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Googleがリソースを投入してテストを開始した「Apprentice Bard」とは

自然な言語で質問に対する回答をAIが作成する「ChatGPT」は、私たちに大きな衝撃を与えました。この新たなサービスに最も脅威を感じたのは、IT業界の巨人であり絶対的な王者でもあるGoogleではないでしょうか。
Googleは、「ChatGPT」への対抗できるサービスのテストを最優先事項とし、コードレッドを発令しました。
今回の記事ではこの話題について取り上げてみましょう。

この記事でわかること
 ・Googleの「Apprentice Bard」とは何か
 ・なぜGoogleが「ChatGPT」を恐れるのか
 ・Googleが一般にサービスを公開した件について

Googleが最優先事項としてテストを開始した「Apprentice Bard」とは

ベンチャー企業であるOpenAIが、2022年11月に公開した自然言語によるチャットbot「ChatGPT」は、その作成する文章のクオリティが非常に高く、各界に大きな驚きを与えました。
AIの進化がついにここまできたのか!と思わせ、話題となっています。*注1

「ChatGPT」の登場に対して、最も警戒しスピーディに企業として対抗策を打ち出してきたのがGoogleです。なぜGoogleがベンチャー企業の開発したチャットbotに、それほどまで危機感を感じているのか?については後述していくとして、ここではCNBCが入手したという内部文書に基づいて、Googleの動きをまとめてみましょう。*注2

CNBCが2023年1月31日に公開した記事によると、GoogleはLaMDA技術(対話型アプリケーション用モデル)を使用する、ChatGPTのような製品を社内でテストしています。これは、CNBCが入手したという内部文書に記載されています。

このプロジェクトは「Atlas」と呼ばれるクラウドユニットの元で、プロジェクトとして展開されており、「ChatGPT」に対する「コードレッド」に位置付けられる対応になります。
「コードレッド」は、Googleの事業に大きな影響を与える可能性のある競合製品が登場した時に発令されるもので、Googleが「ChatGPT」に対して相当の危機感を抱いていることがわかります。

また「ChatGPT」と同様のチャット技術を現在の検索サービスと統合した、新たな検索ページのテストも行っているとのことです。
 
Googleは以前「Meena」というAI技術に基づくチャットbotの開発を行っていましたが、現在は廃止されています。
今回テストされているのは「Apprentice Bard」と呼ばれ、「ChatGPT」と比べて最新の情報まで学習用のソースとして利用しているという特徴があります。
 
「ChatGPT」はAPIが提供されていますので、ユーザーがそれぞれのニーズに合わせてアプリケーションに組み込むことが可能です。
一方、Googleの「Apprentice Bard」は、Google Cloud Platformの一部としてAPIが提供されていることから、利用するにはアカウントの登録と料金の支払いが必要です。
 
現在Googleは、社内での優先度をあげることで「Apprentice Bard」のテストに、相応のリソースを投入しています。

LaMDAは開発に当たったエンジニアが、「AIに意識が芽生えた」と勘違いするほど高い性能を持った言語モデルであり、「ChatGPT」に十分対抗できると思われます。
しかし、Googleとしては規模の小さいスタートアップ企業がリリースする製品と異なり、十分なテストをしないまま市場に投入することはできません。
Googleとしてのブランドと信頼に応え、ユーザーに認められるには、徹底した品質を確認する必要があります。
そのことから、これまで慎重に進めていたAiチャットbotの開発ですが、「ChatGPT」の登場と市場の反応があまりに衝撃的だったことから、ここにきてギアを上げてきたということでしょう。

なぜGoogleが「ChatGPT」を恐れるのか

ではなぜGoogleは、これほどまでに「ChatGPT」に対して脅威を感じているのでしょうか?
「ChatGPT」はあくまでもチャットbotでしかありません。一方のGoogleの中心サービスは検索です。ちょっと見には異なるカテゴリーのように思えます。
もちろんGoogleの検索もAIを活用することで、その精度や品質は向上すると思われますが、「ChatGPT」の登場はIT業界の巨人として君臨するGoogleに、影響を与えるほどのインパクトはあるのでしょうか。

Googleが登場する以前は、インデックスタイプの検索サービスであるYahoo!がこの分野を独占していました。しかし、インデックスタイプではユーザーが本当に求める検索結果を表示することができず、その点を改良したGoogleが登場したことで、あっという間にGoogleが検索分野を席巻するようになりました。

もし仮にGoogleを上回る検索精度を実現し、ユーザーの求める情報をより整備された形で提供することができるサービスが登場すれば、過去のYahoo!のようにGoogleがその地位を明け渡す可能性も十分あるでしょう。

では、私たちが実際に検索サービスを利用するケースを具体的に考えてみましょう。

例えば私が学生だったとして、アインシュタインの功績についてレポートを書くために情報を集めたいとしましょう。
まずGoogleを使って「アインシュタイン、業績」といったキーワードで検索し、そこで表示されるページを順番に閲覧し、その中から必要な情報をまとめてレポートにする、そのような手順になるはずです。

