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スーパーゼネコンにおけるBIM運用の現状とこれから

国内で最もBIM活用が進められているのは、やはり大手ゼネコン各社です。
いわゆるスーパーゼネコンと呼ばれる、日本を代表する建設会社では、BIM導入の余裕があるだけでなく、BIMによる課題解決の効果も大きいことから期待が集まります。

スーパーゼネコンではどのようなBIM運用が行われているのか、そしてこれからどのように現場の課題を克服し、BIM運用を推進していくのかについて、ご紹介していきます。

目次:
① スーパーゼネコンのBIM運用状況
② BIM導入の課題と解決に向けた取り組み

スーパーゼネコンのBIM運用状況

まずは、日本のスーパーゼネコンと呼ばれる以下の5社について、現在のBIMの運用状況を見ていきましょう。
それぞれで異なるアプローチを採用していますが、いずれも前向きな効果を創出することに成功しています。

大林組

比較的早いタイミングからBIMをプロジェクトに採用してきたという大林組では、ワンモデルBIMの実現に向けた挑戦を続けています。

ワンモデルBIMというのは、設計から施工まで、クラウドを通じて一つのBIMモデルを使ってプロジェクト遂行を実現する構想です。
従来の建設プロジェクトにおける業務フローは、設計担当と施工担当で異なる図面やモデルを別個に作成し、それぞれの業務の中で活用するというのが一般的でした。
しかしこの方法では二重に図面作成やモデリングを行わなければならず、お互いに別個の図面を参考にするため、情報共有やプロジェクトの進行に支障をきたしていたのです。

そこで大林組のワンモデルBIMにおいては、設計者も施工担当者もBIMモデルを使って同じ図面を参照します。
これによって図面作成の無駄をなくし、情報共有もワンモデルで円滑に進められるようフローを改善したのです。

2017年にはワンモデルBIMのパイロットプロジェクトが着工しており、その成果についても注目が集まります*1。

鹿島建設

直近の鹿島建設におけるBIMモデル運用の取り組みで印象的だったのは、BIMによるデジタルツインの実現に力を入れている点でしょう。

デジタルツインとは、BIMモデルやIoTセンサーを使い、都市レベルでの高度なシミュレーションを可能にする技術です。
現実世界と限りなく近い環境を3Dで再現することにより、安全性と効率に優れたスマートシティの実現を一気に近づけることができます。
鹿島建設ではそんなデジタルツインの実現に向け、独自のBIMを採用した建設システム「鹿島スマート生産」を掲げ、生産システムの構築を進めています*2。

設計から施工、そして維持管理に至るまでを一括で担当できる、BIMを基軸とした新しい建設体制の実現が期待されています。
また、施工現場においても進捗管理のデジタル化や、複合現実(MR)技術を導入した施工管理体制の導入など、業務の省人化と効率化が進んでいるところです。

大成建設

大成建設はAutodesk社が提供するBIMソフト、「Revit」の活用を積極的に推進しています。
自社横浜支店ビルの改装においてもRevitをフル活用し、すべての施工図をRevitで作成した結果、大幅な業務効率化を実現しました*3。

支店の改装は、およそ4,700平方メートルにものぼる、大きなプロジェクトとなりましたが、設計から工事終了までをわずか7カ月で完了しています。
施工図を全てRevitで作成したことにより、整合性の確保をスムーズに行うことができ、部署間での合意形成も短時間で進められました。
また、手戻りの作業も大幅に削減されるなど、情報共有の部分で大幅な改善効果が見られています。

また、竣工まで活躍したBIMモデルですが、この役割はFM領域にも引き継がれます。
BIMモデルは同社の維持管理を扱う部門へと引き継がれ、建物の点検作業や、IoT化の推進に利用される予定です。
迅速に竣工まで辿り着けるだけでなく、末長く一つの建物を使用していく上でも、BIMモデルが活躍で切ることを証明するプロジェクトとなりました。

清水建設

清水建設がBIMの分野において力を入れているのは、BIMをベースにした生産体制の構築です*4。
清水建設が提唱する「Shimz One BIM(設計施工連携BIM)」では、設計者が作成するBIMデータを施工から発注、運用管理にまで活用する、ワンストップを実現します。
業務に生じる無駄を限りなく削減し、素早いプロジェクトの遂行の実現を期待しています。

