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国土交通省が本気で取り組んだ「建築BIM加速化事業」とは 支援の対象などを紹介

建設業界における令和5年の目玉支援事業が、国土交通省(以下、国交省)の「建築BIM加速化事業」です。
80億円の予算が用意された大規模な支援事業であり、BIM(Building Information Model)の普及にかける国交省の強い思いを感じ取れる事業といえるでしょう。

そこで、この記事では建築BIM加速化事業の概要と詳細について解説します。
令和6年以降も同様の事業が策定される可能性はあるので、BIMの導入を考えている方は、今後の参考にしてみてください。

「建築BIM加速化事業」の概要

それではさっそく建築BIM加速化事業の概要についてみていきましょう。

概要と背景

建築BIM加速化事業の目的は、建築BIMの作成を支援し、BIMの社会実装の加速化を図ることとされています1_P.3。 中小事業者も含めて幅広くBIMに触れてもらうことを目的としているため、事業に参加するハードルが低く設定されているのが特徴です。 完了実績報告の添付書類はBIMモデルのスクリーンショットなどの簡単な資料のみとされており、ユーザーへの負担は最小限といえるでしょう1_P.4。

建築BIM加速化事業の背景には、時間外労働の削減や、建設技能労働者不足の解消など、建設業界を取り巻く課題があります。
国交省は、「設計」「施工」「維持管理・運用」の3つのフェーズにおいて、一貫してBIMモデルを使用することでこれらの問題の解決を期待しています2_P.7。 なぜならば、BIMモデルの使用で以下のようなメリットが考えられるからです2_P.4-6。
・パースやVRによる円滑な合意形成
・情報の一元化
・各種シミュレーションによる設計の最適化
・BIMモデルによる積算の効率化
・BIMモデルを使った施工図作成の効率化
・3次元モデル上での施工シミュレーション

「設計」「施工」「維持管理・運用」段階の働き方をBIMによって変えるのが官民共通の目標です。
BIMの普及により新3K(給与・休暇・希望)の労働環境の実現し、魅力ある建設業界を目指しています。

BIM導入時の体制イメージ(設計)

ここで、建築BIM加速化事業で想定されているBIM導入時の体制イメージを紹介します。
国交省が目指しているBIM運用の全体像を把握しておきましょう。
まずは「設計」段階の体制です。

BIM導入時の体制イメージ(設計)

(引用)建築BIM加速化事業 P.1

国土交通省

https://bim-shien.jp/wp-content/uploads/2023/01/R4-5_bim_kasokuka.pdf

この体制で中心に据えられているのが、「BIMマネジャー」です。
BIMマネジャーは、意匠設計事務所などが設置する役割で、プロジェクト全体のBIM運用を司るリーダーに当たります。
具体的には、BIMモデラ―の配置やモデルの入力指示・確認、関係者へのモデル・図面の発行などを行います。
BIMマネジャーは建築とBIMの両方に造詣が深い人材が適任です。
しかし、現在はBIMに精通したBIMマネジャーが不足しており、育成が急務になっているのが実情といえます。

なお、上図で「設計費の一部として補助対象」と表記されている項目が、建築BIM加速化事業の支援対象です。

BIM導入時の体制イメージ(施工)

続いては、「施工」段階の体制イメージです。

BIM導入時の体制イメージ(施工)

(引用)建築BIM加速化事業 P.2

国土交通省

https://bim-shien.jp/wp-content/uploads/2023/01/R4-5_bim_kasokuka.pdf

施工段階でも設計段階と同様にBIMマネジャーが設置されています。
また、施工段階では実際に施工できるだけの細かい図面が必要なので、多くのBIMモデラーが配置されるのが特徴です。
設計段階ではBIMモデラ―の支援対象外ですが、施工段階ではBIMモデラ―の配置費用も支援対象とされています*1 P.1-2。

「建築BIM加速化事業」の詳細情報

ここからは、令和5年度の建築BIM加速化事業の詳細情報を紹介します。

建築BIM加速化事業のスケジュール

建築BIM加速化事業は下記のスケジュール*3で実施されています。

事業者登録 :令和5年1月16日~12月24日(3月31日から延長)
交付申請 :令和5年2月13日~12月31日
完了実績報告 :令和5年12月1日~令和6年2月29日

補助上限額

下表のとおり、建築BIM加速化事業の補助上限額は、延べ面積別に定められています。

延べ面積設計費建設工事費
1,000㎡以上、10,000㎡未満25,000千円40,000千円
10,000㎡以上、30,000㎡未満30,000千円50,000千円
30,000㎡以上35,000千円55,000千円

