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SolidCAMの価格は高い?主要CAMソフト3製品を徹底比較【Inventor・Fusion 360との違いも解説】

1. はじめに

本記事では、中小規模の製造業で働く技術管理者やCAM担当者の方々に向けて、主要なCAMソフトであるSolidCAM、Inventor CAM、Fusion 360 CAMの価格や機能を比較しながらご紹介します。

CAMソフトの導入は、製造現場の効率化やコスト削減を実現する一方で、初期投資が大きく、導入判断が難しい分野でもあります。価格体系は複雑で、ライセンスの形式やモジュールの組み合わせ、サポートの内容など、検討すべき要素が多く、迷いやすいのが実情です。

特に「SolidCAMは高いのか?」「他と比べて何が違うのか?」といった疑問を持つ方にとって、価格だけでなく機能や使い勝手も含めた俯瞰的な比較情報は、意思決定の大きな助けになるはずです。

本記事では、SolidCAMの価格構成を出発点に、Autodesk系のInventor CAM・Fusion 360 CAMと比較しながら、それぞれの特徴や向いている業種・用途を整理。さらに、導入判断時に役立つ視点も交えてわかりやすく解説します。

専門用語は可能な限り平易な表現に言い換え、CAM初心者の方でも理解しやすい構成を意識しました。記事を最後までお読みいただければ、SolidCAMの価格が「高い」と言われる理由と、そのコストに見合う価値があるのかどうか、自社にとって最適なCAMソフトを選ぶための判断材料が得られましたら幸いです。

2. SolidCAMとは?価格の構成と特徴を解説

引用:SolidCAM公式サイト:https://www.solidcam.com/new-user

ここではまず、SolidCAMがどのようなCAMソフトウェアなのかという基本的な位置づけを確認したうえで、続いて価格に関わる具体的な構成要素について解説していきます。

SolidCAMの導入を検討する際には、対応するCADツールとの親和性や、モジュール単位でのライセンス方式、さらに導入後の年間保守契約の有無などが、コストに大きく影響するポイントになります。価格が「高い」と感じられるかどうかは、これらの前提を理解していないと判断が難しいのが実情です。

SolidCAMは複数のモジュールで構成されており、必要な機能だけを選んで段階的に導入することが可能です。一方で、加工の高度化に応じてライセンスの追加やアップグレードが必要になるため、導入後に想定外のコストが発生する可能性もあります。本章では、そうした仕組みの全体像を丁寧にご紹介していきます。

2.1 SolidCAMの基本概要

SolidCAMは、製造業を中心に広く使われている代表的なCAM(Computer Aided Manufacturing)ソフトウェアの一つです。最大の特徴は、SOLIDWORKSなどの3D CADソフトウェアと密接に統合されていることにあります。

たとえば、SOLIDWORKS上で設計した3Dモデルに対して、そのままSolidCAMのツールパス設定や加工シミュレーションを実行できるため、設計と加工を別ソフトで行う際にありがちなデータの受け渡しや整合性チェックの手間が大幅に省けます。

また、SolidCAMには「iMachining(アイ・マシニング)」と呼ばれる独自の加工テクノロジーが搭載されており、これは工具の負荷を自動的に最適化しながら高速加工を行うことができる機能です。結果として、加工時間の短縮や工具寿命の延長が期待できるため、導入企業から高く評価されています。

さらにSolidCAMは、2.5軸加工から3軸、5軸、複合加工(ミルターン)まで、非常に幅広い加工形式に対応したモジュールが用意されており、金型製作や高精度部品加工といった複雑な製造プロセスにも適応可能です。この柔軟性の高さが、多様な製造現場でSolidCAMが選ばれている理由のひとつとなっています。

これらの機能を総合すると、SolidCAMはプロフェッショナル向けの本格的なCAMソフトウェアとしての位置づけを確立しており、特に高度な加工を必要とする企業にとっては有力な選択肢となっています。

2.2 SolidCAMの価格の構成要素

SolidCAMの価格は、主に「モジュール別構成」と「ライセンス方式」という2つの軸で構成されています。

まず、モジュール別構成についてですが、SolidCAMは加工方式ごとに分かれたライセンス構成となっており、たとえば2.5軸、3軸、5軸、複合加工(ミルターン)など、それぞれ用途に応じたモジュールを組み合わせて導入する形式です。基本的な2.5軸モジュールのみであれば価格は比較的抑えられますが、5軸加工やiMachiningのような高度な機能を追加していくと、導入費用は段階的に増加していきます。