そして、Shimz One BIMのファーストステップとしてこの度運用を開始したのが、「KAP for Revit(K4R)」です。
設計者の作成した鉄骨造のRevit 構造データを、鉄骨の積算や制作に使うデータへ変換できるようにし、鉄骨業務の効率化とコスト削減を進めているところです。

竹中工務店

竹中工務店では、BIMを設計図作成や情報共有に活かすだけでなく、ロボット運用に生かそうという動きが活発です。
同社ではロボット運用の「BIMプラットフォーム」を構築し、2020年度中の運用に向けてプロジェクトが進められています*5。
このプラットフォームはクラウド上に構築され、施工から保守管理まで、あらゆる業務の無人化を進めることにもつながります。

クラウドへBIMモデルをアップロードすることで、クラウド下にあるロボットへ地図情報として読み込まれます。
そしてマーカーなどを設置せずとも、極めて正確に建物内を走行し、規定の業務を遂行することができるようになるという仕組みです。
ロボティクス分野の技術との融合により、さらなるBIM運用の可能性にも期待することができる取り組みと言えるでしょう。

BIM導入の課題と解決に向けた取り組み

BIM導入においては各社で様々な取り組みが進められていますが、一方で課題も残ります。

BIMソフトの標準化に課題

いくつかある課題の中でも、よく取り沙汰されているのがBIMソフトの標準化についてです。
BIMソフトはポピュラーなものだけでも数種類に分かれていますが、必ずしも各ソフト間で互換性があるとは限りません。
異なるBIMソフトを業者間、部署間で使用しているということがあれば、BIM運用の強みが大きく削がれてしまう可能性もあるのです。

そのため、各社では社内BIMソフトの一本化と、関係事業者間でのBIMソフトの一本化など、標準化に向けた取り組みが進められています。

ゼネコン協業で進む課題解決

一時は導入BIMソフトを巡って、同業者でありながら企業間の差別化が進んでいくとも考えられましたが、近年はスーパーゼネコン同士の協業に向けた動きも進んでいます。
例えばゼネコン4社が共同でRevit用「RC構造ファミリ」を公開したニュースなどは、印象的な出来事です*6。

これまで、鉄骨ファブリケーションは運用ルールが統一されておらず、各社で異なる対応が強いられてきました。
しかしこれをBIMによって標準化すべく、大林組、清水建設、鹿島建設、大成建設は、Autodesk社の強力で、鉄筋コンクリートの柱と梁の構造用ファミリをリリースしました。
これによって、RC構造の施工に必要なBIM部材モデルを、異なる会社間でも使えるようになり、BIM運用を最大限効率化することができます。

BIM標準化に向けたプロジェクト始まったばかりですが、今後も統一されたBIM運用環境が整備されていくことにも期待ができるでしょう。

おわりに

スーパーゼネコンではそれぞれ異なるBIM運用が進められていますが、抱えている課題は似たり寄ったりです。
BIM標準化のように、協業できる部分は行い、それ以外は自社の強みでカバーするというトレンドは、今後も続くことになるでしょう。

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出典:
*1 建設通信新聞「大林組 ワンモデルBIMへの挑戦」
https://www.kensetsunews.com/web-kan/388797
*2 鹿島建設「日本初!建物の全てのフェーズでBIMによる「デジタルツイン」を実現」
https://www.kajima.co.jp/news/press/202005/11a1-j.htm
*3 建設ITワールド「大成建設がビルのリニューアル工事をBIMで大幅効率化
Revitですべての施工図を作成し、FMへとつなぐ(オートデスク)」
https://ken-it.world/success/2018/11/adsk-taisei-case.html
*4 清水建設「BIMをベースにした生産体制を構築へ」
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2019/2019036.html
*5 竹中工務店「竹中工務店がロボット運用の「BIMプラットフォーム」構築、2020年度中に本格運用」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2002/18/news050.html
*6 BUILT「ゼネコン4社らが意匠・構造・設備のBIM標準化に向け、Revit用「RC構造ファミリ」を公開 (1/3)」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2008/06/news055.html

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