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3DCADの共通フォーマットとは?データ変換の基本と活用メリットをやさしく解説

1. はじめに

近年のものづくり現場では、3DCADを使った設計がごく一般的になっています。製品を立体的に表現できることで完成イメージの共有がしやすくなり、設計ミスや手戻りの削減にもつながるためです。

一方で、CADソフトはメーカーや部署によって使っている種類が異なることも多く、データのやりとりに苦労するという声も少なくありません。たとえば、あるCADで作成されたファイルが別のソフトでは開けなかったり、形状が正しく表示されなかったりすることもあります。

そんな課題を解決する手段として注目されているのが、「共通フォーマット」です。これは、異なるCADソフトでも扱える中立的なファイル形式のことで、ソフト間の壁を越えたスムーズなデータ共有を可能にします。

本記事では、初心者の方にもわかりやすく「3DCADの共通フォーマット」について解説していきます。まずは3DCADとは何か、その必要性を簡単に押さえたうえで、共通フォーマットとはどのようなものか、使い方、メリットや注意点までを順を追って紹介します。

これから3DCADを使いこなしたい方や、異なるソフト間でのデータ連携に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

1.1 3DCADとは?その必要性とは

3DCADとは、コンピューターを使って三次元の立体モデルを設計・作成するソフトウェアのことです。製造業や建築、機械設計、さらには趣味の3Dモデリングまで、さまざまな分野で広く活用されています。

従来の2D図面では把握しづらかった複雑な形状も、3DCADなら立体的に可視化できるため、設計段階でのミスや認識違いを大幅に減らすことができます。さらに、ソフト上で寸法の確認や干渉チェックも可能なため、実際に試作品を作る回数を減らすことにもつながります。

こうした効率化により、開発スピードの向上やコスト削減といった効果が期待できるのです。

また、製造業では設計だけでなく、その後の解析(CAE)や加工(CAM)、3Dプリンティングといった後工程とのデータ連携も欠かせません。3DCADは、単なる設計ツールではなく、製造プロセス全体をつなぐハブとしても重要な役割を果たしています。

1.2 共通フォーマットの役割と基本的な理解

CADデータのやりとりには、「ネイティブフォーマット」と呼ばれる各CADソフト専用のファイル形式が使われます。例えば、SolidWorksなら「.sldprt」、Inventorなら「.ipt」といった具合です。これらのファイルは、そのソフトで作成・編集するには便利ですが、他のソフトでは開けなかったり、正しく読み込めなかったりすることがあります。

このような問題を解消するのが「共通フォーマット」です。共通フォーマットは、どのソフトでも読み書きできるように設計された中立的なファイル形式で、OSで言えば「TXTファイル」のようなイメージです。ソフトの種類に関係なく、形状や寸法などの基本情報をやりとりできるため、異なるCAD間でのデータ共有がスムーズになります。

代表的な共通フォーマットには、STEP形式やIGES形式、Parasolid形式、STL形式などがあります。それぞれに得意分野や保存できる情報の範囲が異なるため、使い分けが重要です。

初心者の方がまず理解しておきたいのは、

  • なぜネイティブファイルがそのまま使えないことがあるのか
  • 共通フォーマットを使うとどんなメリットがあるのか

という2点です。共通フォーマットをうまく活用すれば、異なるソフトを使うプロジェクトでもデータ変換のトラブルを減らせるだけでなく、作業効率やデータの信頼性も高めることができます。

2. 共通フォーマットの基本概念

共通フォーマットとは、CADソフトごとの専用ファイル(ネイティブデータ)とは異なり、多くのCADソフトで読み書きができるように設計された中立的なファイル形式を指します。これにより、異なるCAD環境であっても、ファイルをスムーズにやり取りすることが可能になります。

実際には、CADデータの互換性を確保するために開発された国際標準規格や、企業間で取り決められた共有フォーマットが使われています。代表的なものとしては、STEPやIGES、Parasolid、STLなどがあります。それぞれに特徴があり、対応可能な情報や用途にも違いがあります。

ここでは、共通フォーマットの基本的な意味や背景、ネイティブフォーマットとの違い、そしてなぜ必要とされているのかを順に見ていきましょう。

2.1. 何を意味するのか?

