BIMobjectとは?その魅力と日本のBIM普及状況について
「BIMobject」は、BIMに必要なオブジェクトを無償で提供してくれるプラットフォームです。BIMobjectに登録されたBIMオブジェクトを使えば、3Dモデリングをより効率化することができます。
この記事ではBIMobjectについて、その概要や利用方法をご紹介します。最後には日本におけるBIMの導入状況もご紹介しますので、BIMの導入に悩むご担当者はぜひ最後までお読みください。
この記事を読むと、以下の3つのことが分かります。
1.BIMobjectの概要について
2.BIMobjectで期待できることについて
3.日本のBIM普及状況と進まない要因
BIMobjectとは?その概要と利用方法について
まずはBIMobjectについて、その概要や利用方法を解説します。
BIMobject はBIMデータを無償でダウンロードできる
「BIMobject」はスウェーデンに本社を置く「BIMobject AB社」と建材商社である野原ホールディングスングスが、共同で提供しているプラットフォームです。国内の建設業者向けにBIMオブジェクトを無償提供するプラットフォームで、ユーザーはBIMobjectからBIMで使用する部材を無償でダウンロードすることができます。
つまりBIMobjectに登録されているメーカー・品番の部材であれば、ダウンロードによってBIMデータを簡単に入手できるため、1からオブジェクトを作る必要がありません。特にBIM初心者や建材が多いプロジェクトでは、大いに重宝するでしょう。
BIMobjectが上陸した2018年当初、国内向けに登録している日本企業は0でした。(※1)しかし上陸当初から引き合いがあり、2024年3月時点では「RYOBI(リョービ)」や感染対策で需要が一気に増えた「サラヤ」など66ブランドが登録しています。
BIMobjectは名前の通りBIMの効率化を重視していますが、従来のCADソフトとの連携も可能です。専用アプリケーションによってRevitやAutoCAD、ARCHICADといった主要CADソフトから直接アクセスすることも可能です。
BIMobjectでは月あたり5万回ものダウンロード実績がある
BIMを推進している国土交通省では、BIMオブジェクトのような部材情報の集まりを「ライブラリー」と呼んでおり、3D設計を効率よく行うためのライブラリー構築を進めています。(※2)
BIM先進国であるイギリスやオランダでは、すでにライブラリーの構築が進んでいます。BIMobjectの本拠地であるスウェーデンのBIMobjectでは30万を超える部材が公開されており、月あたり5万件もダウンロードされています。
建築資材だけでなく、造園や電気設備などで構成されたBIMobjectのライブラリーは、多くの3DCADユーザーの業務を効率化しているのです。
BIMobjectの利用方法
BIMobjectはアカウント登録が必要です。以下の手順にて登録を行います。
BIMobject公式サイトの右上にある[サインイン|登録]をクリックして[アカウントを作成する]を選択します。
→BIMobject公式サイトはこちらから
メールアドレス、パスワード、名前や職業などの個人情報等を入力して[登録する]をクリックします。(仮登録)
登録したメールアドレスにBIMobjectからメールが届くので、本文内のリンクからアカウントを有効化します。
オブジェクトをダウンロードする方法
BIMobjectの公式サイトにアクセスしてログインします。
公式サイトからダウンロードしたい製品を探してクリックします。
[ダウンロード]をクリックするとダウンロードが開始します。必要な形式を選ぶ画面が表示されますので、該当のものを選び[ダウンロード]を選択するとダウンロード完了です。
使っている3DCADソフトからダウンロードしたオブジェクトを開き、設計中に3Dモデリングに組み込めるようになります。
オブジェクトのダウンロードには会員登録が必須です。
上記のようにBIMobjectは簡単にダウンロードしてBIMデータを入手できます。これにより、オブジェクトの設計業務を大幅に短縮できるのです。
BIMに与えられる情報とは
BIMと従来の2DCADで大きく違う点といえば、与えられる情報の違いです。3DCADでは「属性情報」として様々な情報を与えることができます。BIMはオブジェクト1つ1つに情報を与え、その情報も含めて設計業務を進められる点が大きな特徴です。
BIMで各オブジェクトに与えられる属性情報については、プロジェクトの段階で異なります。
例えば基本設計や実施設計の段階では、ほとんどのケースで部材選定中なので品番が確定していません。そのため、寸法や機能といった大枠の情報を与えてモデリングします。施工段階まで来ると部材選定が完了しているので、性能情報を与えることもできます。
最終的に、名称や型番、規格に加えて資材の数量や単価も属性情報として各オブジェクトに与えられます。そのため、3Dモデリングが完成した段階で、ツールが自動的にコスト計算を行うこともできるのです。
