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清水建設のBIM導入事例から見るRevitの強み

この記事を読むと以下の3つのことが分かります。

①BIMの概念とBIMソフトウェアRevitの立ち位置
②清水建設の広汎なBIM導入事例
③導入事例から見るRevitの強み

本稿ではBIMの概念とその制作ソフトウェアであるRevitを紹介し、清水建設によるRevit導入事例を複数取り上げます。バリエーション豊かな清水建設の取り組みから、Revitの特徴や強みを探っていきます。

BIMの概念とその主要ソフトウェア

建築・設計分野で主に普及しているBIM(Building Information Modeling)は、3Dモデルデータを作成して、素材などの属性情報をその中に含ませ、施工・管理にまで情報を活用するワークフローです。直感的に把握しやすい3Dモデルを用い、建物に関する情報をBIMで一括管理することによって効率化やコストの削減を図っています。

また、BIMは創意工夫によって新たな利用方法が生み出されるケースも多く、エンジニアの創造力を引き出す一面も秘めています。

このBIMを作成するソフトウェアとしては、AutodeskのRevit、GRAPHISOFTのARCHICAD21、VectorのVectorWorks Architect(日本での販売元はエーアンドエー株式会社)、福井コンピュータアーキテクトのGLOOBEが有名です。

BIM業界におけるRevitの立ち位置

1982年にAutoCADをリリースして以来、Autodeskは建築・設計分野のソフトウェア開発におけるトップランナーであり続けています。3Dモデルを用いたBIMソフトウェアRevitでもその地位は揺るがず、そのグローバルな展開や、自他を問わないソフトウェアとの連携や拡張性によって多くの企業に採用されています。

清水建設とBIM

2019年の売上高が1兆円を超えるスーパーゼネコンの一角が清水建設です。巨大なだけではなく、サステナビリティ(持続可能性)という観点から都市や施設の計画・設計・施工・運用を目指しており、社会への貢献や自然環境への配慮ものぞかせています。

BIMによる効率化は資材の無駄を減らすことになり、清水建設の姿勢とマッチしています。更に清水建設は設計や施工に関するBIM運用に積極的なだけではなく、自社に適したBIM環境の追求に余念がなく、協働先にも影響を与えています。

清水建設のRevit導入、及び活用事例

清水建設はAutodeskのRevitをBIMソフトウェアとして採用しており、様々な導入事例が紹介されています。多岐にわたる清水建設のRevit導入・活用事例から、Revitの強みや清水建設のBIMにまつわる取り組みを探っていきます。

清水建設による鉄骨構造物トータルシステムKAP for Revit

KAP for Revitは清水建設が開発した鉄骨構造物専用のBIMシステムです。鉄骨構造物専用BIMソフトウェアであるKAPシステムをRevit連携に特化させた、名称通りの機能をもっています。

あくまでベータ版であり、対応するのはRevit2018及びRevit2019となっておりますが、自社で開発したソフトウェアを期間限定で無償提供し、協働先と共にBIMによる効率化を図っていく清水建設の姿勢がうかがえます。

Revitと連携するBIMソフトウェアを提供し、そのデータを回収することによってシステムをブラッシュアップし、それを自社の開発に生かすサイクルは、建設業界の未来を見据えている清水建設らしい一手です。

(*1)

この取り組みから見えるもの

自社の効率化を図るため清水建設はKAPシステムを開発しました。特設サイトでそれを公開しており、自社だけではなく、業界全体の効率化や技術向上を目指す姿勢が見られます。BIM連携ではRevitが使用されており、Revitのカスタマイズ性の高さが見て取れます。

福岡空港国内線旅客ターミナルにおけるBIM導入事例

福岡空港の国内線旅客ターミナルの再整備事業において、清水建設は施工を担当しました。ターミナルビルを稼働させながら、解体と新築、リニューアルを同時に行うこの事業では、既存構造物の解体と新築構造物の施工が時間的・空間的に絡み合う複雑さを抱えていました。

Revitによる3DモデルとAutodesk製品の連携を活用し、点群データを扱うBIM 360 Glueで過去・現在・未来の建造物を重ね合わせ、それをiPadでチェックできる現場の環境を作り出しました。

また、協力会社が異なるソフトウェアでBIMモデルを作った際、構造・設備の干渉部分をNavisworksによってあらかじめ合成し、調整する役割も果たしました。BIMに関する一日の長が清水建設をして調整役をせしめ、事前に干渉やトラブルを排除するBIMらしい手際が見られました。

(*2)

この取り組みから見えるもの

この事例においてはAutodesk製品の連携だけではなく、協働先のBIMとの連携も行われています。Revitの拡張性やBIMの連携に意識を向けてきた清水建設がその経験を活かし調整役としても力を発揮した好例です。

クレーン作業におけるBIM活用

清水建設では2013年という早い段階から、BIMの更なる活用について模索しています。清水建設公式ニュースサイトでリリースされたこの事例では、タワークレーンの揚重作業効率の視覚化と工期短縮を目指しBIMが活用されています。

IHI運搬機械と、清水建設の子会社であるエスシー・マシーナリと共同で開発されたスマートクレーンでは、BIMなどで作成された施工計画図と部材別の搬入予定一覧がタブレットに入力されており、玉掛け作業員がタブレット上の部材にタッチすれば、多機能フックの通信機能により、取付予定の位置が運転室モニターと取付作業担当者のタブレットに表示されます。