次に、ライセンス方式については、従来通りの「買い切り型(永久ライセンス)」に加えて、近年は「サブスクリプション型(期間ライセンス)」の選択肢も提供され始めています。買い切り型を選んだ場合でも、多くのケースでは保守契約(年間サポート)を別途締結する必要があり、これによりアップデートやテクニカルサポートを継続して受けられる仕組みです。

価格の目安としては、2.5軸の基本モジュールのみで数十万円台から、5軸やiMachiningを含めた構成では数百万円に達するケースもあるとされています。導入規模や選択する機能によって金額の幅は大きくなるため、あらかじめどの機能が自社に必要かを明確にしておくことが重要です。

このように、SolidCAMは高機能な反面、価格帯としては中〜高水準に位置するCAMソフトです。しかしそのぶん、加工時間の短縮や歩留まり改善など、業務全体の効率化によって投資回収を見込めるケースも多く、単に価格だけで判断するのではなく、得られる効果とのバランスを見ることが重要です。

3. Inventor CAMとは?Autodesk製品としての位置づけと価格

引用:Inventor CAM公式サイト:https://www.autodesk.com/jp/products/inventor-cam/overview

続いては、Autodesk社が提供するCAMソフトウェア「Inventor CAM」について見ていきましょう。Inventorは世界中で広く利用されている3D CADソフトであり、これをベースに設計から加工までを一貫して行いたいというニーズの高まりから、統合型のCAM機能としてInventor CAMが提供されています。

特に、すでにAutodesk製品(Inventor、AutoCAD、Fusion 360など)を利用している企業にとっては、ソフト間の親和性やライセンスの一元管理、データ形式の共通化といった観点から、Inventor CAMの導入メリットは小さくありません。

この章では、Inventor CAMの機能的な特徴と、導入時のコストやライセンス構成について2つの観点から整理して解説していきます。

3.1 Inventorと統合されたCAM機能

Inventor CAMは、Autodesk Inventorの操作画面に統合される形で動作するCAMソフトウェアです。これにより、3D設計の段階で作成したモデルを、外部ソフトを介することなくそのまま加工用のデータに展開できるため、データ変換によるミスや手戻りといったリスクを抑えることができます。

設計と加工の操作環境が共通していることで、設計変更が発生した場合にもツールパス(切削経路)の再計算が自動で行えるため、再設定やデータの差し替えに要する作業時間を大幅に削減できる点は、設計-製造間の連携を重視する企業にとって大きな利点です。

Inventor CAMは、もともとHSMWorksというCAM技術をベースとしており、荒取り加工に最適化された「アダプティブクリアリング」機能をはじめ、効率的なツールパス生成が可能です。これにより、切削時間の短縮や工具の摩耗抑制といった効果が期待できます。

また、標準構成では主に3軸加工が中心となりますが、必要に応じて**5軸加工にも対応可能な拡張性を持っており、用途に応じた柔軟な加工プロセスが実現できます。**特にInventorユーザーにとっては、新たな操作環境を習得せずにCAMを導入できる点で、学習コストが低く済むのも魅力です。

3.2 費用のかかり方

Inventor CAMの費用は、基本的にAutodeskのサブスクリプションモデルに基づいて提供されています。Inventor自体がサブスクリプション契約型のライセンスであるため、CAM機能もそれに連動した形での提供となります。

特筆すべきは、Inventor CAMが単独製品としてではなく、特定のライセンスパッケージに含まれる形で提供されている点です。たとえば、Autodeskが提供する「Product Design & Manufacturing Collection(PDMC)」という統合パッケージには、Inventorをはじめとした複数のソフトウェア(AutoCAD、Vault、Navisworksなど)が含まれており、この中にInventor CAMも含まれています。

このコレクションを契約することで、複数の製品を横断的に利用できるライセンス環境が整い、社内での設計から加工までのデータ共有が非常にスムーズになります。

年間サブスクリプションの価格帯としては、一般的に数十万円から100万円前後となっており、導入形態やユーザー数、クラウドストレージの活用状況などによって変動する場合があります。従量課金ではなく定額制である点は、コストの予測がしやすいというメリットにつながります。

ただし、サブスクリプション型である以上、使用期間中は毎年の支払いが継続的に発生するため、長期的なコスト累計を見越した上での運用設計が必要です。とはいえ、Inventorを含めたAutodesk製品群をすでに業務で活用している企業にとっては、導入ハードルが低く、サポートも統合的に受けられるという意味で非常に合理的な選択肢といえるでしょう。

4. Fusion 360 CAMの特徴と価格

引用:Autodesk Fusion公式サイト:https://www.autodesk.com/jp/products/fusion-360/overview

次にご紹介するのは、近年特に注目されているCAMソフト「Fusion 360 CAM」です。Fusion 360は、Autodeskが提供するクラウドベースの統合型CAD/CAM/CAEプラットフォームであり、これ1つでモデリング・解析・加工といった一連の製造プロセスを完結させることができます。

