Inventorのカスタマイズ完全解説|時短・省力化を実現する設定と活用法
1. はじめに|Inventorを“自分仕様”にカスタマイズしよう
「クリックが多い」「コマンドが見つからない」「図面づくりに手間取る」——Inventorを使っていると、そんな小さなストレスが積み重なりがちです。実はその多くは、カスタマイズで解消できます。画面を自分の使い方に合わせ、よく使う操作へ最短でたどり着けるように整えるだけでも、作業はぐっと軽くなります。
本記事で目指すのは、“毎日のルーティンを最短経路にすること”。具体的には次の4つを中心に解説します。
- UIの整理:リボンやクイックアクセスツールバーを用途別に最適配置
- キーボード最適化:ショートカットやコマンドエイリアスで即時起動
- テンプレートとパスの統一:図面枠・スタイル・保存先を標準化
- iLogicによる自動化:条件に応じた寸法・フィーチャ・注記の自動処理
どれも小さな設定から始められるうえ、積み重ねるほど効果は大きくなります。変更に不安がある方向けに、設定のバックアップ/リセット方法も紹介します。
このあと、すぐに試せる時短テクから、チームで使える標準化・自動化まで順番に見ていきましょう。
2. カスタマイズの基本|Inventorでできる主な設定項目
Inventorには多彩な設定項目が備わっており、ユーザーの習熟度や作業スタイル、さらには社内ルールに合わせて柔軟にカスタマイズできます。たとえば、UI(ユーザーインターフェース)の見直しを行い、メニューやパネルを整理するだけでも、使用頻度の低いコマンドを非表示にでき、画面がすっきりして視覚的な混乱を防げます。これだけでも操作の手間が減り、集中しやすい作業環境を作ることが可能です。
また、ショートカットキーやコマンドエイリアス機能(Inventorでも利用可能)を活用すれば、線分や押し出しといったよく使うコマンドをワンタッチで起動できます。クリック回数が大幅に減るため、作業スピードの向上や疲労軽減にも効果的です。さらに、テンプレートやファイルパスを統一しておくと、図面設定や保存先のミスを防ぎ、設計環境全体の安定性を高めることができます。
加えて、iLogic(Inventorに内蔵された自動化機能)を活用すれば、特定の設計フローを自動で処理することも可能です。寸法の自動設定や命名規則のルール化などを行うことで、設計の品質を一定に保ちながら、繰り返し作業を効率化できます。Inventorのカスタマイズは範囲が広いですが、初心者は基本設定から、慣れてきたら自動化へと段階的に取り組むのがおすすめです。
2.1. ユーザーインターフェースのカスタマイズ
UI(ユーザーインターフェース)を自分の使いやすい形に整えると、Inventorの操作効率が大きく向上します。たとえば、リボンをカスタマイズして必要なコマンドだけを残し、使わないパネルを非表示にするだけでも、視線移動を減らすことができます。
さらに、UIには「クイックアクセスツールバー」や「ショートカットメニュー」も含まれます。これらに頻繁に使う操作を登録しておけば、リボンを切り替える必要がなくなり、操作の流れがスムーズになります。
Inventorのリボンやツールバーは、表示位置・表示状態・配置を自由に変更できるため、自分の作業動線に合わせたレイアウトを考えてみましょう。カスタマイズの第一歩として、UIの整理から始めるのが効果的です。
2.2. ショートカットとコマンドエイリアスの設定
ショートカットキーを設定しておくと、コマンドを瞬時に呼び出せます。通常ならリボンの中から探してクリックするところを、キーボード操作だけで実行できるため、作業効率が大きく向上します。
コマンドエイリアス入力(Inventorでも利用可能)では、1文字から数文字の入力で任意のコマンドを実行できます。AutoCADを使った経験がある人なら、同じ感覚で設定可能です。たとえば、「L」で線分、「D」で寸法など、自分に合った略称を設定しておくと、CAD操作のリズムが途切れず、作業スピードが安定します。
