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意匠設計が変わる!画像生成AIの驚異とその活用法

意匠設計はクリエイティブな分野であり、新たなアイデアや視覚表現が絶えず求められています。その最前線で活躍しているのがAI(人工知能)の一種、画像生成AIです。今回の記事では、画像生成AIの持つ力と、それが意匠設計にどのように影響を与えるのかについて深掘りしていきます。

この記事でわかること
・画像生成AIの力と進化
・意匠設計への応用
・倫理的な考慮と問題

画像生成AIとは

画像生成AIは、大量の画像データを学習し、それに基づいて新たな画像を生成するAIの一種です。

この技術は深層学習というAI技術を基にしており、特にGAN(Generative Adversarial Networks)と呼ばれるネットワークが使用されます。*注1

画像生成AIは、その学習データから得られた特徴を抽出し、それをもとに新たな画像を生成します。その結果生み出される画像は、高品質でリアルであり、時には人間の目を欺くほどの精度を持つこともあります。

画像生成AIの進化

画像生成AIの最大の点はその高い創造性と、生成する画像の品質の高さです。

AIは膨大な数の画像データから学習を行い、それをもとに新たな画像を生成します。これにより、人間が想像もしなかったような新しい視点やアイデアをAIが提供することが可能となりました。*注2

意匠設計における画像生成AIの活用

この画像生成AIは意匠設計に新たな可能性をもたらしています。

新たなデザインアイデアの提供

AIは、新たなデザインやアート作品の生成を支援します。AIが生成する意匠設計のアイデアは、人間が持つ固定概念を打破し、新たな視点を提供するのです。

たとえば、AIが自動的に最適な設計案を生成するツールでAutodeskの「Dreamcatcher」があります。

ユーザーが設計目標と制約条件を入力すると、AIはそれに基づいた多数の設計案を生成するため、デザイナーやアーティストはクリエイティビティをより高いレベルへ押し上げることが可能となります。*注3

また株式会社リコーはAIが360°パノラマ画像にコンピューターグラフィックス(CG)家具を自動で配置する「AIステージングβ版」の提供をしています。*注4

このサービスを通してリコーは不動産物件の持つ本来の魅力を遠隔で伝えるとともにCG家具を配置することで物件の検討者により豊かな居住イメージを持てるようになるでしょう。

効率的なプロトタイピング

従来の建築設計では、環境条件や法令要件、顧客の要望を満たすために、手作業で建物のボリュームや平面計画を作成します。

さらに作業は続き、外観の設計案を準備して顧客との対話を通じて合意形成を進めるのが慣習でした。

この一連のプロセスは時間と手間がかかり、また顧客の要望に合わない場合、同様の作業を再度行う必要があるという課題がありました。

しかし画像生成AIはデザインのプロトタイピングを効率化します。AIは短時間で多数のデザイン案を生成し、デザイナーと顧客はその中から最適なものを選ぶことができるようになったのです。

例えば、ソーラーファーム(大規模太陽光発電)、ヒートポンプ、水道システムなどのインフラの設計を行うとしましょう。

生成AIは、敷地や環境、地理などの特定の条件を入力すると、最適なインフラの立地やデザインを計画することができるのです。

米国の企業、トランセンド(Transcend)は、そのソフトウェア「デザイン・ジェネレーター」を使って、ごみ処理施設や発電所の設計時間を90%短縮できると宣言しています。注*4

また大林組は建物の形状を記したスケッチや3Dモデルから複数のファサードデザインを自動で生成し提案する技術AiCorbを開発しています。*注5

AiCorb®とHyparのAI技術を連携した新たな設計手法は、スケッチや3Dモデルに対し多数のファサードデザイン案を瞬時に提案し、それを3Dモデル化することに成功しました。

これにより、建築設計のボリュームデザインからファサードデザインまでの一連のプロセスが一気通貫で可能となり、クライアントの要望を直接具現化して、合意形成を効率的に進めることが可能になります。

生成AIは多様な分野でのデザインプロセスを劇的に高速化し、効率化することで、より多くの時間と資源を戦略的な意思決定に集中することができるようになるでしょう。

生成AIの課題 倫理的な問題

画像生成AIは、その驚異的な能力と、さまざまな分野での応用可能性により、私たちの生活や働き方を変えつつありますが、課題もあります。

その1つが倫理的課題です。

データの偏見

AIは学習データに基づいて動作します。もし偏見を持ったデータで学習すると、その偏見がAIの出力にも反映される恐れがあります。*注6

不正確な情報の拡散:

