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「選ばれる建材メーカー」の条件とは?BIM対応で変わる製品採用の最前線

1. はじめに:BIM対応が建材メーカーに求められるように

建設業界では、建物やインフラを3次元化して設計・施工・維持管理まで一括でデータ管理する手法が求められるようになってきました。これがBIM(Building Information Modeling)と呼ばれる仕組みです。BIM対応によって、建材メーカーや設備メーカーは製品情報を3Dデータとして提供でき、設計事務所やゼネコンなどのユーザーがデジタル上で製品を確認・配置することが可能になります。

この変化は、単に図面から3Dモデルへ切り替えるだけではありません。属性情報という、製品の大きさ・素材・性能などの詳細を含むデータを一元管理に組み込むことが不可欠です。その結果、設計初期の段階で製品選定を行いやすくすることが、新たな競争力の源泉になります。

国土交通省によるBIM普及施策も強く影響を与えています。公共プロジェクトの多くでBIM対応が進み、海外案件や大手ゼネコンからもBIM対応が求められることが一般的になりました。建材メーカーはこうした要望に応え、製品の3Dデータや属性情報を早期に整備することで市場をしっかり掴むことができます。

この記事ではBIM推進の背景にある建設業界の現状、建材・設備メーカーにとってのBIM対応の意義、そして実際にBIMを活用する際の具体的な方法と成功事例を紹介します。最後に、今後のBIM100%時代に向けて企業が取るべき戦略も解説します。

2. 建設業界におけるBIMの現状と進化

建設業界は図面ベースの設計からBIM中心のプロセスへと大きく転換してきました。データ管理の中心には、BIMソフトが存在し、設計事務所やゼネコンが施工前の段階で建物を仮想空間上に立ち上げて不備や調整点を洗い出します。これにより、工事後の手戻りを削減し、全体コストを下げるメリットが期待されます。

BIM導入がもたらす最大の効果は、情報を一元化して共有できる点です。建材メーカーや設備メーカーは、設計者まで情報を届けるために自社製品の3Dデータや各種仕様を書き込んだBIMオブジェクトを提供します。すると、設計段階で既に具体的な製品イメージが固まるため、より精度の高い建築計画が可能になります。

国内外を問わずBIM活用が広がる背景には、工期短縮や省人化などが急務となっている建設業界全体の課題があります。欧米やアジアでも国策としてBIM普及施策が取られており、日本の国土交通省も公共事業でBIM導入を進める流れが加速しています。時期的には、「原則適用」から「標準化」へと段階的に移行しており、数年先にはフルBIMプロジェクトが当たり前になると考えられます。

そうした環境下に置かれたメーカーは、3Dデータや属性交換の標準化に対応し、激化するグローバル市場の競争で優位に立つ準備が必要です。まさに、BIM対応が次の当たり前として定着しようとしています。

2.1. BIM導入の背景と建設業界への影響

BIM導入は建設業界の効率化を大きく左右します。その背景には、従来の2次元図面をもとに進められてきた仕事の非効率性への反省があります。図面の読み間違いや情報連携のミスによる手戻りは、プロジェクト全体に影響を与えてきました。

BIMを活用すると、3Dデータとして照合が行えるため、干渉検討や材料数量の把握が精密になります。具体的には、設計事務所がBIMソフトでモデルを作成し、ゼネコンが施工計画を立てることで、各工事フェーズまでのシミュレーションが容易になるのです。

メーカーにとっては、この早い段階で自社の建材や設備が採用されると、競合との差が明確に開きます。製品選定がモデル上でのクリック一つで決まる時代となり、BIM対応していない製品は簡単に候補から外れやすくなる傾向があります。

同時に、大手ゼネコンや海外プロジェクトではBIM前提の業務プロセスに移行しているため、積極的に関わるにはBIM推進が不可欠です。サプライチェーン最適化という観点からも、BIMに合わせた情報整備が急がれます。

