1. TOP
  2. ブログ
  3. GoogleのサードパーティCookie廃止が再延期となる一方でAppleの広告ビジネスは成長のきざし

GoogleのサードパーティCookie廃止が再延期となる一方でAppleの広告ビジネスは成長のきざし

規制当局の取り締まり強化に伴い、長年Web広告業界の有力なツールとなっていたサードパーティCookieの見直しが進められています。
広告マーケットの巨人であるGoogleも、このような流れに対応しサードパーティCookie廃止に向けた取り組みを行っていましたが、様々な問題からスケジュールに遅延が生じています。
このような状況の中で、にわかにAppleが広告ビジネスに本格的に乗り出すのでは?という観測が出始めるなど、Web広告関連に激動の時が訪れているようです。
今回の記事ではサードパーティCookieへの対応と、AppleのWeb広告ビジネスへの参入について見ていきましょう。

この記事でわかること
・GoogleのサードパーティCookie廃止が延期となった経緯について
・サードパーティクッキーとその問題点
・Appleによる広告ビジネスへの本格参入の動きについて

GoogleのサードパーティCookie廃止が延期となった経緯

まずはこれまでの流れと、現在わかっている事実からおさらいしておきましょう。
サードパーティCookieはブラウザの持つ機能の一つで、広告主にとって自分のターゲット層となるユーザーに対して、的確に広告を表示するために利用されています。

ユーザーにとっても自分にとっても、全く関心のない広告が延々と表示されるのに比べ、よりニーズにあった情報を提供してくれるという意味では、全くのデメリットとは言えません。しかし、個人情報保護に抵触する部分もあり、各国の規制当局による制限が強まってきました。

具体的には、2020年に英仏独の監督機関がCookie規制の取締り強化を表明。同じく2020年に米国カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が施行。
日本でも個人情報保護法が改正されCookieの利用に制限がかけられるなど、各国で規制強化の方向に進んでいます。*注1

このような動きがある中で、ブラウザを提供しているメーカーは対応が求められることとなります。
現在よく利用されているブラウザとしては、マイクロソフトのEdge・GoogleのChrome・AppleのSafariなどが挙げられます。とはいうものの、利用シーンやメーカーの立ち位置はそれぞれ微妙に異なっています。

この中でも特にGoogleは、広告収入をメインとして事業を展開していることから、今回のサードパーティCookie規制の影響を、最も大きく受ける立場となっています。
その点マイクロソフトは、ビジネスシーンでの利用は多いものの、ビジネスモデルが根本的に異なりますので、中立的な立場を取ることができます。

AppleはPCベースでのシェアは低いものの、モバイルファーストが重要となっている現在では、iPhoneでの利用が大きなウェイトを占めています。
しかしAppleも広告収入ではなく、デバイスやサービスの販売で収益を得るビジネスモデルということもあり、サードパーティCookie廃止にはいち早く取り組んできた経緯があります。
Appleは、ATT(Anti-Tracking Traparency)という方針のもと、サードパーティCookieは完全に廃止され、ファーストパーティCookieですら徐々に制限を強めています。
Appleにとっては、ユーザーが安心して利用できるプラットフォームの構築の方が重要です。Appleは、信頼性から自らのエコシステムに多くのユーザーを留まらせることが、ビジネス的には成功に繋がると捉えています。

このようなAppleの素早い対応や規制の影響もあり、GoogleもサードパーティCookie廃止へ向けた取り組みを開始していました。
しかしただ単に廃止するだけでは、自身の広告ビジネスに大きな影響を与えかねませんので、代替の方法を模索することになります。

Googleは紆余曲折を経て、新たなプライバシーサンドボックスという仕組みを導入するためのテストをベンダーとともに実施していましたが、まだ時間的に十分ではないという理由で、当初の予定を延期することとなりました。
最初は2022年度中にサードパーティCookieを廃止する予定だったのですが、2023年へ延期され、今回さらに2024年まで再延期するとしています。*注2

サードパーティCookieとその問題点

ではなぜ、サードパーティCookieがこれほどまで忌み嫌われ、規制の対象になったのでしょうか?
そもそも一般公衆回線を使っているインターネットの仕組みとして、ユーザーと訪問したサイトとの接続が頻繁に途切れてしまうという問題があります。
例えばECショップを訪問したユーザーが、ショッピングカートに商品を入れて決済画面に進む間にもセッションは一旦途切れています。

