設計と解析のシームレスな連携が魅力の「CATIA V5 Analysis」とは 4つの使いやすい理由を紹介
長年にわたってハイエンドCADとして愛されているCATIA V5の構造解析モジュールとして開発されているのが、「CATIA V5 Analysis」です。CATIA V5 Analysisを導入することでCADと解析の機能を併せ持つツールとなり、設計と解析をシームレスに繋ぐことができます。
今回は、CATIA V5 Analysisの解析機能を紹介するとともに、建築の構造設計で解析を行ってきた筆者の目線で考察する使いやすい理由を解説します。効率よくモデル化・解析ができるソフトウェアを探している方は、ぜひご覧になってみてください。
CATIAで設計、CATIAで解析
CATIA V5 Analysisのキャッチコピーは、「CATIAで設計、CATIAで解析」です*1。キャッチコピーで表現されているとおり、設計と解析をシームレスに連携できることが、多くの技術者にとって魅力を感じるポイントでしょう。ここでは、設計ツールである「CATIA V5」および解析ツールである「CATIA V5 Analysis」の概要を紹介します。
ハイエンド3次元CADソフトであるCATIA V5
CATIAは、長年にわたりハイエンドCADとして大・中小企業で使われてきたソフトウェアです*2。なかでも、1999年にリリースされたCATIA V5が現在の主力製品であり、航空宇宙、自動車、産業装置、家電など、さまざまな分野で利用されています。
高度な解析能力を付与するCATIA V5 Analysis
CATIA V5 Analysisは、CATIA V5の構造解析モジュールです*3。そのため、CATIA V5 Analysisを実装すれば、CATIA V5でデザインしたモデルを使ってシームレスに構造解析を行えます。設計・解析のために他のソフトウェアを使う必要がないため、アウトプット・インプットの手間が減り、スムーズに作業を進められます。
CATIA V5 Analysisの解析機能
CATIA V5 Analysisの製品構成は以下のとおりです(図1*4)。CADソフトウェアである「CATIA V5」をベースに、さまざまな線形解析を行える「CATIA V5 Analysis」や、非線形解析や高度な熱解析に対応可能な「SIMULIA V5 Extended Analysis」という製品が用意されています。ここでは、「CATIA V5 Analysis」と「SIMULIA V5 Extended Analysis」の解析機能を紹介します*5。
図1 CATIA V5 Analysisの製品構成
引用)IDAJ株式会社「CATIA V5 Analysis|製品構成」
https://www.idaj.co.jp/product/catia-v5-analysis/composition_product/
注)図中のアルファベットはそれぞれ以下を示す*6。
CAD 作図機能
GPS パーツモデルの静解析、固有値解析
GAS アセンブリモデル、接触条件定義
EST 座屈、特殊要素、大規模問題など
GDY 動的な応答問題
FMD 高度なソリッド要素作成機能
FMS 高度なシェル要素作成機能
ANL 非線形解析
ATH 定常・非定常熱伝導解析
「CATIA V5 Analysis」の解析機能
CATIA V5 Analysisでは、線形解析などの基本的な解析を行うことができます。
・コンポーネント解析
図2 コンポーネント解析
引用)CATIA V5 Analysis|解析機能
https://www.idaj.co.jp/product/catia-v5-analysis/func/
※以下、画像引用同じ
コンポーネント解析では、ひとつのパーツの応力や周波数の解析を行えます(図2*5)。
・アセンブリ解析
図3 アセンブリ解析
引用)CATIA V5 Analysis|解析機能
アセンブリ解析では、複合パーツの応力や周波数の解析を行えます(図3*5)。パーツ間の接触解析を行うことも可能です。
・応力解析
図4 応力解析
引用)CATIA V5 Analysis|解析機能
応力解析では、パーツに荷重や拘束条件を設定し、それによって生じる応力や変形を解析することができます(図4*5)。メッシュの自動生成機能を使用することで、応力集中部位の状態をより詳しく把握することが可能です。
・固有値解析
図5 固有値解析
引用)CATIA V5 Analysis|解析機能
固有値解析では、拘束条件に応じたパーツの固有値を解析できます(図5*5)。
・接触解析
図6 接触解析
引用)CATIA V5 Analysis|解析機能
接触解析では、パーツが接することで発生する応力や変形を解析することができます(図6*5)。例えば、部品をボルトで締め付ける場合の接触面圧などを求めることが可能です。
・熱応力解析
図7 熱応力解析
引用)CATIA V5 Analysis|解析機能
熱応力解析では、外部からの温度分布データを条件として与え、それによってパーツに発生する応力や変化を解析することができます(図7*5)。
・線形座屈解析
図8 線形座屈解析
引用)CATIA V5 Analysis|解析機能
線形座屈解析では、座屈荷重係数や座屈モード形状を求められます(図8*5)。
・複合材(コンポジット)解析
図9 複合材(コンポジット)解析
引用)CATIA V5 Analysis|解析機能
複合材(コンポジット)解析では、複数の素材のモデルを組み合わせたパーツの解析を行うことができます(図9*5)。例えば、炭素繊維強化複合材料などの材料・繊維方向で剛性や強度が異なる部材の解析が可能です。
・動的応答解析
図10 動的応答解析
