パシフィックコンサルタンツが使うCIMツールの魅力とは?事例を元にやさしく解説
この記事を読むと、以下の3つの事がわかります。
1.パシフィックコンサルタンツについて
2.CIMの効率化事例について
3.パシフィックコンサルタンツが活用している「CATIA」(キャティア)の魅力
国内大手の建設コンサルタント「パシフィックコンサルタンツ」が、CIMツールで作業を効率化した事例を発表しました。高い成果を上げた事例には、CATIAという3DCADツールを活用しています。
この記事ではBIM/CIMの導入を検討している建築関係者に向けて、パシフィックコンサルタンツの持つCIM事例とCIMツールをご紹介します。
パシフィックコンサルタンツは大手建設コンサルタント
パシフィックコンサルタンツといえば、国内大手の総合建設コンサルタント企業です。1951年に日米合同出資で設立し、1954年には日本でも法人化している“超老舗”ともいえる企業です。(※1)
建設コンサルタントは、道路や水路といった建設で企画設計を行います。行政や民間企業を顧客として、第三者目線で各工程の最適な工程を提案したりプロジェクトを管理したりといったプロデューサーのような役割を果たします。
建設コンサルタントは地盤や地質、環境を評価してそれらに見合った建築物を提案します。その後も施工管理や維持管理業務までコンサルティングしていて、社会インフラサービスにはなくてはならない存在なのです。
国内では建築作業をITで効率化するBIM/CIMの動きが起こっていますが、もちろん総合建設コンサルタントのパシフィックコンサルタンツもITによる効率化の事例を数々持っています。
パシフィックコンサルタンツのCIM活用事例
パシフィックコンサルタンツは、後ほど紹介するCATIAという3DCADツールを活用して、CIM市場で複数の事例を発表しました。CATIAを土木へ転用することで、数々の効率化事例を作っています。
CATIAの開発を行うダッソー・システムズは2019年、国内の3D設計における生産性改革の事例を発表しました。(※2)そこでパートナー企業であるパシフィックコンサルタンツの業務効率事例も紹介しています。
事例①橋梁
パシフィックコンサルタンツは、川や海に渡す橋梁(橋)の設計にかかる工数をCATIAで効率化しました。結果として、設計者が3日かかっていた作業時間を3秒にまで短縮できたのです。(※3)
・設計案作成の効率化
・構造物に必要な材料の計算
・設置場所を変えた場合の比較検討
橋梁設計ではまず、の地盤や地形を考慮して20程度の図案を設計します。それぞれの工程では、技術者たちが大きなコストをかけているのです。
設計した20もの案の中から、コストパフォーマンスや管理のしやすさなどを考慮して3案に絞ります。最終的に設置場所を変えた場合のシミュレーションなどを行いますが、少し構造物の幅を変えたり設置場所を変えたりするごとに、図案を作り直す必要があります。
大量の図案の設計にその図案ごと事の概算工事費の算出、シミュレーションごとの図案の微調整といったコストは、設計者にとって大きな負担になっています。微修正といっても、状況によっては1から図面を起し直すケースも珍しくありません。
しかしCATIAで図案を作成すれば、概算工事費や必要な材料の計算を自動で行ってくれます。微修正の場合も図面を書き直す必要はなく、CATIA上で3Dモデルを微修正するだけで柱の幅や梁幅の自動修正も行ってくれるのです。さらに修正後の3Dモデルを元に、CATIAが材料の再計算も行います。
一度CATIAで設計した部材をモデル化しておくと、他のプロジェクトでストック活用までできるのです。設計者にのしかかっている膨大な「図面書き」の工数を大幅にカットし、効率化につなげました。
事例②砂防ダム
パシフィックコンサルタンツは、防砂ダムにおいて以下の2つで大幅な業務効率化事例を発表しました。
・配置計画における材料の計算
・設計の自動化
土砂災害を防止するダムでは、せき止められる土砂量や水量を計算して配置計画を行います。最適なダムの設計も地質や地形に大きく左右されるため、「どこに配置するか」
「どんな構造にするか」をプロジェクトごとに検討しなくてはいけません。
ダムの深さや形、高さをほんの少し変えるだけでも、様々な計算をやり直す必要があり設計者の負担になっています。何度もトライアンドエラーを繰り返して膨大な工数をかけ、失敗がないように進めているのです。
そこでパシフィックコンサルタンツは、CATIAで防砂ダムの3D設計を行うことで業務を効率化させました。土砂量の計算は3D地形図をCATIAへ取り込むことで、自動算出を実現したのです。またCATIA上で防砂ダムの3Dモデルと設置場所の地形図データがあるので、データ上のモデルを微修正するだけで土砂量や水量を再計算します。
