Civil 3DとAutoCADにはどんな違いがある?比較ポイントを確認
BIM/CIM対応を推進する上で、最新のCADソフトの導入は大きな役割を果たしています。最新CADの導入を検討する際、まず名前が挙がるのがAutodesk社のソフトです。
Autodeskは多様なCADソフトを展開しており、業種や目的に応じた使い分けが推奨されています。今回は同社のポピュラーなパッケージである、Civil 3DとAutoCADに注目し、それぞれでどのような違いがあるのかについて、ご紹介します。
①Civil 3Dとは
②Civil 3Dの特徴
③Civil 3Dの運用事例
④AutoCADとは
⑤AutoCADの特徴
⑥AutoCADの運用事例
⑦Civil 3DとAutoCADを比較する上でのポイント
Civil 3Dとは
Civil 3Dは、Autodeskが提供している土木向けの3D CADソフトです。元々は「AutoCAD Civil 3D」という名称で販売されていたサービスですが、2019年版より「Civil 3D」へと名称が短縮化されており、AutoCADとは別個の製品という扱いです。
CADソフトの運用範囲は広く、インフラ関連の業界はもちろん、製造業におけるプロダクトデザインなど、広範な分野で活躍する技術です。そのため、CADソフトも幅広い分野に対応できるよう汎用性を強化した製品が多く登場していますが、一方で専門性に欠ける懸念も存在します。
高度な設計が要求される現場では、要件を満たすために複雑な操作が求められることもあります。こういった負担を解消する上で活躍するのが、Civil 3Dです。他の分野では活躍の機会は制限される一方、土木分野においては頼りになる製品です。
Civil 3Dの特徴
続いて、Civil 3Dの特徴についてご紹介します。土木分野に特化した機能はもちろん、次世代の土木建設においても活躍できる、高度な技術要件を満たしています。
土木設計に特化した機能を複数搭載
Civil 3Dは土木特化の製品というだけあり、専門的な機能を多数備えています。新しい交通網を緩和曲線や動的線形によって簡単に描くことができるため、設計作業をスムーズに進めることが可能です。複数分野のプロフェッショナルが顔を付き合わせて作業を行うような橋梁設計も、Civil 3Dを用いて効率的に進められます*1。
BIM/CIM運用や他のソフトとの連携にも活躍
コリドーモデリング機能を使用すれば、単に交通設計や河川を描くだけでなく、それらのプロジェクトにどれだけの資材が必要になるのか、3Dデータに含められるのも強みです。いわゆるBIM/CIM運用の利便性は、プロジェクトに必要なデータを3D CADの中に内包し、情報共有を円滑にできる点にあります。
Civil 3Dは設計作業を効率化するだけでなく、BIM/CIMによって設計後の共有やフィードバックの実施、修正作業を円滑にしてくれる点で非常に有効です。また、専用クラウドを使った共通のデータ環境を整備できるため、プロジェクトメンバーとのコラボレーションも容易に実施可能です。
Civil 3Dの運用事例
Civil 3Dがどのような環境で運用されているのか、実際の例を見ながら参考にしてみましょう。
八千代エンジニアリング
建設コンサルタントの八千代エンジニアリングでは、複雑な構造物設計の効率化にCivil 3Dが活躍しています。高速道路橋脚60基のコスト縮減対策に適用され、これまでは1週間かかっていた設計作業が、わずか3日で完了する成果をあげました*2。
復建技術コンサルタント
同じく建設コンサルタントの復建技術コンサルタントでは、地震防災に向けた地形データの3D化にCivil 3Dを活用しています。盛土区域を抽出して3D化したり、古い地形図も簡単に3D化したりと効率的な作業が実施できただけでなく、これらをCAD初心者が実行できたという点で、高く評価されています*3。
AutoCADとは
続いて、AutoCADの紹介です。AutoCADはAutodesk製品の中では歴史あるサービスの一つで、世界各国のCAD運用を支えてきました。1982年の登場以来バージョンアップを続け、現在も毎年1回のペースで改良が加えられています*4。
2D設計はもちろん、3D設計にもAutoCADは対応しており、CAD運用に求められる要件のほとんどをクリアしています。多様な分野で活躍できるオールラウンダーであるため、導入企業も多く、他社ともコラボレーションしやすいサービスとも言えるでしょう。
AutoCADの特徴
続いて、具体的なAutoCADの運用方法をご紹介します。
幅広いCAD運用に対応
AutoCADは2Dと3Dの製図機能を併用することで、写実性の高いモデリングを実施できます。従来の3Dモデリングとは異なり、そのまま設計図面として活用できるほどの正確性を持っているため、単なるイメージ画像にとどまらない実用性を備えます。
