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2D図面から重量を求めるには?設計現場で使える計算方法と注意点

1. はじめに

製品や建物の設計を行ううえで、「重さ(重量)」を正しく見積もることは非常に重要です。重量は、材料費や輸送コスト、構造の安全性など、設計のさまざまな場面に関わってきます。

最近では3D CADを使って自動で重量を算出する環境も増えていますが、多くの現場では依然として2D図面が使われており、「2D図面からどのように正確に重量を求めるか」が設計者の課題となっています。

とくに板材やパイプなどの単純な部品から、複数の部品が組み合わさった構造体まで、計算の難易度はケースによってさまざまです。材料の選定や構造の検討を進めるうえでも、重量を正しく把握しておくことは現場の信頼性と効率を高める大きな助けになります。

本記事では、2D図面から重量を算出する基本的な考え方から、具体的な計算手順、そして実務で気をつけたいポイントまでを、段階的にわかりやすく解説していきます。設計や製図の実務に携わる方にとって、すぐに使える知識として役立てていただければ幸いです。

2. 重量計算の基本原則と必要な情報

重量を求める際の基本は、「体積に材料の密度(比重)を掛ける」というシンプルな計算式です。2D図面を使った設計でも、図面上の寸法と材料の密度が正確であれば、そこから十分に実用的な重量を算出することができます。

ただし、図面の精度や材料情報の正確性が不足していると、計算結果に誤差が生じやすくなります。重量の見積もりが不正確だと、設計後の工程でさまざまな問題が発生するリスクがあります。たとえば、材料費の見積もりがずれたり、構造物の強度が足りなかったり、運搬時の荷重計算が甘くなってしまったりする可能性があります。

こうした背景から、建築設計やプラント設計、機械設計といった多くの分野において、重量計算は設計の初期段階から重要な検討項目となっています。特に2D図面ベースの作業では、寸法情報や材料の物性値をいかに正確に扱うかが、設計品質を左右するカギになります。

この章では、2D図面から重量を計算するために必要な基本情報について、順を追って整理していきます。図面寸法の読み取り方、材料の比重データの扱い方、そして計算に使う単位系の統一など、基礎的だけれど見落としやすいポイントを丁寧に確認していきましょう。

2.1 重量計算の基本式

重量の算出は、「重量 = 体積 × 密度(比重)」という基本式に集約されます。図面から部品や構造体のサイズを読み取り、その体積を算出し、材料の密度を掛け算するだけで重量が求められます。この流れは一見シンプルですが、実際には2D図面から体積を正しく導き出すには一定のスキルが求められます。

たとえば、平板であれば長さ×幅で面積を求め、そこに板厚を掛けて体積を計算します。丸棒の場合は、断面積(π×r²)に長さを掛ければよく、角パイプやアングルなどの断面形状では、あらかじめ断面積を出してから長さを掛けるとよいでしょう。形状に応じて計算方法が異なるため、用途に合ったアプローチを選ぶことが重要です。

このように、どんな形状であっても、「まず体積をどう出すか」を考え、それに密度を掛けるという手順は共通です。特に機械設計では頻繁に使われる計算式であり、一度理解してしまえば多くの場面で応用が効きます。長さ → 面積 → 体積 → 重量という流れを意識しておくと、計算ミスを減らすことができます。

2.2 重量計算に必要な情報

2D図面から重量を正しく求めるには、いくつかの情報が欠かせません。まず必要になるのが、図面に記載された寸法です。板の長さ・幅・厚み、断面の形状、さらには穴の位置や直径など、体積を正しく導き出すための寸法情報を過不足なく把握することが出発点となります。

たとえば建築設計では、柱や梁、階段などの構造物を複数の投影図から読み取り、それぞれの寸法を拾っていく必要があります。寸法の抜けや読み間違いがあると、計算結果に大きな誤差が出るため注意が必要です。

次に、材料の密度(比重)に関する情報です。これはメーカーのデータシートやJIS規格、オンラインの物性値データベースなどから取得できます。鉄やアルミ、ステンレス、樹脂など、材質ごとに密度は大きく異なるため、材質の特定を正確に行うことが前提になります。

