【若手世代向け】Unity協業のPrespectiveとは?建設業界・製造業界の展望とは?
この記事を読むと、以下の3つがわかります。
1. Prespectiveの主な機能と入手方法
2.ものづくり業界の今後の展望
3.「AIに仕事を奪われる」は本当か?
「ものづくりが好き。製造業界や建築業界で働いてみたい」
「ものづくり業界は将来性がないと聞いたけれど、本当?」
とお悩みの方へ。今後の仕事を決める時、業界の展望は無視できないものです。中でも製造業界や建築業界はマイナスな見方をされるケースも多く、ものづくりに興味がある人は不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
しかしものづくり業界でもITの導入が進んでおり、展望は暗くありません。この記事ではゲームエンジンでおなじみのUnityが協業している「Prespective」について、主な機能として製造業界・建設業界で期待できる機能をご紹介いたします。
Unity協業のPrespectiveはデジタルツインツールである
PrespectiveとはUnit040という企業が開発したデジタルツインソフトウェアです。ゲームエンジンとして世界的に有名なUnityの物理エンジンを使っている点が大きな特徴で、Unity社がパートナーシップという形で協業しています。
現実世界のデータを分析して仮想空間に3Dモデルで再現する「デジタルツイン」は、建築業界や製造業など日本の主要産業でも注目される技術です。
デジタルツインの導入にはPrespectiveのようなツールが欠かせません。Prespectiveはヘルスケア製品として有名なPhilips(フィリップス)、トヨタ自動車など多くの製造業が活用しており、注目されるツールの1つです。
まずはPrespectiveの主な機能や入手方法、デジタルツインの可能性についてみていきましょう。
Prespectiveの主な機能
Unityが協業しているPrespectiveは、以下の4つの特長を持っています。(※1)
1.リアルタイムの3D視覚化
システムをリアルタイム3Dでアウトプットでき、関係者で共通のデータ基盤を作ります。基盤ができることで、データに基づいた正確な意思決定が可能になります。
2,スループット分析
デジタルツインツールとして、実際の環境よりも高速にデータを分析できます。これにより製品フローをスムーズにシミュレートでき、わずか数分程度で数か月分ものデータを生成します。
3,アセットライブラリ
システムの迅速なセットアップやカスタム調整の実行、カスタムCADモデルのサポートアクセスをサポートします。
4.データ接続
オープンプラットフォームにより、様々なデータ形式をシミュレーションに接続できます。データ形式に配慮する必要がなく、データ接続への障害が大幅に減少します。
Prespectiveが持つ上記4つの特長により、建設業界や製造業界における設備のTCO(総保有)削減が期待できます。
またPrespectiveがあれば、エンジニアとビジネス開発者が同じモデルで同時に作業できます。シミュレーションにかかる時間を大幅に削減でき、複数プロジェクトの並行開発が可能です。
入手方法
Prespectiveは、Unityの公式サイト「Unity Asset Store」
(https://assetstore.unity.com/packages/tools/utilities/prespective-digital-twin-software-161664#description)からダウンロードできます。
また、Prespective公式サイト(https://unity.com/products/prespective)からデモのリクエストも可能です。
デジタルツインで建設業や製造業にどう貢献するの?
Prespectiveのようなデジタルツインを導入すると、以下のようなことが可能になります。
l 現状の把握や未来予測
l デジタル空間での仮説検証
l メンテナンスコストの削減
上記は建築や製造業において重要な要素で、生産性の向上に大きく貢献してくれます。
例えばIoTでモノがインターネットにつながる時代となり、製品や建物にセンサーを付けることで、現状のデータ収集が可能になっています。それらのデータを仮想空間に再現したデジタルツインを構築すると、デジタル上で現状把握が可能です。
デジタルツインならデータに基づく未来予測もできるので、建物のどこが一番に劣化するか?この製品を10年使うとどこか壊れてしまうのか?といった予測ができます。
またデジタルツインの大きな魅力として、シミュレーションの容易化が挙げられます。
建物の場合、周辺の人の流れや天気の変化、風向きや日照の変化なども考慮して設計しなければなりません。それらもすべてデジタル空間でシミュレートできれば、現実空間で行うより大きなコスト削減が期待できます。
シミュレーションは製造業でも大きな効果が期待できます。耐火性や耐寒性など現実で起こりにくい条件を作る場合など、シミュレーションにはコストがかかります。しかしデジタル空間で現実では起こりにくい環境が再現できれば、実際に環境を再現するよりコストはかかりません。
デジタルツインで建物や製品の遠隔監視が可能となれば、人が現地に行く必要がありません。遠隔から劣化部分や手入れが必要な場所がわかるため、メンテナンスコストの削減にもなります。
現地に行って状況把握→人が現地の調査やデータを収集する→会社に持ち帰り対策を相談→現地で修復作業……とコストの高かったメンテナンスも、デジタルツインによる現状把握で圧倒的に効率が向上するのです。
建設業界・製造業界の展望は?
