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ユーザーのトラッキング透明性を確保するAppleのATTとは

Appleの新しいプライバシー保護機能である「ATT」が、iOS14.5から導入されました。広告関係の業者が一時期、阿鼻叫喚の様相に包まれていましたが、現在は若干の落ち着きを取り戻したようです。
インターネット広告の歴史をまとめるとするなら、「ATT」導入以前と導入以後とでは、大きな転換期であると言えるでしょう。
今回の記事ではこの「ATT」について、改めてまとめてみましょう。

この記事でわかること

 ・トラッキング透明性について
 ・Apple 「ATT」の概要
 ・「ATT」導入の影響

トラッキング透明性とは何か

トラッキング透明性とは、インターネット上での行動データや個人情報がどのように収集され、利用されているかをユーザー側で知ることができるような状態にあることを言います。
私たちがWebブラウザでサイトを訪問するとき、実は知らないうちにデータを収集するためのプログラムが動いています。

こうしたデータは主に広告業者によって利用され、ターゲットとなるユーザーに対して、購入に結びつく可能性の高い商品やサービスの広告を選択して表示します。
例えば海外旅行について調べているユーザーには、おすすめのホテルやフライトチケットの広告を表示し、秋物のセーターを検索したユーザーには、セール中の通販サイトを表示するといった具合です。

ユーザーの行動履歴をデータとして収集することを「トラッキング」といいます。私たちの知らないうちに、インターネットの検索履歴や購買実績、映画や音楽の視聴履歴、職業、年齢、性別など、さまざまな情報が抜かれ、売買され、利用されています。たとえ実害がなかったとしても、これは非常に気持ち悪い状態でしょう。
もちろん、興味も関心もない広告が山ほど表示されるよりも、探している商品やサービスの広告がレコメンドされる方が良いとも言えるため、デメリットばかりではありません。

そこで、トラッキングを許可するかどうかをユーザーが選択できるようにし、さらにどのような目的で利用されるのかを明示する「トラッキング透明性」が重要になります。
 
サイトでCookieを使う時やアプリが端末の情報を収集する際に、必ずユーザーに対してその事実と目的を明示し、ユーザーはその説明を確認した上で、トラッキングを許可するかどうか判断します。
これまで広告業者などが一方的に送り込んできたトラッキングの仕組みを、ユーザー側で拒否することが可能となった訳です。
インターネット上でのプライバシー保護に関する意識の高まりから、このような仕組みが導入されるようになりました。*注1

「Apple ATT」の概要

「Apple ATT」とは、「App Tracking Transparency(アプリトラッキングの透明性)」を略したものです。iOS14.5から導入され、順次 iPad OSやtvOSにも同様の仕組みが導入されました。
ユーザーに対して、トラッキングに対する透明性と選択権を提供することを目的とした新たな機能です。

少し厳密に分類すると、「透明性」とは自分の情報(データ)がどんな目的で収集されているのかを明示することを言います。この部分はApp Storeのルールを変更し、ユーザーに対してアプリ提供会社から具体的に明示することが新たに定められました。

このルールに違反したアプリはApp Storeから削除されるなど、厳格にルールが適用されているようです。新規の申請に関しても、Appleによると21.5万件以上のアプリを、プライバシーのガイドライン違反を理由として却下しています。*注2

元々Appleは、PC(Mac)からブラウザ経由でインターネットにアクセスする場合のプライバシー保護も率先して進めてきました。AppleのブラウザであるSafariには、ITP(Intelligent Tracking Prevention:インテリジェント追跡防止)を搭載しています。
Googleもこのような動きに追随して、ブラウザに関しては同様の機能を実装しています。

Appleはそこからさらに踏み込んで、iPhoneアプリにも厳格なプライバシー保護を施すようにしました。それが「Apple ATT」です。
この「ATT」は、広告業界に大きな衝撃を与えました。
 