実務では、よく使う材料の密度を一覧化した「比重リスト」を自社で用意しておくと便利です。頻繁に使う情報をあらかじめ整理しておくことで、毎回調べ直す手間が省け、作業効率が大きく向上します。特に中小企業の設計現場では、このような工夫が設計の質とスピードを両立させる鍵となります。

2.3 単位系の統一

重量を正確に求めるには、使用する単位をきちんと統一しておくことが非常に重要です。単位がバラバラのまま計算すると、結果が大きく狂ってしまうことがあるため、設計ミスの原因にもなります。

2D図面では、長さの単位は一般的にミリメートル(mm)が使われます。一方で、密度の単位はグラム毎立方センチメートル(g/cm³)やキログラム毎立方メートル(kg/m³)など、用途によって表記が分かれます。体積が立方ミリメートル(mm³)で計算されているのに、密度がg/cm³のままだと、単位の整合性が取れず誤った結果が出ることになります。

対策としては、社内であらかじめ単位のルールを決めておくのが効果的です。たとえば、「長さはmm、体積はmm³、重量はkgで統一する」といった基準を設けておけば、図面作成から重量計算、Excel管理に至るまでスムーズに連携できます。

また、国際案件ではSI単位(メートル系)とヤード・ポンド系(インチ、ポンドなど)が混在するケースもあり、単位変換が避けられません。こうした場合には、あらかじめ変換表や換算式を用意しておくことで、計算ミスや情報伝達ミスを防ぐことができます。単位系を軽視しない姿勢が、設計品質を守るうえで欠かせません。

3. 設計現場で使える2D図面からの重量計算方法

ここからは、2D図面を使って実際に重量を計算する方法について、具体的なケースごとに解説していきます。中小企業の設計部門や、現場での手作業が多い環境でも取り入れやすいよう、できるだけシンプルかつ実践的な手順を紹介します。

扱う対象は、平らな板材のような単純な形状から、複雑な断面を持つ部品、さらにアセンブリ構造や市販の規格品にまで広がります。それぞれのケースに応じて適した計算手順を選ぶことで、設計段階での材料費の見積もりや構造の強度確認、搬送計画の立案などにもスムーズに対応できるようになります。

また、最近ではExcelのマクロや自動計算シートを使って重量計算を効率化するケースも増えています。本章の内容は、そうした自動化のベースとなる考え方としても活用できるため、設計プロセス全体の効率化に役立つはずです。

3.1 方法1:単純な板厚・断面形状の場合

まずは最も基本的なパターンである、板材や棒材のように形状が単純な部品の重量計算から始めましょう。このような部品では、図面から長さや幅、厚みといった寸法を取得し、体積を求めてから密度を掛けるという計算が基本となります。

たとえば、長方形のスチールプレートであれば、「縦×横」で面積を出し、板厚を掛けることで体積を計算できます。次に、あらかじめ調べておいた材料の密度(比重)を掛けることで、重量が求まります。こうした平板の重量計算は、計算方法が明快でミスも少なく、初心者にも取り組みやすい手順です。

断面が一定の角パイプやアングル材なども、基本的には「断面積×長さ」で体積を算出し、密度を掛けるだけで計算できます。あらかじめ代表的な断面の面積をまとめたリストを用意しておけば、図面から寸法を拾って即座に計算できるようになり、設計作業がスピードアップします。

この方法は、機械設計や建築部材の概算にも広く使われており、2D図面による重量計算の出発点として非常に有効です。

3.2 方法2:複雑な2D形状の場合

図形が複雑で、単純な長方形や円形では表せないような部品の場合は、形状を複数の基本図形に分割して、それぞれの面積を求め、体積を積み上げていく方法が有効です。また、部品に空いている穴や切り欠きの部分も、正確に体積から差し引くことで、完成品に近い重量を計算することができます。

たとえば、建築用の装飾パネルや複雑な形状の機械カバーなどでは、曲線や不規則な輪郭が多く含まれています。こうした場合、まず図面を見ながら形状を複数の矩形・円・多角形などの基本形状に分解し、それぞれの面積を求めることがポイントです。空いている穴についても、円や長穴に分けて面積を引き算します。

