Metaが発行するデジタル通貨「ザック・バックス」は何に使える?その展望とは
仮想空間で現実世界のように暮らし、活動することが可能になるメタバースの概念が普及するとともに、デジタル通貨への注目も高まっています。Facebookを運営するMetaが新たに発表した「ザック・バックス」は、そんなメタバース空間における通貨制度を整備するのに役立つとされており、注目を集めています。
今回は、Metaが発表したデジタル通貨のザック・バックスの概要や、従来の仮想通貨との違い、そしてザック・バックスがメタバースにどんな影響を与えるのかについて、ご紹介します。
目次:
①ザック・バックスの概要
②Metaの仮想通貨「Libra」との違い
③ザック・バックスは何に使えるデジタル通貨なのか
④ザック・バックス導入でメタバースはどう変化するのか
ザック・バックスの概要
2022年4月、Facebookを運営する米テック企業のMetaは、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏の名前にちなんだデジタル通貨「ザック・バックス」を発表しました*1。ザック・バックスは同社が手がけるメタバース空間での運用を想定している通貨で、サービス内におけるユーザー同士の交流や、ユーザーの定着、経済活動の発展を促す効果などが期待されます。
Metaの仮想通貨「Libra」との違い
ザック・バックスは仮想通貨ではない
ザック・バックスはデジタル通貨の一種として発表されましたが、同発表によると、いわゆる暗号資産や仮想通貨と呼ばれる通貨とは異なるものとしています。ザック・バックスの運用に当たってはブロックチェーン技術は採用されておらず、ゲーム内通貨のような形式での運用が想定されています。
Metaが主力事業として注力しているメタバース空間を支えているのは、『フォートナイト』や『Roblox』といったゲームソフトです。ゲーム内通貨を使ったアイテムの取引や、拡張コンテンツの購入が盛んに行われていますが、ザック・バックスは自社のメタバース空間におけるゲーム内通貨のような役割を持つと考えられます。
法定通貨にも裏付けられないデジタル通貨
Metaがデジタル通貨に参入したケースとして、最も有名なのは「Libra(リブラ)」です。Libraは複数の法定通貨によって裏付けられ、運用には政府が発行するIDが必要という、ビットコインなどの仮想通貨よりも信頼性の高い通貨として注目されていましたが、当局からの反発を受け、計画は頓挫しました。
ザック・バックスはLibraとは異なるデジタル通貨として発表され、暗号資産としての価値を持ちません。規制当局との衝突リスクはなく、暗号資産としての運用可能性も低いことから、安心して利用ができるデジタル通貨と言えるでしょう。
ザック・バックスは何に使えるデジタル通貨なのか
ザック・バックスは今年発表されたばかりのデジタル通貨で、具体的な運用方法などについては明かされていません。ただ、ブロックチェーン技術を用いないアプリ内通貨であることを考えると、ザック・バックスはMetaが提供するサービス内全域での利用が可能な通貨となりそうです。
2021年11月、旧Facebook社はMetaへと改名しましたが、複数回にわたる買収などを経て、さまざまなデジタル事業を手掛けています。代表的なのは2012年のInstagram買収で、TwitterやSnapchat、そしてYoutubeと並ぶ巨大SNSをMetaはFacebookとInstagramの2つも抱えていることになります。
現在はXR技術の開発やサービスの立ち上げを中心に、メタバース事業に注力していますが、今後関連企業の買収や社内でのサービス開発が進むにつれ、本格的な巨大メタバースプラットフォームの登場も予想されます。
ザック・バックスは今のところ小規模な運用にとどまると想定されますが、メタバース事業が本格化すれば、サービスを跨いで売買を行うための便利な通貨となることが期待できます。
ザック・バックス導入でメタバースはどう変化するのか
ザック・バックスをMetaサービス内に導入することで、同社が手掛けるメタバースやその他の事業はどのように変化するのでしょうか。今後の展開として考えられる3つの変化について、ご紹介します。
サービス内のユーザビリティ向上
1つ目の変化は、Metaが手掛けるサービスのユーザビリティ向上です。多様なサービスを展開するMetaですが、それぞれのサービスで課金コンテンツを利用する場合、別個のトークンや通貨が存在していると、ユーザーの管理が煩雑化します。ザック・バックスにMetaサービス内のデジタル通貨を統合することで、一つのデジタル通貨を利用していれば好きなように課金コンテンツを利用できるため、混乱を防ぐことができます。
また、通貨管理が効率化されたことで、サービス利用に当たってのハードルが下がり、気軽に課金コンテンツに触れてもらいやすくなります。
独自の経済圏を形成するきっかけに
サービス全体で利用できるアプリ向けトークンの統合は、旧Facebookが夢見た独自の暗号通貨プロジェクトを復活させるきっかけにつながるでしょう。十分な数のザック・バックス利用者が確保でき、広く社会に普及すれば、ザック・バックスから新しい暗号通貨への切り替えも容易です。ザック・バックスを新しい暗号通貨と置き換わる形で提供すれば、現実と仮想空間をつなぐ通貨の誕生をスムーズに促せます。
Metaのサービス内だけでなく、法定通貨との取引も促し、仮想通貨としての経済的価値を確固たるものにできるでしょう。
NFT実装の足がかりにも
仮想通貨関連の最近のMetaの動向として、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏がInstagramにNFTを導入する旨を発表しています*2。Meta傘下であるInstagram上でのNFTの取引や仮想通貨取引を盛んに行い、ザック・バックスでの取引も可能となれば、同通貨の資産価値も高まります。
ザック・バックスはブロックチェーンによって価値が担保されないデジタル通貨です。しかし、仮想通貨関連の事業と結びつけていくことで、自然と付加価値を持ち、暗号通貨へと置き換わっていく未来も想像できます。
まとめ
ザック・バックスはMetaがLibraの撤退以降、使用用途を限定した形で新たに発表した独自のデジタル通貨です。現状では仮想通貨としての価値はありませんが、InstagramのNFT参入や独自のメタバースプラットフォーム開発と共に、暗号資産と同等の資産価値を形成することも想像できます。
現状では具体的な運用方法が明かされてはいないため、今後の動向にも注目したいところです。
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参考:
*1 月刊暗号資産online 「米メタ、メタバース等で使用可能なデジタル通貨「ザック・バックス」の発行を計画」
https://digitalassets-online.jp/news/20220407a/
*2 TechCrunch Japan「マーク・ザッカーバーグ氏、InstagramにNFTを近々導入すると発言」
https://jp.techcrunch.com/2022/03/16/2022-03-15-instagram-nfts/