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BIM活用の防災に向けた取り組みとその可能性について

建設業界に大きな影響を与えているBIMの技術は、業務効率の改善だけでなく、防災面でも活躍が期待できるとして注目されています。
防災は日本において無視できない課題の一つで、耐震や防火、さらには災害発生時の対応など、向上しなければならない問題は山積しています。

BIMはそんな防災の課題へどのように貢献し、人命や企業を救ってくれる可能性があるのかについて、今回はご紹介していきます。

目次:
①注目を集めるBIM防災の可能性
②竹中工務店によるBIM活用型防災システムの開発
③期待されるBIMとGISの組み合わせ

注目を集めるBIM防災の可能性

BIMは元々建築物の3Dデータに様々な情報を付与し、設計から施工、保守運用まで一貫したデータ活用を可能にする技術として注目されてきました。
しかしそんなデータとしての利便性の高さから、近年ではBIMを使った防災への取り組みにも注目が集まってきています。

BIMを使った防災とは

BIMを使った防災へのアプローチとして、様々な方法が検討されているものの、一番の有用性はそのデータの信頼性の高さにあるでしょう。
BIMは設計段階で作成する3Dデータですが、実際には竣工後の保守運用段階においても活用することが可能です。
そのため、設計段階の時点で防災に向けた正確なシミュレーションも実施することができ、建物が完成した後はシミュレーションの際のデータを活用することで、利用者や企業の安全を確保することが可能になります。

また、BIMを使ったシミュレーションの精度は従来の3Dモデルを使ったものに比べ、遥かにその精度に優れている点も特徴です。
各部材の性質や耐久性など、実物と同様の情報が付与されていることで、耐久チェックから風の流れ、光量など、実物を使ったシミュレーション並みのパフォーマンスを発揮することができます。

国土交通省の注目も

このようなBIMのポテンシャルの高さを受けて、国土交通省では2020年度に行われる再開発事業に対し、BIM導入プロジェクトに対する補助率を引上げる決定を発表しました*1。
国交省では、防災性能や省エネ性能に優れた市街地再開発事業を補助する「防災・省エネまちづくり緊急促進事業」を実施しています。
当初は19年度末までの予定だった同事業ですが、今年に入って2024年度までの延長が決定するとともに、事業費も前年度比9.9%増の82億9200万円へ増額されました。

補助金を支給する上では、同省が指定する防災や省エネ対策などの要件を満たすことを条件としています。
そして、選択項目の一つである生産性向上の項目において、設計・施工段階でのBIM導入を条件に加えていることから、BIMの普及を防災の一環として普及させたい背景がうかがえます。

竹中工務店によるBIM活用型防災システムの開発

防災分野におけるBIMの積極的な運用は、民間レベルでも導入が進んでいます。
竹中工務店が開発した、BIMを活用型防災VRシミュレーターはその代表例と言えるでしょう。

VRシミュレーターの「maXim(マキシム)」

竹中工務店が2017年に発表したVRシミュレーターの「maXim(マキシム)」は、様々な災害予測や避難行動を解析したデータをもとに、リアルな避難訓練を実施することができるサービスです。
実際の建物データをもとにした3D空間に、津波や火災といった災害をもたらすことで、時間経過とともにどのような変化が建物を襲い、被害を与えるのかを知ることができます。

従来の避難訓練では非常口の確認や、避難器具の使い方をマニュアルで理解する程度にとどまっていました。
そのため、実際の災害時にどれだけ適切な対応ができるかについては未知数の部分も多く、その意義についても疑問が投げかけられてきたのです。
ところがmaXimでは、火災発生時の延焼シナリオや、非常口に人が殺到する様子までもが正確に再現され、災害発生時に建物がどのような状況に陥るかを正確に再現してくれます。
maXimでリアルなシミュレーションを体験しておくことで、災害時にも落ち着いて対処することができるよう、適切な教育を行えます。

BIM活用で詳細なシミュレーションを実現

maXimの正確なシミュレーションの実現に貢献しているのが、建物のBIMデータです。
BIMから必要なデータを抽出し、3DモデルをmaXimへインポートすることで、情報の最適化を行うことができます*2。
そして建築物のデータのみならず、建物周辺の都市モデルデータも追加することによって、さらに正確なシミュレーションの実現と建物からの避難完了後などのシナリオの作成も行えるようになっているのです。

BIMを活用した防災対策は、人命を守るということはもちろん、BCP(事業継続計画)
を策定する上でも重要です。
災害発生後もビジネスを継続できる環境の整備を目指すBCPにおいて、BIMを用いた正確なシミュレーションは、非常に実用的な効果が期待できます。

常に想定外を強いられる災害発生時ではどのように計画を立てれば良いのかと悩まされるところでもあります。
BIM運用の防災で、想定外の災害をできる限り想定内に近づけていくことで、災害による事業への被害を最小限に抑えることも可能になるでしょう。

期待されるBIMとGISの組み合わせ

BIMをさらにスケールの大きな防災に向けた運用に活用するため、研究が進められているのがGIS(地理情報システム)との連携です。

BIMデータを活用したGISによる防災の可能性

GISは、その名の通り地理情報を有する空間データを統合管理し、視覚情報へと落とし込むことで、高度なシミュレーションや分析を可能にする技術です。
BIMは3D CADとデータベースを掛け合わせた技術ですが、GISは地理情報をデータベース化した技術という相違点があります。

GISとBIMではそれぞれ異なる役割を担っていますが、これらを組み合わせて使用することで、高度な都市設計や、環境シミュレーションを行うことができるとも言われています。
東北大学ではBIMやCIMモデルの属性情報を活用し、GISへ応用することで災害に強い都市デザインを支援するツールの開発も行われています*3。
BIM単体では対策することができなかった、建設物の周辺や都市といったスケールを、GISの利用によってカバーすることが可能になりそうです。

GISとBIMのコラボレーションで実現すること

GISの特徴の一つとしてあげられるのが、位置情報をデータベースに記録することができる点です。
BIMを使った建築物が将来増えていくことになれば、必ずBIM建築をまとめて管理することができるシステムの需要も高まってくるでしょう。
その際に活躍するのがGISで、都市の建築やインフラが全てBIMやCIMに対応すれば、GISとデータ連携を行い、都市を丸ごとシミュレーションにかけ、大規模な災害シナリオを作成することも可能になります。

津波や地震が発生した際にも、正確に人の移動を予測し、最適な避難経路を算出することができるようにもなるため、防災の面では大きな活躍が期待できそうです。

おわりに

BIMを活用した防災プロジェクトは実証段階に差し掛かっており、今後も各企業や研究団体から新しいアイデアが生まれてくることが予想できます。

災害大国である日本において、BIM防災はビッグトレンドになる可能性が高いと言えるでしょう。

 

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出典:
*1 建通新聞「再開発事業 BIM導入で補助率引上げ」
https://www.kentsu.co.jp/webnews/view.asp?cd=200122590004&pub=1
*2 BUILT「災害状況をリアルに再現? 竹中工務店がBIMデータを活用したVRシステムを開発」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1703/24/news019.html
3 建設ITワールド「「攻めのGIS」でまちづくり計画!東北大と日本工営が防災ツールを開発」

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