1. TOP
  2. ブログ
  3. AppleやGoogleが提供する移動データの可視化とその先

AppleやGoogleが提供する移動データの可視化とその先

新型コロナの感染予防対策について、日本ではどのように可視化の試みが行われたのでしょうか。

この記事でわかること
・Appleが発表した移動データの提供とは
・Googleとの違いについて
・AppleとGoogleがタッグを組んだ「その先」の取り組みとは

Appleが発表した移動データの提供

Appleは、都市および国や地域レベルでの人々の移動データについて、米国時間の4月14日、一般公開することを発表しました。
iPhoneなどの端末に付属するマップアプリのユーザーから匿名で情報を集め、集計したものがベースになっています。このデータは、AppleのWebサイト”Mobility Trends Report”として毎日更新されています。

それぞれの端末で実行されたルート検索の回数の変化を数値で集計することで、人々の移動の変化を捉えることができます。
このようなデータはGoogleが先行していましたが、Appleもそれに続く形となります。
データはCSV形式でダウンロード可能ですので、誰でもデータを活用することができます。
Appleとしては、各国政府や保健当局が新型コロナ対策の政策立案をする際に、役立ててもらうことを想定しています。*注1

私たちユーザーとしては、個人の移動データが利用されるということで、プライバシーが気になるところです。
Appleでは
「ランダムかつ一時的な識別子に関連付けられ、識別子は頻繁にリセットされるため、Appleがユーザーの移動や検索に関するプロファイルを保有することはありません。」
と明言しています。
データは個人と紐づけられることなく、保存もされていないで安心ということになります。

実際に「移動傾向レポート」のページにアクセスしてみると、次のような画面が表示されます。図01

*注2(サイトよりデータを引用)

デフォルトでは、イタリア・ドイツ・アメリカ・イギリスの4カ国について、1月13日のデータを基準とした変異が集計されていることがわかります。
図01は6月23日時点のものですが、グラフを見ると3月ぐらいから急速に減少し、徐々に戻っていることがわかります。
グラフの状況から週単位での補正が必要にも思えますが、全体としての傾向は捉えることができるのではないでしょうか。

図02

*注2(サイトよりデータを引用)

データは国や地域、特定の都市などでも表示することができます。
検索窓に「Japan」と入力し表示された候補を選択すると、日本全体やデータが集計できる都市ごとに再表示されます。
図02は日本全体のデータです。
国や地域を限定すると、「車」「交通機関」「徒歩」といった移動手段ごとの変動についても把握することができます。
日本では3月中旬から減少し、最近になってやっと元の水準に戻っていることがわかります。

Googleとの違い

Appleが提供する移動データでは、人々の移動が完全に把握できる訳ではありません。
前述した通り、「マップアプリで経路検索をした人」に基づいて集計をしていますので、それ以外の人の行動については、データとして集計することができません。
毎日通勤で当該地域を移動している人などは経路検索はしないと思われますので、その分については把握できないことになります。

一方のGoogleでは、「ロケーション履歴」を有効にしたユーザーからデータが収集されます。

ルート検索をした情報を元にするAppleの場合、「その場所に不慣れなユーザー」のデータが中心であると思われます。
Appleでは、エリアで日常的に行動しているユーザーの情報が外れてしまうのに比べて、Googleの情報は精度の高いデータになると考えられます。
もちろんGoolgeも、ユーザーの個人情報とは切り離され、匿名化されたデータとして集計されています。

Googleで基準となるデータは、「2020年1月3日~2月6日の5週間の曜日別中央値」です。
またAppleと異なり、国や地域、都市ごとのデータではなく、『「社会的距離」措置の目的で、類似する特性を持つ場所をカテゴリ』として分類されています。

【Googleの具体的なカテゴリー】
・小売、娯楽
・食料品店、薬局
・公園
・乗換駅
・職場
・住宅  など

カテゴリー名はそれぞれの場所を代表するものであり、例えば「公園」には庭園・城・国有林・キャンプ場・展望台など、類似の特性を持つ場所が含まれています。
公的機関による「社会的距離」のための政策立案に役立つよう、配慮されているようです。*注3

図03

*注4(サイトよりデータを引用)

GoogleのCOVID-19コミュニティモビリティレポートのページにアクセスし国を指定すると、表示されるリンクからPDFデータをダウンロードすることができます。
図03は6月23日時点の日本のデータの一部です。*注4

こうしてみると、基本となるデータの種類やカテゴリーの違いによって、異なる結果が表示されることがわかります。それぞれの特性を理解した上で評価する必要があると考えられます。