2D CADソフトの中には、面積を自動で計算する「面積取得コマンド」や「ポリラインの計測機能」が搭載されているものもあります。AutoCADであれば「AREA」コマンドを使うと、囲った領域の面積が簡単に得られます。こうした機能を使うことで、複雑な形状の面積も比較的スムーズに算出できます。

複雑形状の場合、図面をよく観察し、形状を論理的に分割することが重要です。特に、製造コストを事前に把握しておきたいプロジェクトでは、こうした積算作業をあらかじめ行っておくことで、予想外の重量オーバーや材料不足を未然に防ぐことができます。

3.3 方法3:複数の部材・アセンブリの場合

構造物や製品が複数の部品で構成されている場合、それぞれの部品ごとに個別に重量を計算し、最後にすべてを合計することで、全体の重量を算出します。これは組立図やアセンブリ図がある場合に特に有効な方法で、部材単位で正確な重量管理ができるというメリットがあります。

このときに注意したいのが、ねじやボルト、ナットなどの小さな部品も含めて計算するかどうかをあらかじめルール化しておくことです。設計初期の概算段階であれば、全体の重量に対して数パーセントを加味しておくと実態に近い値になりますが、安全率や荷重の限界を厳密に考慮する必要がある場合は、全ての部品を一つひとつ丁寧に計上する必要があります。

たとえば、プラント設備などでは、大型のタンク本体だけでなく、配管、補強材、脚部、取り付け金具などが一体になって構成されています。これらの重量を正確に管理するためには、部材ごとの重量をExcelなどで一覧化し、合計していくスタイルが実務的です。

また、重量計算の手順や構成要素をあらかじめ文書化しておくことで、プロジェクト間での再利用や社内での標準化がしやすくなります。アセンブリ全体の重量を計算する際は、見落としや二重計上を避けるためにも、チェックリストなどを活用するとよいでしょう。

3.4 方法4:市販部品・規格品の場合

カタログなどで販売されている市販部品や規格品については、メーカーが提供している製品仕様書や技術資料に重量情報が記載されていることが多く、自分で計算する必要がない場合もあります。むしろ、そうした正確な数値を活用するほうが、計算ミスを防ぐうえでも効果的です。

たとえば、ボルト・ナット・ワッシャー・ベアリングといった一般的な機械要素部品は、JISやISOなどの規格に基づいて標準化されており、製品ごとにおおよその重量が決まっています。各メーカーのカタログやWebサイトを参照すれば、必要な情報をすぐに得ることができます。

また、ポンプやモーターなどの大型部品についても、製品ごとの重量がきちんと明記されていることが一般的です。2D図面上では部品の形状しか把握できない場合でも、製品情報を参照することで、より正確な全体重量の把握につながります。

このような市販部品の重量データを有効活用することで、設計の効率が向上するだけでなく、見積もりや納期調整にも余裕を持って対応できるようになります。特に、複数の市販部品を使用する構造物では、手作業で一つひとつ体積計算するよりも、正確なカタログ情報をもとに重量を集計するほうが圧倒的に効率的です。

4. 計算精度を高めるための注意点と限界

2D図面から重量を算出する際には、できるだけ正確な情報をもとに計算することが求められます。しかし、実際の現場では、設計段階での計算と完成品の実重量が一致しないことも少なくありません。このズレが、構造強度や運搬計画、安全性の判断に影響を与えることもあるため、精度を高めるための工夫が重要です。

とくに注意すべきは、材料の比重が正確かどうか、図面寸法に誤差や読み違いがないか、そして見落としがちな追加要素(塗装・溶接・補強材など)をきちんと加味できているかといった点です。2D図面での重量算出は、あくまで「概算」に分類されることも多く、厳密な検証が必要な場面では限界もあるという認識が必要です。

ここでは、重量計算の精度に影響する具体的な要因と、それぞれにどう対処すべきかを項目ごとに整理して解説します。事前にどこにリスクがあるのかを知っておくことで、より信頼性の高い設計につながります。

4.1 材料密度の正確性

重量計算における第一の前提は、使用する材料の密度(比重)が正しいことです。たとえば、一般的な鉄鋼材料の密度は約7.85g/cm³とされていますが、実際には使用する鋼種や合金成分、製造ロットによって微妙に差が出ることがあります。アルミニウムやステンレスといった非鉄金属でも、純度や製法によって密度は変わってきます。

