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デジタルツインの未来。国土交通省が推進する活用方法とは?

現実世界の物体の3Dモデルを構築し、仮想空間上でシミュレーション・検証を行うデジタルツイン技術。企業だけでなく、国もデジタルツインの活用を推進しています。この記事では国土交通省が行なっている、デジタルツインに関する取り組みを3つご紹介します。
  
 この記事を読むと以下の3つのことがわかります。
(1)Project PLATEAU
(2)国土交通データプラットフォーム
(3)建築BIM加速化事業

Project PLATEAU(プラトー)

Project PLATEAU(プラトー)とは、国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクトのことです。
3D都市モデルの整備とユースケースの開発、利用促進を図ることで、全体最適・市民参加型・機動的なまちづくりを目指しています。*1

2021年度には全国 56 都市の 3D 都市モデルのオープンデータ化が完了し、2022年度は71都市の3D都市モデルのオープンデータが追加されました。今後もどんどん増えていく予定です。

デジタルツインのためのPLATEAU

Project PLATEAU(プラトー)が提供する3D都市モデルがどのようにデジタルツイン技術に関わっているのか、いくつかの特徴をご紹介します。

標準データモデルの策定

標準データモデルを定めることで、3D都市モデルの仕様、規格、品質などのルールを統一しています。これにより、ソフトウェア対応の効率化、開発ナレッジの共有、データ間連携の容易性が達成され、誰でも安定的で利用しやすいデータとなっています。

構造化されたデジタルツイン実装モデル

3D都市モデルは非常に精度の高い座標値を持っているので、現実の都市を仮想空間に構築する(デジタルツイン)ことが誰にでもできるようになりました。

さらに3D都市モデルはただのメッシュではなく、「屋根」や「壁面」といった構造的な属性、建築物の用途や構造、建築年までもが主題属性としてコーディングされています。
この特徴を活用すれば、特定のオブジェクトだけを編集・加工することや、特定の属性情報を持つオブジェクトを抽出することなど、現実の都市空間と関連付ける形での開発ができるようになります。

建築物と道路のデータのほかにも、都市計画に関する情報、土地利用、災害リスク、都市設備(道路標識、信号機、ベンチなど)植生、地形といった情報が入っています。

誰でも自由にアクセスできるデータ

すべての都市モデルはオープンデータとして公開されており、商用利用を含めて加工・編集ができるという寛容さです。
3D都市モデルのデータセットは標準化されたオープンフォーマット(CityGML)で記述されており、誰でも自由に編集や加工、パーサ開発などが可能となっています。このデータを使用した開発ナレッジも日々生み出され、共有されているので、開発の難易度はどんどん下がっています。

ユースデータの公開

PLATEAU のサイトではいくつかの活用事例が公開されており、活用方法を参考にすることができます。

公開されている活用事例の一部
・電波伝搬シミュレーション
実証実験では3D都市モデルを活用した5G電波の電波伝搬シミュレーションを行い、エリア全体をカバーするために最適な基地局の配置プランの検討を可能とする開発をする。*2
建物形状だけでなく、建物の材質という特性が入っているPLATEAUならではの活用方法です。

・街路灯照射範囲の解析
3D都市モデルを活用し、防犯設備の監視範囲・照射範囲の死角や遮蔽を三次元的にシミュレートし、地域の安心・安全度を評価するツールを開発することで、地域の防犯対策を推進することを目指す。*3
PLATEAU には該当データが初めから入っているのでこのような活用も可能です。

他にも次のような活用方法があります。
・人口動態や交通ネットワークなど組み合わせた、都市の将来シミュレーション
・ネットワーク情報や施設情報などを組み合わせた、人流シミュレーション
・建築物の属性(建築年、階数、構造)や災害リスク、住民情報などに浸水シミュレーションを組み合わせた、リスク解析

国土交通データプラットフォーム

デジタルツインにより、業務の効率化やスマートシティ等の国土交通省の施策の高度化、産学官連携によるイノベーションの創出を目指し、国土交通データプラットフォームの構築を進めています。*4