2.2. 設計から施工まで: BIM中心のプロセスへの移行

BIM中心のプロセスでは、まず設計初期の段階で複数の3Dモデル案をシミュレーションします。意匠設計者はデザインの意図を掴みやすく、構造設計者は強度や荷重を計算しやすい環境を得られます。設備設計では配管や配線経路を立体的に検討できるため、衝突や取り回しのトラブルも少なくなります。

施工段階では、BIMソフトから出力されたデータをもとに施工手順の可視化や工期短縮策の検討を行います。仮設計画の構築や搬入順序の最適化など、施工管理の高度化も進むでしょう。さらに、建材メーカーや設備メーカーは自社のBIMオブジェクトを提供することで、現場の要求に迅速に対応できる利点があります。

加えて、属性情報が集積されたデータ管理を行うことで、メンテナンスやリニューアルまで見据えたトータルなライフサイクルコストを予測できます。したがって、国土交通省などが推進するBIM/CIM活用の波は、建設業界全体を製品選定からメンテナンスまで一貫連携する方向へ導いているのです。

こうした変化を受け、本来なら手間のかかる図面起こしや、互いの情報をすり合わせる作業が一気に効率化されます。メーカーにとっても、自社製品がいかに使われやすいかをモデル上で示せるため、営業活動の形態にも大きな変化が起きています。

2.3. 国内外のBIM対応義務化とその影響

海外ではイギリスや北欧をはじめ、公共事業の段階でBIM導入が義務化されるケースが増えています。日本でも国土交通省がBIM普及施策を段階的に拡大し、公共インフラの設計・施工でのBIM活用比率を引き上げる方針を示しています。

この義務化傾向に乗り遅れた企業は、国・自治体の案件や国外案件に参入しづらくなります。建材メーカーや設備メーカーとしては、グローバル市場で競争力を維持するために多言語対応や海外規格への適合を検討する必要があります。

さらに、“BIM100%時代”と呼ばれるように、設計から維持管理までの工程がほぼBIMに置き換わる将来が予想されています。そのため、BIMオブジェクトを有効活用できないメーカーは、受注機会やユーザーの目線から外れてしまう恐れがあるのです。

ここで重要なのが、データの標準化やプラットフォーム連携です。複数のBIMソフトが混在するため、IFC(Industry Foundation Classes)形式などのオープン形式が用いられます。メーカーは、こうした標準仕様への適合を急ぎつつ、自社の独自性や強みをアピールしていく必要があります。

3. なぜBIM対応が建材・設備メーカーに必要か

BIM対応を行うことで、建材メーカーや設備メーカーが受ける恩恵は非常に大きいです。まず設計事務所やゼネコンがBIM導入を積極的に進める中、自社製品が3Dデータ形式で手軽に使えるかどうかは、製品選定に直接影響してきます。

付加価値の高い製品を持っていても、BIMソフトへスムーズに組み込めない場合、競合他社の同等品に置き換えられやすいのが現状です。これは設計初期の段階で行われるクリック一つの選択が、のちの実工事やメンテナンスに大きな差を生むためです。

また、近年は大手ゼネコンが海外のプロジェクトを受注するケースや、外資系企業が日本国内で施工を行うパターンも増えています。そうしたグローバル市場でシェアを伸ばすには、多様な設計基準やフォーマットに対応できるBIMオブジェクトを整える必要があります。

メーカー側にとって、BIMは単なる設計支援ツールへの対応に留まりません。営業やマーケティング、さらには保守まで含めて、デジタル戦略を横断的に再構築する“BIM経営”を視野に入れた動きが重要になってきています。

3.1. 設計段階での製品選定とBIMの役割

設計段階では、建物の基本レイアウトや構造、設備の配置を検討すると同時に、建材や設備のグレードも選定します。このとき、BIMソフトにあらかじめ準備されているライブラリから、目的に合った製品をドラッグ&ドロップするかのように配置できるわけです。

このプロセスを想像してみると、メーカー各社から提供されるBIMオブジェクトの質や内容がどれだけ重要かわかります。寸法や機能が正しく反映されるかどうか、属性情報はちゃんと付与されているかなど、データの完成度が採用率に直結します。

