Revitの「集計表」はどう使う?実務における活用方法や留意事項を解説
Revitの集計表は、既に実務においてさまざまな方法で活用されており、生産性向上に寄与しています。特に、集計表による自動数量積算は、コストの算出や施工計画などで大きな役割を果たしているといえるでしょう。
今回は、Revitの集計表の実務における活用方法を紹介するとともに、作成方法や留意事項を解説します。Revitを導入したものの、なかなか自動化に結び付かずに悩んでいる方は、参考になさってみてください。
Revitの「集計表」とは
はじめに、Revitにおける集計表の概要について解説します。
仕様・数量・面積などを一覧で示した表
Revitにおける集計表とは、BIMに入力したデータを表形式で表したものです*1。BIMには、さまざまな建物情報が入力されますが、すべての情報を3次元モデル上で把握するのは困難を極めます。そこで、データを集計表機能で一覧表示することで、情報把握の一助とすることが可能です。
集計表では、カテゴリー(部屋やドアなどの部品)に関する寸法や仕様などの情報が行ごとに表示され、テキストファイルなどに書き出すことができます。この機能を利用して、さまざまな情報の自動アウトプットが試みられています。
自動数量積算に役立つ
Revitの集計表は、自動数量積算で活用されています。例えば、BIM上の柱や梁といった部材に配筋情報が入力されていれば、Revit上のルールに則って鉄筋数量を積算し、連動して集計表に数量がまとめて表示されます*2。集計表をエクセルに書き出すことができるので、その後の数値の処理も手軽に行うことが可能です。
いつでもすぐに数量積算ができるため、設計変更による数量やコストの増減、下請業者の請求書の確認など、さまざまなシーンで役立つでしょう。また、鉄骨部材などの重量を集計表でまとめることができるので、クレーンの施工計画などでも活用できます*3。
従来は、積算者が図面に書いていない数量を読み取りながら積算をしていました。Revitの集計表による積算は、手軽というメリットがある一方で、モデル化していないものは積算されない、数量の計算方法に融通が利かないなど、機械的な処理による難しさがあります。上記の鉄筋や鉄骨の例でいえば、鉄筋のロス率や、鉄骨本体以外の重量などは考慮されないので、計算式を入力して補正をかけるなどして対応する必要があります。
仕上表などの作成に活用できる
Revitの集計表を使うと、各部屋の仕様や建具を一覧表示することが可能です。この機能を活用し、仕上表や建具表を簡単に作成するプロセスが取り入れられています。
大手ゼネコンに従事していた筆者の知る範囲では、構造図や設備図の断面・部材・部品リストなどを自動作成する試みも行われています。これからは、設計図書に載せるさまざまな表が、BIMを活用して自動作成されるでしょう。
そのためには、精度の高いBIMの入力が求められます。しかし、すべてを高い精度で入力するのは難しいため、必要な情報を厳選しながらBIMの作成に取り組む姿勢が大切です。BIMの作成・活用はひとつの部署に留まらないため、プロジェクト関係者全体で使い方や入力方法を共有する必要があります。
Revitの集計表を作成する方法
ここでは、Revitの集計表を作成する方法を紹介します*4。BIMに入力した部材を内部機能を使って自動的に集計するのが基本的な方法です。反対に、集計表のパラメータを編集してBIMを修正することもできます。集計表でパラメータを編集するときの補助ツールとして「集計キー」が用意されているので、参考になさってみてください。
「建築コンポーネントを集計」で集計表を作成する
新しい集計表を作成するときに、「建築コンポーネントを集計」を選択することで、BIMから自動的に部材などを集計することができます*4_pp.5-11。
図1 「建築コンポーネントを集計」で集計表を作成する手順
引用)Autodesk「初級5-2:集計表の基本を理解する(後期)」p.6
下記URLの「資料のダウンロード」より
https://bim-design.com/library/bim-open-college/revit-entry/05-2-1/
- [集計表/数量]をクリックします。
- 「部屋」をクリックします。このとき、「建築コンポーネントを集計」を選択します。
- 集計表に表示したい項目(レベル、名前、床の仕上げ、幅木、壁の仕上げなど)をフィールドに追加します。
- 並べ替えの基準に採用したい項目を選択します。
- 「OK」をクリックすると、集計表が作成されます。