また、同じキーの重複割り当てには注意が必要です。競合があると動作が不安定になる場合があるため、定期的に設定を見直して整理しましょう。自分の作業習慣に合わせて最適化することで、よりスムーズな設計環境を構築できます。
2.3. テンプレートとファイルパスのカスタマイズ
テンプレートを整備しておくと、プロジェクトの初期設定を簡単に統一できます。たとえば、端末ごとに単位や図面枠が異なると、後からデータが混在してトラブルの原因になることがあります。そこで、共通のテンプレートを用意し、社内標準のフォーマットに合わせておくと安心です。
会社ロゴ入りの図面テンプレートを作成しておけば、新規作成時に設定をやり直す手間が省けます。さらに、Inventorのファイルパスを正確に指定し、ライブラリや参照フォルダを共有化することで、チーム全体のミスを防ぎやすくなります。
こうした統一を徹底することで、「どこに保存するか」「どのテンプレートを使うか」を迷わず決定でき、作業効率の向上とプロジェクト全体の安定運用につながります。
2.4. iLogicによる自動化設定
iLogicは、Inventorに標準搭載されている自動化機能です。Visual Basicに似たルール構文を使って、寸法値や形状を条件によって自動変更したり、パラメータを制御したりできます。
たとえば「長さが一定以上なら補強リブをONにする」といった条件をルール化すれば、モデルを自動的に切り替えられます。これにより、複雑な設計作業でも設定ミスを減らし、繰り返しタスクを自動処理できるようになります。
さらに、図面への自動注記や部品名の自動入力など、活用範囲は非常に広いです。チームで作業する場合は、iLogicルールをテンプレートに埋め込むことで、全員が同じルールで作業でき、プロジェクト全体の品質と作業スピードを同時に高められます。
3. UI(ユーザーインターフェース)のカスタマイズ
Inventorのユーザーインターフェース(UI)を整えることで、画面上の混乱を抑え、作業効率を大幅に高めることができます。たとえば、リボンやパネルの構成を最適化してよく使う機能をまとめておくと、メニューを切り替える手間が減り、設計作業がスムーズに進みます。
UIのカスタマイズでは、不要なアイコンやタブを非表示にして、シンプルな画面にするのが効果的です。見通しの良い作業環境は集中力を維持しやすく、誤操作を減らすことにもつながります。特に初心者にとっては、整理された画面構成が操作フローを理解する助けになります。
各設定は、リボン上で右クリックして[クイックアクセス ツールバーに追加]を選ぶか、右上の▼メニューから[クイックアクセス ツールバーのカスタマイズ]を開くことで変更できます。一度操作に慣れれば、新しいコマンドの追加や削除もすぐに行えるため、長期的な作業効率化を目指すうえで早めに取り組みたいポイントです。
3.1. リボンとツールバーの整理
リボンはInventorの操作を支える中心的なUI要素であり、頻繁に使う機能へすばやくアクセスするための場所です。標準状態では多くのパネルやタブが用意されていますが、実際に必要な機能は業務内容によって異なります。
不要なパネル(たとえば、3Dアニメーションや解析ツールなど)を非表示にすれば、画面がすっきりし、目的のコマンドを探しやすくなります。リボン カスタマイズでは、よく使うコマンドを手前に、使用頻度の低いものを奥に配置して階層を浅く保つのがコツです。
イメージとしては、「左上に最も頻繁に使うコマンド」「その隣に次に使うコマンド」を並べるようにレイアウトします。視線やマウスの移動距離を最小限に抑えられ、設計現場での“ちょっとした時間ロス”を積み重ねない工夫ができます。こうした改善が、結果的に大きな時短効果を生み出します。
3.2. クイックアクセスツールバーの活用
クイックアクセスツールバーは、ウィンドウ上部に並ぶ小さなアイコン群のことです。初期状態では[保存]や[取り消し]、[再実行]などが配置されていますが、このツールバーも自由にカスタマイズできます。
