eDrawingsをiPadで使いこなす!図面寸法の確認とAR活用の基本
1. はじめに
iPadを使って、いつでもどこでもCAD図面を確認できたら便利だと思いませんか?
本記事では、iPad版「eDrawings」で可能な図面の閲覧や寸法確認、AR(拡張現実)機能の活用方法について、初心者にもわかりやすく紹介します。
eDrawingsは、SOLIDWORKSとの親和性が高く、EASM・EPRT・EDWGといったeDrawings形式だけでなく、DWGやDXFといった一般的なCADファイルにも対応しています。iPadならではの直感的な操作性や持ち運びやすさを活かせば、設計レビューや製造現場での確認作業がぐっと効率化されます。
さらに、ARKitに対応したiPadと専用のARマーカーを使えば、3Dモデルを実寸サイズで現実空間に表示することも可能です。これにより、設置シミュレーションやデザインレビューがより視覚的に行え、現場での理解や合意形成がスムーズになります。
この記事を読めば、eDrawingsでの図面確認方法や寸法測定、AR機能の使い方が一通り理解できるようになります。CADの操作に不慣れな方でも安心して使えるよう、やさしく丁寧に紹介していきますので、ぜひ最後までお読みください。
2. eDrawingsとは?
引用:https://www.edrawingsviewer.com/ja
ここでは、eDrawingsというアプリケーションがどのような機能を備えているのか、その基本的な特徴と、iPadで使うことで得られる利点について解説します。これを理解すれば、外出先や現場での図面閲覧がどれほど便利になるのかがイメージできるようになるでしょう。
eDrawingsは、2D図面や3Dモデルを手軽に表示できるモバイルビューアとして、設計者から現場担当者まで幅広いユーザーに利用されています。マークアップ機能やクラウドストレージとの連携にも対応しており、設計・製造の現場で求められる実用性の高い機能がそろっています。
2.1. eDrawingsの基本概要
eDrawingsは、CADデータの閲覧に特化した無償のビューアアプリです。さらに、寸法測定や断面表示、マークアップといったより高度な機能を備えたPro版も提供されており、用途に応じた選択が可能です。
対応ファイル形式は、SOLIDWORKSでよく使用されるEASMやEPRTに加えて、EDWG、DWG、DXFといった汎用的なCAD形式にも対応しており、さまざまな設計データを閲覧する際に活用できます。これにより、特定のCADソフトに依存せず、関係者全員が共通のビューワーで図面を確認できるという利便性があります。
また、eDrawingsでは3Dモデルの表示だけでなく、寸法の簡易測定や断面図の確認など、設計検討に役立つ機能も備えています。図面の一部を切断して内部構造を確認したり、気になる距離や角度をその場で測定できたりと、ただ「見る」だけでなく「使える」ツールとなっている点が大きな魅力です。
iPadで使用することで、データを紙で持ち運ぶ必要がなくなり、現場でも素早く図面確認が可能になります。オフラインでの利用も可能なため、通信環境が整っていない場所でも活用できるのが強みです。ペーパーレス化の促進とともに、作業効率の向上やコミュニケーションの円滑化にもつながります。
2.2. iPadでeDrawingsを使うメリット
iPadを使ってeDrawingsを操作する最大の利点は、携帯性と直感的なタッチ操作にあります。App StoreからeDrawingsアプリをダウンロードし、起動すればすぐに使用を開始できます。指先だけでモデルを回転・拡大・縮小できるため、マウス操作が不要で、慣れれば誰でも簡単に扱えるようになります。
特に、現場や会議室などの場所でiPadを使えば、図面確認やプレゼンテーションがその場でスムーズに行えます。意思決定までの時間が短縮され、業務のスピードアップにもつながります。
また、ARKitに対応したiPadと専用マーカーを使えば、AR(拡張現実)機能を利用することも可能です。印刷したARマーカーをiPadのカメラで読み取ることで、実寸大の3Dモデルを現実空間に重ねて表示できます。これにより、製品の設置場所をその場でシミュレーションできるようになり、設計意図の共有や課題の早期発見がしやすくなります。
さらに、DropboxやGoogle Driveなどのクラウドストレージと連携すれば、CADデータをその場で開いて確認でき、常に最新の図面にアクセス可能です。これらの機能を組み合わせて活用することで、iPadとeDrawingsは、現場業務や設計レビューの場で非常に強力なツールとなります。