しかし「ChatGPT」を使えば、そんな面倒な手続きを踏む必要はなくなります。ChatGPTに「アインシュタインの業績をまとめてください。」と入力するだけです。

実際に試してみるとものの数分も立たずに、以下の文章を表示してくれます。


<ChatGPTが作成した文章>

アルベルト・アインシュタインは、20世紀初頭に相対性理論や光電効果の研究など、多くの科学的功績を残しました。以下に、アインシュタインの代表的な功績をまとめます。

特殊相対性理論の提唱
アインシュタインは、1905年に特殊相対性理論を提唱し、時間や空間が絶対的なものではなく、物体の速度に応じて相対的に変化することを示しました。

質量とエネルギーの等価性(E=mc2)
アインシュタインは、質量とエネルギーが等価であることを示す式「E=mc2」を発見しました。これにより、原子爆弾などの核兵器開発に大きな影響を与えました。

一般相対性理論の提唱
アインシュタインは、1915年に一般相対性理論を提唱し、重力が時間と空間の歪みによって現れることを示しました。

光電効果の説明
アインシュタインは、光電効果が光の粒子性を示す現象であることを示し、光が粒子として振る舞うことを証明しました。

ボーズ=アインシュタイン凝縮の予言
アインシュタインは、ボース統計を用いて、極低温下で原子が同じ量子状態に集まる現象であるボーズ=アインシュタイン凝縮が起こることを予言しました。

アインシュタインは、これらの功績によって、20世紀の物理学を支配する最も重要な科学者の1人となりました。


さらに、それぞれの項目に関する詳細を質問することもできますし、「年表形式でまとめてください」という要望でも、十分な結果を表示してくれます。
学生のレポートをAIを使って作成することの良否は別にしても、生産性という意味ではかなりの差があります。

では、もう一つ例を挙げてみましょう。

今回は、エンジニアがある機能を実現するプログラムを考える場面を想定しましょう。
 
大抵の機能については、すでに世界の誰かがプログラミングした結果をインターネット上に公開してくれています。エンジニアは全てのコードを自分で一から作っているのではなく、その多くはこのような「すでにあるコード」を組み合わせることが普通です。

「ChatGPT」に「日付から干支を出力するプログラムをswiftでコーディングしてください」と入力すると、以下の結果が表示されます。


<ChatGPTが出力した結果>
以下は、日付から干支を出力するSwiftのプログラム例です。

上記の例では、DateFormatterを使用して指定された日付をDate型に変換し、CalendarとDateComponentsを使用してその日付に対応する干支を計算しています。計算結果は、干と支のインデックスを取得し、それに基づいて干支の配列から干支を取得しています。最後に、print文を使用して計算結果を出力しています。


swiftは、iPhoneやiPad用のプログラミング言語です。
「ChatGPT」の出力した結果は、親切なことにコメントアウトされた説明部分やコードの具体的な意味などについても記述されています。

驚くべきことに、「ChatGPT」がもしGoogleの入社試験を受けるとしたら、エンジニアとしてレベル3で採用される水準であるということが分かっています。
他にも米国の司法試験を受けるとしたら上位10%の成績を取ることができる、という報告もあります。

プログラミングや法律といった専門性の高い分野でも、一般的な人間の能力を超える実力を発揮できることが「ChatGPT」の凄さです。

あなたがエンジニアや法律家などでなかったとしても、何かの目的があってネット検索するとしたら、どちらを使いますか?
検索・ページの閲覧・情報の取捨選択・まとめが必要な「Google検索」がいいですか?それとも最終的な結果までAIがまとめてくれる「ChatGPT」がいいですか?

これこそ「ChatGPT」の登場によって、Googleが焦っている大きな理由です。

Googleが一般にサービスを公開

CNBCが社内文章のリークとして報道した直後の2023年2月6日に、早くもGoogleから一般への公開がアナウンスされました。
「AIによる開発者のイノベーションを支援する」ため、個々の開発者・クリエイタ・、企業に対するオンボーディングを開始し、「Bard」を信頼できるテスターに公開するとアナウンスされました。

今回、GoogleのCEOであるサンダー・ピチャイ直々のメッセージとして掲載されています。

さらに今後Googleは、AIを幅広い製品に取り入れることや、検索にも活用することを宣言しています。非常にスピーディかつ明確なアナウンスであり、Googleの本気度がわかります。*注3

【まとめ】
映画「エイリアン」が公開されたのは1979年であり、今から40年以上も前です。乗組員がコンピューターに話しかける時「おふくろさん」と和訳されていたのは非常に秀逸でした。
対話型で乗組員の質問に対して即座に適切な回答を自然な文章で返してくれる。同様のシステムは「2001年宇宙の旅」でも「スタートレック」でも登場しています。

前世紀のSF映画やドラマで描かれていたような、対話型コンピューターを実現する仕組みが「ChatGPT」であり、Googleの「Apprentice Bard」です。SFの世界がもう間近に迫っている。そんな予感がする今回のニュースについてまとめてみました。

 

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■参考文献
注1
AI+ 「AIプロ集団から見た「ChatGPTの歴史」 たった5年で何が起こったのか」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2303/17/news200.html

注2
CNBC ”Google is asking employees to test potential ChatGPT competitors, including a chatbot called ‘Apprentice Bard’”
https://www.cnbc.com/2023/01/31/google-testing-chatgpt-like-chatbot-apprentice-bard-with-employees.html

注3
Gigazine 「GoogleはChatGPTのような新型チャットボット「Apprentice Bard」をテストしている」
https://gigazine.net/news/20230201-google-chat-ai-apprentice-bard/

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