その後、再びセッションが繋がった時に、ユーザーが「何をショッピングカートに入れたか」などの情報を、どこかに記録しておく必要があります。
Cookieはこのような情報をユーザー側のブラウザに保持するために利用されており、これ以外にもインターネット上での便利なサービスには、不可欠な技術となっています。

例えば、ユーザーが訪問した先のサイトをAとしましょう。
Aから発行されるCookieがファーストパーティCookieです。これについてはインターネット利用の利便性を確保するために必要不可欠な技術といって良いでしょう。
一方ユーザーが意識せず、訪問したA以外のサイトであるBから知らないうちに送り込まれているCookieが、サードパーティCookieです。

これは訪問先のAが、広告出稿枠を提供するなどしていることが原因となっています。
ユーザーが年末年始の旅行先を探して、Aという情報サイトを訪問したとします。Aは旅行代理店などと契約し、広告枠を提供することで収益を確保することができます。
広告を出す側にとっても、「旅行」といったキーワードに関心があるユーザーに対して、ピンポイントで宣伝できる訳ですから高い効果が期待できます。

もちろんサイトAが自ら広告代理店を探して個別に契約をする必要などなく、取引を中立をする業者が多数存在しています。GoogleもGoogle Maketing PlatformというDSP(Demand-side Platform)を提供しており、リアルタイムで広告枠の売り買いがなされています。他にもFacebookのFacebook Ad Managerなどが有名です。

サードパーティCookieは、ターゲットとなるユーザーをピンポイントで特定し、効果的に広告を表示させるという役割以外にも、ユーザーの行動を追跡し広告の効果を測定したりするといった目的においても非常に有効です。

一方で、インターネット上でのユーザーの行動は、サードパーティCookieの影響で訪問先に筒抜けとなります。例えていうなら「居住地・性別・年齢・趣味や関心・ついさっきまでどこにいたか」などの個人情報をプラカードに書いて、首から下げて歩いているようなものです。

Web上で待ち構えている広告ベンダーは、このようなユーザーの情報を見て、婚約中の男女には結婚式場の広告を、ゲーム好きのユーザーには新しいネットゲームの宣伝を選択して表示していきます。
見ている層を特定せず、ただ大量の広告を垂れ流すことで成立していたマスメディアの広告に比べ、はるかに効率的であり効果的な成果を得ることができます。

TVや新聞などマスメディアへの広告出稿が減少し、Web広告が増加の一方となったのも、このような優れた仕組みが大きな原因となっています。
この非常に強力で効果的なWeb広告の世界を支えてきたのが、サードパーティCookieであると捉えることもできます。それだけにこのサードパーティCookieを排除して、新たな仕組みを構築するのは簡単ではないはずです。

しかしユーザー側からしてみれば、自分の情報がどこまで相手に知られているのか?どのようなルートで漏れているのか?明確に認識できないのは不愉快です。
現在はどのようなCookieが保存され、それがどこから発行されたものなのか、ユーザーが確認できるようになっています。しかし多くのユーザーは、事細かくチェックしていないでしょう。

広告ビジネスに乗っかる事業者が主体となって、急速に発展してきたサードパーティCookieをベースとした仕組みですが、少々やりすぎてしまいユーザーの個人情報保護の観点から、この動きにブレーキがかかっているのが現状です。
技術面にあまり詳しくないユーザーであっても、安心して利用できるインターネットの世界を実現するには、サードパーティCookieに代わる新しい仕組みの構築が求められています。

Appleによる広告ビジネスへの本格参入の動き

さて、このような広告ビジネスを主体としているGoogleやFacebookと比べ、Appleは収益ポイントが異なることもあり、サードパーティCookieの廃止に積極的に取り組んできました。
実際Googleの広告収入は2000億ドル以上であり、またFacebookが1150億ドルなのに対して、Appleの広告収入は若干伸びてはいるものの約50億ドルにしか過ぎません。