もちろんこの防砂ダムモデルもデータとして蓄積できるので、別プロジェクトではストック活用できますし、再計算も自動化できます。今まで手書きで修正や変更を行っていた設計者にとって、その効率化は驚くほどでしょう。
河川計画
河川計画には、以下の3つの段階があります。
・順義作業段階
・初期計画作業段階
・計画案作成段階
パシフィックコンサルタンツは、上記の作業のうち「初期計画作業段階」と「計画案作成段階」をCATIAで効率化しました。河川計画でも、砂防ダム同様に地形図や測量データをCATIAに取り込むことで自動算出を行ったり、河川を3Dモデリングしたりします。
一度モデル化すると、変更や修正が何度発生しようと自動計算を行うので設計者の大きな負担普段にはなりません。流水量を増やすために川幅を広げても、CATIAが構造物のサイズや量を自動で計算します。(※4)
事例で見る3DCAD「CATIA」の概要と魅力
前述したパシフィックコンサルタンツの効率化事例では、全て3DモデリングツールCATIAが使われています。パシフィックコンサルタンツがCATIAの活用を決めたポイントを解説します。
CATIAとは
CATIAは、3DCADのハイエンドモデルです。1981年にダッソー・システムズが提供を始めたサービスで、世界中の大手企業で使われています。3DCADツールの中でも最も高機能なタイプで、航空機や自動車など、複雑な設計や規模の大きい建築物デザインで活用されています。
日本ではトヨタ自動車がボディのデザインでCATIAを使っていることで知られています。(※5)CADや建築デザインなど、ものづくりをしている人には大変有名なソフトウェアです。
CATIAについてはこちらの記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
「CATIAとはどんなCAD?独学可能?就職や転職に有利?」
https://www.capa.co.jp/archives/32886
パシフィックコンサルタントがCIMへ転用したポイント
パシフィックコンサルタンツがCATIAをCIMに活用した理由は、様々な形状をパラメータ化できる点にあります。プログラムでは「引数」とも呼ばれるパラメータですが、外部から値を与えてモデリングできる点がCIMの業務効率化に大きく貢献しているのです。
パシフィックコンサルタンツの事例で見ると、以下のポイントでCATIAが大活躍しています。
・地形図や測量データをパラメータ化する
・作成した3Dモデリングをパラメータ化してストックする
パシフィックコンサルタンツが手掛ける建築物は、橋梁やダム、河川などその土地に合わせる必要があるものばかりです。プロジェクトごとにその地形や土壌は異なるため、毎回建築物をフルカスタムする点と、膨大な修正・変更が必要な点が課題でした。
しかしパラメータ化できるCATIAなら、一度モデルを作れば修正や変更も簡単です。さらにモデルをストックすることで、別のプロジェクトでもフルカスタムする手間が省けるのです。
CATIAは元々設計事務所や自動車産業で使われています。パシフィックコンサルタンツはCATIAのプログラミングツールとしての利点を活かして設計業務に転用することで、生産性をアップさせたのです。
建築に係る膨大な工数をITで効率化しようとするBIM/CIMの取り組みは、大変有効です。国を挙げて促進されていて、2023年度には小規模を除くすべての公共工事でBIM/CIMを原則化するように動いています。(※6)
パシフィックコンサルタンツを始め、国内のゼネコンでもBIM/CIM化はどんどん進んでいます。CIM化を検討している建築業者は早めに取り組み、ぜひ業務の効率化を実現してください。
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参照:
※1 https://www.pacific.co.jp/magazine/2018/05/-119511954.html
※2 https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1912/19/news068.html
※3 https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/sp/b/20/01/17/00112/
※4 https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2010/09/news058_3.html
※5 https://www.toyotasystems.com/product/tool/detail/catia-v5.html
※6 https://www.decn.co.jp/?p=115776