特に、大手ゼネコンは膨大な製品を扱うため、極力「使いやすい製品」を選ぶ傾向があります。その“使いやすさ”を形作るのがBIM対応の度合いなのです。ここを押さえておくことで、設計初期の製品選定で有利に立つことができます。

さらに、建築設計の段階で製品が確定すると、そのまま重要書類に反映されます。最終的に発注先が同じ製品を採用し、メンテナンスまで含めたライフサイクルでの取引に繋がる可能性が高いです。

3.2. 3Dデータの利便性と製品採用への影響

3Dデータ化された製品は、設計者に機能やサイズ感をリアルに伝えます。例えば、壁材やサッシ類、設備機器などは、3Dで表示することによって空間的なバランスや施工時の可否を判断しやすくなります。こうした視覚的わかりやすさは、PDFカタログ以上に大きな説得力を持ちます。

BIMで取り扱われる3Dデータには、製品の寸法や素材情報、さらには断熱性能や耐火性能などの詳細が詰め込まれます。設計事務所はそれを組み込んだうえで法規チェックやコスト試算を行うため、計画全体がスムーズに進行します。

もし3Dデータがない場合や、属性情報が不足している場合、設計者が別途それらを入力する必要が生じます。これは時間的なロスであり、面倒が増えるため、結果としてメーカーの製品が後回しになる可能性が高まります。

一方で、使いやすいBIM対応製品は“標準仕様”として取り入れられ、リピート採用が見込めます。データの整備が製品採用の確率を上げるという関係が、建設業界のスタンダードになりつつあるのです。

3.3. 大手ゼネコンと海外プロジェクトでのBIM必須化

大手ゼネコンでは、競争力を高めるためにBIM戦略を強化しています。国内案件のみならず、海外プロジェクトにも参入する際には、そもそもBIM対応が求められることが多いのです。とくに欧米やアジア各国では、施主サイドからBIM仕様を前提とした発注条件を設定されるケースも珍しくありません。

また、設計事務所もグローバルな視点を取り入れ、BIMチームを社内に設ける例が増えています。そこでは、BIMオブジェクトを含めたサプライチェーン最適化が検討されるため、情報提供が遅れているメーカーは発注候補から外されるリスクがあります。

メーカーにとっては、BIMソフトでの互換性や言語対応の整備が急務です。たとえば、BIMobjectなどの国際的なプラットフォームでは、日本語だけでなく英語など他言語で製品概要を公開しておくと海外の設計者からの注目度も向上します。

結局のところ、BIM業務に乗り遅れると、国内外を問わず大規模案件へのアクセスを失いかねません。今後の国土交通省の義務化やBIMオブジェクト標準化の流れも踏まえ、メーカーは早期アクションを起こすことが必要です。

4. BIM対応製品の選定理由とメリット

BIM対応製品が選ばれる理由は、業務効率化とリスク削減に大きく貢献するからです。設計者としては、BIMソフト上で従来の2D図面よりもはるかに正確に計画が立てられ、干渉チェックや数量積算がしやすいというメリットがあります。そこにスムーズに組み込める製品があれば、設計過程そのものがシンプルになります。

同時に、BIM対応製品なら、工事中の変更やトラブルの発生率を下げる効果が期待できます。施工管理者は、3D上でどの材料をいつどのように使うかをシミュレーションできるため、無駄が出にくいのです。

メーカーの観点から見ると、BIM機能の整備によって製品ライフサイクルを通じたアフターフォローの基盤が強化されます。メンテナンス時期の管理や部品交換など、将来的なビジネス機会にもつなげやすいのが特徴です。

このように、BIM対応製品には“設計から施工、そして保守メンテナンスまでの一貫管理”を実現する要点が集約されているのです。

4.1. BIMソフトウェアでの直接配置の利点

BIMソフトウェアには、RevitやArchiCADなど複数の種類があります。いずれのソフトを使う場合も、製品を直接配置できるオブジェクトとして提供されているかどうかは、設計者の手間に直結します。