App Storeでの厳しいアプリ審査や、認証されたアプリしかインストールすることができないクローズドなシステムなど、Appleが重視してきたのは「利便性」よりも「安全性と信頼性」です。
「Appleはユーザーの情報を売り買いすることで収益をあげない」と、GoogleやFacebookとの違いを明確に宣言したこともあります。

だからこそ、サードパーティCookieの利用をベースに構築された現在のWeb広告ビジネスに、積極的に関わること自体を避けてきました。自身のポリシーに反することであり、Appleのブランドを阻害する要因にもなるからです。
そのため、わずかにApp Storeに表示される「厳正な審査を通過した」広告しか、取り扱ってきませんでした。

しかしサードパーティCookieの廃止が、Appleに広告ビジネスで新たなチャンスをもたらせてくれる可能性が出てきました。
「個人情報を売り買いしない」というポリシーと広告収益を両立させることができさえすれば、何も遠慮する必要はない訳です。ブランドへの信頼を維持しながら、新たな収益ポイントを確保することができます。

Appsumer社による調査では、Apple Search Adsを採用する広告主が増加する一方で、Facebook・Googleの利用が減少しているというデータが示されています。
Appleは、膨大な数のiPhoneを中心とした巨大なエコシステムを構築しています。本格的に広告ビジネスに舵を切るとした場合、そのポテンシャルは凄まじいものとなるでしょう。

マップ・ポッドキャスト・ブックなど、未だ広告が表示されていないサービスも多く、その気になればいくらでも広告モデルを構築することは可能です。
Appleは広告チームの人員を倍増(Financial Times)したり、自身のDSPを構築する準備を進めているなど、これまで避けてきた広告ビジネスへの本格参入が現実のものとなりつつあります。

越えなければならない課題も多く、これまで貫いてきたポリシーとの整合性も明確にしなければなりませんが、少なくとも現状よりは広告ビジネスを成長させていくことは間違いないでしょう。
サードパーティCookie廃止への対応に苦慮しているGoogleの隙をついて、大きな成功を収めるかどうか、今後を見守る必要がありそうです。*注3

【まとめ】

倒産寸前の状態からiMac・iPod・iPhone・iPad・Apple Watchと、次々に画期的なプロダクトを発表し、世界を驚かせ続けてきたApple。
ジョブズ亡き後も順調な成長を続けてはいるものの、さすがにiPhone発売時のように世界中が熱狂するような大変革はなくなりました。

しかし、もしAppleがこれまで避けてきた広告ビジネスへの本格参入が実現すれば、そのポテンシャルは凄まじいものとなるでしょう。
とは言え長年のAppleユーザーとしては、Appleの成長は嬉しいものの、それが“One more thing…”とともに紹介される新しいプロダクトを伴わないのは少し寂しい気がします。

建築・土木業向け BIM/CIMの導入方法から活用までがトータルで理解できる ホワイトペーパー配布中!

❶BIM/CIMの概要と重要性
❷BIM/CIM導入までの流れ
❸BIM/CIM導入でよくある失敗と課題
❹BIM活用を進めるためのポイント
についてまとめたホワイトペーパーを配布中


▼キャパの公式Twitter・FacebookではITに関する情報を随時更新しています!

■参考文献
注1
IIJ 「【法改正間近?】日本でのクッキー規制導入の行方」
https://www.iij.ad.jp/global/challenge/cookie_jp.html
注2
IT media マーケティング 「GoogleがサードパーティーCookie廃止を2024年後半に再延期 それでも広告主が日和ってはいけない理由」
https://marketing.itmedia.co.jp/mm/articles/2208/30/news049.html
注3
ADGUARD 「Appleの広告ビジネス、独自のトラッキング防止取り組みを背景に急成長」
https://adguard.com/ja/blog/apple-tracking-ads-business.html

    ホワイトペーパーフォームバナー

    【DL可能な資料タイトル】

    • ・プログラムによる建築/土木設計のQCD(品質/コスト/期間)向上
    • ・BIM/CIMの導入から活用までの手引書
    • ・大手ゼネコンBIM活用事例と建設業界のDXについて
    • ・デジタルツイン白書
    • ・建設業/製造業におけるデジタルツインの実現性と施設管理への応用

    詳細はこちら>>>

    PAGE TOP