現在は、モバイル端末が十分に普及し、日常的に多くの人が利用しています。特にスマホは、個人を識別するのに格好のデバイスと言えます。このような理由もあり、広告の主戦場はPCからモバイルへと移行しています。

iPhoneには、端末を識別する「IDFA」というIDがあり、広告業者はこのIDから情報を取得することで、ターゲットを絞り込んだ効果的な広告を出したり、広告の効果を測定することが可能となっています。
「ATT」では、この「IDFA」の利用を許可するかどうか、ユーザー自身で判断できるようにしています。

これまではユーザーが認識してない間に、広告業者は勝手に「IDFA」へアクセスし、さまざまな個人情報を抜き出して利用してきました。それがiOS14.5からは、自由にアクセスできなくなったのです。
そのため広告業者は効果的な広告を出すことも、広告の成果を測定することもできなくなりました。*注3

「ATT」導入の影響

「ATT」の導入によって大きな影響を受けたのは、広告収入を主な収益源としているプラットフォーマーやインターネット広告業者です。
広告事業者はこれまでと比べて、狙いのターゲットに向けて正確に広告を打つことが難しくなりました。そうなると広告を出稿する企業は、他の有効な手段を探すことになります。

また、広告収入を主な収益源としているプラットフォーマーの代表例はMeta(旧Facebook)でしょう。
Appleが「ATT」の導入をアナウンスしてからは、Metaとの間で激しい攻防戦が繰り広げられました。MetaはAppleの新しいプライバシー保護に対して反対を表明し、新聞に全面広告を出すなどの対応を行っています。

しかし、Appleはこのような攻撃に怯むことなく、着々と計画を進めてきました。
結果、Metaや広告業者の抵抗も虚しく、「ATT」に基づく新たなルールがiPhoneに実装されています。
万策尽きたMetaは、ユーザーがアプリを利用する際に「IDFA」へのアクセスを許可するよう求めるメッセージを出すようにしましたが、どれほどの効果があったのか疑問です。*注4

2022年9月にはMetaが不正な手法を使い、「ATT」を回避して不当にユーザーの情報を取得していたという訴えがアメリカで起こされました。
元Googleエンジニアのフェリックス・クラウス氏による研究結果をもとにしたものであり、JavaScriptのコードを埋め込むことで情報を取得していると主張しています。

Metaにとっては自身のビジネスの中核であり、最も重要なターゲティング広告に関することですので、それだけ必死なのでしょう。
しかし、世の中の流れは消費者のプライバシー保護に傾きつつあり、Metaにとっては分が悪い戦いと言えます。もし、この訴えが事実だとした場合、さらに企業としての信頼にも大きく傷がつくこととなりそうです。*注5

【まとめ】
Appleは、デバイスの販売と関連するサービスの売上が収益の柱です。その点が広告収入をメインとするMetaやGoogleとは異なります。
ユーザーのプライバシーを守ることが、iPhoneなどのデバイスに対する信頼性にも繋がり、それが売上にも結びつくはずです。このことが、Appleが「ATT」を積極的に推進した理由でもあります。
Appleの主導で進められてきたプライバシー保護の強化に、今後Googleなども対応する見込みであり、これから業界がどのように変化するのか興味深いところです。

 

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■参考文献
注1
WonderShare 「【iOS14.5】あなたのプライバシーを守る!「アプリのトラッキングの透明性」機能を徹底的解説」
https://drfone.wondershare.jp/ios/ios14.5-app-tracking-transparency.html

注2
Apple 「App Store」
https://www.apple.com/jp/app-store/

注3
Ajust 「IDFA とは」
https://www.adjust.com/ja/glossary/idfa/

注4
Axion 「広告IDをめぐるAppleとFBの応酬の経緯とその背景」
https://www.axion.zone/app-tracking-transparency/

注5
iPhone Mania 「Meta、FBやInstagramでATT回避していたとして提訴される」
https://iphone-mania.jp/news-490036/

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