3. eDrawings for iPadの基本操作
引用:https://www.edrawingsviewer.com/ja/product/edrawings-mobile
ここでは、iPad版eDrawingsの導入から、日常的に使用する基本操作までを順を追って説明します。初心者がつまずきやすい、ファイルの読み込みや表示方法についても丁寧に解説していきます。
こうした一連の操作をマスターすることで、設計レビューや製品確認の現場において、eDrawingsの機能を最大限に活かせるようになります。特に、ファイル管理やジェスチャー操作のコツを押さえておけば、作業効率の大幅な向上が期待できます。
3.1. アプリのインストールと初期設定
まずは、iPadのApp Storeで「eDrawings」と検索し、公式アプリをインストールします。eDrawingsには無料版と有料のPro版があり、Pro版では寸法測定機能やマークアップ機能が強化されているため、業務用途に応じて選ぶと良いでしょう。
インストール後にアプリを起動すると、ユーザーアカウントの登録や通知設定などの初期設定が求められます。クラウドストレージ(DropboxやGoogle Driveなど)を利用する予定がある場合は、このタイミングで認証を済ませておくとスムーズです。
その後、アプリの設定画面に移動して、表示単位(ミリメートルやインチ)、言語、画面回転の有無などを自分の用途に合わせてカスタマイズしましょう。表示スタイルやナビゲーションの調整をしておくことで、より快適にアプリを使いこなせるようになります。
3.2. ファイルの読み込みと管理
eDrawingsでCADファイルを開く方法は複数あり、用途や環境に応じて使い分けが可能です。たとえば、メールに添付されたファイルを直接タップして開いたり、DropboxやGoogle Driveといったクラウドストレージから取り込んだり、iTunesを経由してiPadに転送したりすることができます。
読み込んだファイルはアプリ内でフォルダごとに整理することができるため、プロジェクトや顧客ごとに分類しておくと、後から探す手間が省けて便利です。よく使うファイルには「お気に入り」マークを付けておくと、すぐにアクセスできて効率的です。
また、ネット環境がない現場で使用する場合は、事前にファイルをiPad本体にダウンロードしておくのがポイントです。これにより、オフラインでも図面を確認でき、突然の通信トラブルにも柔軟に対応できます。現場作業中のちょっとした確認や、打ち合わせ中の急な変更対応などにも活用できます。
3.3. 基本的な表示操作
iPadでのeDrawings操作は、タッチパネルならではの直感的な操作感が魅力です。たとえば、1本指でスワイプすれば3Dモデルの回転、ピンチイン・アウトで拡大や縮小、2本指ドラッグで平行移動(パン)が可能です。これらの基本操作に慣れておくと、モデル全体を自由自在に視点変更できるようになります。
また、表示モードの切り替えも重要なポイントです。シェーディング表示やワイヤーフレーム表示、透過表示などを活用すれば、モデルの形状や内部構造を視認しやすくなります。表示内容を切り替えることで、状況に応じた見やすさを確保でき、見落としのリスクを減らせます。
さらに、アイソメビュー、正面図、右側面図などの標準ビューへワンタップで切り替える機能も便利です。設計レビューの際には、意図した視点からの確認が容易になるため、意見交換や検討がスムーズに進みます。こうした基本操作をしっかり習得しておくことで、図面の確認スピードと精度が格段に向上します。
4. 図面寸法の確認方法
引用:https://www.hitachi.co.jp/products/it/industry/solution/solidworks/lineup_free.html
ここからは、eDrawingsを使って図面上の寸法を確認する具体的な方法について解説します。特に部品やアセンブリ(組み立て図)の寸法を読み取る作業は、設計段階や製造現場での品質管理において重要な役割を果たします。
iPad上で図面を確認しながら、その場で距離や角度を測定できると、現場での判断スピードが飛躍的に上がります。机上だけでなく、現場での寸法確認に活用できることは、作業効率の面でも大きなメリットです。たとえば、設計ミスの早期発見や、仕様変更の素早い反映にもつながります。