もともとは個人ユーザーやスタートアップ企業、小規模製造業などを主なターゲットとして設計された製品ですが、最近では中堅企業の試作部門や開発チームなどでも活用されるケースが増えています。その理由は、低価格帯から導入できる柔軟なライセンス体系と、実用的かつ拡張性の高い機能構成にあります。

この章では、Fusion 360 CAMの持つ特長を整理するとともに、実際の価格構成や拡張機能による影響についても詳しく解説していきます。特に、コストパフォーマンスを重視する企業や、これから本格的なCAMを導入したいと考えている層にとって、有力な選択肢となり得るソフトウェアです。

4.1 個人・小規模向けに人気のクラウドCAM

Fusion 360は、クラウド技術を活用して開発された統合型CAD/CAM/CAEソフトです。ソフトウェア自体はローカルにインストールする必要がありますが、設計データや加工プロジェクトなどのファイルはすべてクラウド上に保存され、複数のメンバーとリアルタイムで共有・編集ができるという点が大きな特徴です。

たとえば、複数人で設計・加工のプロジェクトに取り組む場合も、バージョン管理やファイルの上書き競合などを心配する必要がなく、権限設定や変更履歴の確認もクラウド上で簡単に管理できます。こうしたコラボレーション環境は、特にリソースの限られた小規模チームにとって、大きな業務効率化の武器になります。

また、Fusion 360は操作画面が非常に直感的に設計されていることも特長の一つです。これにより、従来のCAMにありがちな「習得が難しい」という印象を覆し、初心者や設計者、さらにはデザイナーまでもが扱いやすい環境を実現しています。チュートリアルやユーザーコミュニティも充実しているため、自己学習によって操作スキルを高めやすい環境が整っています。

さらに、Fusion 360には、**非商用ユーザーやスタートアップを対象とした無償ライセンス(一定条件付き)**も用意されており、まずは小規模な試作から試し、必要に応じて商用ライセンスへと段階的に移行するといった活用方法も一般的です。低リスクで導入をスタートできるという点で、多くの初学者・個人開発者から支持を集めています。

4.2 価格モデルの特徴

Fusion 360は、サブスクリプション型のライセンスモデルを採用しており、比較的低価格から本格的なCAD/CAM機能を導入できる点が魅力です。年間契約でも数万円台という手ごろな価格設定であることから、個人ユーザーや中小企業でも無理なく導入できます。

また、Fusion 360の大きな特長として挙げられるのが、必要なCAM機能を後から「拡張モジュール」として追加できる柔軟な構成です。たとえば、「Machining Extension」と呼ばれる拡張機能を追加することで、同時5軸加工や高度な加工シミュレーションなどの上位機能を利用可能になります。この仕組みにより、「最初は基本機能で十分、必要になったら拡張」といった段階的な導入が可能になり、コストの最適化がしやすくなっています。

保守契約に関しても、Fusion 360はクラウド経由で常に最新バージョンへと自動アップデートされる仕組みが用意されており、ユーザーは追加の年間保守費用を支払う必要がありません。これは、保守管理コストやアップデート作業にかかる工数を削減したい企業にとって、非常に効率的な運用モデルといえます。

ただし、Fusion 360はクラウドを前提としたサービス設計であるため、安定したインターネット環境が整っていない現場では運用が難しくなる可能性もあります。そのため、導入を検討する際には、ネットワークインフラや社内セキュリティポリシーとの整合性を事前に確認しておくことが望ましいでしょう。

5. SolidCAM vs Inventor CAM vs Fusion 360 CAM【徹底比較】

ここまで、SolidCAM、Inventor CAM、Fusion 360 CAMのそれぞれの特徴や価格の仕組みについて解説してきました。では実際に、それらをどのように比較すればよいのでしょうか。

CAMソフトの選定においては、単に価格だけで判断するのではなく、自社の業務にどれだけ適合するかを多角的に見ることが重要です。具体的には、「どの加工レベルに対応できるか」「自社のCAD環境と連携しやすいか」「学習負荷はどの程度か」「サポート体制は十分か」といった複数の観点から、客観的に各製品の特性を比較する視点が必要になります。

本節では、それぞれのソフトウェアについて、主要な比較ポイントを表形式で整理したうえで、導入検討時に確認すべき具体的な判断材料を提示します。技術管理者やCAM導入を担当する方にとって、現場に合った製品を選ぶための実践的な視点を提供することが本節の目的です。