例えば、壁材を選ぶ際に、メーカーごとに属性情報がしっかり整備されていれば、すぐに建物モデルへ反映できます。仮に価格情報や耐熱性能などがBIM上で見られるようになっていれば、設計段階で比較検討がしやすいため、メーカー製品がより一層魅力的に映ります。

一方、BIM対応していない場合は、設計者がフリーソフトなどでわざわざ似たようなパーツを作り、後付けで情報を入力する手間が発生します。そのエネルギーをかけるなら他社製品を使ったほうが早い、と判断されても不思議ではありません。

こうした事例を考えると、メーカーがBIMオブジェクトを用意し、他社よりも直感的に扱い安い製品データとして提供することが、最も効果的な営業手段の一つになるといえます。

4.2. 情報属性付きモデルの経済的利益

BIMの利点は3Dモデル化だけでなく、属性情報を付与できる点にあります。建材メーカーなら製品の素材、耐久年数、断熱性能、仕上げの種類などをデータに書き込み、設備メーカーなら省エネ性能や配管接続条件などを記載することが可能です。

こうした詳細情報は、設計事務所やゼネコンに最適な製品を選定させる根拠になります。例えば、断熱性を重視するプロジェクトなら断熱性能が優れた製品を一目で比較できるわけです。結果として、理想的なマッチングが実現し、長期的にはコスト削減やエネルギー効率の向上につながります。

メーカー側の経済的利益としては、競合製品との差別化が図りやすくなる点が重要です。情報が充実しているモデルは設計者にとって使いやすいだけでなく、“その製品の価値”を具体的に示しやすいというメリットがあります。

さらに、BIM導入が進む現場ほど、こうした細かい属性情報を評価しやすい仕組みが出来上がっています。だからこそ、BIM対応がメーカーにとって投資ではなく、有力な戦略手段になるのです。

4.3. 設計者の選択基準とBIM対応製品の優位性

設計者は“早く、わかりやすく、正確に”設計を進めたいと考えています。このニーズを満たす製品が選定において有利になるのは当然です。BIM対応製品なら、フェーズごとに必要な情報を瞬時に参照できるため、信頼度が高いです。

例えば、施工段階に入ったときに部材が合わなければ、現場で修正工事が必要になります。費用も時間も追加でかかるため、大きなリスクです。BIM上で寸法確認や耐荷重のチェックが済んでいれば、そうしたリスクを事前に避けられます。実際、ゼネコンをはじめとする施工管理者は、トラブルの少ない製品を繰り返し使いたいと考えています。

また、BIMチームのある設計事務所では、効率化の視点から一般的にBIM対応製品しか使わないというルールを敷くところも出てきました。これは、取り扱いが簡単で、情報入力の手間が減り、変更時の管理もスピーディに行えるためです。

結果として、BIMオブジェクトが用意されていない製品は、設計者のリストから自然と外れてしまう事態が起こります。製品ライフサイクルを通じた長期的な取引を確保するためにも、BIM対応の優位性は軽視できない要素といえます。

5. 自社製品のBIM化とその戦略的利点

建材メーカーや設備メーカーが自社製品をBIM化するメリットは数多くありますが、最も大きいのは設計初期での露出と営業効率化です。BIMオブジェクトをダウンロード・配置された時点で、自社製品は大勢の設計者やゼネコンの目に留まります。

さらに、BIM化された製品はデジタルマーケティングのデータ源にもなります。どの製品モデルが何回閲覧されたか、どの地域からのアクセスが多いかといった情報を分析しやすくなるため、市場ニーズに対応した新製品開発や戦略立案にも役立ちます。

自社製品のBIM化を戦略的に行うには、まず社内体制の整備が大切です。BIMチームを発足し、設計担当・開発担当・営業担当が連携しながら情報を付与します。この取り組みを継続することで、社内のBIMノウハウが蓄積され、新たなビジネス機会が見いだせるでしょう。