3DCADにおける共通フォーマットとは、「CADデータを標準化されたルールで保存し、異なるソフトウェア間でも情報が正しく伝わるようにする仕組み」を指します。たとえば、専用ソフトでしか開けない文書ファイルと、どのワープロソフトでも開けるTXTファイルとの違いのようなものです。

CADソフトごとに保存形式が異なるネイティブフォーマットだけを使っていると、他のソフトで開けなかったり、開けても形状が崩れたりすることがあります。共通フォーマットを使えば、そうした問題を大きく減らすことができます。

たとえば、画像ファイルにおいてもPhotoshop専用形式(PSD)とは別に、JPEGやPNGなどの汎用フォーマットがありますよね。これと同じように、CADにも誰でも扱いやすい共有用のフォーマットが存在します。これによって、異なるCADを使っている複数の企業や部門でも、共通の設計データを確認・活用しやすくなります。

ただし、どの共通フォーマットでも、保存できる情報の種類には限りがあります。たとえば、STL形式は形状を三角形の集合体として記録する方式のため、材質や設計履歴といった詳細な情報の保存には向いていません。このように、用途に応じて最適なフォーマットを選ぶことが大切です。

2.2. ネイティブフォーマットとの違い

ネイティブフォーマットとは、各CADソフトウェアが独自に採用している専用の保存形式のことです。たとえば、SolidWorksでは「.sldprt」や「.sldasm」、Autodesk Inventorでは「.ipt」や「.iam」といった拡張子が使われています。

これらの形式は、そのソフトウェアでの作業履歴(フィーチャー履歴)や設計ツリーなど、詳細な情報を正確に保持できるのが大きな特徴です。そのため、元のソフトでの編集や再設計には非常に便利ですが、他のソフトでは開けなかったり、正しく読み込めなかったりすることがよくあります。

一方、共通フォーマットは、異なるCADソフトでも読めるように、データの内容を標準化して記録したものです。形状や寸法、面構成などの情報を共有するのには向いていますが、多くの場合、作成手順や履歴情報までは完全には再現されません。

つまり、共通フォーマットは「データを他者と共有するための形式」であり、ネイティブフォーマットは「元のソフトで設計作業を進めるための形式」と言えます。状況に応じてこれらを使い分けることが、CADデータの正しい活用には欠かせません。

2.3. なぜ共通フォーマットが必要なのか

近年の製造業では、ひとつの製品開発に複数の企業や部署が関わるのが当たり前になっています。サプライチェーンが複雑化する中で、それぞれが異なるCADソフトを使っていることも多く、データのやり取りがスムーズにいかないことがしばしばあります。

たとえば、「ファイルが開かない」「形状が崩れている」「データが一部しか読み込めない」といった問題は、ネイティブフォーマット同士の互換性のなさが原因です。こうした問題を防ぐには、どのソフトでも扱える共通フォーマットの導入が非常に有効です。

特に、STEPやIGESといった国際規格に基づいた共通フォーマットは、長い実績と高い信頼性があり、多くの企業が標準フォーマットとして採用しています。バージョンアップやソフトウェアの乗り換えにも強く、将来的なシステム移行にも対応しやすいのが特徴です。

また、社内だけでなく、海外の取引先や技術提携先など、異なるCAD環境を持つ相手との連携にも役立ちます。共通フォーマットを活用すれば、設計データの精度を保ったまま共有でき、開発スピードの向上やコスト削減にもつながります。

共通フォーマットの導入は、設計品質の向上や属人化の防止にも貢献するため、製造業におけるDX推進の土台としても非常に重要な要素となりつつあります。

3. 主要な3DCAD共通フォーマット

3DCADで使われる共通フォーマットにはさまざまな種類があります。それぞれに特長や用途、保存できる情報の範囲が異なっており、どのフォーマットを選ぶかによって、データの扱いやすさや再利用性に大きく影響します。

