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お堅い国土交通省が進めるPLATEAU (プラトー)とは何か。柔らかく解説

Google Eathが登場した時の衝撃は今も忘れられません。その後、Google Mapやストリートビューなどが次々にリリースされ、我々の地図に対する認識は大きく変化しました。
Googleに遅れること十数年。国土交通省が、3Dで都市モデルを構築しオープンデータ化する「PLATEAU」プロジェクトを開始しました。
今回の記事では、「PLATEAUプロジェクト」についてわかりやすく、柔らかめに解説していきましょう。

この記事でわかること
・PLATEAUプロジェクトについて
・PLATEAUプロジェクトのユースケースについて
・都市空間情報デジタル基盤構築支援事業について

国土交通省が進める「PLATEAUプロジェクト」とは

PLATAUとは、国土交通省が主導して進めている、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクトです。日本全国から56都市を選定し、3D化された都市モデルを整備しています。

北は北海道札幌市から南は沖縄県那覇市までが対象都市となっていますが、県庁所在地とは限りません。
国土交通省の呼びかけに対して、応募があったところから選定しているとのことです。例えば福岡県では、飯塚市・宗像市・北九州市・久留米市の4都市が選ばれていますが、福岡市は入っていません。

PLATAUの簡単なイメージとしては、2Dの地図をベースとして対象となる都市に、存在する建築物を3Dオブジェクトとして配置すると思えば良いでしょう。しかし、単なる3Dモデルではなく、個別要素に関して詳細なデータを持たせているところが画期的です。

例えば3D化されたビルには、「窓」や「壁」など要素ごとに個別の情報を持っています。一般的な3Dモデルであれば、3D空間の中の位置情報しか持っていませんので、そこを人間が通過できるのかどうかなどはデータだけでは判断することができません。
それに対して「ここは窓だ」という情報を持っていれば、「開けて通過できる」とデータから判断することが可能になります。

このような属性をデータとして持たせることで、より具体的で実践的な災害対策を立案したり、太陽光発電の日照シミュレーションをしたりと、さまざまな活用が可能になります。
PLATEAUは、Google Mapよりもはるかに多くの情報を持つ3Dマップを構築するという、壮大なプロジェクトであることが理解できるでしょう。

PLATEAUプロジェクトは次の3つのテーマを掲げて、具体的なアクションプランを設定しています。
しかし、この内容について詳細に取り上げるにはかなりの文字数を必要とします。ここでは幾分簡略化した形で説明していきましょう。

「PLATEAUプロジェクト」の3つのテーマ

テーマ1)データ整備の効率化・高度化

3D都市型モデルには、すでに「CityGML2.0」という標準規格が存在します。PLATEAUではこの標準仕様を拡張し、より精細なモデルの構築を目指しています。
さらにAIなどを活用し、データ作成を効率化・自動化を目標としています。

世界標準仕様よりも高度で複雑な独自仕様を策定し、さらにスピーディなデータ作成ができるツールの開発までが標的となっています。
これ本当に国土交通省主導ですか?と思うぐらい、意欲的な目標設定がなされています。

テーマ2)先進的なユースケース開発

膨大なデータを収集したとしても、それを活用できなければ意味がありません。
地方自治体や国の機関では、これまでも大量の各種データを保有していながら、デジタル化が進んでいないなどの理由から、その活用については十分なされていないという実態がありました。

例えば、商業ビルを建築する際には建築申請などを通じて、建物の詳細なデータは関係機関が保有しています。これらのデータがデジタル化・標準化・共有化されていれば、すでにPLATEUレベルの3D都市モデルの構築は容易にできるはずです。
しかし、現状では法令に基づく審査や消防などによる検査などは、個別の部署でそれぞれの目的に応じた利用がされているに過ぎません。

そこでPLATEAUでは、データの具体的な活用方法について、ユースケースの開発を視野に入れて取り組んでいます。
防災や環境・まちづくり・コンテンツ・モビリティ等の幅広い分野で、実際の3Dデータを利用した活用方法について、民間とも協力しながら取り組んでいます。

その際に重要となるのが、データの共有化です。収集されたデータはオープンソースとして公開され、誰でも自由に利用できるようにします。この点が、これまでの公的機関の取り組みとは一線を画するのではないかという、特徴的な部分になります。

これまで公的機関が収集する情報は、個人情報に関係するようなデリケートなものが多く、どちらかというと厳重に管理され一般の目には触れないようにする方向へバイアスがかかりがちでした。
無理もない話とはいえ、公的機関に収集されているビックデータの価値をうまく活用できないのは非常にもったいない事です。

もちろん今回のPLATEAUについても、悪用される可能性は決して否定できないでしょう。建造物への侵入経路のシミュレーションや、テロ計画に利用されることもないとはいえません。
これまではこのような理由から、クローズドな運用をしがちであった公的機関のビックデータですが、PLATEAUは新たな道を切り開いた画期的なプロジェクトであると評価できるでしょう。

テーマ3)データ・カバレッジの拡大

現在、56都市しかない3Dデータのカバー率を上げていくことが、この次の目標となります。
地方自治体が補助制度などを利用して、PLATEAUに準拠したデータの作成を進めることができるよう取り組んで行くとしています。
さらに、PLATEAU VIEWの改修・オープンAPIやSDK開発・ハッカソンの開催等、データ利用環境の改善をすることで、活発な利用が進むように導いていきます。*注1

