籍購入が不可に
Android派がiPhone派に対してマウントを取る時、いくつかの定型パターンがあります。 例えば「選択肢が多い」・「細かな設定ができる」・「ユニークなアプリが多い」などなど。基本的には『自由度が高い』『バリエーションが豊富』『個性を出せる』がメインの主張です。
その中に「Kindleアプリからシームレスに書籍が購入できる」というものがあります。
実はこれ以外のマウントに対しては、iPhone派にも十分に対抗ができるのですが、「シームレスな操作性」についてはポイントが高めであり、iPhone派は対抗できないため確実にダメージを受けます。
元々Appleはクローズドなシステムです。一般ユーザーが簡単に操作できないブラックボックスが多いのも、製品ラインナップが絞り込まれていて選択肢が狭いのも全て、「シンプルで使いやすい」が優先されるからです。
選択肢が狭くなる代わりに、あまり難しいことを考えず便利に使えて、しかも高機能。これがAppleブランドの核となっている考え方です。
しかしKindleアプリに関しては、決済の問題のため2011年からは、わざわざWebでアクセスして書籍購入の手続きをしなくてはならない状態になっています。
iPhoneユーザーにとって、Apple側の都合で「使いにくく、めんどくさい」手続きを踏まされることは決していい状態ではありません。
一方Androidユーザーは、「アプリで書籍を購入し、そのまま閲覧する」ことができる状況が続いていました。全てはGoogleの寛大な措置であり、面倒な手続きをしているiPhoneユーザーを尻目に、快適なKindle利用ができていました。
このことが、Androidユーザー VS iPhoneユーザーでよく持ち出される「マウントポジション」となっています。さらに「僕はよく本を読むから、このあたりの操作がシームレスにできるのはありがたいよね。」などと、インテリポジションまで取られていたのです。
これに関しては有効な反撃方法もなく、iPhone派としては「まあ、仕方ないね」と負けを認めるしかありませんでした。
しかしAndroidユーザーにとっても、ついに「その日」がやってきました。
Google PlayからDLできるKindleのAndroid向けアプリについて、「バージョン8.58」からは「アプリからの書籍購入ができない」仕様へと変更されました。この仕様変更は、Google Playストアのポリシーに準拠するための変更であるとアナウンスされています。
なぜこんな面倒なことになったのか?周辺事情などのまとめ
では、少し状況を整理してみましょう。
Kindleアプリは「Amazon Mobile LLC」が提供しています。「Amazon Mobile LLC」は皆さんがよく知っている「Amazon」と思っていただいて大丈夫です。
Amazonとしては、アプリの使い勝手が悪くなることは避けたいのでしょうが、Googleの意向を組んで、泣く泣くアプリから直接購入機能を削除したということです。
今回の原因となっているのは、Googleのアプリ手数料に関するポリシーです。
Google Playでは有料アプリを販売する際、一定の手数料を徴収しています。これに関しては、多少高い手数料を取られてもアプリを販売したいベンダーであれば、致し方ないとして認めるところでしょう。
しかし、問題になるのは「アプリを通して販売するアイテムやサービス」にも手数料がかかるということです。Kindleで書籍を購入する際、これまでは販売にかかわる手数料をGoogle側が徴収していませんでした。しかしポリシーが変更され、2022年6月1日からは30%の手数料を徴収するようになりました。
例えば1,000円で販売されている書籍の場合、アプリ上で購入すると300円の手数料をユーザー側かAmazon側のどちらかが負担しなくてはいけません。
今回、手数料負担は無理であるという判断となり、アプリからの購入という選択肢自体を無くしてしまった訳です。
このことにより、iPhoneユーザーもAndroidユーザーも、Kindle上で書籍を購入する時には、わざわざ一度Webに移動して購入手続きをすることになりました。
今後のiPhone VS Android紛争の際には、Kindleサービスについての話題からは避けられるでしょう。iPhoneユーザーにとっては、Androidユーザーからマウント取られる場面が減って一安心といったところです。*注1
このようなアプリで提供されるサービスやアイテム料金に対して、プラットフォーマーの有利な立場を盾にした高額手数料徴収の問題については、「Apple VS Epic Games」の戦いが記憶に新しいところです。
アプリの販売で利益を出すのではなく、アプリを使ったサービスの継続的な利用がキャッシュポイントになっているようなモデルでは、永遠にプラットフォーマーに対して「献上金」を提供しなくてはいけません。これが「Apple税」などと揶揄される大きな原因となっています。
iPhoneはAppleのクローズドなシステムのため、App Storeを通さないと原則アプリのインストールが不可能となっています。
このことにより、アプリであれば「セキュリティ面での安全性の担保」が確保されるため、ユーザー側のメリットが大きいのは事実です。
さらにベンダー側にとっても、App Storeにルートを一本化することによって、「多数のiPhoneユーザーにアピールできる」ことや「Appleの厳しい審査を通過した信頼性」などのメリットがあります。
これらを考慮すると、アプリをインストールする段階では多少の手数料も致し方ないと考え、妥協も可能でしょう。
