ハッチングとはどんな作業？AutoCADで実行する方法を解説

AutoCADを使って図面作成を進めていると、図形ごとの差別化を行い、図面としての見やすさを改善する必要が出てくることもあります。そんな時に必要なのがハッチングと呼ばれる作業で、ハッチングによって図面の質を高めることが可能です。

この記事では、そもそもハッチングとはどのような作業なのか、AutoCADでハッチングを実行するにはどうすれば良いのかについて、順番に解説します。

目次：

1. ハッチングとは
2. どんな時にハッチングを実行すべきなのか
3. AutoCADでハッチングは実行できる？
4. AutoCADでハッチングを実施する方法
5. ハッチングのパターンや設定を変更する方法
6. AutoCADでハッチングができない場合
7. ハッチングを上手に活用するポイント

ハッチングとは

ハッチングとは、ある図形の中の空白部分に模様や平行線を入れることで、他の図形との差別化を行う作業のことを指します。

通常、CADソフトを使っていると多くの四角形や円を描いた際、図形の中は空白で表示されます。塗りつぶし設定などを行っていない限り、これがデフォルトで表示されるケースが一般的ですが、ハッチングはこの空白部分を埋められる機能の一種です。

どんな時にハッチングを実行すべきなのか

ハッチングを実施すべきシチュエーションとしては、作成中の図面が複雑化して、図形の意味が捉えづらいと感じる状況を解消する時です。

シンプルな平面図を描いている段階であればハッチングの必要はありませんが、大きなオフィスビルや邸宅の設計をするとなると、間取りなどは複雑になりやすく、どの図形が何を意味しているのか、ということが極端にわかりづらくなります。

そこでハッチングを実行し、それぞれの間取りがどのような意味を持つのかを模様によって意味付けることで、図面の可視性を高められます。

設計者自身が情報を把握しやすくなるのはもちろん、関係者間の共有の際にもハッチングしておくことで、コミュニケーションミスを解消することが可能です。

AutoCADでハッチングは実行できる？

ハッチングはCADソフトの基本的な操作方法であるため、AutoCADでも実行可能です。AutoCADでハッチング機能を使う方法は、主に

• ホームタブから実行する
• コマンド入力で実行する

という2つの方法のどちらかになります。ホームタブからハッチング機能を利用したい場合は、まずホームタブを開いて作成パネルを選択します。すると「ハッチング」を選択可能なので、ここからハッチングツールを起動しましょう*1。

コマンド入力でハッチングを実行する場合は、入力画面を開いて「HATCH」と入力しましょう。普段からコマンド入力を利用している場合は、こちらの方法が最も早くハッチング機能を利用できます。

AutoCADでハッチングを実施する方法

それではここから、実際にハッチングを図形に適用するための方法について解説します。上記2つのどちらかの方法でハッチングツールを起動したら、まずはハッチングを適用したい図形にマウスカーソルをあててみましょう。するとハッチングを実行した場合のプレビューが表示されるので、実行前に正しくパターンが表示されるか、確認します。

ハッチングが正しく適用できることがプレビュー画面から判断できたら、その状態でEnterを実行します。これでプレビュー通りにハッチングが実行され、操作は完了です。

AutoCADは簡単にハッチングが行えるよう整理されたソフトとなっているため、正しく図形を用意できていれば簡単に行えます。

ハッチングのパターンや設定を変更する方法

ハッチングを無地の図形に適用するだけであれば、上記の操作を実行するだけで簡単に適用ができます。ただ、何回もハッチングを実行するとなると、同じパターンのハッチングが施された図形だらけになってしまい、十分な効果を期待できないこともあります。

こういった事態を回避する上では、ハッチングのパターンやその他の設定を変更することが大切です。ここでは、ハッチングの詳細設定を変更する方法について、解説します。

ハッチングのパターンを変更する方法

まずは、ハッチングのパターンを別の模様に変更したい時の操作方法についてです。

ハッチングのパターンを変更するには、まずハッチングを施した部分を再度クリックします。するとハッチングエディタのタブが表示されるので、ここからパターンを好みのものに変更することができます。

表示されるハッチングパターンから好みのものを選択し、ハッチングエディタタブを閉じれば、パターンの変更は完了です。

ハッチングのその他の設定を変更する方法

ハッチングを実行した後は、パターン以外の要素も変更することができます。ハッチングエディタタブを開くと、パターンの他にも色の変更や塗りつぶし設定、グラデーションなどの設定が可能です。

ハッチングの線の色だけでなく、背景色を変更したり、透過性を変更したりすることもできるので、色々と試してみることをおすすめします。

いずれの設定変更も、ハッチングエディタタブの中に含まれています。パターンだけでは物足りないと感じる場合に、設定をいじってみましょう。

AutoCADでハッチングができない場合

基本的にAutoCADでは、あらゆる図形にハッチングを施すことができます。ただ、場合によってはハッチング機能が正しく機能せず、パターンが上手に反映されないということもあるかもしれません。

上の操作の通りにハッチングを実行しても反映されない場合、疑うべきはハッチングを適用しようとしている図形の不備です。ハッチングは完全に線によって閉じられた図形にしか適用することができず、何らかの事情で図形が正しく閉じられていない場合、ハッチングは機能しません。

ハッチングが特定の図形にのみ適用できない場合は、図形の角を確認し、開きができていないかをチェックしましょう。図形を作り直すか、開き部分を埋めることでハッチングを実行できるようになります。

ハッチングを上手に活用するポイント

ハッチングを上手に活用するポイントとしては、図面上ではやたらとハッチングは使わないようにすることです。

ハッチングは図形ごとの差別化を行ったり、図面全体を見やすくするために有効な手段ですが、ハッチングをすればするほど見やすくなるわけではありません。場合によってはハッチングをし過ぎるあまり、かえって見えづらくなることもあります。

ハッチングの効果を最大限高めるためには、どうしても必要な部分にのみハッチングを適用するよう意識することが大切です。

まとめ

この記事では、ハッチングとはどのような処理なのか、AutoCADでハッチングを実行するにはどうすれば良いかについて、解説しました。

ハッチングは便利な機能ですが、やたらと図面に盛り込んでしまうと、かえって不便を感じることもあります。使い方を正しく理解するだけでなく、使い所についても考えてみる必要があるでしょう。

出典：

*1 Autodesk「ハッチングまたは塗り潰しオブジェクトまたは領域を使用するには 」

https://help.autodesk.com/view/ACD/2022/JPN/?guid=GUID-EFAAB5F6-FE3C-4052-9E04-560AE6A8B814