AutoCADでハッチングが消える原因は?ソリッドとの関係や対処法を解説
AutoCADにおけるハッチング機能は、同製品を扱う上では基本的な操作であるため、頻繁に用いられています。ただ、普段通り使用しているのにもかかわらず、実行したハッチングが正しく機能しないというケースもあるものです。
この記事では、そんなAutoCADを使って設定したハッチングが消えてしまうケースについて、その原因や対処法をソリッドの概念との違いとともに解説します。
目次:
- ハッチングとは
- ハッチングとソリッドの違い
- ハッチングの実施条件
- AutoCADでハッチングを行う方法
- コピー&ペーストでハッチングが消える原因と対処法
- 図面表示や印刷プレビューでハッチングが消える原因と対処法
ハッチングとは
ハッチングは、複数本の平行線を図形の中に引くという作業のことを指します。図形を作成すると、通常は内部が空白で描画されますが、ハッチングによって変化をつけることが可能です。
ハッチングを実施することで、図形や図面の表現力を高めることができます。同様の形状をしている図形と差別化し、断面や裏面であることを表現したり、床の高さの違いを表現したりする上で有効です。
正しくハッチングを行えるようになれば、視認性に優れ情報共有に有効な図面作成に向けた大幅なスキルアップが見込めるでしょう。
ハッチングとソリッドの違い
ハッチングと似たような概念に、ソリッドと呼ばれるものがあります。ソリッドもハッチング同様、図形の内部に処理を施す手続きを指す言葉ですが、ソリッドの最大の特徴は塗りつぶしを実行する点にあります。
ハッチングは図形の内部に対して特定のパターンを施すだけであり、全面を塗りつぶすわけではありません。しかしソリッドの場合は全面を特定の色で塗りつぶし、隙間を全て埋めてしまうのが特徴です。
AutoCADでハッチングを実施する際、そのパターンの一環としてSOLID(ソリッド)が存在します。しかし厳密に言うとこれはあくまでハッチングのパターンで塗りつぶすような表現を行なっているだけです。
ソリッドを実施した時とは異なる処理がハッチングに際しては行われていることから、その違いに注意しておきましょう。
ハッチングの実施条件
図形に対してハッチング処理を行うためには、そのオブジェクトが完全に閉じたものであることが絶対条件となります。
ハッチングはどこででも行うことができるわけではなく、対象箇所に隙間が存在していないことが重要です。
たまにハッチングを行えそうなオブジェクトであるにもかかわらず、ハッチングが正しく行えないというケースがあります。これは肉眼では見えないレベルで隙間が生じていることが原因であることがほとんどです。
ハッチングが正しく実施できない場合は、まずこの問題を疑ってみると良いでしょう。
AutoCADでハッチングを行う方法
AutoCADでハッチングを実施する場合は、[ホーム]タブから[作成パネル]を選択し、[ハッチング]を選ぶことができます。コマンド入力で実施したい時は、[HATCH]と入力することでツールを呼び出すことができます。
ハッチングツールを起動すると、ハッチング可能な箇所にマウスを持っていくことで、プレビューを表示可能です。ハッチングしたい箇所でプレビューを表示させ、問題ない場合はEnterを入力すると、ハッチングが実行できます。
AutoCADでは、ハッチングのパターンを変更することも可能です。パターンを変更したいハッチング箇所をクリックすると、ハッチングエディタタブが開きます。ここで[パターン]パネルから自由にパターンを選ぶことができるので、理想的なパターンを見つけましょう。
変更したいパターンをクリックして、[ハッチング編集を閉じる]をクリックしたら、パターンの変更は完了です。
コピー&ペーストでハッチングが消える原因と対処法
ハッチングをせっかく実行したのにもかかわらず、ハッチングの内容が消えるような事態に直面することもまれにあります。
ハッチングが消えてしまうシチュエーションにはいくつかのパターンがありますが、代表的なものとして、コピー&ペーストを実行した後が挙げられます。
コピー&ペーストの後ハッチングが消えてしまう際の条件として確認されているのは、ハッチングに色付けが施されていたり、塗りつぶしパターンが採用されていたり、色付きの塗りつぶしが選択されていたりする時です*1。
このような現象が起きてしまう原因として考えられるのが、ハッチングパターンがソリッドとして認識されていないというものです。ハッチングパターンは元々非ソリッドとして定義づけされているため、コピー&ペーストによって指定の領域内での表示が崩れてしまうことがあります。
このような事態を解消する上では、まずハッチングオブジェクトを選択して[PROPERTIES]と入力します。そしてプロパティパレットからハッチングパターンのSOLIDを入力するか、[尺度]を正しく表示されるまで値を小さくすることで、解決が可能です。
図面表示や印刷プレビューでハッチングが消える原因と対処法
図面表示や印刷部レビューの際、ハッチングが消える現象も確認されています*2。これには複数の原因のいずれか、あるいは複数が作用している可能性が考えられます。主な確認事項は
- システム変数HPMAXLINESの値の誤り
- システム変数FILLMODEの値の誤り
- 過剰な図面内のハッチングパターン
- 図面ファイルの破損
といったものです。
システム変数HPMAXLINESは、ハッチングの際の線分の最大数を指すものです。FILLMODEは、ハッチングの際の塗りつぶしの設定を変更するための変数です。
前者のシステム変数は、値を変更して10万以上に設定することでディテールを強化し、表示上の不具合を解消することができます。後者のシステム変数は、値が0になっていると正しく表示されないため、1に変更することで表示設定を変えましょう。
ハッチングパターンの密度が濃すぎると、正しくパターンが表示されない場合があります。プロパティからハッチングパターンの尺度を変更し、正しく表示されるよう調整しましょう。
ハッチングが消えてしまうのは、単純に図面ファイルが破損している可能性もあります。適切な手順に従ってファイルを修復するか、ハッチングオブジェクトを作り直すことで対処が可能です。
まとめ
この記事では、ハッチングを実施した際にAutoCAD上で消える現象の対処法や、ハッチングそのものの概念について解説しました。
ハッチング処理を正しく行う方法はもちろん、表示がうまくいかない場合の対処方法を知っておくことで、図面の品質を高めることができます。
トラブルにもいくつかのパターンがあるため、それぞれの原因をよく理解しておくと良いでしょう。
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出典:
*1 Autodesk「AutoCADでコピーと貼り付けを行うと、ハッチングオブジェクトが消える 」
*2 Autodesk「AutoCAD でハッチング パターンが正しく表示されない、プレビューされない、または印刷されない」