しかし、いったんアプリをインストールした後となると話は別です。
オンラインゲーム内でのアイテム販売や映画や音楽などのサブスク料金。さらに今回のKindleでの書籍販売などで、毎回30%もの手数料がかかるというのは「法外」と批判が上がるのも当然です。
Epic GamesとAppleの争い以前にも、Netflixなど映画配信サービスがこのような問題に直面しましたが、アプリを通さずに料金を徴収することで回避してきました。
巨大プラットフォーマーでありiPhone王国の神であるAppleに対して、正面から立ち向かったのがEpic Gamesでした。
この辺りの話題については、以下の記事に詳しく記載されています。
関連記事:「なぜAppleの反訴はEpic敗訴に終わったのか?一審判決について解説!」
関連記事:「フォートナイトを巡るバトルで注目される「Apple税」
関連記事:「AppleがUnreal Engineを削除!?一連の騒動のまとめ」
このようなバトルがしばらく続き、Appleも一定の譲歩をすることで収まりを見せつつありましたが、なぜかこのタイミングで「Google税」がKindleにも適用されることになってしまいました。
このことについて、Google Playのユーザー評価には多くの批判が寄せられています。*注2
しかし、内容としては比較的落ち着いたものが多く、「課金必須に変わることは仕方ない」でも「Webへの誘導ぐらいアプリに設定しておくべきでは?」といった意見が目立ちます。
これはGoogleへの批判というより、Amazonに対してアプリの作りが甘いという意見です。
今ならギリギリ使える裏技について
では、iPhoneユーザーと同じようにAndroidユーザーも、アプリとWebを行ったり来たりする煩わしさを受け入れなくてはいけないのでしょうか?
実は裏技というほどではないものの、現時点であれば回避する方法があります。
最初にお断りしておきますが、筆者の記事では「正規ではない、危険な裏技やTipsについては積極的に記載しない」という方針で書いています。
これまでもiPhoneの脱獄などについて、便利だし比較的多くのユーザーがやっている事であっても「Appleが認めていない非正規な手法」については、記述を避けるようにしてきました。
しかし、これから紹介する方法についてはGoogleのポリシーに抵触せず、「裏技」というよりも「正規の手法」と言えるものですので、安心して紹介することができます。
まず前提として、Android用アプリはGoogle Playだけでなく、他のプラットフォームからもダウンロードやインストールすることが可能です。
iPhoneと異なり、Google Play以外のルートでのアプリインストールも「正規の方法」であり、Googleポリシーには一切違反しません。
実はAmazonのアプリストアには、以前のバージョンのKindleアプリがあり、これを使うことで、アプリから書籍を購入することが可能となります。
簡単に手順を紹介しましょう。
(1)Google PlayからダウンロードしたKidleアプリがあれば削除する
(2)Amazonのサイトから「Amazon アプリストア」のアプリをインストールする
(3)Amazonアプリストアから「Kindle」アプリをインストール
あとはインストールしたKindleアプリを起動し、ログインすれば「以前と同じように」アプリから書籍の購入ができるようになります。
途中、㈪・㈫を実行しようとした時に「有害なファイルの可能性があります」や「セキュリティ上の理由から・・・インストールすることはできません」などとドッキリするようなダイアログが表示されますが、一切気にせず続行してOKです。
その度出てくる選択肢の中でも、「この提供元のアプリを許可」などと、先に進めるものを選んでいけば、そのままインストールが完了します。
apkファイル(プログラムの実行ファイル)をインストールしたことのある方であれば、すでに経験済みだと思いますが、初めてだと戸惑いそうですよね。
AndroidではiPhoneと違う文化があり、「理解している人であれば、かなり自由度が高い」ため、知っているかどうかで利用できる幅が随分異なります。*注3
まとめ
Andoroidユーザー、中でもKindle愛好者であれば「ついにこの時が来た」という感じでしょう。iPhoneユーザーであっても、Androidユーザーであっても、このシステムはユーザーに不便を強いるものであり、積極的に支持できる根拠も薄いように思えるため、できれば改善して欲しいものです。
せめてKindleアプリ内からWebへ誘導する仕組みだけでも、追加されることを願っています。
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□参考文献
注1
IT Media Mobile 「Android版でもKindle書籍購入が不可能に Googleのポリシー変更で」
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2206/01/news071.html
注2
Google Play 「Amazon Kindle: 電子書籍、マンガ、雑誌」
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.amazon.kindle
注3
IT Media NEWS 「本が買えなくなったAndroid版「Kindle」アプリでこれまで通りに本を買う方法」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2206/15/news181_2.html