また、ライフサイクル全体を視野に入れてBIM化を進めると、保守・管理段階でもクライアントに最適なサポートを提供できます。結果として、長期的なファン作りやリピートオーダーの機会増大にもつながるのです。

5.1. 設計初期段階での製品露出の重要性

設計初期とは、建物の規模やコンセプトを大まかに決定する時期です。この段階で選ばれた製品は、その後の設計詳細化や施工計画でも既定路線として扱われることが多いです。

もし設計者がBIMソフトのライブラリを開き、そこで使いやすいオブジェクトが見つかれば、そのまま採用されるケースは珍しくありません。つまり、序盤で店先に並んでいる状態をどう作るかが勝負の分かれ目です。

この状況を活かすために、メーカーは製品の基本スペックや外形寸法、コスト情報だけでなく、プロジェクトの狙いに合わせたバリエーションもBIMオブジェクトへ反映しておくと効果的です。実際、寸法違いや材質違いのモデルをあらかじめ用意すると、選択肢が増えるので採用率が高まります。

逆にいうと、どんなに優秀な建材や設備でも、BIMオブジェクトがない、もしくは提供が遅れてしまうと、検討リストから外れてしまう恐れがあります。これはデータ管理社会での先行者メリットの概念と同じで、早く露出すればするほど採用される確率は上がります。

5.2. 営業提案の効率化とデジタルマーケティングの活用

従来の営業提案は、カタログやPDF資料を中心に行われてきました。しかし、BIM活用現場では、3Dデータに加えて、属性情報から得られる詳細な数値や特性を即時に提示できます。そのため、口頭や紙媒体での説明に比べて、格段に説得力が高い提案が可能になります。

デジタルマーケティングにおいても、BIM化された製品データのダウンロード数や閲覧数などの行動ログが取れます。たとえば、BIMobjectのようなプラットフォームを使う場合、ユーザーがどの製品データをダウンロードしたかを把握し、追客につなげることができます。さらに、開封率測定機能などを活かして、興味を持った設計事務所へより詳細な情報を提供できます。

これにより、単なる飛び込み営業ではなく、データに基づいた効率的なアプローチが実現します。結果として、商談の成約率向上や高速な案件化に寄与するでしょう。

また、オンラインでの更新が簡単な点も強みです。スペック変更や新商品追加のたびに紙カタログを刷り直す必要がありません。常に最新の情報をリアルタイムで提供できるため、顧客満足度にも貢献します。

5.3. 製品ライフサイクルと保守支援の機会

BIM対応した製品には、工事後の保守段階でも活用できる属性情報が含まれているため、点検や修理などが発生した際に適切な部材を迅速に特定できます。ユーザーが建物のBIMモデルを参照することで、部品の交換時期や必要な型番を正確に把握できるようになるのです。

この流れから、メーカーはメンテナンス契約や長期的なサポートサービスを提案しやすくなります。実際、BIM活用事例の中には、保守窓口をBIMデータで管理しておくことでスピーディにアクションを起こせるようになったケースが多く報告されています。

また、製品ライフサイクルを通じて蓄積される実使用データは、次世代製品の開発にフィードバックできます。建物のどの部分が最も劣化しやすいか、どの時期に取り換えが必要かなどの情報を総合的に管理することで、製品改良に結びつけられるわけです。

こうした保守支援とライフサイクル管理の仕組みは、サプライチェーン最適化にも直結します。メーカーとユーザー、さらには協力会社全体が1つのBIMデータを共有することで、新しいサービスモデルが生まれる可能性が広がります。

6. BIMを活用した実際のメーカー事例と戦略

ここでは、BIM活用事例として理研軽金属工業の取り組みや、BIMobjectプラットフォームでのデータ活用事例を紹介します。これらの成功体験は、どのような経緯でBIMへ舵を切り、どんな成果を上げたか、そして今後がどう見通されているかを示す貴重なヒントになります。

