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大和ハウスにみる、BIMを活用した建設のライフサイクルの情報管理についてご紹介

2017年に大和ハウスはBIM推進室を設立し、2019年からは製品開発から営業・設計・施工・維持管理までの情報が一元化されたBIMをプラットフォームとするデジタル基盤「D’s BIM」の構築を進めています。*1
この記事では、建設のライフサイクルをBIMで管理するという大和ハウスが目指している取り組みについてご紹介します。
この記事を読むと以下の3つのことがわかります。
(1)建設のライフサイクルをBIMで管理する
(2)大和ハウスが認証を受けた国際規格 ISO 19650とは
(3)国際規格 ISO 19650 の認証を受けるメリット

建設のライフサイクルをBIMで管理する

BIMというと建材や設備、工数などの情報を取り込んだ3Dモデルをつくるツールであるという印象が強いのではないでしょうか。
シミュレーションや図面作成、設計を効率よく進められるため、広く普及しています。
実際、BIMが設計や施工など各部門のためという部分最適な考え方で使われることも多いようです。
しかし、BIMは竣工後にも運用、修繕、そして耐用年数の経過などの理由により解体処分するまでのライフサイクル全体にも活用することができます。
BIMを活用することで施設の維持・管理などの効率化が期待できます。さらに保全・点検作業や修繕の情報をBIMに連携させることで、建物の資産価値を高める維持管理データの分析や、効率的な修繕対応につながっていきます。

大和ハウスの取り組み

建設のライフサイクル管理に向け、BIMデータに、GISデータや、製品・仕様データ、施工データ、品質データ、建物運用データなどを、その発生工程ごとに関連付けていきます。こうすることで建設プロセスにおけるデジタルバリューチェーンを実現することを目指しています。
ライフサイクルの中の点検時には、BIMデータをVRソフトウェア「Prospect」を使って、3D画像化します。その3D図面と現場写真を連携することで着工前と施工後を一元的に記録・管理しています。
2022年9月時点では施工後の建物の運営や保守などにBIMを適用する技術は大和ハウスの所有する研修施設にて実証実験中でした。そこではまず空調や電気などの設備のセンサーデータや施設内の画像データなどをBIMにリアルタイムで取り入れます。温度などの施設の状態が設定値を超えると通知を発信するようにし、BIMのビューワー機能を使って中央から監視・制御をすぐに行えることが確認されました。

大和ハウスが認証を受けた国際規格 ISO 19650とは

BSIグループジャパン株式会社は、大和ハウス工業株式会社に対し、日本初となるISO 19650-1およびISO 19650-2に基づいた 「設計と建設のためのBIM BSI Kitemark(カイトマーク)」 を認証しました。*2
これにより、大和ハウスが独自に実施してきたBIMの取り組みが高い技術力を備え、かつ国際的なレベルに到達していることが公式に認められたということになります。 

ISO 19650とは

ISO 19650とは、ビルディングインフォメーションモデリング(BIM)を使用して構築された資産のライフサイクル全体にわたって情報管理を行うための国際規格です。*3
2023年2月現在では次の6つで構成されています。
・ISO 19650-1:概念および原則(Concepts and principles)
・ISO 19650-2:資産の分配段階(Delivery phase of assets)
・ISO 19650-3:資産の運用段階(Operational phase of the assets)
・ISO 19650-4:情報の交換(Information exchange)
・ISO 19650-5:安全性に配慮した情報管理への姿勢(Security-minded approach to information management)
・ISO 19650-6:安全衛生(Health and Safety)
わかりやすくいうと、ISO 19650 は建設資産の全ライフサイクルに対して、情報マネジメントを適切に行うためには何をすべきか、業務内容を具体的に示したものです。
BIM認証には2種類あります。1つは企業内にある組織や一つのプロジェクトを対象にしたBIM導入や機能などを証明する「Verification(検証)」。もうひとつはより詳細な項目で企業そのものの取り組みを審査する「Kitemark(認証)」です。大和ハウスはより厳しい審査に日本で初めて合格したということになります。

国際規格 ISO 19650 の認証を受けるメリット

国際規格 ISO 19650 の認証を受けるメリットとして次のようなものが挙げられます。

・自社が取り組むBIMの客観的な評価を受けられる
BIMを活用した建設プロセスに取り組んでいるものの、それが正しい方向性なのかを判断することは非常に難しいことです。ISOの認定制度を活用することで、信頼性の高いBIM技術を活かした設計業務を行っていることが客観的に評価・証明されます。
・建築物の維持、補修、改変、拡充又は廃止を計画的、効率的及び安全に実施できる
国際規格の認証を受けるということは、データの管理の方法や様々な規則を統一するということになります。ISOを模範とし、業務内容を改めて整理し、発注者、設計者、協力会社、委託先を含めた情報管理の基準を定められれば、プロジェクトの合理化や効率化を図ることができます。
具体的にいうと、ISO 19650では建築物の建設または修繕時には次のようなルールがあります。
1.発注者が実際に使用された1つ1つの材料に関する情報などのEIRを受注者に指定されたフォーマット(IFC、COBie)での提出を求めます。
※EIR(Exchange Information Requirements):発注者情報要件
2.そしてそれらを関係者ならいつでも安定的にアプローチできるCDE(common data environment:共通データ環境)に保管する
安全性が高く、改ざん不可能で削除不可能な中立的な環境を経由することで、プロジェクトの履歴を確実に管理できます。
・競合との差別化が可能
ISO 19650は国際的に見ても認証を受けている企業が少なく、取得すれば競合他社との差別化ができるので、入札の時などに有利になることでしょう。特に日本においては、2022年9月の時点で取得している企業は大成建設や大林組を含む7社しかありません。
イギリスなどの一部の国では、公共事業で ISO 19650 に基づくBIM適用の義務化が拡大しているので、ますます認証を受ける企業が増えていくことでしょう。
今回の認証は設計BIMに限定したものなので、大和ハウスは今後、施工BIMや維持管理BIMを次の認証ターゲットにしていく予定です。それらが認証されれば、建設のライフサイクルをBIMで管理していることが正式かつ国際的に認められたことになります。

まとめ

2025年には戸建て住宅も含めて全建築物も省エネ基準への適合化が義務化され、さらに将来的には基準がますます引き上げられる予定です。脱酸素社会の実現に向け、竣工後も省エネで環境によい建築をつくることが要請されてきています。長期的な建物の管理のために ISO 19650 に基づくBIM適用を義務づける事業も国際的に増えていくと予想されます。そのような建築が直面する課題の解決に対して、今回ご紹介したBIMでの建設のライフサイクル管理が重要な役割を果たすことでしょう。

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*1 大和ハウス工業「BIM活用によるものづくり改革」
https://www.daiwahouse.co.jp/ir/dxar/2021/value_chain/bim/index.html

*2  BSIジャパン「BSIジャパン、 ⽇本初となるISO 19650に基づいたBIM BSI Kitemarkを大和ハウス工業に認証」
https://www.bsigroup.com/ja-JP/about-bsi/media-centre/press-release/2021/february-2021/bim-kitemark-daiwahouse/

*3 BSIジャパン「BIM – ビルディングインフォメーションモデリング – ISO 19650」
https://www.bsigroup.com/ja-JP/Building-Information-Modelling-BIM-ISO19650/

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