特に情報の信頼性が求められる場面で、AIが間違った情報や誤解を拡散させる可能性があります。*注6

人間の役割の縮小

生成AIの進化により、多くのクリエイティブなタスクがAIに置き換わる可能性があり、それによる雇用の問題や人間の創造性の価値の減少が懸念されます。*注7

生成AIの課題 著作権の問題

倫理的な課題の他には著作権についても問題視されています。

生成AIが生み出すコンテンツの著作権に関する問題は、法的・文化的背景によって異なりますが、以下の点が全般的に考慮されるべきです。

著作権の帰属

伝統的な著作権法は人間の創作活動を前提としていますが、AIが独自にコンテンツを生成した場合、そのコンテンツの著作権は誰に帰属するのかが不明確です。*注8

オリジナリティの基準

AIが生成したコンテンツが、著作権法の要件である「オリジナリティ」を持つかどうかは、大きな議論の対象となっています。*注9

著作物の再利用

AIが既存の著作物を元に新しいコンテンツを生成する場合、そのプロセスは元の著作物の著作権を侵害する可能性があります。*注10

生成AIはその能力と応用範囲の拡大に伴い、多くの倫理的・法的問題を引き起こしています。

特に、著作権に関する問題は、現行の法的枠組みがAIの能力や存在を前提としていないため、新しい指針や法律の改正が必要とされています。*注11

これらの技術がさらに発展し社会に浸透するにつれ、これらの課題への対応がより一層重要となってくるでしょう。

まとめ

画像生成AIは、大量の画像データを学習し、新しい画像を生成する技術であり、GANなどの深層学習技術が使用されます。

このAIは意匠設計の分野で新しいデザインアイデアの提供や効率的なプロトタイピングを助けるツールとして活用されています。

しかしながら、画像生成AIの使用には、学習データの偏見、不正確な情報の拡散、人間の役割の縮小といった倫理的課題が存在します。

また、AIによるコンテンツ生成に伴う著作権の問題も議論されており、著作権の帰属、オリジナリティの基準、著作物の再利用など、多くの点で現行の法的枠組みの見直しが求められています。

AI技術の進化と共に、これらの課題に対する対応が必要となるでしょう。

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■参考文献

注1

Reinforz Insight GAN(Generative Adversarial Networks)徹底解説:画像生成からビジネス応用までの活用法

https://reinforz.co.jp/bizmedia/3757/

注2

NHK AIが絵を描く?進化する画像生成AIの最前線

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221008/k10013851401000.html

注3

AUTODESK Project Dreamcatcher: Generative Design Solutions in CAD

https://www.research.autodesk.com/projects/project-dreamcatcher

注4

日経新聞 生成AIの事業活動、有望6分野 設計時間を6割短縮

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC05DRU0V00C23A4000000/

注5 大林組 建築設計の初期段階の作業を効率化する「AiCorb」を開発

https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220301_3.html

注6

IDEAS FOR GOOD AI(人工知能)の倫理問題

https://ideasforgood.jp/issue/ai-ethics/

【生成系AI導入編Part3】未来の想像力:生成AIの倫理的問題と将来展望まとめ

https://nlab-notebook.com/entry/introduction-of-generative-ai-part3

注7

東京新聞 生成AIは人間の仕事を助けるのか、それとも奪うのか 影響がありそうな章句種は何?<Q&A>

https://www.tokyo-np.co.jp/article/250299

注8

pwc 生成AI-新たな働き方革命の波に乗る-テクノロジー最前線 生成AI(Generative AI)編(4) 生成AIと著作権

https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/generative-ai/vol4.html

注9

ITmedia NEWS 「AIが自動生成=著作権なし」「人間の創作=著作権あり」米著作権局、AI生成コンテンツの登録ガイドライン公表

https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/generative-ai/vol4.html

注10

文化庁 AIと著作権

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/93903601_01.pdf

注11

日経XTECH 著作憲法での生成AIの扱い、文化審小委が検討開始

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/15655/

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