たとえば、図面作成をよく行う人は寸法記入やフィーチャ関連のコマンドを登録しておくと、作業が格段にスムーズになります。スケッチ作成や修正を多用する場合は、寸法や投影などのコマンドを追加しておくと便利です。
クイックアクセスツールバーは常に画面上に表示されているため、タブを切り替える必要がありません。よく使う操作をまとめておけば、迷わずボタンを押せるようになり、Inventorの操作性を即効で改善できるポイントです。
3.3. パネルとタブのカスタマイズ
リボン内のパネルやタブは、ドラッグ&ドロップで自由に配置を変えることができます。モデリング作業を中心に行う場合は、関連パネルをまとめて最上段に配置すると操作がスムーズになります。
一方で、アセンブリ作業を中心とする場合は、アセンブリ関連のコマンドを別タブにまとめておくと、フェーズごとの見やすさが向上します。こうした整理は、単に見た目を整えるだけでなく、作業中の思考整理にもつながり、設計の流れを明確にします。
設定が整ったら、カスタマイズ内容をエクスポートして用途別プロファイルとして保存しておくと便利です。XML形式で保存すれば、後からインポートしてすぐに同じ環境を再現できます。業務の進行やプロジェクト内容に応じてUIを再配置したい場合にも、この仕組みは非常に役立ちます。
3.4. 用途別作業環境の設定
用途別の作業環境を構築しておくと、プロジェクトごとに最適なUIをすぐに呼び出せます。たとえば、「3Dモデリング重視」「アセンブリ設計専用」「図面作成中心」といったテーマ別に画面構成を分けておくと、必要な機能に最短でアクセスでき、操作効率が大幅に向上します。
設定の保存は、[ファイル]→[オプション]→[アプリケーション オプション]の[エクスポート]から行えます。構成をXML形式で保存しておけば、他のPCやメンバー環境へも簡単に適用できます。リボン上で右クリックして[クイックアクセス ツールバーに追加]を選べば、必要なコマンドを手早く登録できます。共有された設定ファイルを使えば、チーム全体で同じ画面構成を再現できるため、共同作業時の混乱を防ぐ効果もあります。
このように用途別に環境を切り替えることで、慣れた作業フローを崩さずに効率を高められます。結果として、プロジェクト全体の生産性を底上げすることにつながるでしょう。
4. ショートカットキーとコマンドエイリアスの設定

Inventorのショートカットキーやコマンドエイリアス機能は、設計スピードを格段に高めるための重要な要素です。マウス操作と併用することで、画面上での移動やクリックの回数を減らし、目線移動も最小限に抑えることができます。
特に、ショートカット設定を戦略的に見直すと、指の動きだけでさまざまな機能を呼び出せるようになります。初期状態の設定でも十分に使えますが、自分の操作スタイルや作業内容に合わせてカスタマイズすれば、効率はさらに向上します。
「操作に時間がかかる」「同じ作業を何度も繰り返している」と感じている方にとって、ショートカット設定は最も即効性のある改善策です。実際、よく使うコマンドを登録するだけでも、作業時間が数割短縮できることがあります。日々の積み重ねが大きな時短につながるため、早めに取り組む価値があります。
4.1. ショートカットキーの登録と変更
ショートカットキーのカスタマイズは、[ツール]タブ → [オプション] → [カスタマイズ] → [キーボード]の順に操作して行います。リストの中から変更したいコマンドを選び、割り当てたいキーを入力するだけで設定完了です。
よく使うコマンドほど、短く覚えやすいキーを割り当てるのがコツです。たとえば、押し出しコマンドを「E」、回転コマンドを「R」に設定すれば、片手で素早く操作できます。こうしたシンプルな登録でも、毎日の作業効率が大きく変わります。
設定後は、同じキーが別のコマンドに割り当てられていないか必ず確認しましょう。重複すると、意図しない動作や上書きが発生することがあり、かえって作業が煩雑になります。定期的にショートカット設定を見直すことで、安定した操作環境を維持できます。