中でも代表的なのが、STEP(ステップ)とIGES(アイジェス)の2つです。これらは長年にわたって3DCADの現場で使われてきた実績があり、多くのCADソフトウェアが対応しています。また、ParasolidやSTLといった形式も、特定の用途において非常に有効です。

共通フォーマットは、標準化団体やCADカーネル開発企業などが中心となって策定されており、ソフトウェアを問わずデータを正しくやりとりできるよう工夫されています。この章では、それぞれのフォーマットの特徴や得意分野、選ぶ際の注意点について詳しく解説していきます。

3.1. STEP: 広く使われる国際標準

STEP(拡張子:.step または .stp)は、ISO(国際標準化機構)によって定められた国際規格で、最も広く使われている共通フォーマットのひとつです。正式には「ISO 10303」と呼ばれ、製品モデルの情報をCADソフト間で正確に共有することを目的としています。

STEPファイルは、3D形状データだけでなく、寸法情報、材質、アセンブリ構造など、設計に必要な多くの情報を含めることができるのが大きな特徴です。そのため、単なる形状のやり取りだけでなく、製造工程や品質管理など、設計以外の場面でも幅広く活用されています。

ただし、CADソフト固有のフィーチャー履歴(押し出し、回転などの設計手順)や履歴ツリーといった情報は保持されないため、後から編集しようとする場合には制限が出ることがあります。これは共通フォーマット全般に共通する性質でもあります。

STEPの大きなメリットは、主要な3DCADソフトのほとんどが読み書きに対応している点です。エクスポートやインポートが比較的簡単で、変換時の再現性も高く、解析ソフトやCAMとのデータ連携にも適しています。そのため、設計から解析、製造、管理までの一連の流れをスムーズに進めることができ、製造業DXの基盤にもなっています。

プロジェクト全体の見通しを立てやすくするためにも、まずはSTEPフォーマットでのデータ連携を検討するのが有効です。特に異なるソフトウェアを使うチームが協業するような場合には、トラブル回避の面でも重宝されます。

3.2. IGES: 曲面データ交換に特化

IGES(拡張子:.igs または .iges)は、STEPが登場する以前から使われている歴史ある共通フォーマットです。アメリカのANSI(米国規格協会)をもとに標準化され、長年にわたり3Dモデルや図面データの交換に使われてきました。

IGESの特徴は、曲面や曲線データのやり取りに強いという点です。古い形式ではありますが、現在でも一部の業界やソフトウェアでは活用されており、特に曲面中心の設計や、過去資産との互換性が必要な場面では有効です。

ただし、IGESには注意点もあります。ソリッドモデルの表現が苦手で、データの精度や整合性が求められるシーンでは不具合が出やすい傾向があります。特に面のずれや抜けといった変換トラブルが起こりやすく、後処理が必要になることも少なくありません。

それでも、多くの3DCADソフトがIGES形式の入出力に対応しているため、相手先が古いソフトを使っていたり、既存の図面資産を活用したい場合には、STEPとあわせて柔軟に使い分けるのが現実的です。

現在ではSTEPが主流になりつつあるものの、IGESもまだ現役で活躍しているフォーマットであり、基本的な知識として押さえておくと安心です。

3.3. その他のフォーマットと特徴

共通フォーマットには、STEPやIGESのほかにもいくつかの有力な形式があります。中でもよく使われるのが、Parasolid形式(拡張子:.x_t / .x_b)とSTL形式(拡張子:.stl)です。

Parasolidは、Siemens社が開発したCADカーネルをもとにしたフォーマットで、高精度なソリッドモデルのやり取りに適しています。主にSolid EdgeやNXなどのCADソフトが採用されており、設計情報の再現性が高いという点で評価されています。ただし、すべてのCADソフトが完全対応しているわけではないため、利用時には事前確認が必要です。

一方、STL形式は、3Dプリンティングや簡易的な3D表示によく使われるフォーマットです。モデルを多数の三角形ポリゴンで構成する仕組みのため、形状を軽量かつ簡易に表現できます。ただし、設計履歴や材質、寸法などの情報は含まれないため、製造や試作に特化した使い方が基本となります。