自動で公差のチェックまではできませんが、初期段階での目視確認や目安として活用するには十分です。簡易的な検証や現場での確認ツールとして、寸法機能は非常に有効です。ここでは、基本的な使い方をわかりやすく紹介していきます。
4.1. 寸法測定機能の使い方
寸法測定ツールを使えば、モデル上の距離や角度を簡単に確認できます。まずは、画面上部にある寸法アイコンをタップし、ツールを起動します。次に、測定したい要素(点、エッジ、面など)をタップして選択します。たとえば、点と点を指定すれば距離が、エッジ同士を指定すれば角度が表示されます。
操作自体は直感的で、数秒で完了します。ただし、正確な測定を行うためには、対象をしっかりと選ぶ必要があります。複数回のタップや、拡大してから選択する工夫が必要な場合もあるため、丁寧な操作が求められます。
測定結果は、画面上に数値として表示され、単位も自動的に反映されます。必要に応じて、設定から単位(mmやinchなど)を変更することも可能です。また、Pro版を使用すれば、マークアップ機能を併用して、測定結果に注釈を加えたり、スクリーンショットに書き込みをしたりすることもできます。
これにより、寸法結果をチーム内で共有したり、レビュー資料として活用したりできるため、設計から製造への橋渡しがよりスムーズになります。iPadでの操作とは思えないほど多機能かつ精度の高い測定が可能な点が、eDrawingsの大きな魅力といえるでしょう。
4.2. 断面表示による内部構造の確認
3Dモデルの外観だけでは見えない内部の構造を確認するには、「断面表示」機能が役立ちます。これはモデルを仮想的にカットして、内部の様子を可視化する機能であり、特に複雑な構造を持つ製品の検証には欠かせません。
操作方法はシンプルで、まず断面表示アイコンをタップし、切断面の方向(X・Y・Z軸など)を選択します。続いて、スライダーや数値入力で切断面の位置を微調整すれば、内部の確認ができます。表示範囲を絞ったり、透過表示と組み合わせたりすることで、細部をじっくり観察できます。
この機能を使えば、通常では見えない部品の干渉箇所や、取り付けスペースの妥当性を事前にチェックできます。たとえば、内部配管の通り道、ねじ穴の深さ、可動部分のクリアランスなど、設計の重要なポイントを正確に把握できます。
製造前にこうした内部の問題点を洗い出すことで、後戻り作業を防ぎ、製造コストの削減やリードタイムの短縮につながります。AR機能や寸法測定ツールと併用すれば、より多角的なレビューが可能となり、設計品質の向上にも貢献します。
5. AR(拡張現実)機能の基本と活用
引用:https://www.edrawingsviewer.jp/ed/news/03/index.html
iPadでeDrawingsを使う大きなメリットの一つが、AR(拡張現実)機能を活用できる点です。3Dモデルを実寸サイズで現実空間に重ね合わせることで、紙の図面やPC画面では得られないリアルな感覚で製品や構造物を確認できます。
たとえば、AR表示を使えば、現場の床やテーブルに設計モデルをそのまま投影することが可能になり、レイアウトの妥当性や設置スペースとの関係を視覚的に確認できます。これにより、口頭では伝えにくい形状やサイズ感を直感的に把握でき、設計ミスの防止やプレゼンテーションの説得力向上につながります。
設計者だけでなく、クライアントや製造担当者など、図面に不慣れな関係者にも内容が伝わりやすくなるため、情報共有の精度が格段に上がります。iPadとeDrawingsのAR機能を活用することで、設計と現場をつなぐ新しいワークスタイルが実現できるのです。
5.1. AR機能の概要
ARとは「Augmented Reality」の略で、現実の風景にコンピューターグラフィックスを重ねて表示する技術を指します。eDrawingsのAR機能では、ARKitに対応したiPadと専用のARマーカーを組み合わせる「マーカー方式AR」が採用されています。
この機能により、印刷したARマーカーをカメラで読み取るだけで、3Dモデルを現実空間に表示することができます。たとえば、設計した機器や製品を実際の設置予定場所に重ねて表示することで、サイズ感や配置バランスをリアルタイムで確認することが可能です。
また、AR表示は単なる見た目の確認だけではありません。製品と周囲の干渉の有無や視認性、安全性といった設計上のポイントもその場で確認できるため、事前のシミュレーション精度が大きく向上します。
設計初期段階や試作前のタイミングでこのようなAR活用ができれば、後工程の修正回数やコストを削減することにつながります。eDrawingsのAR機能は、設計の合理化に大きく貢献する実用的なツールなのです。