特に、BIMチームや専任部署を社内に持ち、データ管理とマーケティングを一体で進める組織が増えています。この流れは、「BIM経営」という概念にも直結しており、設計事務所やゼネコンとの関係構築がより深くなっています。

ユーザー目線で見ても、BIM対応製品は使うほどに利便性が実感でき、プロジェクト全体の手戻りを少なくします。その結果、繰り返し同じメーカーの製品を導入する動きが加速するわけです。

このように、BIM対応は単なるツールではなく、営業と設計の垣根を超えた融合であり、企業経営全体を大きく変える要素となっています。

6.1. 理研軽金属工業のBIM導入事例

<画像引用>・理研軽金属工業株式会社 – BIMobject Japan

https://vdc-solution.jp/bimobject/voice/527/

理研軽金属工業は業界の中でも早期にBIM導入方針を打ち出し、社内にBIM課を設置しました。その背景には、「建材メーカーとして最先端の市場要件に応えたい」という経営上の強い意思がありました。

BIMobjectなどの外部プラットフォームの導入前は、どのように3Dデータを作り込むのか、どこから手をつければいいのかといった点で不透明感があったといいます。しかし、BIM推進を専門とする営業担当者との意見交換を経て、段階的にデータを刷新し、最終的に150製品以上をBIM化しました。

この導入によって、設計事務所へのアプローチが大幅に変化したことが特徴的です。自社の製品ライブラリをオンラインで公開し、利用者が3Dデータと属性情報を容易に入手できる環境を整えた結果、問い合わせや採用率が増加したと報告されています。

さらに、社内設計部門においても、従来は別々に管理していたデータが一本化され、仕事の効率が向上しました。BIMチームを中心に、マーケティング部門と開発部門が連携を強め、BIM経営への手応えを感じているそうです。

6.2. BIMobjectの活用とその成果

BIMobjectは、世界中の設計者や施主がアクセス可能なBIMプラットフォームです。ここに製品を掲載すると、国内だけでなく海外ユーザーにもアピールできる可能性があります。

たとえば、日本の建材メーカーが製品をBIMobjectにアップロードすると、欧州や北米、アジアの設計事務所からもダウンロードされる機会が生まれます。実際、海外案件への導入が増えた企業もあるほど、国境を越えたビジネスチャンスが広がります。

また、BIMobjectにはユーザーへの一括メール送信機能やダウンロード履歴の確認機能があり、デジタル戦略において優れた分析ツールになっています。どの国のユーザーがどの属性情報を見ているかなどのデータは極めて貴重です。

さらに、現場のBIMチームがどのように製品データを評価しているかをリアルタイムに知ることができるため、必要に応じて情報を追加したり、モデルを修正することも簡単です。結果として、プラットフォームを活用することでメーカーがBIMオブジェクトを持続的にアップデートし、市場ニーズに合わせる仕組みが構築されています。

6.3. ユーザー目線での評価と展望

ユーザーである設計者や施工管理者から見ると、BIM対応製品の使いやすさは、プロジェクト全体の品質や効率を大きく左右します。とりわけ、すぐにダウンロードして配置できるデータと、詳しい属性情報がそろっているかどうかが良い製品の判断基準になっています。

理研軽金属工業のように、試行錯誤を経てデータを洗練させた企業は、ユーザー側の作業時間を短縮し、手戻りのリスクも軽減している点で評価される傾向にあります。その積み重ねがブランドイメージの向上に寄与し、BIMオブジェクト目当てでメーカーサイトを訪れる設計者が増える好循環が生まれます。

今後は、BIM100%時代の到来に備えて、ますます多くの企業がBIM経営を掲げることでしょう。ユーザー目線での評価を得ながら、グローバル市場にも対応できるデータを整備することが、メーカーの生存戦略と言えます。

最終的には、プロジェクトのライフサイクルを通じて、メーカー・設計者・ゼネコンが同じデータを共有し、効率と品質を高め合う協調体制が求められるでしょう。そこにこそ、次世代の建設業の形が見えてくるのです。