これらのフォーマットは、用途が明確であるぶん、目的に合った使い分けがとても重要です。たとえば、「設計データを3Dプリンタに送る」場面ではSTLが適しており、「精密な形状のやりとりをしたい」場合にはParasolidやSTEPが選ばれることが多いです。

共通フォーマットを選ぶ際は、単に「開けるかどうか」だけでなく、保存される情報の内容や精度、目的との適合性を総合的に見て判断することが大切です。

4. データ変換の基本と注意点

共通フォーマットを活用するには、必ず「データ変換」のプロセスを経る必要があります。具体的には、使用中のCADソフトでネイティブデータを共通フォーマットへエクスポートしたり、逆に共通フォーマットをインポートして利用する作業が該当します。

変換そのものは決して難しい操作ではありませんが、設定の違いによって形状のズレや情報の欠落が起こる可能性があるため、注意が必要です。特に、寸法精度や単位系、トレランス(許容誤差)などは、変換精度に直接影響します。

この章では、データ変換の一般的な流れと、変換時に注意すべきリスク、変換品質を保つための実践的なコツについて解説します。トラブルを未然に防ぐには、チェックリストやテスト変換の活用など、小さな工夫の積み重ねが重要です。

4.1. データ変換のプロセス

3DCADで共通フォーマットを使う場合、まず行うのが「エクスポート」の作業です。これは、ネイティブファイル(例:.sldprtや.iptなど)を、STEPやIGESといった共通フォーマットに変換して保存する手順です。

このとき注意したいのが、変換設定の確認です。トレランス(精度の許容範囲)、単位(mmやinchなど)、面の精度、ファイルの構造(アセンブリか単体か)など、いくつかの項目を適切に設定しておかないと、変換後のファイルで形状が崩れたり、寸法が合わなかったりする原因になります。

変換後のファイルは、別のCADソフトで「インポート」して使用します。こちらも同様に、読み込み設定の確認が欠かせません。特に、曲面や穴の多いモデルでは、インポート時の面構成やソリッドの認識にズレが出やすく、意図した形状が再現されないことがあります。

そのため、変換したデータを実際に表示・確認し、重要な寸法や形状が正確に移行できているかをチェックすることが重要です。必要に応じて、再度設定を調整して変換をやり直すこともあります。

4.2. 変換時に考慮すべきリスク

データ変換にはいくつかのリスクが伴います。もっとも多いのが、形状のゆがみや面の欠落といった形状トラブルです。これは、CADソフトごとにデータの持ち方や解釈が微妙に異なるために起こる現象で、特に複雑な曲面やフィレット、シェル形状などが含まれているモデルでは起こりやすくなります。

また、共通フォーマットは中立的な形式である一方で、設計履歴やフィーチャーツリーなどの細かな情報が引き継がれないことも多く、変換後のデータでは編集が難しくなるケースがあります。たとえば、穴の位置や押し出し方向を再調整したいと思っても、元の操作履歴が消えてしまっているため、個別に編集しなければならない場面が出てくるのです。

さらに、STLのようなポリゴン形式に変換した場合は、元の曲面が多数の三角形に置き換わることで形状の精度が落ちることがあります。こうしたポリゴン化は3Dプリンティングには有効ですが、寸法精度が重視される設計用途には向いていないことを理解しておくべきです。

これらのリスクを把握しておくことで、変換後の作業に戸惑うことなく、あらかじめ最適なフォーマットや変換方法を選ぶ判断がしやすくなります。

4.3. 変換品質を保つコツ

変換トラブルを避け、品質を保つためには、いくつかの基本的なコツを押さえておくことが大切です。

まず第一に、変換前にモデルの状態をチェックすることです。多くのCADソフトには「検証ツール」や「ヒーリング機能」があり、ソリッドの一貫性や面の不連続などを事前に確認できます。問題があれば、変換前に修正しておくことで、後の工程でのトラブルを未然に防ぐことができます。