集計表入力の補助ツール「集計キー」
集計キーとは、セット名(キー)を指定し、ひとつもしくは複数のパラメータをセットとして設定する機能です。例えば、以下のような設定ができます。
・「床仕上げ」というキーに対し、「タイルカーペットt15mm」「タイル貼りt25mm」「長尺塩ビシート貼りt5mm」などの選択肢を設定する*4_p.14
・「事務室」というキーに対し、「床下地:OAフロア」「床仕上げ:タイルカーペット」「天井仕上げ:システム天井」「壁仕上げ:クロス」などの仕上げセットを設定する*4_p.15
集計表に一つひとつ手入力するのは非常に手間がかかります。集計キーを活用し、選択式にしたり、部屋の用途ごとの仕上げセットを設定したりすることで、スピーディーかつ正確な入力が可能です。
Revitの集計表を活用する場合の留意事項
Revitの集計表は、非常に便利なツールである一方で、機械的な処理による扱いにくさを感じることも多いというのが実情です。ここでは、実際にRevitの集計表を使ったことのある筆者が意識していた留意事項を紹介します。
Revitのルールやクセを把握する
Revitの面積計算や数量積算は、Revit上のルールに則って行われています。Revitは、日本製のソフトウェアではないため、Revit上のルールが日本の建築基準法や慣習的なルールと一致していないことも少なくありません。
また、3次元モデルを入力するときは、点と点を結ぶようにボリュームのある部材を配置するため、重なっている部分が生じています。重なっている部分の数量積算については、ソフトウェアによって扱いが異なるのが実情です。このように、ソフトウェア特有のクセのようなものがRevitにも随所で表れているため、クセを把握してから情報を取り扱うようにしましょう。
Revitのルールやクセを把握するには、マニュアルを十分に読み込み、実際にモデルを動かしながら数値を確認することが大切です。
小さいモデルで事前に動作確認を行う
実プロジェクトに取り組む前に、上記のルールやクセをある程度把握したうえで、事前に小さいモデルで動作確認を行いましょう。時間と労力をかけてBIMを作りこんで立派なモデルができても、目的の使い方ができなければ本末転倒です。集計表によるアウトプットの可否や数値の誤差などを把握し、目的を達成できることを小さいモデルで確認しましょう。
実プロジェクトでモデルが大きくなると、後戻りできなくなってしまいます。プロジェクトの途中でBIMを運用できなくなると、他部署の後工程に支障をきたす場合もあるので、事前の動作確認はしっかりと行いましょう。
正確に入力されているデータを活用する
Revitの集計表は、BIMに入力した情報がそのまま反映されます。精度の低い入力をもとに作成した集計表を使うのはリスクが高いため、正確に入力できる項目に絞って活用することが大切です。時期によってもBIMの精度は異なります。プロジェクトの初期・中期・後期段階のそれぞれで、集計表を活用する際に見込んでおくべき誤差を設定しておくとよいかもしれません。
また、他部署に集計表を受け渡すときには、Revitによる数量積算のルールやクセ、誤差の程度などを説明することで、思わぬ齟齬を防ぐことができるでしょう。
おわりに
Revitの集計表は、自動数量積算や仕上・建具表の作成など、さまざまな方法で活用されている便利な機能です。高い精度でBIMの入力を進めていれば、簡単に有効な集計表を作成できます。ただし、Revitの機械的な集計表の数値は、ヒトが行っていた従来の積算数量とは意味合いが少し異なるため、留意しておきましょう。適切に扱うことができれば、さまざまな分野の生産性向上に役立てることができます。
(3241字)
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注釈
*1
出所)Autodesk「ViewSchedule」
*2
出所)Autodesk「ビデオ: マテリアル集計の集計表を作成する」
https://help.autodesk.com/view/RVT/2024/JPN/?guid=GUID-46FFC071-FC40-4A2F-8985-8BB783374628
*3
出所)Autodesk「ビデオ: マテリアル集計の集計表を作成する」
*4
出所)Autodesk「初級5-2:集計表の基本を理解する(後期)」pp.4-18
下記URLの「資料のダウンロード」より
https://bim-design.com/library/bim-open-college/revit-entry/05-2-1/