7. 今後のBIM推進と建材メーカーの対応戦略

これまでの流れから明らかなように、BIM推進は日本国内だけでなく世界的な潮流です。国土交通省は年々BIM普及施策に拍車をかけており、公共施設やインフラ系プロジェクトではBIM/CIM活用が事実上の標準仕様になりつつあります。民間の大型案件から中~小規模のプロジェクトへも波及が進み、いよいよBIM100%時代が現実味を帯びてきました。

建材メーカー・設備メーカーの経営層は、この機を逃さず“BIM経営”に舵を切ることが肝要です。今後は、フルBIMプロジェクトへの対応力、グローバル市場への展開、多様なBIMソフトとのデータ連携など、次々と新しいテーマが登場します。これらをすべてカバーするには、会社全体を横断したデジタル戦略の構築が必要となるでしょう。

最後に、本章では、政府の政策動向やデータ標準化、プラットフォーム連携、そして経営への統合という5つのポイントから、これからのBIM戦略を整理します。これらを実践することで、建材・設備メーカーは未来の建設業界で選ばれる存在として生き残っていけるはずです。

それでは、今後の展望を以下に順を追って解説します。

7.1. 政府のBIM普及施策と業界への影響

国土交通省がBIM/CIMの活用を加速させる政策を進めているのは周知の事実です。特に公共事業では設計段階からBIM導入が義務化される流れが加速し、各自治体でも同様の取り組みが広がっています。これに伴い、業界の各プレイヤーが早急なBIM対応を迫られる状況です。

実際、建材メーカーや設備メーカーは、これら公共プロジェクトへ参加するためにはBIM情報を整備しないと門前払いを受けるリスクがあります。また、下請けとして参画している企業も含め、サプライチェーン全体でBIMオブジェクトや属性情報を共有し、施工時の管理を効率化する取り組みが必要です。

こうした大きな変化は、市場競争の新たなステージを生み出します。BIM対応が遅れた企業は案件獲得力を失うだけでなく、将来的に経営体力を大幅に損なう恐れも考えられます。逆に、今のうちに先行投資としてBIM戦略を築き上げれば、大きなアドバンテージとなるでしょう。

さらに、政策対応だけに留まらず、メーカーはもっと広く業界を変革していく主体としての役割を果たすことが期待されています。標準化されたデータ活用を前提として、建物やインフラをより持続可能な形で発展させていく一翼を担うのです。

7.2. 「BIM100%時代」の到来とメーカーの役割

今後数年で、ほとんどの大型建設プロジェクトがBIM中心で進められる可能性があります。これは“BIM100%時代”ともいわれるもので、計画・施工・維持管理のすべてが3Dデータを通じて結びつく世界です。

ここでメーカーに求められるのは、ただBIM対応製品を持つだけではなく、情報更新やメンテナンスも常に行う体制です。モデルが使われるのは設計初期だけではありません。工事途中や最終的なアフターサービスでも、製品の修正や改良が必要になることがあります。

したがって、BIMチームやデジタル戦略部門を社内に設置することが要です。そこでは、BIM仕様の更新や海外向けのデータ最適化、ユーザーフィードバックの集約などを一元的に管理します。この仕組みによって、BIMオブジェクトが常に最新かつ使いやすい状態を維持できます。

最終的に、BIM100%時代に選ばれるかどうかは、性能や価格だけでなく、どれだけBIMデータが充実しているかに左右されるでしょう。メーカーとしては、データ管理込みの新商品開発が当たり前になると考えられます。

7.3. グローバル市場での競争力強化とBIM整備

BIMは日本だけでなく、欧州、北米、アジア各国でも広く普及しています。大規模プロジェクトではすでにBIM導入は標準状態であり、そこに参入するためには、多言語・多規格対応を視野に入れたBIMデータの整備が必要です。

例えば、海外の設計事務所では英語圏のBIMソフト環境を利用することが多いため、日本語だけで情報を記載していても理解されにくい場合があります。必要に応じて英語または各国の言語での属性情報を追加し、現地の法規や技術基準に合ったパラメータを備えることが重要です。

