Chromebookに新たに搭載されるGoogleフォトのムービー作成機能について
軽量でサクサク動いてしかも低価格。「Chromebook」は、このような特徴から販売台数を急速に伸ばしています。
しかし、やはり性能的には「それなり」の水準であることから、動画編集などの本格的な作業には向いていない、というのが一般的な評価でしょう。ところが2022年秋に登場予定の新型Chromebookには、機能が大幅に向上したムービー編集機能が搭載されるようです。
今回はこの話題を中心に、Googleの狙いについてまとめていきましょう。
この記事でわかること
・新型Chromebookに搭載されるムービー編集機能について
・ブラウザを制するものが市場を制すのか
・Googleのビジネス戦略におけるChromeのポジションについて
Googleが発表した新型Chromebookに搭載されるムービー編集機能
まずはGoogleが発表した、Chromebookに関する更新内容についてまとめてみましょう。ただし今回発表されてた内容は、詳細な機能や操作方法については記載されておらず、概略のみとなっています。
発表された中で「新しいビデオ編集機能と生産性向上機能がChromebookに登場」と題されたページに記載されているものを詳しくご紹介します。
今回の記事では、ビデオ編集機能にフォーカスしていますが、実は他にいくつかの機能が新規に搭載されたり、使い勝手が向上することも強調されています。
一口で言うなら「より使いやすく、より高機能に」なったChromebookの紹介となっています。
・Googleフォトに高機能なビデオ編集機能が搭載
現在も簡単なビデオであれば、AIが自動で作成してくれる機能がありますが、これがより高機能になります。
インスタグラムのリールに投稿するようなコンテンツが、簡単に作れるようになっています。数回タップするだけで簡単に高品質動画の作成ができることや、その気になればゼロから素材を選択し、本格的な動画が作れることなどが紹介されています。
トリミング・明るさ・コントラストの調整・リアルトーンフィルターの適用・音楽やタイトルなどの設定が、具体的な機能として紹介されています。
もちろん、有料のソフトやプロ用の動画編集ソフトなどに比べると、機能的には十分とは言えません。しかし、一般ユーザーができるだけ安価で手軽な方法で動画を作成する目的であれば、かなり期待できるのではないでしょうか。
動画編集に関しては、他にもiPad上でも使われておりプロユースまで対応した高機能アプリ「Luma Fusion」が、新たにChromebookへ対応する予定であることもアナウンスされています。
初級レベルのユーザーには多少敷居が高いですが、Chromebookが対応したことで、プロレベルのユーザーへも訴求することができるようになります。
「Luma Fusion」は3,680円で利用できますが、無料のお試し期間もなく、提供されている素材も少ないという欠点があります。さらに単純な文字入れ(キャプション)でも、操作する手順が多く、直感的に扱えないのも初心者には難しく感じる点でしょう。
その代わり微妙な調整が可能ですので、こだわった動画作成ができるのが魅力です。
Googleフォトに搭載される動画編集機能は、初心者やライトユーザーに、中級以上であれば「Luma Fusion」を、と言うようにステップごとに選択肢があるのは魅力的です。
また、高度な機能を使いたい時にハードから改めて買い直すとなると、費用面で躊躇してしまいますが、ある程度のレベルまでChromebookだけでカバーできるのであれば、安心してChromebookを選択肢に加えることができるのでは無いでしょうか?
・PDF編集機能の搭載
Googleはビデオ編集だけでなく、新たな機能についても紹介しています。
標準のメディアアプリ「Gallery」では、PDF文章に対してのフォーム入力やテキストの強調表示、ドキュメントへの署名、テキスト注釈の追加などができるようになります。
簡単な動画編集機能については、どちらかというとライトユーザー向けですが、こちらはビジネスユースでも便利となる部分です。
・スクリーンキャストアプリやCursiveアプリなども登場
スクリーンキャストアプリは、文字起こしされたビデオやプレゼンテーションを記録・表示・共有ができるアプリです。バーチャル レッスンやハウツー ビデオからデモなどにも利用することが可能です。
また、手書きのメモをキャプチャしたり、編集・整理できるのがCursiveアプリで、スタイラス対応のChromebookで利用できます。PDF文書に手書きでサインする時などに便利な機能です。
・生産性向上を実現する機能強化
ランチャーが新しく再設計され、ボタンを押すだけで必要なものをすぐに見つけられるようになりました。
他にもChromebook上での作業を簡単にするための、様々な機能が追加されました。今後数ヶ月以内に、順次公開されていく予定です。*注1
ブラウザを制するものが市場を制す
Chromebookは、インターネット接続を前提として設計されたハードウエアです。WEBアプリとクラウド上へのデータ保存が基本となっていることもあり、ストレージ容量は少なめなのが普通です。
ゲーミングPCのように、最高級ハードウエアに大量のメモリを搭載して、物理的に処理能力をあげている機器とは対照的な設計となっています。
軽くキビキビと動作し低価格がウリのChromebookですが、ちょっと前なら「安かろう、悪かろう」のイメージがあったかもしれません。実際、処理能力だけであればiPadのようなタブレット端末の方が上である部分も多いでしょう。