このようなわずかな違いが、部品点数が多くなったり、大型構造物になると、最終的な重量に大きな差を生む可能性があります。とくに構造の安全性や輸送コストに直結する案件では、比重の取り扱いには細心の注意が必要です。

そのため、設計に使用する材料の密度については、可能な限り最新のデータシートや材料メーカーの情報を参照し、正しい値を使うようにしましょう。社内で比重一覧表を管理している場合も、更新日や情報源を定期的に見直すことが大切です。

もっとも、実務ではある程度の誤差を許容したうえで、安全率を含めて設計するのが一般的です。過剰に厳密さを求めてしまうと、かえって作業効率を落としてしまうため、「必要な精度」と「許容できる誤差」のバランスを意識して運用するのが現実的です。

4.2 図面寸法の精度と公差

2D図面に記載された寸法は、重量計算にとって極めて重要な要素ですが、それ自体にも「誤差」が存在することを理解しておく必要があります。実際の製作物は、寸法公差の範囲内で若干のばらつきを持って仕上がるため、図面上の寸法どおりの体積・重量になるとは限りません。

たとえば、板厚に±0.2mmの公差が設定されている場合、製品によっては実寸が設計値よりも厚くなることがあり、それに応じて重量も増加します。こうした誤差が複数の部品に積み重なると、全体で数%の重量差が生じることもあり得ます。

さらに、2D図面から体積を算出する場合は、複数の角度や断面図から寸法を拾い上げて形状を復元する必要があります。その過程で、寸法の見落としや読み違いが起きやすくなります。図面を複数人でレビューしたり、チェックリストを用意するなど、二重確認の仕組みを取り入れることで精度を高めることができます。

とくに中小企業では、設計者の経験や個人スキルに依存しがちな部分でもあるため、共通ルールや確認フローを整備することで、全体の設計品質の底上げが期待できます。

4.3 無視されがちな追加要素

重量計算を行う際に意外と見落とされやすいのが、塗装やメッキの厚み、溶接の盛り(ビード)といった追加処理による重量の増加です。これらは1点あたりの重量変化はわずかですが、広い面積に塗装が施されたり、長い溶接線が存在する場合には、積み重なることで無視できない量になります。

たとえば、大型鋼構造における錆止め塗装は、数十キログラムの重量差を生むこともあります。また、アルミ押出材にメッキ加工が施された製品では、仕上げ処理によって密度が変わることもあり、材質と加工内容を把握していないと見落としの原因になります。

さらに、取り付け金具や補強材など、設計段階では別途扱われることの多い付属部品についても、完成品の重量に確実に影響します。これらのパーツが意図せず除外されてしまうと、全体重量が想定より軽く見積もられてしまう恐れがあります。

対策としては、こうした追加要素を定型的に扱えるよう、塗装であれば「面積×塗膜の比重」、溶接ビードであれば「長さ×断面形状×密度」といった計算式をテンプレート化しておくと便利です。これにより、毎回の計算で見落としを減らし、一定の精度を確保できます。

4.4 複雑な3D形状の限界

2D図面による重量計算は便利で広く使われていますが、すべての形状に対応できるわけではありません。とくに湾曲した面や自由曲面、複雑な凹凸のある形状などは、2Dの断面や投影図だけでは正確な体積を把握するのが難しいのが現実です。

たとえば、自動車の外装部品や建築の曲線的なファサード、複雑な金型部品などは、2D図面で情報を読み取るだけでは体積を厳密に再現することが困難です。このようなケースでは、やはり3D CADの使用を前提としたアプローチが推奨されます。

3D CADを使えば、形状データに材質情報を設定するだけで、ソフトウェア側が自動的に体積や質量を計算してくれます。さらに、重心位置や慣性モーメントといった設計上の重要な物理特性も一緒に算出できるため、設計の信頼性を高めるうえでも有効です。

もちろん、3Dモデリングにはコストや作業時間がかかるため、すべての案件で採用できるわけではありません。そのため、2D図面からの概算を基本としつつ、必要に応じて3Dで補完するという使い分けが現実的です。