次に重要なのが、エクスポート設定の最適化です。STEPフォーマットなどでは、AP203やAP214、AP242といったバージョンが存在し、それぞれ保持できる情報が異なります。相手のCADソフトがどのバージョンに対応しているかを事前に確認し、単位系(mm/inch)、トレランス(精度)、構成(アセンブリの展開有無)などの設定を適切に調整しましょう。

最後に、インポート後の確認を省略しないことが重要です。CADソフト上で変換データを開き、モデルの外観、厚み、穴の位置、寸法の整合性などを入念にチェックします。表示精度を上げて拡大表示したり、断面表示を使った確認も効果的です。

また、余裕があれば、変換のテストとしてシンプルなモデルで試験的に変換を行うのも有効です。これにより、設定の影響を把握しやすく、本番データでのトラブルを回避しやすくなります。

これらの対策を地道に行うことで、共通フォーマットをより安心・安全に活用でき、設計から製造に至るまでのデータ品質をしっかりと維持することが可能になります。

5. 共通フォーマットの活用メリット

共通フォーマットを上手に活用すると、CADデータのやりとりがスムーズになるだけでなく、設計業務全体にさまざまなメリットをもたらします。単に「ファイルが開ける」という利便性にとどまらず、社内外でのコラボレーション促進や設計資産の有効活用、さらには製造プロセス全体の効率化にもつながっていきます。

本章では、共通フォーマットを活用することで得られる代表的な3つの効果について紹介します。それぞれのメリットを理解することで、共通フォーマットを導入する意義がより明確になるはずです。

5.1. スムーズなデータ共有と協業促進

共通フォーマットを使えば、社内外のチームが異なるCADソフトを使用していても、データのやりとりをスムーズに行えるようになります。たとえば、大手メーカーの設計部門と、部品製造を担当する中小企業の工場が協力するケースでも、STEPなどの共通フォーマットを使えば、ソフトの違いに左右されずにデータ共有が可能です。

プロジェクトに複数の企業や部署が関わる場合、共通フォーマットをあらかじめ指定しておけば、ファイルが開けない、形状が崩れるといったトラブルを未然に防ぐことができます。これにより、やりとりのスピードが向上し、コミュニケーションの精度も高まります。

さらに、共通フォーマットを活用したデータ共有は、修正依頼や確認作業の迅速化にもつながります。CADデータをすぐに開いて内容を確認できるため、設計変更への対応も柔軟に行えます。結果として、製品開発のリードタイムを短縮できるだけでなく、納期遵守や品質管理にも好影響を与えることができます。

このように、共通フォーマットを用いた設計データの共有は、単なる技術的な仕組みにとどまらず、企業間や部署間の協業を円滑に進めるうえで重要な役割を果たしています。

5.2. 過去のデータ資産の再利用

製造業や設計現場では、これまでに作成された膨大なCADデータが貴重な資産として蓄積されています。しかし、それらのデータが古いCADソフトのネイティブ形式で保存されていると、新しいソフトでは開けなかったり、正しく読み込めなかったりすることがあります。

そこで、過去のデータを共通フォーマットに変換・保存しておくことで、新しいソフトウェアでもスムーズに活用できるようになります。たとえば、以前に開発した製品のモデルをSTEP形式で保管しておけば、新しいCAD環境でも再設計や応用設計に役立てることができます。

これは、再設計にかかる工数の削減やコストダウンにもつながり、開発スピードの向上や業務の効率化を後押しする大きな要因となります。また、類似製品の設計や、部品の使いまわしといった場面でも、過去のモデルを再活用できることで手戻りを減らせます。

さらに、共通フォーマットで保存しておくことで、ベテラン設計者のノウハウが詰まったモデルデータを、若手や新メンバーが学習・活用しやすくなるというメリットもあります。これは、技術伝承の観点から見ても非常に重要です。

このように、共通フォーマットを活用したデータ保存は、企業にとっての「資産の再活用」を実現し、設計力の強化にも大きく貢献します。

5.3. 設計から製造までのプロセス効率化

共通フォーマットの最大の利点のひとつは、設計から製造までの各工程をシームレスにつなげられることです。たとえば、3DCADで作成したモデルをCAEソフトで解析し、そのままCAMソフトや3Dプリンタ用のデータに展開する場合にも、フォーマット変換によるエラーや情報の欠落を抑えられます。