しかし、もはやChromebookの特徴は「安い・早い」だけではなくなりました。
今回の動画編集機能や作業効率の向上はもちろんですが、何より魅力なのはGoogleが提供する各種WEBサービスが、今やデスクトップソフトと遜色ないレベルに充実していることです。
一般的なテキスト文章作成から表計算・プレゼンソフトなどが無料で利用でき、機能的にも十分ビジネスユースに耐える水準となっています。
また、Gmailアカウントさえ持っていれば、無料のクラウドストレージが提供され、少々のデータなら問題なく保存することができます。中小企業であれば、内部文章に限りクラウドサービスを活用することで、コストをかけず作業ができるでしょう。
全社員にWindows PCとOfficeソフトを契約し支給するコストを考えると、はるかに低コストで同程度の作業が可能です。
もはやMicrosoftでなくても、Chromebookで十分に仕事ができるでしょう。
以前、Microsoftがブラウザ戦争で勝利した時のことを思い出します。
少し古い話ではありますが、Windows95が普及した当時、インターネットブラウザはNetscape NavigatorとInternet Explorerが覇権を争っていました。
当初、Netscape Navigatorが優勢でしたが、Microsoftの攻勢に負け市場から退場することになります。
当時Windows95によって、OS市場で着実にシェアを拡大していたMicrosoftは、インターネットブラウザの重要性に最初は気づいていなかったようです。
しかしMicrosoftは、Netscape Navigatorがシェアを拡大する中で、将来インターネットが普及することによってブラウザが非常に重要な役割を果たし、いずれは「ブラウザがOSとなる」可能性に脅威を感じます。
そこでInternet Explorerの普及のため、独占禁止法に抵触しながらもバンドル販売を行ったり、ついにはOSと統合するなど、今振り返ってみると「なりふり構わず」市場の支配を進めていました。
この戦略は成功し、インターネットブラウザではInternet Explorerが事実上の標準となりました。当時はまさに「ブラウザを制するものは市場を制する」という状況でした。
現在はインターネットブラウザにも多くの種類があり、ユーザーは自由に選択することができます。Googleが提供するChromeブラウザは、WindowsでもMacでも利用でき、無料で提供されているため、インターネットブラウザにそこまでの重要性がないようにも感じるかもしれません。
しかしGoogleにとっては、非常に重要な戦略の一つであることは間違いありません。
Googleのビジネス戦略におけるChromeのポジション
Googleの収益の多くは、広告収入からもたらされます。そのため、多くの人が利用するWEBサービスを開発・提供することで、広告出稿者にとって魅力的なユーザーの母集団を確保し、ユーザーの動向をデータとして収集・分析して提供することが必要です。
ではユーザー数を拡大するにはどうしたら良いでしょうか?
それは利用者が常時インターネットに接続し、WEBサービスを気軽に利用できる環境を提供することが重要となります。
一般ユーザーが持ち歩き、頻繁に利用するスマートフォン用のOSである「Android」を、無償で提供しているのも、これらの戦略の一つです。インターネットユーザーの拡大が、Googleの大きな目的となっています。
それほど高性能なハードがなくてもサクサク動くChromebookも、インターネットユーザの拡大の一環となっています。しかし、「安かろう悪かろう」ではユーザー数の拡大にはつながらないでしょう。
Chromebookは、インターネット接続とWEBサービスを前提として設計されたPCです。Chromebookの性能は、ハードウエアではなくブラウザの機能に大きく影響を受けます。
そこでGoogleは、初級向け・初学者向け・ライトユーザー向けだけでなく、一般ユーザーに対してより訴求できるような機能強化をこれからも続けていくはずです。
Chromebookのシェア拡大が、インターネットユーザーの増加に繋がり、最終的にはGoogleのWEBサービスを利用する「母集団」の確保へと繋がります。そのことが広告出稿者を惹きつけ、Googleの安定収入が可能となります。
さすがGoogle。戦略そのものが壮大です。
【まとめ】
今回の記事では、Googleが発表した新型Chromebookに、新たに搭載される予定の動画編集機能を元にまとめてみました。
ただし、現時点(2022年9月)ではまだ実機が出てないこともあり、操作はできないため、Googleにおけるブラウザの重要性についての考察を加えてみました。
Googleにとっては収益増加が目的であっても、「安く・使いやすく・高性能」なハードやサービスが登場するのは、私たちにとって良いことです。
実際、Chromebookは現在急速に販売数を拡大しており、これからはWindows機かMacか以外に、Chromebookも選択肢に入ってくるようになるかもしれません。
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■参考文献
注1
Google ”New video editing and productivity features coming to Chromebook”
https://blog.google/products/chromebooks/video-editing-and-other-new-features/