建設業界や製造業界は、いわゆる“ものづくり”と呼ばれる仕事の中でもメジャーな業界です。建物や製品をゼロから創り上げる仕事は魅力的で、「ものづくりの業界で働きたい!」と思う人も少なくありません。
一方で建設業界はいわゆる「3K」や長時間労働、製造業は「ロボットに仕事を奪われる」など暗い声も耳にするものです。どちらの業界も次世代の担い手となる若手世代の減少が激しく、明るい展望を期待できないかもしれません。
しかし建設業や製造業は他の産業と同じくITで改革しようとしており、Prespectiveのような技術もその1つです。ITに明るい若手世代が担い手となる時代にはもっとIT化が進み、今からでは想像できない明るい展望が待っているかもしれません。
それでは、建設業界や製造業界の展望について見ていきましょう。
建設業界と製造業界に共通する課題は「人手不足」と「人だより」
建設業界と製造業界ではどちらも人手不足に陥っています。国内の製造業就業者数は、2002年には1,202万人もいた働き手が、2019年には1,063万人と20年間で11.6%も減少しています。(※2)
人手不足がより深刻なのは建設業界で、若手の数が極端に少ないことが課題です。総務省の労働力調査(2017年平均)では、65歳以上の労働者が25.2%であるのに対し、29歳以下の若手世代は半分以下の11.1%でした。(※3)60代の働き手が10年後に引退することを考えると、中小企業ではプロジェクトの受注すら危険です。
そんな人手不足が深刻化する一方で、日本は“職人さん”として人だよりのものづくりを行ってきました。職人技としてデータ化できない技術や技能が多く、技術の伝承がなかなか進みません。
しかし、建設業界も製造業界もITによって進化しようとしています。その中で大きな一助となるものが、Prespectiveのような最新技術なのです。
建設業界や製造業はDXで進化する
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、ITの活用で働き方を改善したり新しい価値を創造したりする取り組みです。世界全体でDXの導入が進んでおり、建築業界や製造業界も例外ではありません。
建設業界ではBIM(Building Information Modeling)と呼ばれる取り組みで、データ活用やデジタル空間での3Dモデリングなど活用することで、ものづくりのライフサイクル全体を効率化しようとしています。
国土交通省は2023年度までに小規模以外の公共工事BIM/CIMの原則化を目指しており、人手不足の解消や技術・技能の伝承を含めた働き方改革・生産性の向上を目指しているのです。(※4)
製造業は、DXによって「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)の強化」や「設計力強化戦略」を進めています。図面や設計書といった紙媒体を極力なくし、すべてを3Dデータなどで関係者と共有しながら進めることで、データを活用できる未来を目指しているのです。(※5)
上記のような取り組みを国主導で行っており、各業界も進化しようとしています。すでに導入が始まっている企業も多く、建設業界も製造業界も、決して展望が暗いわけではありません。
DXやAIが奪う仕事はあるが将来性はある
AIやロボットの登場により、「自分の仕事を奪われるのでは?」と心配する人が増えています。結論から言うと、ロボットが奪う仕事もありますが、新たに生まれる仕事もあるのです。
すでに多くの工場にロボットが導入されたり、企業では事務作業の自動化(RPA)が進んだりしています。思考を伴わないような単純な労働は、AIやロボットに奪われるでしょう。
しかし「どんなサービスにニーズがあるか?」とユーザーの声を聴いたり、「お客がどんな建物を求めているのか?」と話しあったりすることはロボットにはできません。AIが単純作業を担う一方で、人はより人らしいクリエイティブな仕事に集中できるようになるでしょう。
Prespectiveのようなデジタルツイン技術などで建築業界も製造業も変わり始めており、展望に悲観したり、無理に別の業界に就いたりすることが得策とはいえません。IT技術者として新しい技術を駆使して、建設業界や製造業界の新たな担い手となりましょう。
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参考サイト
※1 https://unity.com/ja/products/prespective
※2 https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2020/honbun_html/honbun/102011_1.html 「(2)就業者数及び雇用者の動向」部分
※3 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001314888.pdf(P.3)
※4 https://www.decn.co.jp/?p=115776
※5 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/pdf/008_02_00.pdf (P.28)