5.2. AR表示の基本操作
AR表示を始めるには、まずeDrawingsアプリ内のARアイコンをタップし、iPadのカメラを起動させます。次に、机や床などの平面を映すと、iPadが自動で空間を認識し、モデルを配置できるガイドが表示されます。このガイドをタップすれば、3Dモデルがその場所に表示されます。
表示されたモデルは、指先の操作で自由に回転、移動、拡大・縮小ができます。たとえば、ピンチ操作でサイズを調整したり、ドラッグして表示位置を変えたりといった直感的な操作が可能です。さらに、角度を変えてさまざまな方向からモデルを確認することもでき、視認性が大幅に向上します。
加えて、部品の一部を透過させて内部構造を見せたり、ワイヤーフレームやシェーディングなどの表示モードを切り替えることも可能です。表示モードを調整することで、用途に応じた可視性の確保ができます。
操作に慣れてくると、モデルの位置と現実空間とのマッチングもスムーズになり、実際の設置シーンに即したレビューや検証が手軽に行えるようになります。
5.3. AR活用の実践例
AR機能の実用性は、さまざまな現場で証明されています。たとえば製造業では、工場設備や大型部品の設置場所を事前にシミュレーションすることで、作業動線の確保や干渉チェックを効率よく行えます。現場での手戻りを防ぎ、工程の最適化にもつながります。
建築・内装業では、家具や設備のレイアウトを実際の部屋に重ねて表示し、施主やクライアントに提案内容を視覚的に伝えることができます。口頭説明では伝えきれない空間の広がりやデザインの雰囲気を、ARを通じて直感的に共有できます。
また、教育現場でもARの活用が進んでいます。たとえば、技術教育や工学系の授業で、3DモデルをAR表示させることで、部品の構造や動作をリアルに理解させることができます。実物がなくても、タブレット1台で立体的な演習が可能となるため、学習コストを抑えつつ理解を深められます。
このように、eDrawingsのAR機能は、設計・製造・教育といった多様な分野で、視覚的な理解を助ける強力なツールとして注目されています。
6. 応用機能とワークフロー
ここでは、eDrawingsをさらに便利に使いこなすための応用機能や、日々の業務を効率化するワークフローについてご紹介します。アニメーション機能を使えば、部品の組み立て順や動作の流れを視覚的に説明できます。また、マークアップ機能やコメント機能を活用すれば、設計に関する指示や確認事項をその場でやり取りでき、チーム内の認識のズレを防げます。
さらに、エクスポートや共有機能を知っておくと、完成した設計資料やマークアップ図面をスムーズに他者へ送信できるようになり、プロジェクト全体の連携がよりスピーディーになります。効率的なワークフローを実現するために、これらの機能を積極的に活用していきましょう。
6.1. アニメーション機能の活用
eDrawingsのアニメーション機能を使えば、部品がどのように組み立てられていくのかを順を追って表示することができます。特にアセンブリ(組立モデル)を扱う際には、部品の動きや位置関係を具体的に示すのに最適です。
操作は非常に簡単で、再生ボタンをタップするだけで組み立て手順のアニメーションが開始され、モデルが自動的に分解されたり復元されたりします。表示スピードを調整できるので、細かい部分をじっくり確認したいときにも便利です。
また、アニメーションによって部品同士の干渉や動作範囲の確認もしやすくなり、設計レビューやプレゼンテーションの際に非常に役立ちます。静的な図面だけでは伝えきれない設計の意図を、動きによってわかりやすく伝えることが可能になります。
6.2. マークアップとコメント機能
マークアップ機能を使えば、図面や3Dモデルに直接メモや線を書き込んで、設計変更の指示やアイデアを視覚的に共有することができます。たとえば、「この穴をもう少し大きく」や「ここに追加のネジ穴が必要」といった具体的な指示を、赤字で明確に示せます。
コメント機能を組み合わせて使えば、部品単位で補足説明や確認事項を記録できるので、誤解や伝達ミスを防ぐのにも効果的です。チーム全体で同じマークアップを共有することで、誰がどの指示を出したのかも明確になり、タスク管理がしやすくなります。
ただし、iPad版のeDrawingsでは一部の編集機能に制限があるため、本格的な書き込み作業や詳細な編集が必要な場合には、PC版との併用を検討することをおすすめします。
6.3. エクスポートと共有機能