多様な運用可能性を秘めているため、それを活かすプランも豊富です。7 つの業種別ツールセットを備えた AutoCAD Plusを購入すれば、AutoCADのポテンシャルを発揮できるツールとともに、自身の用途に合わせた機能拡張を実現可能です。
モバイルアプリとの連携で現場作業などでも活躍
AutoCADはオフィスでの運用はもちろんのこと、外出先や現場での運用も想定した連携機能を備えています。AutoCADのモバイルアプリ、あるいはWebブラウザから利用できるアプリを利用すれば、PCソフトがなくともデータを閲覧、編集できる強みを発揮します。
十分なCAD環境がない建設現場や、出張先での確認などに活躍する機能です。
AutoCADの運用事例
ここでは、AutoCADの運用事例を確認しておきましょう。
ヤマト科学
科学メーカーのヤマト科学では、製造と建築が統合された、最先端の研究施設創設にAutoCADを採用しました。製造系と建築設計系という社内の二つの領域の統合に活躍し、CADを通じてデータ活用が促進されたことで、業務効率化と企業価値の向上に貢献しています*5。
フジテック
昇降機などを取り扱うメーカーのフジテックでは、AutoCADを通じたBIMやクラウド活用を実現することで、世界の都市機能向上に貢献しています。BIMモデルがクライアントとの情報共有において効果的である点に注目し、円滑な合意形成と、顧客満足度の向上に努めています。また、そのほかのAutodesk製品とも連携が容易である強みを生かし、設計から施工、維持管理に至るまでの高品質なワンストップサービスを実現しました*6。
Civil 3DとAutoCADを比較する上でのポイント
このように、Civil 3Dは異なる役割を持っていながら、両者ともに豊富な導入実績と確かな成果を挙げています。どのような点に注目し、導入の比較検討を進めていけば良いのでしょうか。
土木特化ならCivil 3D
すでに土木関係の運用が決定している場合、Civil 3Dの導入でもんだいないでしょう。土木に特化した機能が充実しており、他製品とのコラボレーションにも強いので、BIM/CIM対応の特徴をフル活用できます。
汎用性を求めるならAuto CAD
3D CAD活用の方向性について定まっていないのであれば、AutoCADがおすすめです。AutoCADは全てのCAD需要に応えるべく誕生した製品であるため、どんな用途にも対応できる柔軟性を備えています。
後からツールセットの導入により、特定業界に特化させることも可能なので、とりあえずの導入にもおすすめのサービスです。
価格帯に幅があるのはAutoCAD
AutoCADは、価格帯に幅があり、予算重視で選びたい需要にも応えます。Civil 3Dは年間40万8,000円のライセンス契約が一般的ですが、AutoCADの場合は年間で7万1,500円の契約から利用が可能です*7。
ツールセットなどを購入するのであれば値段は上がるものの、初期費用を抑えられるのは嬉しいところです。
おわりに
今回は、Civil 3DとAutoCADの違い、そしてどのような運用事例があるのかについてご紹介しました。
どちらも優れたCADソフトであることは違いありませんが、想定されている運用ケースが異なるため、適切なサービスを選ぶことが望ましいと言えます。自社のニーズを見直し、最適なサービスを選ぶと良いでしょう。
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*1 Autodesk「Civil 3D」
https://www.autodesk.co.jp/products/civil-3d/features
*2 Autodesk「AutoCAD Civil3D導入事例」p.4
http://www.bim-design.com/infra/handbook/civil3d/document/03_user_case/case.pdf
*3 上に同じp.6
*4 Autodesk「AutoCAD とは」
https://www.autodesk.co.jp/solutions/what-is-autocad
*5 Autodesk「ヤマト科学株式会社」
https://www.autodesk.co.jp/customer-stories/yamato-scientific
*6 Autodesk「フジテック株式会社」
https://www.autodesk.co.jp/customer-stories/fujitec
*7 Autodesk「Civil 3D」「AutoCAD」
https://www.autodesk.co.jp/products/civil-3d/overview#!?compare=civ3d&compare=acd
https://www.autodesk.co.jp/products/autocad/overview?panel=buy