後半では、「自社にはどのソフトが最も適しているのか?」という観点から、判断のヒントになる3つのポイントもあわせてご紹介します。まずは、以下の比較表をご覧ください。

5.1 比較表(価格帯 / 加工対応 / 対象ユーザー / 学習負荷 / サポート体制)

製品名価格帯加工対応主な対象ユーザー学習負荷サポート体制
SolidCAM中〜高価格帯2.5軸〜5軸、複合加工(ミルターン)対応金型加工・精密加工を行う中〜大規模製造業やや高め(高機能のため習熟が必要)代理店による対面サポートや導入支援が手厚い
Inventor CAM中程度(サブスク)標準で3軸、オプションで5軸対応可能Inventorユーザー、Autodesk製品を使う企業中程度(既存CADユーザーに親和性あり)Autodesk公式+代理店の技術サポート
Fusion 360 CAM低〜中価格帯2.5軸〜3軸(拡張で5軸対応可能)個人・スタートアップ・小規模製造業・試作や教育機関など低〜中(直感的UIとチュートリアルが豊富)オンラインフォーラム中心、クラウド経由で常に最新にアップデート

このように、同じCAMソフトウェアでも、それぞれが得意とする加工範囲や価格帯、サポート方法などが大きく異なります。そのため、製品を比較検討する際には、単純に「価格が安いかどうか」だけでなく、自社の製造プロセスや導入体制にどの程度マッチするかを多面的に確認することが不可欠です。

たとえば、精密な多軸加工や複合加工が中心の現場であれば、SolidCAMの機能性とサポート体制が頼りになるでしょう。一方で、CADがInventorに統一されている企業であれば、Inventor CAMによる統合運用のしやすさが大きなメリットになります。また、予算を抑えつつ段階的に導入を進めたい企業や試作・教育用途であれば、Fusion 360の柔軟性と低価格帯のアプローチが有効に働くはずです。

比較表は、導入検討時の「第一歩」として、チーム内での合意形成や他部門との説明にも活用しやすい情報となるでしょう。次節では、これらの比較を踏まえて「では実際にどこを見れば、自社に合うCAMが選べるのか?」という視点を掘り下げていきます。

6. 自社に合うCAMはどれ?判断ポイント3選

前章の比較表をもとに、「では自社にはどのCAMソフトが最適なのか?」と疑問を持たれた方も多いかと思います。CAMの導入には一定の投資が伴うため、「とりあえず価格で決める」だけでは後から後悔する可能性があるのも事実です。

ここでは、CAMソフトを選定するうえで特に注目すべき判断軸を3つに整理し、それぞれの観点から最適な選択を導くヒントをご紹介します。企業によって優先すべき視点は異なりますが、いずれもCAM導入を「現場に根付かせる」ために欠かせないポイントです。

単に「機能が多い」「価格が安い」といった表面的な評価ではなく、自社の製造環境や中長期のビジョンを踏まえて選ぶことが、成果の最大化に直結します。

6.1 加工の難易度と対応軸数

まず注目すべきは、自社の製品や部品に必要な加工の難易度と、それに対応する**加工軸数(2.5軸/3軸/5軸など)**です。

たとえば、複雑な曲面や傾斜面を含む形状を高精度で加工する場合、5軸同時制御や複合加工(ミルターン)に対応したCAMソフトが不可欠になります。このような高度な加工ニーズがある場合には、SolidCAMのような多軸・高機能な製品を選ぶのが現実的です。加工精度とツールパスの最適化によって、歩留まりの向上や工具寿命の延長といった副次的なメリットも期待できます。

一方で、2.5軸〜3軸加工が中心で、製品形状も比較的シンプルなケースであれば、Fusion 360やInventor CAMのような中価格帯〜低価格帯のソフトでも十分に対応可能です。これらの製品は、機能を必要最低限に絞りつつも、実用性に優れた加工ツールパスを生成できるため、初期投資を抑えつつ導入をスタートしたい企業に適しています。

加えて、「今後5軸加工機を導入する予定があるかどうか」も重要な判断材料です。将来的に設備を拡張する方針がある場合には、最初から5軸モジュールに対応したCAMを選定しておくことで、再投資やデータ移行の手間を減らすことが可能です。

6.2 CAD環境との相性

次に注目すべきポイントは、自社で使用している既存のCADソフトウェアとの相性です。CADとCAMがスムーズに連携できないと、データの再変換やツールパスの再計算に時間がかかり、エラーや無駄な手戻りを招く要因となります。