4.2. AutoCAD経験者向けの設定
AutoCADからInventorに移行した方の多くは、似ているようで微妙に違う操作感に戸惑いがちです。そんなときは、コマンドエイリアスやショートカットをAutoCADに近い形に統一しておくと、スムーズに移行できます。
たとえば、直線コマンドを「L」、寸法を「D」にするなど、AutoCADと同じキー割り当てにすれば、操作の感覚をそのまま引き継げます。新しいソフトに慣れる時間を短縮できるうえ、ミスも減ります。
また、マウス操作まで含めてAutoCAD風に調整する上級者もいます。リボンの切り替えやカーソル移動の手間が減るため、作業の流れを中断することなく設計を進められます。慣れ親しんだ操作体系を再現することは、長期的な生産性向上にもつながります。
4.3. カスタムコマンドエイリアスの最適化
コマンドエイリアス入力を使えば、数文字の入力でコマンドを起動でき、リボンを開くよりもはるかに早く操作できます。たとえば、「EX」で押し出し、「SP」でスケッチ平面など、自分が覚えやすい略称を設定しておくと、作業スピードが自然と上がります。
ただし、設定数が多すぎると覚えきれなくなり、逆に非効率になることもあります。最初は頻出コマンドや重要なツールだけに絞って設定するのがおすすめです。特に操作頻度が高い3Dモデリングやスケッチ関連のコマンドから始めると効果を実感しやすいでしょう。
また、チームで共同作業を行う場合は、コマンドエイリアスを共通化しておくと便利です。全員が同じ略称を使うことで操作方法の統一が図れ、新人教育やプロジェクトの引き継ぎもスムーズになります。
4.4. おすすめショートカット一覧
ここでは、Inventorでよく使われるショートカットの一例を紹介します。いずれも設定画面で自由に変更できるので、自分にとって使いやすい配置を試してみてください。
- 線分:L
- 寸法:D
- 押し出し:E
- 回転:R
これらのように、頻繁に使う操作を短いキーに割り当てておくと、マウスの移動距離を最小化できます。長時間作業でも疲れにくくなり、リズムよく設計を進められるようになります。
もちろん、業務内容によって最適なキー割り当ては異なります。モデリング中心の設計か、アセンブリ主体の業務かを考慮して、自分専用のショートカット構成を作ることが大切です。日々使うコマンドを振り返り、最も効率的な組み合わせを模索していきましょう。
5. テンプレートとファイルパスのカスタマイズ
テンプレートとファイルパスの設定は、作業全体の統一性と品質を安定させるうえで欠かせない要素です。特に寸法単位(mm・inch)や標準図面枠、フォント、ライブラリ構成などは、プロジェクトやチームによって異なることが多く、統一されていないとトラブルの原因になります。
複数人で作業する場合は、共通の図面テンプレートを整備しておくと便利です。誰が開いても同じ設定環境で作業を開始できるため、図面のばらつきを防ぎ、チーム全体の生産性を高められます。特に社内標準を定める場合は、CADテンプレート設定を通じて図面表現の統一を図るのが効果的です。
さらに、Inventor ファイルパスを正確に指定し、保存先や参照先のフォルダ構造を整理しておくことも重要です。ファイルを探す手間を減らせるだけでなく、モデルや部品の所在を明確にしてトラブルを防げます。
なお、検索パス・ライブラリ・コンテンツセンターなどの管理は、プロジェクトファイル(.ipj)で一元化するのが一般的です。テンプレートや参照先をチーム全体で統一する際は、この.ipj設定も合わせて見直しましょう。
5.1. 統一されたテンプレート設定
新しいパーツや図面を作成するたびに設定をやり直していては、時間と労力が無駄になってしまいます。そこで、会社やプロジェクトで頻繁に使用する寸法スタイル、文字サイズ、タイトルブロックなどをあらかじめテンプレートに組み込んでおきましょう。
これをInventor テンプレートとして登録しておけば、新規作成時にテンプレートを選択するだけで必要な仕様がすべて整った状態から作業を始められます。その結果、図面作成のスピードアップと品質の一定化が実現します。