PLATEAUプロジェクトのユースケースについて

ここまでは3D都市データについて、「地図+3D化された建物」という部分だけを取り上げて説明してきました。しかし、実際にはもっと多方面にわたるデータを複層的に取り扱うことができます。

まず、一般的な2Dの地図をベースデータとしてプロットします。そこに家屋やビルなどの「建築物」、都市計画区域などの「都市計画決定情報」、土地の用途を示した「土地利用」、都市のインフラである「道路」や「橋梁」など、さまざまなデータを重ね合わせることが可能です。

まるで現実世界をそのままコンピューター内に再現したような「デジタルツイン」を作成することで、リアルなシミュレーションをしたり、さまざまな分野で活用することができるようになります。
例えば人口に関する情報や学校や交番の場所、ハザードマップなどが一つの地図上にデータ化されていれば、避難計画の策定などにすぐ活用できるはずです。

2021年のハッカソンでは、東京に侵攻してきたゴジラの新入経路と被害額をシミュレーションした「わりと本気でゴジラ対策してみる」が発表されるなど、柔軟でユニークな事例も紹介されています。

PLATEAUの活用事例

PLATEAUでは次のような活用事例について紹介しています。

1)シミュレーションとしての活用

・人口動態や交通ネットワークなどを考慮した都市の将来シミュレーション
・水・熱・風を対象とした流体解析
・ネットワーク情報や施設情報などを組み合わせた人流シミュレーション
・建物形状や材質等を考慮した太陽光発電シミュレーション
・電波伝搬シミュレーション

2)可視化・データ分析・空間解析に用いる
 
・ある地点から見える範囲を調べる
・ある地域で再開発を行った場合の、交通や人口動態への影響を予測する
・災害発生時に発生する廃棄物量を算出し、搬出先容量との関係を分析する

3)ゲームやVRの舞台・AR・映像作品として利用する

・現実世界とそっくりな空間をゲームやVRの舞台として作る
・AR分野での応用

3番目の「ゲーム分野での活用」などは非常に楽しみなカテゴリーです。
一昔前なら「自治体が収集した情報をゲームに使うなどもってのほか」なんて言われそうですが、今や国土交通省が主導してデータを収集・利用しやすいように、プラットフォームや仕様まで整備した上で「ぜひ使ってください」と公開しています。
さすが21世紀、いい時代になったものです。*注2

すでに民間企業や大学などの研究機関とも連携して、具体的なユースケースの開発も行われています。

◯太陽光発電のポテンシャル推計及び反射シミュレーション
 実施事業者 株式会社三菱総合研究所 / 国際航業株式会社 / 株式会社フォーラムエイト / Pacific Spatial Solutions株式会社

◯垂直避難可能な建築物の可視化等を踏まえた防災計画検討
 実施事業者 株式会社三菱総合研究所

◯景観まちづくりDX
 実施事業者 株式会社シナスタジア

◯都市AR空間とメタバースの連携プラットフォーム
 実施事業者 株式会社MESON / 株式会社博報堂DYホールディングス

上記のように多くの事例が、PLATEAUで紹介されています。*注3

「都市空間情報デジタル基盤構築支援事業」について

令和4年には「都市空間情報デジタル基盤構築支援事業」が創設され、全国の地方公共団体における、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化の推進が図られました。
自治体が、これらの取り組みを実施するのに必要となる費用の1/2を補助するという内容です。

初年度である令和4年には、全国36の地方公共団体・約60都市で3D都市モデルが整備されています。
また、「防災・防犯」「交通・物流・モビリティ」「都市計画・まちづくり」「地域活性化・観光・コンテンツ」などのさまざまな分野でユースケースが開発され、社会実装されるという成果を出しています。

2020年以前は、日本に3D都市モデルは全く存在していませんでした。それがわずかな期間で、世界でも最大規模の面積カバー率を持つまでに進化しています。
国家プロジェクトとして本格的に取り組んでいることが、この急速な進化を支えています。

今後もこのような補助制度などを活用することで、全国の自治体による3D都市データ化が進み、膨大な情報が利用しやすい形で蓄積されていくでしょう。
これに民間の知恵や技術力が融合することによって、これまでにない新たな可能性が大きく広がることが容易に想像できます。

国土交通省などの公的機関の政策について話題になる場合、どちらかというと何らかの制約や制限がかけられる「規制」に関することが多い様に感じます。
しかし今回のPLATEAUは、まるでGoogleの新しいプロジェクトのような魅力的で素晴らしい内容です。ぜひ、このプロジェクトをさらに進めて、世界をリードするような3D都市モデル活用事例を数多く実現させて欲しいと期待します。

【まとめ】

自治体で実施されている避難訓練などは、膨大な時間と人員を投入し、年に1回できるかどうかというところでしょう。その上でさらに時間をかけて問題点を抽出し、報告書にまとめるという、気が遠くなるような作業が必要です。
それがPLATEAUを活用することで、PC上で数百回・数千回のシミュレーションを瞬時に実行することができるようになります。
私たちは「理想の未来に近づいている」。今回の記事ではそんな実感が得られる、ワクワクするようなテーマをご紹介しました。

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■参考文献
注1
空間情報クラブ 「国土交通省Project PLATEAU(プラトー)|3D都市モデルのこれまでの成果と今後の取り組み」
https://club.informatix.co.jp/?p=14300

注2
PLATEAU 「TOPIC 1|3D都市モデルでできること[1/2]|デジタル地図とGIS」
https://www.mlit.go.jp/plateau/learning/tpc01-1/

注3
PLATEAU 「Use Case」
https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/

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