引用)CATIA V5 Analysis|解析機能
動的応答解析では、時間的に変化する荷重に対し、パーツの動的応答解析を行えます(図10*5)。摩擦や抵抗による影響を減衰で考慮することも可能です。
「SIMULIA V5 Extended Analysis」の解析機能
SIMULIA V5 Extended Analysisは、高度な熱解析と非線形解析に対応しているのが特徴です。
・熱解析
図11 熱解析
引用)CATIA V5 Analysis|解析機能
熱解析では、物体表面への加熱、熱伝達、特定の温度指定を温度荷重とし、パーツの温度分布を解析することができます(図11*5)。温度依存性を熱特性として定義できることや、複数のパーツをモデル化したときのパーツ間の熱伝導率を指定できることなど、より高度な熱解析を実施するために必要な機能が備えられています。
・非線形解析
図12 非線形解析
引用)CATIA V5 Analysis|解析機能
非線形解析では、弾性限を越えた範囲の応力・変形状態を解析することができます(図12*5)。
CATIA V5 Analysisが使いやすい理由4選
ここでは、建築の構造解析を行ってきた筆者の目線で、数ある解析ソフトウェアのなかでもCATIA V5 Analysisが使いやすい理由を紹介します*7。やはり、大きな要因は、設計と解析が一体となったソフトウェア環境を構築できることです。設計と解析がシームレスに繋がった環境で作業したい方は、参考になさってみてください。
CATIA V5の形状のまま解析できるから使いやすい
前述のとおり、CATIA V5 Analysisは、CADソフトウェアであるCATIA V5の構造解析モジュールであり、CADで作成したモデル形状をそのまま解析に使用できます。これにより期待できる効果は、以下のとおりです。
・その他の解析ツールにモデル化し直す必要がなく、インプットの手間が省ける
・設計者が意図したままの形状を解析に反映することができる
・設計変更をスピーディーに解析に反映できる
インプットの手間や時間を減らし、素早くアウトプットを得られることがメリットです。
設計者と解析者が連携を取りやすいから使いやすい
設計と解析を同じシステム環境で行えるため、設計者と解析者の距離が近づき、連携を取りやすくなることもCATIA V5 Anyalysisが使いやすい理由のひとつです。
同じシステム環境のなかで、解析者が解析の実行・分析を行い、そのアドバイスを受けながら設計者がモデルの修正を行うことができます。応力が集中している様子などが色合いで表現されるため、自然と設計者の技術的な直感力が高まり、無理のない設計を意識できるようになるでしょう。
解析がスピーディーだから使いやすい
解析ソフトウェアの使いやすさを左右する重要な要素のひとつが、解析のスピード感です。CATIA V5 Analysisは、解析に最適なメッシュを自動生成する機能などを備え、スピーディな解析を実現しています。自動メッシュ機能で設計モデルをそのまま解析に対応させることで、最小限のモデル化・解析時間で結果を得ることが可能です。
他のCATIA製品と共通のツールと環境だから使いやすい
CATIA V5 Analysisは、CATIA製品と共通のユーザーインターフェースで扱えるため、CATIAを使い慣れた方にとっては非常に使いやすいといえるでしょう。すべてのCATIAアプリケーション群や、同社開発のFEMソフトウェア「Abaqus」などと共通のツールで扱えます。これらのアプリケーションをあわせて使用することで、操作性及び生産性の向上を期待できます。
おわりに
「CATIAで設計、CATIAで解析」がキャッチフレーズのCATIA V5 Analysisは、設計と解析をシームレスに繋ぐソフトウェアです。設計と解析を同一のツールで行える環境が、設計者と解析者の密なコミュニケーションを促し、デザインと機能を両立した製品を生み出すことができるでしょう。
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注釈
*1
出所)IDAJ株式会社「CATIA V5 Analysis|特徴」
https://www.idaj.co.jp/product/catia-v5-analysis/feature/
*2
出所)株式会社大塚商会「CATIAの歴史を聞いて、3DEXPERIENCE CATIAを知る」
https://www.cadjapan.com/products/items/catia_v5/topics/2015/150123_catia.html
*3
出所)IDAJ株式会社「CATIA V5 Analysis」
https://www.idaj.co.jp/product/catia-v5-analysis/
*4
出所)IDAJ株式会社「CATIA V5 Analysis|製品構成」
https://www.idaj.co.jp/product/catia-v5-analysis/composition_product/
*5
出所)IDAJ株式会社「CATIA V5 Analysis|解析機能」
https://www.idaj.co.jp/product/catia-v5-analysis/func/
*6
出所)株式会社大塚商会「CATIAアナリシス製品群」
https://www.cadjapan.com/products/items/catia_v5/cae/analysis.html
*7
出所)株式会社アルゴグラフィックス「CATIA V5 Analysis」
https://www.argo-graph.co.jp/solution/catia-v5-analysis.html