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注目を集めるコンピューターによるデザイン ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化の違いとは

近年注目を集めているのが、コンピューターによるデザイン手法です。
今までにないデザインの創出や、コスト・設計工数の削減といった観点から、今のうちから取り組んでおくべき課題といえます。

そのなかでも比較されやすいのが、「ジェネレーティブデザイン」と「トポロジー最適化」です。
両者には明確な違いがあり、活躍するシーンが異なります。

この記事では、ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化の違いについて解説します。
設計者を助ける新たな設計プロセスとして押さえておきましょう。

ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化の違い

まず、ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化の特徴を解説します。
両者の違いをしっかりと認識し、目的に合わせてうまく使えるようにしましょう。

ジェネレーティブデザインとは

ジェネレーティブデザインは、設計の目的や条件をコンピューターに与え、数百~数千個の設計を自動生成させる手法です*1。
大きな特徴として、設計者が作成したプロトタイプを必要としないことが挙げられます。
設計の条件をもとに、コンピューターがゼロから設計を行うことが可能です。

ジェネレーティブデザインの結果には、オーソドックスなものから思いもよらないものまで、幅広い設計が含まれます*2。
これらの結果を得ることで、設計者は常識にとらわれない柔軟な思想で設計に取り組むことができるでしょう。

プロジェクト初期段階の設計アイディアの考案は時間と労力のかかる作業ですが、ジェネレーティブデザインを採用することで手軽にできるようになります。
設計へのアプローチを変える新たな手法といえるでしょう。

トポロジー最適化とは

トポロジー最適化は、軽さと強度という観点から形状を最適化する手法です*3。
設計者が作った形状に対してトポロジー最適化を実行することで、原形を残しつつ、軽くて強い最適な形を得られます。
ジェネレーティブデザインとの大きな違いは、設計者のプロトタイプをベースにすることです。
設計者がイメージしている形の範疇で最適解を求めたいときに活躍が期待できます。

トポロジー最適化は、機械パーツなどの分野で注目を集めている技術であり、建築の空間デザインの分野で話題に上がることは少ないのが実情です。
一方、建築の構造デザインや部材設計では、少しずつ実用化が検討されています*4。

建物の重さに比例して受ける地震力は大きくなります。
そのため、地震大国である日本において、軽くて強い構造物は非常に有利です。
トポロジー最適化は、日本の構造デザインと相性のよい手法であるといえるでしょう。

ジェネレーティブデザインが活躍するシーン

ここからは、ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化が活躍するシーンを紹介します。
まずはジェネレーティブデザインについてみていきましょう。

プロジェクト初期段階の基本設計

前述のとおり、ジェネレーティブデザインはプロトタイプがない状態から条件を与えるだけで設計を行えます。
そのため、プロジェクト初期段階の基本設計が最初の活躍の場といえるでしょう。

ジェネレーティブデザインでは、数百~数千個の設計を得られます。
その際、多くの関係者を巻き込みながら評価することで、効果的に選別を行うことが可能です。

例として、ジェネレーティブデザインを取り入れたオートデスク社のオフィス・研究所の設計をみてみましょう*2。
当プロジェクトでは、仕事のスタイルと場所の好みを主要目標の一部に挙げています。
評価指標にはそれらについて社員にヒアリングした結果を採用しているのが特徴です。
このように、設計者だけでなく建物利用者の意見も聞きながら基本設計を評価・発展させていくのが最適解への近道といえます。

デザインの比較検討*5

ジェネレーティブデザインでは、設計者の時間と労力をかけずに多くの設計を手軽に得られます。
これにより、設計者が設計の良し悪しを判断する時間を多く取れるようになるでしょう。

さらに、ジェネレーティブデザインには、条件に合わない設計を除外する機能や、自動評価機能が備えられています。
選択肢が多くなる分、優れた設計を選び出す作業の労力が増えますが、これらの機能を使うことで効率的に作業を進められます。

また、ジェネレーティブデザインは、課題の残る設計も形として出力するのが特徴です。
よくない設計も並べて比較検討することで課題を認識する一助となることも、ジェネレーティブデザインで得られるメリットのひとつといえるでしょう。

設計が煮詰まったときの補助

設計を進めていると、アイディアが煮詰まり、先に進めなくなるときがあります。
従来はさまざま角度から設計を見直し、解決策をひねり出さなければいけませんでした。

そのようなときにジェネレーティブデザインを使えば、多くのソリューションを提示してくれるので、解決策を見つけ出せる可能性があります。

自分の固執した考えに縛られない設計補助を得られるという観点でも、設計者の助けになるでしょう。

トポロジー最適化が活躍するシーン

次に、トポロジー最適化が活躍するシーンをみていきましょう。

建物の軽量化*3

トポロジー最適化は、軽さと強さを両立する形状を作り出すのが得意な技術です。
そのため、構造デザインの分野での活躍が期待されています。

建物の構造設計とは、地震や台風に耐えられるように柱・梁・壁といった部材を配置する作業です。
しかし、強い部材にするには大きな断面が必要になり、その分重くなっていきます。
前述のとおり、建物が重くなると受ける地震力が大きくなるため、より強い部材が必要です。
トポロジー最適化を活用し、軽さと強さのバランスがよい最適解を求められれば、このようないたちごっこを回避でき、設計の効率化に繋がるでしょう。

複雑な形状の最適化設計

複雑な形状の最適化設計はトポロジー最適化の得意分野であり、建築においても活躍が期待されています。

竹中工務店は、分岐する柱の複雑な仕口にトポロジー最適化を採用し、金属3Dプリンターで製作する工法を研究しています*4。
溶接やボルト留めによる分岐柱の仕口製作は高い精度が求められる難しい課題でした。
鉄の鋳造で仕口を製作することもありますが、鋳型製作がコストアップに繋がってしまいます。
一方、3Dプリンターを使えば鋳型製作のようなコストは不要です。
さらに、トポロジー最適化により材料を最小化できれば、コストダウンを期待できるでしょう。

近年はコンピューターの計算能力の向上や、3Dプリンターの登場で自由形状を実現しやすくなっています。
トポロジー最適化は、自由形状を最小材料で設計できる手法として、建築分野においてもますます注目を集めるかもしれません。

おわりに

ジェネレーティブデザインやトポロジー最適化は、設計を助ける新たな設計プロセスです。
ときには、設計者の既成概念を超え、思いもよらないような空間デザインや形状を得られることもあります。
設計の手間を減らす、新規性のあるデザインを創出するなど、さまざまな目的での使用が期待されています。
使うことができれば設計者としての価値を高められる可能性を秘めているので、積極的に触れてみてください。

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*1
(参考AUTODESK「 ジェネレーティブデザインとは?その全容と製造における活用方法・事例」
https://www.autodesk.com/jp/design-make/articles/what-is-generative-design-jp
*2
(参考) AUTODESK「ジェネレーティブデザインの本質に迫る P.4」
https://bim-design.com/uploads/AEC_Generative_Design_eBook.pdf
*3
(参考)清水建設「ジェネレーティブデザイン×トポロジー最適化の胸アツなミライ」
https://www.shimztechnonews.com/topics/edge/2022/2022-01.html
*4
(参考)ITmedia inc.「竹中工務店の建築向け“金属3Dプリンタ製接合部”に極めて有効、アルテアの構造解析ソフトウェアが果たす役割」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2209/26/news005.html
*5
(参考)オリックス・レンテック「ジェネレーティブデザインとは?三つのメリットと設計の未来像を考える」
https://go.orixrentec.jp/rentecinsight/it/article-191

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