延べ面積別の補助上限額*1

(参考) 国土交通省「建築BIM加速化事業について P.3」を参考に筆者作成

https://bim-shien.jp/wp-content/uploads/2023/01/R4-5_bim_kasokuka.pdf

なお、建築BIM加速化事業で支援を受けるには、「敷地面積が1,000m2以上であること」「階数が3以上であること」などの建物要件*4があるので、留意しておきましょう。

支援の対象とされる費用

事業の対象とされているBIMモデル作成費*1は以下のとおりです。

BIMライセンス等費

  • BIMソフトウェア利用費(ビューワソフト、アドオンソフトの利用費、BIMモデル利用するためのPC・タブレット・ARゴーグル等の周辺機器のリース費等を含む)
  • CDE環境(共通クラウド)構築費、アクセス費

BIMコーディネーター等費

  • BIMコーディネーター人件費・委託費
  • BIMマネジャー人件費・委託費
  • BIM講習に要する委託費・人件費・諸経費

BIMモデラ―費

  • BIMマネジャーをサポートするBIMモデラ―委託費

支援の対象とされるソフトウェアなど

国土交通省は、建築BIM加速化事業の補助対象として280個以上(2023年11月現在)のソフトウェア等をリストアップ*5しています。
以下に主なソフトウェアを挙げるので、参考にしてみてください。

意匠系

  • Revit(Autodesk)
  • Navisworks Manage(Autodesk)
  • Archicad(グラフィソフトジャパン株式会社)
  • Vectorworks Architect(エーアンドエー株式会社)
  • Solibri Model Checker(Solibri Inc)

構造系

  • Super Build/SS7(ユニオンシステム)
  • SEIN La CREA Premium(株式会社NTTファシリティーズ)

設備系

  • Rebro(NYKシステムズ)
  • T-Fas(ダイテック)
  • FlowDesigner(アドバンスナレッジ研究所)

生産系

  • StreamBIM(Rendra)
  • Chex(Chex BIM)(株式会社YSLソリューション)
  • Tekla Structures(株式会社トリンブル・ソリューションズ)
  • Real 4(データロジック)

なお、リストにないソフトウェアでも実施支援室の審査を受けることができます。

そのときのポイントは、以下の3点です*5。

ソフトウェアの機能がわかる資料を用意し、相談してみましょう。

(1):建築物の3次元データを設計・施工段階で作成するためのソフトウェア

(2):(1)のソフトウェアで作成した3次元データをインポートし、設計又は施工に関連する行為に活用することができるソフトウェア

(3):(1)・(2)のソフトウェアを使用するために必要な機器で、データの作成又は表示を行うためのもの

令和6年以降のBIM支援事業は未発表

現時点では、令和6年以降のBIM支援事業は未発表です。
令和5年の建築BIM加速化事業は、2023年11月10日時点で80億円の予算に対して46.2億円(2023年11月17日現在)の交付申請額となっています*5。

予算が余っていること、BIMの普及活動は引き続き必要なことから、規模を縮小して建築BIM加速化事業を継続する可能性はあるといえるでしょう。
支援を受ける条件などに変更があるかもしれないので、実施の有無とあわせてチェックしてみてください。

おわりに

建築BIM加速化事業は、BIMの普及のために国交省が本気で取り組んでいる事業です。
BIMはこれから進められる建設デジタルトランスフォーメーションにおいて欠かせない技術といえます。
会社の競争力を高めるためにも、このチャンスを逃さず取り組んでみましょう。

*1

(参考) 国土交通省「建築BIM加速化事業について P.3,4」

https://bim-shien.jp/wp-content/uploads/2023/01/R4-5_bim_kasokuka.pdf

*2

(参考) 国土交通省「 建築BIMの意義と取組状況について P.4-7」

https://bim-shien.jp/wp-content/uploads/2023/01/R4-5_bim_igitotorikumi.pdf

*3

(参考) 建築BIM加速化事業実施支援室「事業概要」

https://bim-shien.jp/index.php/outline/

*4

(参考) 国土交通省「建築BIM加速化事業の代表事業者の登録を開始します P.1」

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001582433.pdf

*5

(参考)建築BIM加速化事業実施支援室「建築BIM加速化事業実施支援室 エクセル」

https://bim-shien.jp/
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