AppleとGoogleがタッグを組んだ「その先」の取り組み

人々の移動データの集計と提供については、AppleとGoolgeの2社がそれぞれ独自に取り組んでいました。
しかし、新型コロナウイルスというこれまでにない非常事態に対して、今回2社がタッグを組み、より進んだサービスの開発に取り組んでいます。
ヨーロッパでは、すでにこのサービスを利用した情報提供が行われている国もあります。

新型コロナ感染者通知アラートサービス

私たち一個人としてもっとも気なることは、新型コロナウイルスに感染するリスクでしょう。
自分の行動エリアで新型コロナ感染者が発生していないか?
知らないうちに接触していないか?
などの欲しい情報が提供されれば、より安心できるのではないでしょうか。

このようなニーズに応えるのが、 AppleとGoogleが共同で開発した新たなサービスです。
具体的には、過去数日間に自分が接触した人の中に新型コロナウイルスの感染者が出た場合、アラートで通知するというものです。

具体的な仕組みは次のようになります。

1 スマホユーザーのAとBが接触(一定時間、近い距離にいる)している間に、お互いのスマホのBluetoothを使って「ビーコン」をやり取り
2 Bluetoothのビーコンはそれぞれの端末に保存
3 数日後、Bが新型コロナ陽性であることがわかり、Bはアプリにその事実を入力
4 入力された過去14日間の(接触)情報がサーバーにアップロード
5 Aのスマホアプリは定期的にサーバーから、現在地付近で陽性だった人のビーコンデータをダウンロードし、自分の端末に保存されている情報と照合
6 陽性であるBとの接触が照合されると、スマホにアラートが表示され、同時に今後どうするべきかの説明へのリンクが表示

AppleとGoogleの協力により、2社が提供しているOS上で動くモバイル端末を持っているユーザーは、このようなアプリを利用することができます。
端末内に保存されるデータへアクセスするAPIを2社が提供し、それに合わせてデータベースやアプリなどを各国の政府や保健機関が準備することで、国ごとに対応できる仕組みになっています。

データの管理方法については国ごとに異なっており、個人情報保護に対する考え方の違いも反映されているようです。
プライバシーへの対応として、
「データを国が管理し、位置情報や電話番号などと紐づけることで個人の移動が特定できるもの」
「国がデータを管理するが、匿名化されており個人の特定が原則できないもの」
「データを端末で管理し個人の特定ができないもの」
このような3タイプがあります。

日本では最後のタイプを利用して、厚生労働省から「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」がリリースされています。
アプリの公開後、3日間で300万ダウンロードを記録するなど、関心のあるユーザーが多いことがわかります。
記事執筆時点では、一部不具合の報告がありますが、早期にアップデートされることを期待しています。*注5

【まとめ】
日本では収束の気配が見えてきた新型コロナウイルスですが、中南米やアフリカなどではいまだに猛威を振るい続け、世界レベルで見たパンデミックは現在も進行中です。
20世紀初頭のスペイン風邪と比較されることもありますが、21世紀の我々は発達したIT技術を武器として活用することができます。
このような中、IT分野での巨人であるAppleやGoogleが、この問題に向けて素早い対応を取っている事実にとても勇気付けられます。

■参考文献
注1
Tech Crunch ”Apple opens access to mobility data, offering insight into how COVID-19 is changing cities”
https://techcrunch.com/2020/04/14/apple-opens-access-to-mobility-data-offering-insight-into-how-covid-19-is-changing-cities/
ケータイWatch 「アップルが移動データを閲覧できるツールを公開、新型コロナ対策」
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1247217.html
Apple Newsroom 「Apple、新型コロナウイルス対策支援のため、モビリティデータを利用可能に」
https://www.apple.com/jp/newsroom/2020/04/apple-makes-mobility-data-available-to-aid-covid-19-efforts/

注2
https://www.apple.com/covid19/mobility

注3 Google COVID-19 コミュニティ モビリティ レポート
https://www.google.com/covid19/mobility/

https://www.gstatic.com/covid19/mobility/2020-06-14_JP_Mobility_Report_ja.pdf

Google コミュニティ モビリティ レポートヘルプ
https://support.google.com/covid19-mobility/answer/9824897?hl=ja&ref_topic=9822927

注4
https://www.google.com/covid19/mobility/

注5 NHK 「各国で導入が進む“接触確認アプリ」
https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2020/06/0605.html


▼キャパの公式Twitter・FacebookではITに関する情報を随時更新しています!

    ホワイトペーパーフォームバナー

    【DL可能な資料タイトル】

    • ・プログラムによる建築/土木設計のQCD(品質/コスト/期間)向上
    • ・BIM/CIMの導入から活用までの手引書
    • ・大手ゼネコンBIM活用事例と建設業界のDXについて
    • ・デジタルツイン白書
    • ・建設業/製造業におけるデジタルツインの実現性と施設管理への応用

    詳細はこちら>>>

    PAGE TOP