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東北大が開発したARを使う地中のレーザースキャン技術とは?

エンターテイメント分野での活躍が目立つAR技術は、ビジネスの現場でも積極的な導入が進んでいます。東北大学がこの度開発したレーザースキャン技術も、ARを実用性の高い現場で運用するノウハウが採用されており、インフラ分野での業務改善を促すことが期待できます。

この記事では、東北大が開発したARを採用する、地中のレーザースキャン技術について、解説します。

目次:

  1. ARを使った東北大のレーザースキャン技術について
  2. 老朽化したインフラが抱える問題点
  3. 東北大が今回用いた主な技術
  4. インフラにおけるAR・VR技術の活用事例

ARを使った東北大のレーザースキャン技術について

東北大学未来科学技術共同研究センターの研究グループは2022年8月、同大学発のベンチャーであるXMATと連携し、地中埋設物を可視化する新技術を開発しました*1。これは埋設工事の作業中、あらかじめレーザースキャンを行い埋設物の位置を3D点群情報として取得しておくことで、AR空間に座標を立体的に表示できるというものです。

AR対応のウェアラブルデバイスと組み合わせて活用することで、ARグラスを覗きながら現場を視認することで、まるでスキャンした埋設物が透過して見えるような感覚を得られます。

これまで埋設物の情報は、紙の設計図面からしか得ることができなかったため、現在の埋設物の状況や、正確な埋設物の位置を掴むことは難しいという問題を抱えていました。東北大の今回の技術が実用化すれば、より効率的なインフラ改善や、低コストでのインフラ改修につながると期待できます。

老朽化したインフラが抱える問題点

東北大のレーザースキャン技術は、主に老朽化したインフラの修繕や取り壊しといった業務に適用が期待されています。それでは、そもそも老朽化したインフラの工事に新たな課題解決方法が必要とされているのには、どのような理由があるのでしょうか。

老朽化したインフラの数の増加

老朽化インフラは、そもそもその数が急激に増加しているという問題を抱えています。国土交通省の調査によると、建設から50年が経過した建物の数は道路や橋なら73万本、トンネルは1万1千本、下水道管は47万kmにものぼるとされています*2。

高度経済成長期の建設ラッシュ時に建てられたインフラ設備は次々と耐用年数を迎え、今後もこの数は増えるとされています。

老朽化したインフラの改修は決して短期間で終わるようなものではなく、いずれの工事も多くの時間を必要とします。そのため、少しでも効率的なインフラ改修技術の登場が、現在の日本では強く求められています。

膨大なコストの発生

インフラの改修工事には時間がかかるだけでなく、その工事費用も莫大なものとなります。国土交通省の推計によると、インフラに不具合が発生してから修繕を実施する事後保全を実施する場合、2048年までに10.9兆円から12.3兆円の維持管理コストがかかるとされています*3。

そのため、インフラの改修工事はただ実施できれば良いものではなく、できるだけコストを抑えて工事を行えることが、速やかな改修工事に必要とされています。

災害リスクの増加

工事が実施されない老朽化したインフラは、そのまま使い続けると重大な事故や災害をもたらす可能性も高まります。

9人の死者をもたらした2012年12月の笹子トンネルの天井崩落事故もまた、トンネルの老朽化が原因とされており、この事故をきっかけに全国で行われた点検調査の結果、多くのインフラが老朽化に直面していることがわかりました。

また、日本は地震や津波などの自然災害のリスクも高まっているとされています。これらの災害が発生した際、老朽化したインフラは倒壊や崩落などの危険が極めて高く、災害による被害を少しでも軽減するべく、インフラの速やかな保全が必要です。

レーザースキャン技術の実用化から期待できること

東北大が開発したAR併用のレーザースキャン技術は、上記のような老朽化したインフラの改修に大きく貢献できることが期待されています。

掘削や埋め戻しの負担軽減

レーザースキャンによって正確に埋設物を把握できることは、掘削や埋め戻しの負担を軽減するのに役立ちます。従来の手法の場合、大まかな予想をつけながら掘削を行う必要があったため、必要以上の労力と時間がかかり、工事のコストやスケジュールを圧迫する要因となっていました。

レーザースキャンによって正確な位置が分かれば、最小限の掘削と埋め戻しで業務を遂行できるため、工事負担の削減につながります。

省エネ工事によるSDGsの達成

少ない負担で工事ができることは、コスト削減はもちろん、工事の際に発生するエネルギーの省力化にも貢献し、SDGs達成を促すことも期待できます。工事に必要な人員やエネルギーの削減、そして産業廃棄物の発生を抑え、最小限の負担で改修工事を進められるようになるでしょう。

インフラにおけるAR・VR技術の活用事例

ARやVRを使ったインフラにおける活用事例は、東北大のレーザースキャン技術だけではありません。最後に既存のインフラ関連のAR・VR技術の事例について、解説します。

日立のARスマートグラス

日立エルジーデータストレージが提供するARスマートグラスは、現場作業の効率化に適した機能が実装されたARスマートグラスです。高輝度,高透過性を特長としており、作業員が日常の業務をこなす上で支障をきたすことはなく、ARソリューションを利用できる環境の整備に役立ちます*4。

同社では建設現場で活躍する遠隔作業支援システムの開発と提供にも努めており、5G通信を採用した現場での速やかな情報共有や、360°カメラを使った現場の把握を促進します。

vGIS Utility

vGIS Utilityは、カナダのスタートアップが開発したインフラ可視化システムです。GISデータに基づき、ユーザーが道路下に設置されている設備をリアルタイムで視認できる仕組みを採用しています。

東北大のレーザースキャンとはアプローチが異なりますが、こちらも正確なデータをARを使って把握できることから、すでにアメリカの公共機関での運用もスタートしています。

まとめ

ARは単体での運用はもちろんですが、その他の技術と併用することで、そのポテンシャルをさらに引き出すことができます。

東北大ではレーザースキャン技術との併用によって、ARの利点とレーザースキャンの利点を引き出すことに成功し、老朽化したインフラ工事の改善に役立つことが期待されています。

今後もAR開発が進めば、より利便性に優れ、コストの心配も小さな技術が登場することとなるでしょう。

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参考:
*1 日経XTech「東北大などが地中埋設物の可視化技術、レーザースキャンとAR活用」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02122/00017/
*2 国土交通省「社会資本の老朽化の現状と将来 – インフラメンテナンス情報」
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/02research/02_01.html
*3 国土交通省「国土交通省所管分野における社会資本の将来の維持管理・更新費の推計」
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/02research/02_01_01.html
*4 日立「5G/6GとAR/VRによる社会インフラ向けDXソリューションの研究開発」
https://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2020s/2021/02/02b03/index.html

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