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譲歩を余儀なくされた「Apple税」とは?

 市場での有利な立場を利用して、独占的な取引を制限する「独占禁止法」。
 日本では公正取引委員会がこの法律に基づいて活動を行っていますが、その矛先が悪名高い「Apple税」に向けられ、Appleから譲歩を引き出したというニュースが流れています。
 今回の記事ではこのニュースをきっかけとして、Apple税について再度まとめてみましょう。

この記事でわかること
 ・日本の公正取引員会による長年の交渉でAppleが譲歩した件
 ・「公正取引委員会の金星」は本当なのかについて
 ・ユーザーへのメリットについて

日本の公正取引委員会による長年の交渉でAppleが譲歩

 今回の記事は、Appleが9月に出したアナウンスがベースになっています。まずは、そのアナウンスの内容を簡単にまとめてみました。

 ◯日本の公正取引委員会によるApp Storeの調査が終結

 これは、Appleが各種アナウンスを発表する場である「Apple Newsroom」に、2021年9月1日掲載されたアナウンスのタイトルです。
 世界的にAppleが、デベロッパーに課している手数料の高さと拘束性が問題となっていますが、日本の公正取引委員会も調査を行なっていたようです。

 この調査がApple側の譲歩により、終結したことが高々と宣言されています。
 譲歩の内容は次の通りです。

Appleが譲歩した内容

 ◯2022年初めから「リーダー」アプリデベロッパーに、外部へのリンクを許可する

 アプリのデベロッパーはユーザーに対する何らかの課金をする際に、必ずApple Store経由にする必要がありました。そのため最初のアプリダウンロードの時はもちろん、各種サービス提供時におこなう課金についても、その都度Appleから手数料を徴収されることになります。

 Andoridであれば、サービス提供や追加のコンテンツダウンロードはGoogle Playを通さなくても課金可能ですので、この点がAppleアプリのデベロッパーには大きな不満となっていました。
 今回のアナウンスではこの点を譲歩し、外部へのリンクを許可するという内容になっています。

 ◯日本の公正取引委員会との合意に基づき世界中で適用

 特に注目に値する点は、この合意が「日本の公正取引委員会との間でなされ」たと、特にアナウンスされていることです。
 世界中でApple税に対する批判が起こり、デベロッパー連合が形成され各地で裁判や関係機関による調査などがAppleに迫る中で、日本の公正取引委員会が譲歩を引き出したとも捉えることができます。

 ◯対象となるのは「リーダー」アプリ

 今回、Apple税が回避できる可能性がある対象のアプリは、「リーダー」アプリと明記されています。
 アナウンスでは特にリーダーアプリの定義として『デジタル版の雑誌、新聞、書籍、オーディオ、音楽、ビデオの購入済みコンテンツまたはサブスクリプションコンテンツを提供』するものとされています。*注1

前公正取引委員会委員長のインタビューが公開

 文春砲で有名な週刊文春のオンライン記事では、今回の経緯について前公正取引委員会委員長へのインタビュー記事が掲載されました。
 そこでは、Apple税と言われる不公正な取引に対して、2016年から調査に取り組んできたこと。5年もの長期にわたる激しい応酬を経て、世界に先駆けてAppleからの譲歩を引き出したことなどが語られています。*注2

「公正取引委員会の金星」は本当か?

 ここまでの報道を見ていると、日本の公正取引委員会が金星をあげたように感じられます。朝日新聞では「公正取引員会が異例の譲歩」を引き出したとを、手放しで賞賛している記事を出しています。
 私たち日本人の自尊心をくすぐる内容ですが、果たしてこれは事実でしょうか?*注3

公開の場で行われない議論に対する違和感

 このことについて、いくつか気になる点があります。
 そもそもこのようなAppleに対する追求は、他国であれば訴訟だったり議会だったり「公開の場」で議論が行われています。
 多くのユーザーや消費者に関係のあるテーマですから、公開で議論をすることで世論の反応も確認でき、何より公正で透明性が確保できます。

 ところが日本の公正取引委員会の場合、5年もの長きにわたって水面下で調査・議論が行われていたという点には、強い違和感を感じてしまいます。
 一般にわかる形でのアナウンスが一切ない状態で、調整・合意が行われ結果だけが発表される。これは、今の時代にそぐわない形に思えてしまいます。
 もっと情報を公開しながら、一般も含めて議論をする方法はなかったのでしょうか?

もともと何らかの規約変更をせざるを得なかったApple

 次に日本の各記事において、いかにも日本の公正取引委員会がAppleから譲歩を引き出したように書かれている点です。
 現在「フォートナイトの乱」をきっかけとして、Apple税に対する批判が世界的に巻き起こり、Spotifyなどの有名企業が連携してAppleに反旗を翻す戦いを繰り広げています。

 またGAFAの強い支配力と市場独占力を脅威とし、各国の公正取引委員会に相当する組織や議会などで、Apple税に対する調査や追求も進められています。現在、世界各国での訴訟への対応なども含め、Appleに対する包囲網が年々強まってきている状況にありました。

 これらを考慮すると、Appleが追求を回避し安定した事業を継続するためには「いずれ何らかの譲歩」をせざるを得ないことは確実だったのではないでしょうか。
 そう考えると、今回のニュースは「どうせ譲歩するのだから、日本の公正取引委員会の名前を使って発表」したのではないだろうか?と思えて仕方ありません。

 公正取引委員会との合意と発表することで、「国家機関の確認を得た」と信頼づけするこが可能であり、「調査が終結した」と付け加えることで、Appleに対する追求が終了したと宣言することもできます。