eDrawingsでは、マークアップ内容やモデルの表示状態をPDFや画像ファイルとしてエクスポートすることができます。作成したファイルはメールに添付したり、クラウドストレージ経由で送信したりと、状況に応じて柔軟に共有可能です。
たとえば、AR表示で確認した設置シミュレーションのスクリーンショットを保存しておけば、後から会議で説明する資料としても使えます。断面表示や特定のアングルで固定したモデルの状態を記録しておくことで、視覚的な情報の抜け漏れを防げます。
また、複数のプロジェクトメンバーとリアルタイムで情報を共有したいときには、DropboxやGoogle Driveなどのクラウドサービスとの連携が非常に便利です。こうした共有機能をうまく活用することで、社内外の関係者とのコミュニケーションが円滑になり、意思決定のスピードも格段にアップします。
7. 業界別活用例
eDrawingsをiPadで活用することで、どのような業界でどのようなメリットが得られるのか、具体的な使用例を交えて紹介します。利用シーンや業務内容に応じて活用方法は異なりますが、共通するのは「図面確認や設計レビューが現場でそのまま行える」という点です。
特に、オフライン環境でも使えるという特性は、通信が不安定な場所で作業することが多い業界において、大きな強みとなります。ここでは、製造業・建築業・教育分野の3つの代表的な業種を取り上げ、それぞれの現場でどのようにiPad+eDrawingsが活用されているのかを見ていきましょう。
7.1. 製造業での活用
製造業では、組立ラインや品質検査、工程管理などのさまざまな場面で、CADデータの確認が必要になります。iPadにeDrawingsを導入することで、作業者が現場でそのまま図面を確認できるようになり、作業の効率化とミスの削減につながります。
たとえば、部品の取り付け位置やサイズ、取り付け方向などをその場で確認できるため、紙図面との突き合わせや口頭での指示が不要になります。AR機能を活用すれば、実際の機械設備にモデルを重ねて設置シミュレーションを行うことも可能です。
このように、現場での情報共有がリアルタイムで行えることで、作業の段取り時間が短縮され、生産性が向上します。また、図面に直接マークアップを加えて製造指示を可視化すれば、多国籍スタッフ間でも言語に依存せずスムーズなやり取りが実現できるという利点もあります。
7.2. 建築・建設業での応用
建築・建設分野では、現場での施工確認や施主向けの説明など、「見せる」機会が多くあります。iPadとeDrawingsを活用すれば、図面や3Dモデルをその場で提示できるだけでなく、AR機能により実際の空間にモデルを表示して説明することも可能です。
特に、間取りや高さ、奥行きといった空間的な情報は、平面図だけではイメージしづらいことがあります。AR表示により、家具や設備の設置場所をそのまま部屋に重ねて見せられるため、施主にとっても理解しやすく、納得感の高い提案ができます。
さらに、配管ルートや電気配線の確認にも、断面表示やアニメーション機能を活用することで、関係者間での合意形成がスムーズになります。こうした視覚的なツールの導入は、工期短縮や設計変更リスクの低減にも大きく貢献します。
7.3. 教育分野での利用
教育現場では、3D CADや製図の学習にeDrawingsが効果的に活用されています。iPadで図面を読み込み、タッチ操作で3Dモデルを拡大・回転・断面表示できるため、初学者でも直感的に設計の仕組みを理解できます。
AR機能を活用することで、現実空間にモデルを重ね合わせて表示できるため、構造や部品配置などをよりリアルに把握できます。たとえば、エンジンの内部構造や部品の組み立て順を実寸大で再現できるため、学習効果が高まります。
また、マークアップ機能を使えば、教師が設計課題に対してフィードバックを書き込み、生徒が図面上で修正を加えるといった双方向のやり取りも可能です。こうしたデジタルツールを使うことで、学習のスピードと質を高めながら、ペーパーレス化にも貢献できます。
8. トラブルシューティングとTips
eDrawingsは比較的安定して動作するアプリですが、使用環境やデータの状態によっては「ファイルが開けない」「ARが動作しない」「動作が遅い」といったトラブルが発生することもあります。本章では、そうしたよくある問題とその対処法に加えて、日常的な作業をより快適に行うための便利な設定や使い方の工夫を紹介します。
ちょっとした設定や習慣を取り入れるだけで、eDrawingsのパフォーマンスが向上し、作業時間の短縮やストレスの軽減につながります。バッテリーやメモリの使い方も含め、実務で役立つコツをおさえておきましょう。
