BIM 360からRevitモデルファイルを抽出して活用する方法と活用例
建設業界では、休日出勤や長時間労働、人手不足などの課題が山積しています。2024年には働き方改革を進める法改正もあり、早急に業務の効率化、簡素化が求められています。その取り組みの一つとして、BIM等を用いた業務のデジタル化が進められてきました。
この記事ではBIMソフトの中でもAutodesk社のBIM360を中心に、まとめていきます。
この記事を読むと以下のことがわかります。
1.BIM360とは?
2.BIM360でできること
3.RevitとBIM360の活用例
BIM360とは?
BIM360(ビムスリーシックスティ)とは、Autodesk社が開発した、簡単に言えばクラウド型のBIMソフトで、日本では2016年8月に登場しました。
機能によってBIM 360DocsやBIM 360Build、BIM360Design、BIM360Coordinate、BIM360Layout、BIM360Plan、BIM360Opsなど多数製品があり、それらを総称してBIM360と呼んでいます。
特徴としては、ブラウザ上で動作するので、インターネット環境さえあればどこからでもアクセス可能で、在宅ワーク環境などでも作業が容易に行えます。
また、専用ソフトがなくても利用可能です。専用ソフトがなくても閲覧可能ということは、RevitやAutoCADがない、例えば施主でも閲覧が可能になるということです。
BIMや2D CADソフトのみの業務だと、専用ソフトを持っていない相手に対しては、PDFの図面に変換したりして確認をする必要がありましたが、BIM360でクラウド上で確認ができるのであればその手間がなくなります。
また、クラウド上でのやり取りなので、データ量を気にする必要がありません。BIMデータ自体がかなり重いデータになり、さらにBIMソフトも重いので、これを気にする必要がないのは大きなメリットです。
また、PCでもスマートフォンでも、タブレットでも閲覧できるため、打ち合わせなどの資料の準備の手間が減りますし、施工現場で活用させることもできます。
Googleドライブなどの共有ドライブでデータのやり取りを行った場合に問題となるのは、データの整合性です。誰がどこを直したのか、どれが最新のデータなのかがわかりにくくなります。
BIM360では、同じデータを修正していくことができるので、最新版のデータや、誰がいつどこを直したのかがひと目でわかるようになっています。業務上で発生する指摘事項も、データ上に残るので、言った言わないのトラブルも減ります。※1
次にBIM360でできることをもう少し詳しくみていきます。
BIM360でできること
複数人での共同設計が可能
一つのBIMモデルファイルを複数人で編集、修正することが可能です。
例えば、設計チーム、構造チーム、設備チームなどチームで分かれて設計を行う場合、それぞれのチームで作成したRevitモデルファイル等を合わせて中央モデルを作成します。修正するときは部分的にRevitモデルファイルを抽出し、修正したあと中央モデルに戻して更新する、という作業ができるので、複数のチームで同じモデルの編集が可能になります。
一つのデータを複数人で編集するため、どれが最新のデータかわからなくなることがないので、ミスが減ります。※2
業務の可視化が容易
多くの人が関わるプロジェクトでも、一つのクラウド上で作業することにより、誰が何をどこまで行っているかの業務の可視化や、変更点の確認が容易になります。
BIMモデルの変更に関しても、いつ、何の変更を行ったのかをコメントつきで管理することができ、またBIMモデル上で変更点は色を変えて表示できるので、変更前との比較も簡単に行えます。※2
また、パブリッシュという機能を使えばRevit等のBIMソフトがなくても閲覧することができるようになります。BIM360上で図面にコメントを残して問題点を指摘することもできますので、より多くのメンバーのチェックを受けることも容易になり、精度の高いモデルを作成できるでしょう。
文書ファイルも管理できる
BIMモデルファイルだけではなく、工程表や議事録などの文書も一緒に管理することが可能なので、ファイル管理の手間が減ります。※2
BIMモデルファイルを重ねてチェックができる、干渉チェックができる
BIMソフトのみでの業務の場合、意匠設計、構造設計、設備設計、施工計画それぞれでRevit等でBIMデータを作成し、データをメールで送信し、BIMデータを取り込んで確認・修正して、という流れになると思います。しかしBIM360の場合は、それぞれで作成したBIMを簡単に重ねることができるので、問題のある箇所を見つけるのが簡単になります。
また、干渉チェックを自動で行う機能もあるので、よりミスを減らすことができます。※2
以上のように、建設業界の業務の効率化、チームの連携の強化に役立つ特徴がBIM360にはあります。
RevitとBIM360の活用例
それではもう少し具体的な活用例をまとめていきます。
Revitクラウドワークシェアリング機能を用いてRevitモデルファイルからBIMデータを抽出し、編集する
前述した特徴にも挙げた、それぞれの設計チームで同じBIMモデルを編集・修正する活用例です。
BIM360のRevitクラウドワークシェアリングという機能を用いてさまざまな関係者と同時編集をすることができます。
図のように、BIM360のクラウド上に中央モデルを配置し、そのモデルをワークセットという単位にグループ分けをし、そのワークセットのRevitモデルファイルを抽出し、ユーザーAが編集して中央モデルに戻す、別のワークセットからRevitモデルファイルを抽出し、ユーザーBが編集して戻す、ということができるので、この機能によりそれぞれの分野の関係者が同じBIMモデルを同時編集することが実現できます。※3
また、画像のように誰がいつ何の編集を行ったかも全て記録され、場合によっては前のデータに戻すことも可能です。※3
まとめ
ゼネコンなどの企業では、Revit、BIM 360に限らず、さまざまなソフト、ツールを駆使して少しでも生産性を上げようという動きがみられ、さらにはコロナウイルスの拡大により働き方改革、在宅ワークなどの意識はより強まっています。
それぞれの会社の現状や問題点を踏まえ、より効率的に業務が行えるデジタルツールの導入を検討することが大事だと思います。
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■参考文献
※1 「BIM360で何ができるの?」
https://www.cadjapan.com/special/autodesk-concierge/useful/article/200805-01/
※2 「BIM360の詳細」
https://www.autodesk.co.jp/bim-360/explore/
※3 「Autodesk BIM360の概要と事例紹介」
https://www.youtube.com/watch?v=dDNfYWof5rc&feature=youtu.be