設計段階で「この形状は2Dだけでは限界がある」と気づける判断力を持つことも、重量計算の精度を高めるためには重要なスキルのひとつといえるでしょう。

4.5 単位系の再確認

重量計算では、各種の数値が異なる単位系で記載されていることがよくあり、単位の混在によるミスが非常に起こりやすいポイントです。たとえば、図面の寸法はmm、材料密度はg/cm³、最終的な重量はkgというように、単位が統一されていないまま計算すると、結果が何倍にもズレてしまうことがあります。

たとえば、1,000,000mm³の体積にg/cm³の密度を掛けてしまうと、桁違いの数値になるリスクがあります。このようなミスは、日々の業務が忙しい現場ほど起こりやすく、気づかないまま見積もりや製造に進んでしまう可能性があります。

こうしたミスを防ぐためには、計算前に必ず「すべての単位を同じ系に揃える」ことを徹底することが基本です。たとえば、長さはmm、体積はmm³、密度はkg/mm³、結果はkgで統一するなど、社内であらかじめルールを定めておくと混乱を避けられます。

また、CADソフトやExcelなどを使用する場合にも、使用するフォーマットやテンプレートに「単位の指定」を明記しておくと、後工程での手戻りを防げます。さらに、海外プロジェクトではポンド(lbs)や立方インチ(in³)などが使われることもあるため、国際案件では変換式や単位表を常備しておくことが望ましいです。

単位の統一と確認を怠らないことが、正確な重量計算の前提であり、ひいては設計の信頼性を守る土台になります。

5. CADソフト活用術とExcel連携

2D図面から重量を計算する作業は、一見すると手間がかかりそうですが、CADソフトの機能やExcelとの連携をうまく活用すれば、作業効率を大幅に向上させることができます。特に、よく使う計算式や材料情報をテンプレート化しておけば、誰が作業しても一定の精度が保てるうえ、ミスも防げるようになります。

たとえば、2D CADで部品形状の面積を自動で取得し、その値をExcelに転記して板厚や密度を掛け算すれば、重量がすぐに算出できます。この作業を半自動化すれば、都度計算する手間も減り、チェック作業も効率化されます。

また、重量の一覧表を作って管理することで、どの部品がどれくらいの重さかを一目で把握できます。これは材料費の見積もりや運搬の計画を立てるときにも非常に役立ちます。関係部署と情報を共有する際にも、表形式での管理はスムーズなコミュニケーションにつながります。

ここでは、具体的に「CADで面積を測定する方法」「Excelで計算シートを作成する方法」「3D CADを補足的に使う際のポイント」について、それぞれ詳しく見ていきます。

5.1 2D CADの面積計算コマンドをマスターする

多くの2D CADソフトには、図形の面積を自動で測定できる機能が備わっています。たとえば、AutoCADの場合は「AREA」コマンドを使用することで、選択した図形やポリラインの面積を簡単に取得することができます。この機能を使えば、計算ミスのリスクを減らし、スピーディに作業を進めることができます。

特に、ポリラインで輪郭を描いた図形であれば、AREAコマンドでその境界をクリックしていくだけで、瞬時に面積が表示されます。その数値を板厚や密度と掛け合わせれば、すぐに体積や重量が計算できます。たとえば、スチール板やアルミパネルのような部品では、非常に実用的な手法です。

ただし、注意点として、ポリラインが閉じていない場合や、境界線に隙間があるとエラーになることがあります。そのため、図形を選択する前に「きちんと閉じているか」「線が重なっていないか」といった点を事前に確認しておくことが大切です。

このような面積の自動取得機能は、重量計算に限らず、床面積や外壁面積の算出など、建築設計における数量拾いにも活用できます。慣れてくれば操作もスムーズになり、作業スピードの向上とともに、設計に対する自信も自然と高まっていきます。

5.2 Excelを使った計算シートの作成

Excelは、設計現場において重量計算を行うための便利なツールとして広く使われています。特に複数の部品や構成要素の重量を一括で集計したい場合や、数量をかけ合わせて材料の手配を行う際などに、非常に有効です。

実務で使いやすい計算シートを作成するには、以下のような列を用意すると便利です:

  • 部品名
  • 寸法情報(長さ・幅・厚みなど)
  • 材料名
  • 密度(g/cm³やkg/m³)
  • 体積計算式(長さ×幅×厚み など)
  • 重量(体積×密度)
  • 数量
  • 総重量(重量×数量)