8.1. よくある問題と解決方法
まず多く見られるのは、「ファイルが正常に開けない」というトラブルです。これは、ファイルが破損していたり、eDrawingsが対応していないバージョンのデータだったりする場合に起こります。最新版のeDrawingsを使用しているか、ファイルを正しく再ダウンロードしてみることで解決することがあります。
次によくあるのが、「AR機能が使えない」というケースです。これはiPadがARKitに対応していないか、カメラのアクセス権限がオフになっていることが原因である場合が多いです。設定アプリからeDrawingsのカメラアクセスを許可し、使用端末がARKit対応モデルかどうかを確認してみましょう。
また、「アプリが不安定で落ちる」または「動作が重い」と感じる場合は、まずeDrawingsアプリを完全に終了してから再起動し、それでも改善しない場合はiPadのOSバージョンやストレージの空き容量を確認しましょう。OSやアプリが古いままではパフォーマンスが劣化しやすく、トラブルの原因にもなります。
さらに、複数のアプリを同時に開いている状態ではメモリが圧迫され、eDrawingsが十分に動作しないこともあります。その場合は、不要なアプリを閉じてiPadのリソースを解放するのも有効です。
8.2. 効率的な使い方のコツ
日常的にeDrawingsを使う上で、効率的な作業環境を整えることも重要です。まず第一に、よく使う図面やモデルデータは、フォルダ構成を明確にして整理しておくことが大切です。案件ごとに分類したり、用途別にわけておくことで、必要なデータをすぐに見つけやすくなります。
また、クラウドストレージ(DropboxやGoogle Driveなど)を活用すれば、PCで作成したCADデータをiPadですぐに確認できます。これにより、現場でも最新データにアクセスしやすくなり、資料の受け渡しもスムーズになります。
バッテリー消費を抑えたい場合や、表示が重く感じる場合は、アプリ内設定でシェーディングや透過表示の簡易モードに切り替えるのもおすすめです。特にポリゴン数が多い大規模モデルを扱う際には、表示モードを切り替えるだけで快適さが大きく変わります。
さらに、iPad上で複数のアプリを同時に動かすと処理が重くなる原因になるため、不要なアプリはこまめに終了させておくことが望ましいです。必要な作業に集中できるよう、シンプルな作業環境を意識しましょう。
このようなちょっとした工夫を取り入れることで、eDrawingsをよりストレスなく快適に使い続けることができます。
9. 他のCADアプリとの連携
eDrawingsはSOLIDWORKS製品との親和性が高いことで知られていますが、それだけにとどまらず、他社のCADソフトと連携して使用することも可能です。この章では、eDrawingsを他のCADツールと一緒に使う際に知っておくべき連携方法や注意点について解説します。
実務では、複数のCADソフトを併用する場面が少なくありません。そのため、ファイル形式の互換性やデータの変換手順を理解しておくことが重要です。eDrawingsを活用することで、異なるツール間の橋渡しがしやすくなり、スムーズな図面共有が実現します。
また、データ連携を行う際にありがちなトラブルや事前確認のポイントも紹介します。こうした情報を把握しておくことで、設計ミスやデータ不整合のリスクを最小限に抑えることができます。
9.1. SOLIDWORKS製品との連携
eDrawingsはSOLIDWORKSと同じ開発元(Dassault Systèmes)によって提供されており、両者の連携性は非常に高いのが特徴です。SOLIDWORKSからは、「eDrawings形式で保存」機能を使うことで、EASMやEPRTといった形式に簡単に出力でき、それらのファイルをiPadのeDrawingsアプリで直接開くことができます。
また、SOLIDWORKS PDM(製品データ管理)システムと連携すれば、設計データのバージョン管理やアクセス権のコントロールもスムーズに行えます。これにより、チーム全体で最新の図面を共有し、設計ミスを防ぐ運用が可能となります。
現場では、設計者だけでなく営業や品質管理、購買担当、さらにはクライアントもeDrawingsを使ってモデルを確認することができます。これにより、関係者全員が設計内容をビジュアルで把握でき、打ち合わせや意思決定がスピーディに進みます。