 AppleのNewsroomが2021年9月1日に今回のアナウンスを行い、それを認めるように翌日2日に公正取引委員会が調査の終結を発表するという時系列も、本来であれば逆ではないか
と思います。
 普通であれば、公的な機関による発表を受けて民間企業の方でニュースリリースするのではないでしょうか?このことに付いても、何となくAppleがこの件を主導しているように見えてしまう点の1つとなっています。

ゲームアプリに対するApple税は保留されたまま

 そもそも、Apple税に対する世界的な議論が大きくなった一つのきっかけは「フォートナイトの乱」でした。
 ゲームの場合、最初のアプリダウンロード時の課金よりも、継続的に発生するゲーム内サービスやコンテンツ販売に対する課金が重要な収益となります。

 アプリダウンロードであれば、Apple Storeというプラットフォームが重要な役割を果たすため、一定の手数料を徴収されるのは仕方ないところでしょう。
 しかしゲーム内におけるサービスの提供に関しては、Appleのプラットフォームに頼る必要性はほぼありません。それなのに、継続的にAppleに対して30%という高額な手数料を支払い続けるのはデベロッパーとしては納得し難い部分です。

 例えば、私が新たに不動産を賃貸してレストランを開業したとします。最初の賃貸契約や月々の家賃支払いに際して、不動産屋に手数料を支払うのは当然ですし、もちろん法外な金額でない限り許容できます。
 しかし、もし開業後に提供する料理の代金に対して、一定の手数料を不動産屋に支払わなければならないとしたら、それはとても許容できないでしょう。

 レストランでのサービスや料理は、不動産というプラットフォームを利用しなくとも提供可能です。それなのに必ず不動産屋を通すこと、しかも手数料として30%を支払うようにと言われたら、とても納得できません。
 例えとしては適切でないかもしれませんが、このような事ががまかり通っていたのがこれまでのApple税というものです。
 フォートナイトの反乱に、全世界のデベロッパーが共感したのは当然でしょう。

 今回のAppleのアナウンスでは、譲歩されるのは「リーダー」アプリと限定されています。しかもその定義は『デジタル版の雑誌、新聞、書籍、オーディオ、音楽、ビデオの購入済みコンテンツまたはサブスクリプションコンテンツを提供』と明確に記載されており、ゲームは含まれていません。

 Apple税に対する議論のきっかけともいうべきゲームアプリを除外した形で、「一件落着」のようなアナウンスが出され、それを日本の公正取引委員会が後追いで認めるような発表がなされるというのは、どうなのだろう?と感じてしまいます。

 今回のアナウンスは、Appleの米国サイトでも掲載されています。世界に発信する記事であるなら、本来は「来年2022年からApple Storeの規約を変更し、外部サイトへのリンクを開放します」といったタイトルになるはずです。
 それが「日本の公正取引委員会の調査が終結」になっているのも、不思議に感じる点です。

 米国向けの記事にわざわざローカルでの調査が終結したことをタイトルに掲げ、それに伴い全世界向けに規約の変更を実施する。
 まるで「日本に花を持たせて、実を取る」ようだと捉えるのは、少し穿った見方でしょうか?もし仮にそうだとすると、したたかなAppleに日本の公正取引委員会がうまく利用されたということになってしまいます。

ユーザーへのメリットは?

 今回に事により、リーダーアプリデベロッパーは規約変更に伴って、Apple税の回避が認められることになりました。このことによって収益性を高めることができるため、喜ばしいことであることは間違いありません。
 ところで、私たちユーザーにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

 簡単にいうと、それは「デベロッパー次第」ということになります。
 Apple税に相当する30%(小規模業者なら15%)軽減した分を、ユーザーへ還元してくれるのであれば、私たちはメリットを享受することができます。
 しかし、これまで通りの課金水準であれば、単純にデベロッパーが儲かるだけであり、私たちの負担は以前と同じです。

 やや異なる点としてはアプリ内課金の場合、Apple Storeを通さない形になるため、新たにデベロッパーが指定する外部サイトでの登録や支払いが必要となります。
 このことにより手続きが少し面倒になり、業者によってはその信頼性まで個人で判断しなければならなくなります。
 Apple Storeを通す仕組みはデベロッパーにとっては負担でしかありませんが、我々ユーザーにとっては安心と安全が確保できるものでした。


 今回の記事では、Apple税に対する日本の公正取引員会との合意に対するアナウンスを中心として記載していきました。
 しかし今回の内容は、「リーダー」アプリに限定した形での規約変更であり、まだ本来の問題の根本的な解決には至っていません。むしろ、Apple包囲網の一部を切り崩し、追求の手を緩めるための戦略とも思えます。
 したたかな巨大IT企業の代表格であるAppleに、日本は逆に一本取られてしまったのかも知れません。

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注1
Apple Newsroom 「日本の公正取引委員会によるApp Storeの調査が終結」
https://www.apple.com/jp/newsroom/2021/09/japan-fair-trade-commission-closes-app-store-investigation/
Japan Fair Trade Commission closes App Store investigation
https://www.apple.com/newsroom/2021/09/japan-fair-trade-commission-closes-app-store-investigation/
注2
文春オンライン 「なぜ日本は“アップル税”回避を引き出すことができたのか? 前公取委員長が明かす「私はGAFAとこう戦った」」
https://bunshun.jp/articles/-/49249
注3
朝日新聞Digital 「高い「アップル税」めぐり粘り強く調査 公取委、異例の譲歩引き出す」
https://www.asahi.com/articles/ASP926TXMP92ULFA01S.html

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