内装BIM推進に向けた丹青社とAutodeskの提携がもたらすものとは
次世代の3Dモデリング技術として導入が進むBIMは、優れたプラットフォームを提供する企業と、BIM需要の大きな企業が提携を結んでの活用事例も増えています。内装や空間作りを主な事業とする丹青社は、この度大手BIMプラットフォームを提供するAutodesk社と提携を結び、内装事業におけるBIM活用の推進に向けて動き始めています。
この記事では、丹青社とAutodeskのMOU締結によって何が変わるのかについて、BIM推進の背景や具体的な取り組み内容に触れつつ解説します。
目次:
- 丹青社とAutodeskのMOU締結について
- 内装BIM推進に向けた提携の背景
- 提携による両社の取り組み内容
- 丹青社のこれまでのBIM推進について
- まとめ
丹青社とAutodeskのMOU締結について
2022年9月、丹青社とAutodeskは戦略的提携に関する覚書(MOU)を締結したことを発表しました*1。Autodeskが国内のディスプレイ企業と提携を結ぶのは今回が初の事例となり、建築業界のBIMスタンダードをディスプレイ業界のBIMにも応用していく考えです。
MOU提携を通じて、両社は国内のディスプレイ業界におけるBIMの普及を実現し、業界に従事する労働環境の改善や、カーボンニュートラルの達成に貢献するなど、技術的なシェアの拡大とSDGsの達成を目標に掲げています。
内装BIM推進に向けた提携の背景
内装BIMの推進に向け、丹青社とAutodeskの戦略的提携が締結した背景には、日本政府が発表した「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」が挙げられます*2。炭素へ過度に依存した現在の社会はサステナビリティの面から問題があり、建設業界は特に大きな負荷を発生させるとして、懸念が表明されてきました。
丹青社を含めた、国内のディスプレイ業界においてもこの認識は広がっており、同社ではAutodeskとの提携によって、デジタル技術を軸としたビジネスモデルや働き方の改革を目指し、新しい時代の丹青社グループへと自らを「変革」することを目指します。
Autodeskが提携相手として選ばれた理由には、同社の豊富なグローバル市場での実績が挙げられます。日本を含め、欧米やアジア諸国、アフリカなどの幅広い国や地域でのサービス提供の知見を生かした、柔軟なBIM導入を推進できるポテンシャルを高く評価しています。
提携による両社の取り組み内容
今回のMOU締結によって、両社は以下の3つの取り組みを重点的に実践することを発表しています*3。
BIMの基盤強化とディスプレイ業の従事者にとって最適なワークフローの確立
丹青社が今回の提携で最も注力したいのが、BIM基盤の強化によってデジタルトランスフォーメーション(DX)を達成し、ディスプレイ事業に従事する人々の最適なワークフローを構築することです。
同社では2021年より社内にBIM推進局(現・BIMデザイン局)を立ち上げており、本格的なBIM活用に向けた取り組みを推進しています。設計・施工業務におけるプラットフォームとしてAutodeskの提供するRevitとAutodesk Construction Cloudを採用し、国内ではまだ事例のない、ディスプレイ業に最適化されたワークフローの発見に取り組みます。
また、ただ現場にBIM基盤を導入するだけでなく、Autodesk Forgeのようなデータ活用ツールも採用することで、データを一つのプラットフォームに集約し、業務の可視化と最適化を進めていきます。
BIMを活用し、サステナビリティの実現に貢献
BIM技術を使ったサステナビリティの実現も、丹青社が掲げる目標の一つです。都市開発から建築、そしてディスプレイ業界までをBIMデータによってワンストップで紐づけることにより、業界関係者の情報共有を円滑にすることが望まれています。
情報共有はBIMデータとクラウドを併用し、設計から施工までの情報をBIMデータで一元管理、そしてクラウドを使ってリアルタイムでの情報共有と更新を実現します。
従来よりも合意形成にかかる時間を大幅に短縮し、圧倒的に短い工期を実現することで、プロジェクト開発の費用を削減するだけでなく、プロジェクトを通じて発生するCO2排出量の抑制などにも努めます。
データ活用による新しい設計サービスの提供
柔軟なデータ活用を実現できれば、データに基づき必要最低限の部材とコストでプロジェクトを完成させることもできます。最適な設計案をAIなどを使って生成できるジェネレーティブデザインの実現も、丹青社が掲げる目標の一つです。
制作や施工業務のデジタル化を進めることで、設計と施工が一体となったデータ活用を行い、プロジェクトの品質を強化することができるだけでなく、従来では考えられなかった多様で複雑なデザインを可能にもします。
また、正確に構築されたBIMデータを使ったメタバース領域での活躍にも期待を寄せています。現実世界の建物と遜色ない精度を持つBIMデータをVRやAR領域にも応用することで、エンターテイメントとしての仮想体験の提供、極めて高度なシミュレーションを実現するデジタルツイン領域での活躍も期待できます。
丹青社のこれまでのBIM推進について
丹青社がBIM活用を進めるのはこれが初めてのことではなく、同社はこれまでも積極的なBIM活用に向けたプロジェクトを展開してきました。2016年よりBIM導入を進めてきた丹青社は、社内の中でも特にデザイン部門におけるBIM活用が進んでいます。
従来は2次元の設計図面をもとに関係者やクライアントと合意形成を進めてきたディスプレイ業界の文化からいち早く脱却し、BIMを使った3Dモデルによる合意形成のノウハウを積み重ねてきました*4。
同社では現在、デザイン部門においては同部門の270人の100%がBIMを利用しているのはもちろん、施工を担う300人規模の制作部門53%の普及率を達成しています。今回の提携を通じて、同社の普及率はより高まることが期待できます。
まとめ
内装BIMはまだまだ先進的な取り組みですが、丹青社はAutodeskとの提携によって、業界内のBIM活用のパイオニアとしての地位を築きつつあります。
同業界におけるBIM活用がこの提携を機に進めば、より多くの企業にBIM活用の機会が開かれることも夢ではなくなるでしょう。
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参考:
*1 丹青社「ディスプレイ業界における内装BIMの推進に向けてAutodeskと戦略的提携に関する覚書を締結しました」
https://www.tanseisha.co.jp/news/info/2022/post-43011
*2 上に同じ
*3 PR Wire「丹青社とAutodesk、戦略的提携に関する覚書を締結、内装BIMを推進」
https://kyodonewsprwire.jp/release/202209066055
*4 建設通信新聞「【BIM2022 設計データの高度利用】BIM軸にDX基盤を構築 丹青社」
https://www.kensetsunews.com/web-kan/708265