国土交通データプラットフォームは、国土交通省が保有するデータと民間が保有するデータを連携し、一元的に検索・表示・ダウンロードが可能なデータプラットフォームのことです。

国土交通データプラットフォームの機能

国土交通データプラットフォームでは、様々な分野のシステムと連携し、連携しているデータセットを横断的に検索し、データを表示・ダウンロードできます

・カタログ機能
フリーワード検索、条件検索、地図検索などの方法でデータを検索できます。

・可視化機能
プラットフォーム内には、3D地形図やPLATEAUの3D都市モデル、地方公共団体の工事、公共交通、道路の交通量といった様々なデータが格納されており、活用することができます。そしてそれらのデータを3D地形図に3D都市モデルを重畳表示するなど、地図上で重ね合わせて表示できます。

・提供機能
検索したデータをダウンロードできます。

・ショーケース機能
ショーケースでは、ユースケースや各種データの紹介などの情報発信が行われています。
今後は国土交通データプラットフォームのデータを活用してシミュレーション等を行った事例をケーススタディとして登録・閲覧可能にする予定です。

国土交通データプラットフォームの展望

まだ始まって日の浅いプラットフォームですが、次のような利活用イメージが紹介されています。

・スマートシティの実現
都市の3次元データと道路交通・公共交通・人流等のデータを組み合わせ、MaaSなどの新たなモビリティサービスの導入効果や、多様な交通モード間の交通結節点計画、走行空間の再配分などスマートシティの実現が可能になります。

・物流の効率化
国土に関するデータに、経済活動に関するデータを組み合わせることで、ドローンによる荷物配送の検討など物流の効率化が可能になります。

・防災関連
SIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク)と連携し、災害発生時にインフラの被害状況や通行止め情報などのデータを収集・共有することで、迅速に復旧することができます。
リアルタイムに変化するインフラの被災状況と公共交通関連データ、地方公共団体が保有する避難所の情報を連携します。これにより、安全な避難や速やかな復旧計画の作成ができ、暮らしの安全性向上に貢献できます。

建築BIM加速化事業

建築BIM加速化事業とは、BIMの活用があまり進んでいない中小事業者を対象として建築BIMを活用する事業を促進する目的で国土交通省が創設した事業です。

官民連携のデジタルトランスフォーメーション投資を推進する環境整備を図るため、一定の要件を満たす建築物を整備する新築プロジェクトにおいて、複数の事業者が連携して建築BIMデータの作成等を行う場合に、その設計費及び建設工事費に対して国が民間事業者等に補助を行うものです。*5

国土交通省は同時にProject PLATEAUの整備、活用、オープンデータ化や不動産IDの整備を促進する事業を進めています。将来的には、建築BIMとPLATEAU、不動産IDを連携させることでデジタルツインを実現します。デジタルツインを活用すれば計画・設計に必要な情報を簡単に手に入れられるようになります。その結果、設計・建設等の生産性や建物・屋外空間の質が向上し、都市開発が加速することでしょう。

BIM以外のソフトと連携し、交通やエネルギーといった空間的・時間的なデータを仮想空間上の3Dモデルと組み合わせることでデジタルツインを構築することができます。仮想空間上では気軽にシミュレーション・実験を行えます。

中小企業を中心に日本全体でBIMの導入を進めることで、デジタルツインの活用も進んでいくことが期待できます。

まとめ

今回は国土交通省が行なっている、デジタルツインに関する取り組みをいくつかご紹介しました。国主導で建築・建設業界のデジタルトランスフォーメーションが進められていて、今後の発展が楽しみですね。


 

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*1 総務省「デジタルツイン実装モデル「PLATEAU」の実装について」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000839747.pdf

*2 PLATEAU by MLIT「ローカル5G電波シミュレーションを活かした基地局配置計画」
https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/uc22-038/

*3 PLATEAU by MLIT「防犯設備設置計画支援ツール」
https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/uc22-017/

*4 国土交通省「国土交通データプラットフォーム整備計画について」
https://www.mlit.go.jp/common/001291150.pdf

*5 建築BIM加速化事業実施支援室 「TOP」
https://bim-shien.jp/

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