このように整理された表を使えば、誰が見ても一目で情報が分かり、計算ミスも起きにくくなります。また、こうしたフォーマットをあらかじめテンプレート化して社内で共有しておけば、担当者が交代した場合でも一定の品質で計算作業を継続できます。

さらに、大規模なプラント設計など、部品点数が多く管理が煩雑になるケースでは、Excelの関数やフィルター機能を使って分類や集計を行うことで、全体の管理がぐっと楽になります。

また、AutoCADの属性機能を使えば、図面上に記載された部品情報(材質、寸法など)をExcelと連携させることも可能です。双方向で情報を反映させられれば、設計ミスの防止や変更履歴の管理にも効果を発揮します。

5.3 (参考)3D CADの質量特性機能

ここまで2D図面を使った重量計算の方法を中心に解説してきましたが、もし3D CADが使える環境にあるなら、質量特性(マスプロパティ)を活用するのも非常に効果的です。

3D CADでは、モデルに材質を設定するだけで、ソフトが自動的に体積や重量を計算してくれます。たとえば、SOLIDWORKS、Inventor、Fusion 360などの主要な3D CADソフトには、こうした機能が標準で搭載されています。複雑な形状や曲面の多い部品でも、正確な質量を瞬時に算出できるのが大きな利点です。

さらに、質量特性機能では、重心の位置や慣性モーメントといった、設計上の重要な物理パラメータも自動で出力されます。これは構造解析や安全性の検証、振動評価などにも応用が可能であり、設計の精度や信頼性を一段と高めてくれます。

ただし、3Dモデルの作成にはそれなりの時間や労力が必要であり、社内のスキルやソフトの導入状況によってはすぐに実施できない場合もあります。そのため、2D図面による概算を基本としながら、必要に応じて3D CADを併用するという使い分けが現実的です。

特に中小企業では、すべてを3D化するのが難しい場面もありますが、部分的にでも3Dの力を取り入れることで、設計の信頼性と効率をバランス良く向上させることができます。

6. おわりに

2D図面から重量を求める作業は、一見地味で手間がかかるように見えるかもしれませんが、設計の品質やコスト管理、安全性に直結する、非常に重要な工程です。本記事では、重量計算の基本となる「体積 × 密度」という考え方を出発点に、具体的な計算方法や現場で使える実践的なテクニック、そして精度を高めるための注意点や限界について、段階的に解説してきました。

正確な重量を把握することは、材料費の見積もりや輸送計画、構造の強度設計など、あらゆる設計判断の土台になります。その一方で、2D図面による重量計算では、寸法の読み違いや単位の混在、穴や追加要素の見落としといったミスが生じやすく、常に注意が求められます。こうしたリスクに備えるためには、図面精度の確認、比重リストの整備、単位系の統一といった基本の徹底が欠かせません。

また、CADソフトの面積計算機能やExcelテンプレートを活用すれば、計算作業の効率化と精度の両立が可能です。定型化やテンプレート化によって、属人的になりがちな設計業務も、誰でも一定の品質で再現できるようになります。さらに、3D CAD環境が整っていれば、質量特性機能によってより正確な重量把握ができるため、2Dと3Dの使い分けも設計スタイルに応じて検討していくと良いでしょう。

2D図面による重量計算は、現場で今も多くの設計者が日々行っている重要な業務のひとつです。限られた情報の中でも、正確かつ効率的に重量を見積もるスキルは、設計者としての信頼につながります。ミスを防ぎ、無駄を省き、より良い設計を実現するために、今回紹介した方法や考え方をぜひ日々の業務に取り入れてみてください。

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・JISC 日本産業標準調査会

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・機械設計で使う単位一覧

https://d-engineer.com/unit_formula/unit.html

・AutoCAD 2026 ヘルプ | 面積の計算と距離の計測 | Autodesk

https://help.autodesk.com/view/ACD/2026/JPN/?guid=GUID-18389CD1-2F81-4185-A459-F59AE311D637

・質量特性の表示(Displaying Mass Properties) – 2025 – SOLIDWORKS ヘルプ

https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldworks/t_displaying_mass_properites.htm

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