設計効率をさらに高めるには、細部の設定も標準化することが大切です。たとえば、標題欄のレイアウトや材料情報の入力欄なども含めて共通化しておくことで、図面間の情報の整合性が取りやすくなり、チーム全体の設計品質が安定します。
5.2. 図面テンプレートのカスタマイズ
図面テンプレートは、寸法単位・尺度・線種・枠組み・タイトル欄などの設定を固定しておける仕組みです。これを活用すれば、プロジェクトごとに異なる規格を素早く反映できます。
たとえば、A3図面枠に社名ロゴを配置し、標題欄に自動的に日付や設計者名を表示させる設定を行っておけば、毎回の入力やサイズ変更の手間を省けます。こうしたCADテンプレート設定により、入力ミスを防ぎ、作図のスピードを向上させることができます。
さらに、3Dモデルから図面を生成する際のビュースタイルをテンプレートで統一しておくのも効果的です。常に同じレイアウト・尺度・配置で投影図を作成できるため、複数の図面を比較するときにも視認性が高まります。
5.3. 保存先とライブラリフォルダの指定
Inventor ファイルパス設定を明確にしておくことで、作業のたびにフォルダを探す手間を減らせます。設定は、[オプション]→[ファイルタブ]→[ファイルパス設定]から行い、テンプレート、ライブラリ、プロジェクトフォルダなどのパスを指定します。
共有ライブラリをネットワークドライブ上に置く場合でも、正確にファイルパスを設定しておけば「部品データが見つからない」といったエラーの発生を防止できます。その結果、チームメンバー間のデータ共有がスムーズになり、作業効率も向上します。
特に、複数拠点での共同作業や長期プロジェクトでは、初期段階でのパス管理が非常に重要です。後からフォルダ構成を変更するとリンク切れなどの問題が起きやすいため、最初に明確なルールを設けて整理しておくことをおすすめします。
5.4. テンプレート活用テクニック
テンプレートは作るだけでなく、「どう運用するか」も大切です。たとえばバージョン管理を導入し、更新履歴を残すようにしておくと、誰がいつどんな変更を行ったのかを追跡できます。
また、複数のテンプレートを使う場合は、ファイル名や用途を明確に分けると良いでしょう。たとえば「モデリング用」「アセンブリ用」「図面用」と用途別に整理しておくと、混同を防ぎ、新人エンジニアでも迷わず選べます。
さらに応用的な活用法として、テンプレート内にiLogicルールを組み込むことも可能です。たとえば、新規部品作成時に自動で寸法を設定したり、ファイル名を命名規則に従って自動生成したりする仕組みを導入すれば、作業の自動化と品質向上を同時に実現できます。
6. iLogicによる自動化カスタマイズ
iLogicは、Inventorに標準搭載されているスクリプト機能で、設計作業を自動化するための非常に強力なツールです。複雑なモデリングやルーチンワークを効率化できるのが最大の特徴で、条件に応じて寸法値やフィーチャーのON/OFFを切り替えたり、モデル構成を自動で変更したりすることが可能です。
たとえば、iLogicをCAD自動化ツールとして活用すれば、長さや幅を変更した際に関連する部品が自動で再調整され、図面にも変更が反映される――といった高度な連動処理を簡単に実現できます。これは、あらかじめ設定しておいた条件が満たされた際に自動的に処理が実行される仕組みであり、人的ミスの防止や全体的な設計スピードの向上に直結します。
ただし、iLogicはプログラミング要素を含むため、初めて触れる方には少し難しく感じられるかもしれません。最初はシンプルなルールから始め、動作を確認しながら徐々に複雑な処理を追加していくのが成功のコツです。
6.1. iLogicの基本と活用例
iLogicとは、Visual Basicに近い文法で「ルール」を記述し、モデルや図面に自動処理を組み込む仕組みです。ルールの中では、パラメータ値やフィーチャーの有効/無効、注記やプロパティ値の変更などをプログラム的に制御できます。
