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イオンモールのAR実証実験に期待できる、新たな視覚技術の可能性とは

巨大ショッピングモールでお馴染みのイオンモールでは、新たな販売促進手法の開拓やビジネスモデルの開拓に向けた、次世代型のAR運用の検証が進んでいます。

この記事では、2022年8月より開始しているイオンモールのAR実証実験について、解説します。

目次:

  1. イオンモールのAR実証実験について
  2. 既存のAR技術の課題
  3. イオンモールの実証実験から期待できること
  4. AR活用の可能性を広げる最新技術

イオンモールのAR実証実験について

2022年8月、株式会社博報堂と株式会社博報堂DYメディアパートナーズは、イオンモール株式会社の「THE OUTLETS KITAKYUSHU」にてARの実証実験を開始したことを発表しました*1。

この取り組みは、生活者の広告体験を含め、顧客体験の向上にAR技術がどのように寄与するかを検証するもので、ショッピングモールという日常空間でAR技術がどれくらいそのポテンシャルを発揮できるかが明らかになる取り組みです。

ARを使った広告やサービスの本格的な提供はまだいまだに進んでおらず、どの企業の施策も試験的な運用の域を出ていません。

今回のプロジェクトでは企業のコミュニケーション活動に貢献するオリジナルソリューションを開発することを目的に、仮想空間を使って現実では表現ができないオブジェクトの表示などを行うことで、来場者に新しい体験価値を提供することに努めます。

hakuhodo-XRとは

今回のプロジェクトを推進する博報堂の視覚技術プロジェクト「hakuhodo-XR」は、ARをはじめVRやMRなど、最新の視覚技術運用の研究とソリューション開発を推進しています。

多様なコミュニケーション手法と先端テクノロジーを融合することで、独自のマーケティングソリューションの開発や、DX手法の開拓に向けた研究を行ってきました。

イオンモールでの実証実験のこれから

今回のイオンモールでの実証実験においては、地元の美術系学生や若手アーティストの作品をAR空間上に展示する「アートAR展示会」と、子供たちが作成したぬり絵をAR上に展示する「ぬり絵AR体験会」という形でAR活用を進めています*2。

AR画面を通じて、モール内の空中にアート作品が表示されたり、何もない空間に子供のぬり絵が表示されるような体験を提供し、従来とは異なる展示会のあり方を模索するものです。

イオンモールでのAR実証実験は複数回行われる予定で、今回の「アートAR展示会」は第一弾となっています。今後は若者をターゲットとする北九州市の地方創生都市ブランド「New U」とのコラボレーションを予定しており、ARの実証実験だけでなく、地方活性化の役割も担うことが期待されます*3。

既存のAR技術の課題

AR技術はこれまでもその可能性に幾度となく注目を集めてきましたが、運用に際してはその課題も指摘されてきました。

ARデバイスの不足

AR活用の大きな問題とされてきたのが、ARデバイスの不足です。ARやVRなど、最新の視覚技術には常に専用のデバイスの存在が必要とされてきたため、運用機会は限られてきました。

ARは肉眼で利用できるものではなく、ARを表示できるデバイスがあって初めて機能する技術です。

そのため、ARを日常的に利用するためには専用のデバイスを持ち歩く必要があり、そのためのARゴーグルなども開発されてきましたが、いずれも技術不足や汎用性の低さなどから、広い普及には至っていません。

マーカーの必要性

AR技術を日常的に目にする機会は増えていますが、運用方法にも限界があります。というのも、ARは専用のQRコードやマーカーを経由しなければ正しく表示されないためです。

ARゴーグルを介すると、ARは何もないところからオブジェクトが現れているように見せてくれますが、実際には専用のマーカーが設置されて初めて、位置関係などを考慮したオブジェクト表示が可能になります。

マーカーを使わずにARを利用するとなると、オブジェクトに現実の地形や位置関係を反映させることができず、利用シーンが大きく限定されてしまいます。

表示できる情報のキャパシティ

ARは直接マーカー情報を読み込んで表示するものもあれば、オンライン経由でオブジェクトを表示するケースもあります。オンラインでAR情報を表示する場合、質の高いオブジェクトを表示するとなると、そのダウンロードに多くの容量と時間を必要とするため、スムーズな描写を阻害してしまいます。

そのため日常的にARを利用するためには、ある程度グラフィック描写も妥協しなければ適切なスピードでの表示は叶いませんでした。

AR活用の可能性を広げる最新技術

ARの利用には課題があるものの、近年は最新技術の普及により、AR運用の課題も次々と解消されつつあります。

高性能なスマホの普及

ARの普及に大きく貢献しているのが高性能なスマホの登場です。ラップトップと変わらないような処理能力を備えたスマホが続々と登場していることで、ARのような容量の大きなオブジェクトも、容易に表示できるようになりました。

また、GPSやジャイロセンサーを搭載したモデルが広く普及したことで、より正確な場所でARオブジェクトを表示したり、高度なAR活用の可能性も広がっています。

5GやIoTの普及

次世代高速通信と言われる5Gの普及も、AR活用をより促進すると期待されています。従来の4G回線よりはるかに大容量のデータ通信を高速で行えるようになったことで、高度なグラフィックのARオブジェクトも、スピーディかつ正確に描画できるようになりました。

また、IoT技術が発達したことで、至る所に設置されたセンサーを活用し、より正確なARの表示や、ARの新しい使い方についても研究が進んでいます。

マーカーレスAR

AR利用にはマーカーの設置が不可欠でしたが、最近ではVPSと呼ばれる技術などを使った、マーカーレスのARも登場しつつあります。

上で紹介したイオンモールにおける実証実験でもマーカーレスのARが採用されており、独自のクラウドARアプリを使うことで、正確な空間マッピングを実現しています*4。

まとめ

ARは魅力的な技術ですが、運用に際しては課題も多いとされてきました。しかしイオンモールにおける実証実験をはじめ、日本国内では各企業や研究機関による次世代のAR運用に向けたプロジェクトも展開されつつあります。

今後の技術開発や実験次第では、近い将来、日常的にARを利用することになる未来も十分にありえるでしょう。

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参考:
*1 博報堂「hakuhodo-XR、AR技術を活用し 新しい顧客体験の創出に向けた商業施設での実証実験を開始」
https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/99179/
*2 リテールガイド「イオンモール、AR技術を活用し新しい顧客体験の創出に向けた実証実験を開始」
https://retailguide.tokubai.co.jp/tech/24370/
*3 上に同じ
*4 上に同じ

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