建築業界に3Dデータを活用したら何ができるの?ポイントをご紹介!
建築業界に3Dデータを活用したら何ができてどんな効果があるのでしょうか?今回は国土交通省の資料をもとにポイントを解説していきます!
この記事でわかること
・3Dデータ活用の推進施策
・フロントローディングとは
・コンカレントエンジニアリングとは
・3Dデータ活用の生産性向上への効果
・3Dデータ活用の合意形成・情報共有への効果
3Dデータ活用の推進施策
国土交通省は、地形や構造物を含む建設分野の3次元化の全体を「BIM/CIM」(Building/Construction Information Modeling,Management)という名称で整理しBIM/CIM推進委員会を設置し、国内での大規模構造物についてBIM/CIMの導入を推進しています。※1
3Dデータを活用する、すなわちBIM/CIMを活用することで、建設に係る各段階において、3次元モデルを導入し情報を充実させながら事業全体の関係者間で情報を共有することができ、一連の建築生産システムの業務効率化・高度化を図ることができます。
国土交通省のねらいは、今後の人口減少社会において、3Dデータ活用を推進させ、労働者の減少を上回る生産性を向上させ、経済成長を実現させることにあります。※1
推進施策の一環として、国土交通省は「BIM/CIM情報ポータルサイト【試行版】」というウェブサイトを2019年に立ち上げ、一般公開しました。同サイトでは、BIM/CIM関連情報が集約されています。※2
そのサイトの中で国土交通省が提示している、3Dデータ活用による生産性向上のための手法である「フロントローディング」と「コンカレントエンジニアリング」という言葉と、3Dデータ活用による生産性向上への効果と合意形成・情報共有への効果について、説明していきます。
フロントローディングとは
フロントローディングとは、ものづくり全般の生産性向上のための手法として使われる用語です。「ローディング」とは「負荷をかける」という意味で、フロントローディングは「設計初期の段階に負荷をかけて作業を前倒しで進める」ことを意味します。※3
3Dデータを活用する以前の建築設計現場では、設計が進むにつれ、模型を作成して設計検討等を行ったりし、最終的には実施設計段階で作業量がピークとなっていました。
しかし、3Dデータ活用によって、設計初期に3次元モデルで詳細な検討を行えたり、設計の不整合に気づくことが可能となります。
このようにして、設計後期における工期の遅れや無駄なコストの発生を減らすことができるのが、フロントローディングという手法であり、建築業界においては3Dデータ活用がその鍵となっています。
コンカレントエンジニアリングとは
コンカレントエンジニアリングとは、ものづくり全般の生産性向上のための手法として使われる用語です。「コンカレント」は「同時並行」という意味で、コンカレントエンジニアリングは「開発プロセスにおける様々な業務を同時並行的に処理する」ことを意味します。※3
3Dデータを活用する以前の建築業界では、調査、計画、積算、施工、維持管理など開発プロセスのそれぞれの部門で、独立して作業を行い、それぞれの作業が完了し次第、次の部門が作業をする、というように作業が途切れ途切れになる傾向がありました。
しかし、3Dデータ活用によって、それぞれの部門で統一されたデータベースを用い常に密な情報共有が可能となるため、同時並行的に作業つまりコンカレントエンジニアリングが行えます。
建築業界におけるコンカレントエンジニアリングは、開発期間の短縮やコスト削減に対して大きな効果が期待できる手法です。
3Dデータ活用の生産性向上への効果
建築業界における3Dデータ活用(BIM/CIM活用)は、大きく二つの効果が期待できます。そのうちの一つは生産性向上への効果です。
3Dデータ活用によって、設計・開発に関わる情報を、迅速に具体化できるとともにミスなく共有することができます。それによって、先ほど説明した「フロントローディング」と「コンカレントエンジニアリング」が可能となります。※3
例えばフロントローディングの具体的な効果として、設計の可視化による設計ミスの防止や、仮設工法の合理的な選定、事前確認による鉄筋干渉回避などが挙げられます。
またコンカレントエンジニアリングの具体的な効果として、施工担当者の知見の設計段階反映や、事業関係者との共同作業化などが挙げられます。
3Dデータ活用の合意形成・情報共有への効果
建築業界における3Dデータ活用(BIM/CIM活用)の大きな二つの効果のもう一つとして、合意形成・情報共有への効果が挙げられます。
建築業界では、常に多数の関係者とやりとりをして事業を進めていきます。いうまでもなく、2Dの図面のみの情報よりも、さまざまな情報が紐づいた3Dデータの方が、正確にわかりやすく情報を共有できます。
たとえば、国土交通省の資料※4では、橋梁工事に関する地元説明において3Dで可視化できることや夜間工事状況がビジュアルで示せることなどによって作業が大幅に短縮した事例を取り上げています。
まとめ
今回は、建築業界に3Dデータを活用したら何ができるのか、国土交通省の資料をもとにポイントを解説しました。
・国土交通省は、BIM/CIM推進委員会を立ち上げ建築業界の3Dデータ活用(BIM/CIM活用)の推進を目指しており、2019年には「BIM/CIMポータルサイト【試行版】」を立ち上げました。
・フロントローディングとは、「設計初期の段階に負荷をかけて作業を前倒しで進める」ことを意味する、ものづくりの生産性向上のための手法です。
・コンカレントエンジニアリングとは、「開発プロセスにおける様々な業務を同時並行的に処理する」ことを意味する、ものづくりの生産性向上のための手法です。
・建築業界の3Dデータ活用によって、フロントローディングとコンカレントエンジニアリングが可能となり、生産性向上の効果が期待できます。
・建築業界における3Dデータ活用によって、正確にわかりやすく情報を共有することが可能となり、関係者間での合意形成・情報共有効率化の効果が期待できます。
建築業界は、常に3次元の建物などを建設しているため、3Dデータ活用との親和性は抜群なものとなっています。ソフトウェア開発の技術も大幅に進化し、だれでも気軽に3Dデータを触って見れる時代になりました。ぜひ3Dデータ活用の流れに乗ってみましょう!
参考
※1 国土交通省大臣官房技術調査課「国土交通省におけるi-ConstructionとBIM/CIMの取り組みについて」https://www.ocf.or.jp/pdf/seminar2018/S1.pdf
※2 国土交通省 報道発表資料「『BIM/CIMポータルサイト【試行版】』を開設しました!
~BIM/CIM関連情報へのアクセシビリティの向上~ https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_000615.html
※3 国土交通省大臣官房 技術調査課「初めてのBIM/CIM」2019.9 http://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcim1stGuide_R0109___hidaritojiryomen_0909.pdf
※4 国土交通省大臣官房 技術調査課「BIM/CIM事例集 ver.1」2019.11 http://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimExamplesR1.pdf