こうした使い方は、特に設計から製造への橋渡しを効率化したい現場にとって、大きなメリットとなるでしょう。SOLIDWORKSとの連携を軸にした運用は、eDrawingsの真価を発揮するポイントのひとつです。
9.2. 他社CADソフトとの互換性
eDrawingsは、SOLIDWORKS以外のCADソフトとの連携にも対応しており、AutoCAD、Inventor、Creoなどの主要ソフトで作成されたDWGやDXF形式のファイルも表示することができます。これにより、他社製CADツールを使っているチームやクライアントとも、図面のやり取りがしやすくなります。
ただし注意点もあります。各CADソフトには独自の表現形式やフィーチャーがあり、eDrawingsで読み込むと一部の情報(カスタムプロパティ、パラメトリック寸法など)が正確に表示されない場合があります。そのため、初めて使うデータは事前にiPadで開いて確認することが重要です。
また、万が一表示に不具合が出た場合は、中間フォーマット(例:STEPやIGES)に一度変換してから取り込むことで、表示の安定性が向上するケースもあります。ファイルサイズや精度とのバランスを見ながら、適切な形式を選びましょう。
業務ではDWGやDXFの使用頻度が高く、クラウドストレージを使ってeDrawingsに取り込めば、外部の協力会社や現場担当者とのスムーズなデータ共有が可能になります。こうした柔軟な互換性は、eDrawingsを実務に導入する大きな利点の一つです。
10. まとめとこれからの活用に向けて
本記事では、iPadで使えるモバイルCADビューア「eDrawings」を活用した図面の確認方法から、寸法測定、AR機能による拡張現実表示、そして実務に役立つ応用機能や他CADソフトとの連携まで、幅広く解説してきました。
iPadでeDrawingsを使う最大の利点は、その機動力と直感的な操作性にあります。いつでもどこでも図面を開き、3Dモデルを回転させたり寸法を確認したりできるため、現場対応力が格段に向上します。さらに、AR機能を活用すれば、製品の設置シミュレーションや空間確認が現実空間で手軽に行えるため、設計ミスや作業の手戻りを防ぐことができ、プロジェクト全体の品質向上にもつながります。
また、寸法ツールや断面表示、マークアップ機能を使えば、関係者との意思疎通がより視覚的かつ具体的に行えます。特に製造、建築、教育の現場においては、図面を「見る」だけでなく「理解し、伝える」ツールとして、eDrawingsは非常に強力な存在となるでしょう。
これからは、ARやAI技術のさらなる進化により、CADデータの可視化や分析の自動化が加速していくと考えられます。たとえば、干渉チェックの自動化や現実空間との照合機能など、現場と設計をリアルタイムでつなぐ新しい機能が続々と登場する可能性があります。また、5GやWi-Fi 6といった高速通信技術が普及することで、大容量データの共有やクラウド活用もより身近になるでしょう。
こうした変化に備えるためにも、まずはeDrawingsの基本操作と活用方法をしっかりと身につけておくことが重要です。モバイルデバイスを活用した図面管理は、これからのデジタル設計・製造において、もはや特別なものではなく「当たり前のツール」となっていくでしょう。
iPadとeDrawingsを活用することで、設計と現場、そしてチーム全体の連携をさらに強化し、よりスマートで効率的なものづくりを実現していきましょう。今こそ、デジタル化の一歩を踏み出す最適なタイミングです。
[adrotate group=”1″]<参考文献>
eDrawingsで2次元設計と3次元設計をレビュー | eDrawings Viewer
https://www.edrawingsviewer.com/ja
モバイル デバイスの eDrawings – 2025 – eDrawings ヘルプ
https://help.solidworks.com/2025/japanese/edrawings/c_edw_for_mobile_devices.htm
Dassault Systemes SolidWorks Corporation Apps on the App Store
https://apps.apple.com/us/developer/dassault-systemes-solidworks-corporation/id520231939
eDrawings – Google Play のアプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.solidworks.eDrawingsAndroid&pli=1