たとえば、設計部門でSOLIDWORKSを標準CADとして使用している企業であれば、SolidCAMのようにSOLIDWORKSと完全統合されたCAMソフトを選ぶことで、設計変更があった際にも加工設定が自動で追従し、再計算の手間を大幅に削減できます。

同様に、AutodeskのInventorを中心に活用している企業であれば、Inventor CAMのように操作環境が共通で、設計〜加工を一貫して行えるツールが非常に効果的です。操作感が共通であることから、社内での教育コストも抑えられ、導入後の定着もスムーズに進みます。

Fusion 360はCAD/CAM一体型の環境を提供しているため、専用CADがない企業や、複数のCAD形式が混在する試作・外注中心の現場でも柔軟に対応可能です。特に、外部から受け取ったデータ(STEPやIGESなど)を読み込んで加工する場面が多い場合には、CAD環境を選ばずに運用できるFusion 360が便利です。

6.3 導入・運用コストと社内体制

最後に、見落とされがちですが非常に重要なのが、導入から運用にかけてのトータルコストと、それを支える社内体制の整備状況です。

SolidCAMは、一般的に買い切り型ライセンスに加えて、年間保守費用が別途発生する仕組みになっており、導入初期にある程度のまとまった投資が必要です。ただし、そのぶん長期運用に向けたサポートやアップデートの提供が安定しているため、信頼性を重視する企業には適しています。

一方、Inventor CAMやFusion 360はサブスクリプション形式のため、初期コストは抑えられる一方で、年間の支払いが継続して発生するという特徴があります。短期の導入では有利ですが、長期的なライフサイクルコストは事前に見積もっておくべきです。

また、導入に際しては社内のオペレーターがどの程度CAMに習熟しているか、または教育を受ける体制があるかも重要です。高機能なソフトを導入しても、運用できる人材がいなければ意味がありません。逆に、社内教育の時間やコストを最小限に抑えたい場合には、操作性が直感的で学習コンテンツが充実しているFusion 360のような製品が効果的です。

さらに、トラブル対応や質問へのレスポンスが早いサポート体制を求めるなら、代理店による手厚いサポートが得られる製品を選ぶというのも1つの考え方です。逆に、社内にある程度CAM経験者がいて、独力で情報収集や運用ができる体制が整っている場合は、費用を抑えつつ柔軟に対応できる製品を選ぶという戦略も十分に現実的です。

7. まとめ|SolidCAMの価格を理解した上での比較・選定のススメ

本記事では、SolidCAMの価格や機能を起点に、主要なCAMソフトであるInventor CAM、Fusion 360 CAMとの比較を通じて、CAM導入時に押さえておきたい要点や判断基準を整理してご紹介してきました。

SolidCAMは、価格帯としては中〜高水準に位置するものの、多軸加工や複雑な工程に対応できる高機能性と、SOLIDWORKSとの密な統合性により、精密加工や金型加工を担う企業にとっては強力な選択肢となる製品です。

一方で、Autodesk製品を多く採用している企業にとっては、Inventor CAMのように既存のCAD環境とスムーズに連携できるCAMの方が、運用負荷もコストも抑えやすいというメリットがあります。さらに、スタートアップや小規模生産、試作を中心に行う現場では、Fusion 360の柔軟性と低コスト性が現実的な選択肢として浮上してくるはずです。

重要なのは、価格そのものではなく、その価格に見合った価値が自社にとって得られるかどうかを冷静に見極めることです。加工の難易度や将来の設備拡張計画、既存CADとの相性、さらには運用に必要な社内リソースやサポート体制の整備状況など、複数の視点から総合的に判断することが、後悔しないCAM選びの鍵になります。

CAMの導入は一度きりの選択ではなく、ものづくり全体の質やスピード、さらには利益構造そのものに影響を与える重要な投資です。だからこそ、今回ご紹介した製品比較や判断ポイントを参考に、自社の製造スタイルに最も適したCAMを見つけていただければと思います。

もし検討段階で迷いがある場合は、無料体験版の利用や、代理店・メーカーへの具体的な相談・見積もり依頼も有効です。複数の製品に触れてみることで、操作性やサポートの質、必要な機能の絞り込みもより明確になるはずです。

本記事が、みなさまのCAM導入における比較検討と意思決定の一助となれば幸いです。

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参考情報

・SolidCAM公式サイト

https://www.solidcam.com/ja/

・Autodesk Inventor CAM 公式サイト

https://www.autodesk.com/jp/products/inventor-cam/overview

・Autodesk Fusion 公式サイト

https://www.autodesk.com/jp/products/fusion-360/overview

※本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。製品の価格・機能・ライセンス形態などは変更される場合がありますので、最新の情報については、各公式サイトや販売代理店にてご確認ください。

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