オブジェクトが属性情報を持っていなければ、手作業で部材を1つずつ数えて計算しなくてはなりません。また変更があれば計算は1からやり直しです。しかしBIMなら属性情報を変えるだけでコスト計算も連動して変わるので、面倒な修正業務やヒューマンエラーが発生しません。
日本のBIM普及は進んでいる?その実態と進まない要因について
日本は「海外に比べてBIMが遅れている」と何年も前から言われています。実際のところについて、国内におけるBIMの普及率について解説します。
令和4年度におけるBIMの導入状況は【50:50】
令和4年度に調査された資料では、企業におけるBIMの導入状況について「導入している」という回答が48.4%、「導入していない」という回答が50.4%でした。(残り1.1%は「不明」)(※3)
上記の資料では、BIMの導入・未導入についてはほぼ50:50の状態です。国内では国土交通省やゼネコンが積極的にBIM/CIMを推進していますが、まだまだ推進には伸びしろがあることがわかります。
さらにBIM未導入者の導入予定では、「3年以内に導入する予定がある」という回答が10.0%、「導入の予定はないが導入に興味がある」という回答が48.5%、「導入予定はない・未定」という回答が39.8%でした。(※4)
つまりBIMの導入予定がないと回答した企業のほとんどは、BIMの導入を具体的に考えていないということになります。
またBIMの導入では企業の属性も大きく影響しているようです。(※5)
企業の属性 導入している 導入していない
総合設計事務所 81.4% 17.4%
専門設計事務所 41.3% 58.2%
総合建設業 41.1% 58.3%
専門工事会社 60.0% 38.9%
上記の通り、建築業界の中では総合設計事務所が断トツでBIMの導入が進んでいることがわかります。専門設計事務所や総合建設業では「導入していない」という回答の方が多く、BIM導入が進んでいません。
BIMを導入していない主な理由
BIMを導入していない理由について、TOP3は以下の通りでした。(※6)
1位:発注者からBIM活用を求められていない…79.4%
2位:CAD等で現状問題なく業務を行うことができているため…73.5%
3位:業務をBIMに切り替えた場合、習熟するまで業務負担が大きいため…59.3%
BIMを導入しない最大の要因は、「発注者から求められていない」という回答でした。1~3位までの理由を見ると、BIMの導入に緊急性を感じておらず、さらに導入後の業務負担の大きさを苦慮している企業が多数のようです。
確かに、今までのCADからBIM/CIMへの切り替えは簡単ではありません。ツールも入れ替えなので高い費用がかかりますし、従業員も勉強し直したり操作を勉強したりといったコストがかかります。
しかしCADからBIM/CIMへと切替る波は来ており、将来的には会社の属性・規模に関係なくBIMを導入しなければなりません。
公共事業では2023年から「BIM//CIM原則適用」スタート
国内では2023年から公共事業における「BIM/CIM原則適用」がスタートしています。つまり公共事業を請け負う場合、その業務ではBIM/CIMを取り入れなければなりません。
この状況から、公共事業を多く請け負う企業はBIMの導入が急務となっています。
BIMへの切り替えは費用も時間もかかりますから、すぐに完全BIM化が難しい企業がほとんどです。そこで国は「義務項目」と「推奨項目」に分け、部分的にBIMを進めようとしています。
公共事業でBIMの導入が進めば、民間事業で求められるのも時間の問題です。ツール選定や導入、社内への浸透を考えると、あまり悠長に構えてはいられません。
BIMobjectはBIMにおける3Dモデリング業務を効率化してくれるツールです。このようなツールを上手く活用し、社内のBIM導入を進めてみてはいかがでしょうか。
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参照サイト
※1 https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1802/02/news051.html
※2 https://www.mlit.go.jp/common/001224373.pdf P.9「ライブラリーの必要性と現在の状況」
※3 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/20230328_15.pdf_safe.pdf P.9
※4 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/20230328_15.pdf_safe.pdf P.15
※5 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/20230328_15.pdf_safe.pdf P.10
※6 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/20230328_15.pdf_safe.pdf P.17