たとえば、「幅が500mmを超えたら補強リブを自動的に追加する」といったルールを数行のスクリプトで実装可能です。また、モデルの更新と同時に図面注記へ補足文字を自動挿入するなど、ドキュメント作成まで含めた自動化も簡単に行えます。
特に、設計サイクルの早いプロジェクトでは、iLogicルールを設定しておくだけで毎回の同じ手動操作を省略できるため、大きな時短効果を発揮します。ルールの再利用やテンプレートへの組み込みによって、長期的に見ても安定した効率化を維持できる点が魅力です。
6.2. テンプレートとiLogicの組み合わせ
iLogicルールをテンプレートファイルに組み込むことで、すべての新規部品や図面に自動的に同じロジックを適用できます。これにより、作業ルールの統一とミス防止の両立が可能になります。
たとえば、部品ファイルを作成する際に「日付+連番」でファイル名を自動生成するルールをテンプレートに組み込んでおけば、チーム全員が同じ命名規則で作業できます。その結果、ファイルの重複保存や誤上書きを防ぎ、データ管理の手間も大幅に削減できます。
さらに、寸法スタイルや注記スタイルの設定変更をiLogicで制御すれば、テンプレートを通して既存データにも自動反映できます。ルールを一度修正するだけで、複数の図面やモデルを一括更新できるため、設計標準の維持と業務効率化を両立できるでしょう。
6.3. スクリプト管理と共有のポイント
iLogicを運用する際には、ルールの管理方法を明確にすることが重要です。テンプレートに直接埋め込むのも便利ですが、複数のルールを整理して使いたい場合は、外部ファイルとして共通フォルダに保存し、チーム全体で共有する方法がおすすめです。
また、複数のメンバーが同時にルールを更新する場合は、バージョン管理システムを導入して変更履歴を記録しておくと安心です。誤って古いルールに戻してしまうトラブルを防ぎ、常に最新の設定を維持できます。
さらに、ルール名や変数名、コメントの書き方を統一しておくと、他のメンバーがスクリプトを理解しやすくなります。Notepadなどのテキストエディタで開ける形式のため、編集や確認も容易です。こうした基本的なルール整備を行うことで、iLogicの運用が長期的に安定し、チーム全体の生産性向上に繋がります。
7. よくあるカスタマイズの失敗と対処法
カスタマイズは上手に使えば作業効率を大きく向上させる“強力な味方”ですが、設定を誤ると逆にInventorが不安定になったり、エラーが頻発したりすることがあります。こうしたトラブルや失敗例をあらかじめ知っておくことで、問題を未然に防ぐことができます。
特に注意すべきなのは、「設定を変えすぎて自分でも分からなくなる」ケースです。ショートカットの競合でコマンドが実行できなくなったり、リボンを非表示にしすぎて必要なツールが見つからなくなったりと、“やりすぎ”が原因の不具合は少なくありません。
そのため、大きな変更を行う前に設定をバックアップしておく習慣をつけましょう。バックアップさえあれば、何かあっても簡単に元に戻せます。変更履歴を残しながら安全に試行錯誤することが、Inventorカスタマイズを長く活用するうえでの鉄則です。
7.1. 一般的なトラブルとその解決策
設定を一度に多く変更すると、競合が発生して「ショートカットが効かない」「タブが消える」といった問題が起こりやすくなります。変更は少しずつ行い、異常を感じたらすぐに原因を切り分けることが大切です。
また、設定ファイルが破損すると、Inventor自体が起動しなくなることもあります。その場合は、Inventor Reset Utilityを使って既定値にリセットするか、アドインやカスタマイズを一時的に無効化して状態を確認しましょう。問題のある設定を特定できれば、最小限の手戻りで復旧が可能です。
さらに、変更履歴やバックアップを残しておけば、復元作業もスムーズです。思いつきで設定をいじるのではなく、どの項目をどう変更したかをメモしておくことで、トラブル発生時の対応力が大きく向上します。