このグローバル対応を進めることで、メーカーは世界市場での競争を有利に進める可能性が高まります。逆に、国内だけに目を向けていては海外案件を獲得できず、成長が頭打ちになるリスクがあります。

また、海外プラットフォームでダウンロードされたデータがどんなプロジェクトに利用され、どんな評価を受けているかといった情報は、今後の商品開発の大きなヒントになります。BIM推進をテコに、世界規模での製品やサービス展開を検討することが企業経営の進路になるでしょう。

7.4. プラットフォーム間の連携とデータ標準化

建設業界では、RevitやArchiCAD、IFCなど、異なるソフトウェアやファイル形式が存在します。設計事務所やゼネコンが使う環境もさまざまで、1つのフォーマットだけに対応していては十分ではありません。

このため、メーカーは複数の形式に対応したBIMオブジェクトを用意し、プラットフォーム間のデータ連携を意識する必要があります。また、データ容量の軽量化や属性の取捨選択など、使い手の視点で整合性を保つ工夫も欠かせません。

さらに、BIMデータ標準化の潮流として、国や業界団体が定義した共通仕様に則ったパラメータ命名や分類を行うことも大切です。バラバラな基準が混在すると、結局設計者や施工者が再編集の手間を抱えることになり、メーカー製品が敬遠される可能性すらあります。

プラットフォーム同士のシームレスな連携を実現することで、建材・設備メーカーはサプライチェーン全体を巻き込んだデジタル戦略を構築できます。結果的に、利用しやすいデータを提供したメーカーが、市場からの支持を得ることになるでしょう。

7.5. BIM戦略の横断的構築と経営への統合

最後に、BIM対応を経営の中心に据える“BIM経営”について触れておきます。これは、開発部門や設計部門だけが独立して動くのではなく、営業、マーケティング、アフターサポートといったすべての部門がBIMデータを活用して協働する体制を指します。

例えば、BIMモデルに新たな仕様を追加した場合、その情報はすぐに営業ツールにも反映され、顧客への提案内容に活かされます。保守メンテナンス部門においては、交換部品の情報をリアルタイムで確認し、迅速なサポートが実現します。これらが一つのデータプラットフォームで管理されるため、部門間の連絡ミスも大幅に減ります。

さらに、経営目線では、BIM化によって積み上がる顧客データや利用実績を分析して、新商品企画や海外黎明市場への参入計画を立てることができます。デジタル戦略を横断的に取り込むことで、“BIM仕様を前提としたものづくり”から“サプライチェーン全域での最適化”へ成長していくのです。

今後の建設業界では、こうしたBIM戦略をしっかりと打ち立てた企業が、国内外の急速な変化に柔軟に対応し、継続的に価値を提供できる存在となるでしょう。経営層としては、BIMを単なるツールではなく企業の中核に位置づけ、全社規模で取り組む姿勢が求められます。

まとめ:BIM対応は“選ばれるメーカー”への第一歩

建設業界のデジタル化が進むなか、BIM対応は建材・設備メーカーにとって避けて通れない競争条件となっています。 また、製品採用の効率化だけでなく、営業提案・マーケティング・保守支援までを見据えた「BIM経営」への転換が、今後の成長を左右します。グローバル市場や公共案件への対応力を高めるためにも、社内横断的な戦略立案と体制強化が求められています。 今後はBIMを“単なる技術対応”から“経営の中核”へと位置づけ、時代の変化に即したものづくりへ進化していくでしょう。

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<参考文献>

・BIMで変わる建設プロセス(資材調達と施工管理編)【第4回】 – DIGITAL X(デジタルクロス)

https://dcross.impress.co.jp/docs/column/column20220525/003263.html

・理研軽金属工業株式会社 – BIMobject Japan

https://vdc-solution.jp/bimobject/voice/527/

・技術調査:第13回BIM/CIM推進委員会(令和7年2月25日) – 国土交通省

https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000147.html

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