クレーン作業状況検出センサ、多機能フック、各種センシング情報をストックし集約サーバーに送信するための運転室パソコンとモニター、作業責任者用のタブレットなど、準備するものは決して少なくありませんが、情報共有と視覚化による効率化の恩恵は計り知れません。

(*3)

この取り組みから見えるもの

BIMを多分野で用いる清水建設の意欲的な試みは、クレーン作業にも波及しています。一度手ごたえを掴んでからの開発速度や共同開発の手腕は、巨大ゼネコンながらもフットワークの軽い清水建設ソフトウェア開発部門の先進性がうかがえます。

シンガポールでのフルBIM導入事例

シンガポール政府の建築建設局(BCA)は2012年から建設確認申請時のBIMモデル提出を義務化しています。清水建設シンガポール事務所はシンガポール政府のBIMモデル提出に応じるだけでなく、意匠、構造、設備を連動させたフルBIMを導入し、2014年メイプルツリー・ビジネスシティ2建設の大型プロジェクトに取り組みました。

この事例ではBIMによる3Dモデルに時間軸を加えた4Dの概念が導入されており、4Dの視覚化に一役買ったのがRevitと同じAutodesk製品のNavisworksです。また、Microsoft Projectによる工程表とBIMモデルを連動させる、他社製ソフトウェアやサービスとの連携も行われています。

複雑なデザインのコンドミニアムに付加価値がつくことをふまえ、清水建設シンガポール事務所は意欲的なデザインの建築にBIMを活用しており、その経験の積み重ねが大型プロジェクトであるメイプルツリー・ビジネスシティ2建設にて実を結びました。

また、シンガポールの工事現場で働く作業員は外国人が多く、その点でも直感的に理解できるBIMの3Dモデルは言語や文化の垣根を越える役目を果たしました。

(*4)

この取り組みから見えるもの

清水建設の国際競争力を示す事例です。シンガポールでは効率化、ひいては環境への配慮へと通じるBIM活用が進められており、清水建設シンガポール事務所はその基準をクリアする実績と技術を示しました。グローバル化においてAutodeskのRevitはBIMソフトウェア内で先んじた存在となっており、大型プロジェクトであるメイプルツリー・ビジネスシティ2建設にて遺憾なく力を発揮しました。

一般社団法人 日本建設業連合会で取り上げられたBIM導入事例

日本建設業連合会によってまとめられた2018年のBIM導入事例にも清水建設は登場します。この事例集は一件の記載は短いものの、画像、ピクトグラム、グラフや表によってコンパクトにまとめられており、様々な事例を比較してチェックしやすいPDFファイルとなっています。

PDFの30~31ページに登場する清水建設の事例では、BIMモデルによる施工図と製作図のデータ連動や、建築主、設計者、工事関係者の合意形成、干渉チェックなどが扱われています。また、清水建設が開発したKAPシステムやBIMモデルのAR活用なども記載されており、BIMへの意欲的な取り組みがうかがえる内容となっています。

(*5)

この取り組みから見えるもの

表や画像が中心となる事例紹介ですが、その中でも清水建設は存在感を放っています。前述したKAPシステムやAR活用のケースも紹介されており、他社と比べても濃い内容となっています。BIM活用の基本的な部分であるデータ連動もしっかりおさえられています。

清水建設が推し進める自社製Shimz One BIMのベースはRevit

清水建設は自社の公式ニュースサイトにて、自社製BIMをベースとした生産体制の構築について触れています。Shimz One BIMと名付けられた自社製BIMは、設計、施工、製作、運用に至る流れ全てのカバーを目指すもので、ベータ版が特設サイトにて提供されている前述のKAP for Revitもその中に含まれています。

Shimz One BIMにおいてKAP for Revitは尖兵的な役割を果たしており、自社における構造設計者全てのコンピュータに導入されたことが触れられています。KAP for Revit同様、Shimz One BIMもRevitベースで開発されており、Revitのカスタマイズ性の高さが感じられる内容となっています。

(*6)

この取り組みから見えるもの

自社のワークフローにマッチしたBIMを求めるあまり、清水建設は自社製BIMの開発に着手しました。そのベースとなっているのがRevitであり、自他を問わないソフトウェアとの連携はもちろん、カスタマイズ性の高さがうかがえるケースとなっています。

まとめ

清水建設が手掛けたBIM導入事例から、Revitの特徴や強みを探って参りました。鉄骨構造物向けBIMの提供や、シンガポールでの海外事例、Autodesk製品の連携や、クレーン作業への導入、清水建設による自社製BIMの開発と、BIM活用における清水建設の先進性と、Revitの汎用性及びカスタマイズ性の高さが感じられたのではないでしょうか。

Shimz One BIMが完成のあかつきには、建設業界への新たなインパクトを与えてくれることでしょう。

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■参考文献
(*1) https://www.kapsystem.jp/kapforrevit/index.html
(*2) http://bim-design.com/catalog/img/Final-SHIMIZU-Co-Casestudy.pdf
(*3) https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2013/2013051.html
(*4)http://bim-design.com/catalog/img/Shimizu_Corp_Singapore_Case_study_ja_final_A4.pdf
(*5) https://www.nikkenren.com/kenchiku/bim/pdf/bimstyle_2018.pdf
(*6) https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2019/2019036.html

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