7.2. リセットとバックアップの方法
Inventorの設定バックアップは、[ファイル]→[オプション]→[アプリケーション オプション]の下部にある[インポート]/[エクスポート]機能から行えます。エクスポートを選択すれば、現在の設定をXML形式で保存でき、環境の再構築時にすぐ復元できます。
何らかの不具合が起きた場合は、そのバックアップファイルを使って以前の安定状態へ戻しましょう。特に頻繁にカスタマイズを行う人は、安定した設定を定期的に保存しておくマイルストーン管理をおすすめします。
どうしても復旧できないときは、最終手段としてInventor Reset Utility(初期化ツール)を使用し、設定を完全にリセットします。初期化の前には必ずバックアップを取っておくことが重要です。すべての設定がリセットされるため、一から環境を再構築する必要はありますが、不安定な状態を長引かせるよりも安全な選択です。
7.3. トラブル時の対応フロー
トラブルが発生した際は、まず問題の範囲を切り分けることから始めましょう。特定の図面やモデルだけで問題が起きる場合は、そのファイル固有の設定や参照先を確認します。一方で、どのファイルを開いても同じエラーが出る場合は、Inventor全体の環境設定やUIカスタマイズに原因がある可能性が高いです。
環境全体に影響があると判断した場合は、ユーザー設定ファイルをバックアップから復元するか、初期化ツールでリセットして再構築を検討します。小さな不具合を放置すると、後々大きなエラーにつながることもあるため、早期対応が肝心です。
最後に、同じ問題を繰り返さないために、日常的なバックアップ習慣を確立しておくことが重要です。わずかな手間で大きなトラブルを防げるため、カスタマイズを始める段階から保全体制を整えておきましょう。
8. まとめ|カスタマイズは小さな積み重ねから始めよう
本記事では、Inventorのカスタマイズによって作業効率を高める方法を、基本から応用まで段階的に解説しました。リボンやツールバーの整理、ショートカットやコマンドエイリアスの設定、テンプレート・ファイルパスの統一、そしてiLogicによる自動化まで、少しずつ工夫を重ねていくことで、Inventorをより快適で生産的な環境へと変えられます。
カスタマイズを始める際は、まずUI(ユーザーインターフェース)の整理から着手するのがおすすめです。視覚的なわかりやすさが向上し、日常の操作がスムーズになります。その後、ショートカットやテンプレート設定を整えていくことで、作業の手戻りが減り、効率化の効果を実感しやすくなるでしょう。慣れてきたら、iLogicによる自動化にも挑戦してみてください。日常の繰り返し作業が一気に省力化され、設計品質の向上にもつながります。
カスタマイズは、一度にすべてを完璧にする必要はありません。「少しずつ、自分のやりやすい形に近づける」ことが成功のポイントです。小さな設定変更でも、長期的には大きな作業時間の削減や設計品質の安定に寄与します。
さらに、チームで設定を共有すれば、共同作業も効率化され、全員が同じ環境でスムーズに設計を進められるようになります。ぜひ本記事を参考に、自分だけの“使いやすいInventor”を育ててみてください。それが、日々の設計をもっと楽に、もっとクリエイティブにする第一歩となるはずです。
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<参考文献>
Autodesk Inventor ソフトウェア | Inventor 2026 の価格と購入(公式ストア)
https://www.autodesk.com/jp/products/inventor/overview
Inventor 2025 ヘルプ | iLogic | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/INVNTOR/2025/JPN/?guid=GUID-AB9EE660-299E-408F-BBE1-AFE44C723F59