特に、STEPフォーマットなどは解析・加工・検証の各プロセスとの親和性が高く、変換ミスや手戻りのリスクを減らすことが可能です。データのやりとりがスムーズになることで、社内の設計フロー全体が効率化され、生産性の向上にもつながります。

また、STLなどのフォーマットを使えば、試作段階で3Dプリンターにデータを直接出力することも簡単になります。これにより、アイデアをすばやく形にして検証する「試作・評価」のサイクルを高速で回すことが可能になります。リアルタイムでの改善やフィードバックも得やすく、最終製品の完成度を高めることができます。

さらに、共通フォーマットはクラウド上のPLM(製品ライフサイクル管理)やPDM(製品データ管理)とも相性がよく、チーム全体での情報共有やバージョン管理にも効果を発揮します。設計情報を一元管理し、関係者全員が同じデータをベースに作業できるため、作業の属人化を防ぎ、品質の安定にも寄与します。

このように、共通フォーマットは「設計データの変換手段」以上の価値を持っており、ものづくり全体の効率と品質を底上げするための鍵となる存在です。

6. まとめ

3DCADの分野において、共通フォーマットは単なるファイル形式にとどまらず、設計業務を支える基盤技術のひとつとなっています。この記事では、共通フォーマットの基本的な役割から具体的な種類、データ変換の注意点をご紹介しました。

設計・製造の現場では、多くの企業やチームが異なるCAD環境で作業しているのが現実です。そうした中で、共通フォーマットの導入と活用は、スムーズなデータ連携と生産性の向上に直結します。
ここであらためて、その重要性と、活用において押さえておくべきポイントを振り返っておきましょう。

6.1. 共通フォーマットの重要性再確認

共通フォーマットの最大の価値は、異なるCADソフト間でも設計データを正しく共有・活用できる点にあります。これにより、部門や企業の垣根を越えたコラボレーションが可能になり、設計から製造までのプロセスが効率的に進められるようになります。

また、過去の設計データを共通フォーマットで保存しておけば、将来的にCAD環境が変わっても引き続き有効活用できます。これは、技術継承や再利用の観点から見ても非常に大きなメリットです。

さらに、クラウド、AI、AR/VRなどの先進技術と連携しやすいのも共通フォーマットの魅力です。今後のものづくりにおいて、共通フォーマットはより広範な情報基盤としての役割を果たしていくでしょう。

6.2. 適切な活用方法とアドバイス

共通フォーマットを導入する際には、「どのフォーマットを選ぶか」「どのように変換するか」が重要なポイントとなります。用途や相手先の環境に合わせて、STEP・IGES・STLなどの特性を正しく理解し、最適な形式を選ぶことが求められます。

また、変換前後でのデータ確認や設定調整を怠らないことも、トラブル回避の鍵です。必要であれば簡単なテスト変換を行い、問題点を事前に洗い出しておくことで、スムーズな運用が可能になります。

企業全体としては、設計ルールやフォーマット選定基準をマニュアル化し、社内で統一することが効果的です。そうすることで属人化を防ぎ、誰が操作しても同じ品質でデータ共有ができるようになります。

最後に、共通フォーマットはあくまで「目的を達成するための手段」であるという視点も大切です。目的がデータ共有なのか、3Dプリントなのか、過去データの再利用なのかによって最適な活用法は異なります。

ぜひ本記事を参考に、ご自身の業務や環境に合った共通フォーマットの使い方を見つけ、より効率的で柔軟な設計プロセスの構築に役立てていただければ幸いです。

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<参考文献>

ISO 10303-21:2016 – Industrial automation systems and integration

https://www.iso.org/standard/63141.html

AutoCAD 製品の図面ファイル形式の互換性

https://www.autodesk.com/jp/support/technical/article/caas/sfdcarticles/sfdcarticles/JPN/AutoCAD-drawing-file-format.html

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