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データ活用で建設の未来を拓く 「BIM」がもたらす変革とは

住宅やビルの建設には当然ながら、まず設計図が必要です。
そして現在、設計図は、コンピューター上でCAD(Computer Aided Design)を用いて作成するのが主流となっています。
CADは建設業界のIT活用の象徴でもありますが、一方でまた多くの課題があるのも現実です。

そこで新しい手法として導入されつつあるのが「BIM」による設計です。

BIMとは「Building Information Modeling」の略ですが、まさにInformation=データを活用することで、建設業界にとどまらず社会全体を変革させるアプローチ方法としても注目されています。

CADからBIMへ

建設の世界では、実に多くの情報を必要とします。建物の形から構造、間取り、冷暖房など設備のレイアウト、各パーツの素材など非常に多くのものを必要とするからです。
同時にこれらは、建設物の維持管理にあたっても重要な情報です。

従来のCADによる設計では、大量の図面を必要としていました。また、竣工後も設計情報をうまく利用できていないケースは少なくありません。また、竣工前に発注者が詳細情報を確認するのも難しいことでした。

これらの課題を一手に解決する方法として期待されているのがBIM(ビム)です。

CADとBIMの違い

従来のCADや3D-CADは、基本的には2次元つまり平面での図面の作成が前提にありました。2次元の図面から3次元モデルを描くというのがこれまでの主流です。

一方でBIMは、ひとことで言えば専門のソフトウェアを使って最初から3次元のモデルを作るというものです(図1)。

図1 CADとBIMの違い
(出所:「BRI NEWS Vol.37 BIMと建築確認検査業務への応用」国立研究開発法人建築研究所)
https://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/epistura/pdf/73.pdf p2

言葉でそう言ってしまうと大きな違いがないように聞こえますが、そうではありません。

上の図にあるように、CADは単に平面や立体の「形状」の表現にとどまっており、壁などに使用する材質や設備などの属性情報は図面とアナログに連携する形で盛り込まれていました。
一方BIMでは、実際の建物に利用する構成物の属性情報をBIMモデルとして併せて収蔵できるのが最大の特徴です。

建物全体で見ると、じつに多くの情報を一元化して収蔵できるようになります(図2)。

図2 建物全体でのBIMの利用場面
(出所:「BRI NEWS Vol.37 BIMと建築確認検査業務への応用」国立研究開発法人建築研究所)
https://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/epistura/pdf/73.pdf p2

3D-CADの場合、3次元の図面を作り上げたのちに仕様変更があると、すべての2次元図面を変更しなければならないという事情がありました。また、発注者など外部の人にとって「一見すれば建物の詳細な仕様が分かる」ものではありませんでした。

しかし、BIMの場合、建材の特徴(素材など)まで含めた多くの情報を、発注者など専門外の人でもわかりやすい形で共有できます。また、設備に関する情報も一元化されて残りますので、竣工後の維持・管理にも役立てられます。
さらにBIMは建設に関わる多くの工程や人だけでなく、社会に変革をもたらすというのです。

BIMで変わる建設業のすがた

BIMは、建設の工程に次のような変化をもたらします。

生産性の向上

まず、生産性の向上です。BIMのように3次元データを利活用した生産方式では「フロントローディング」「コンカレントエンジニアリング」が可能になります。

フロントローディングとは、初期工程に負荷をかけることで、後工程で生じそうな仕様変更や手戻りを未然に防ぐことができます(図3)。

図3 フロントローディングのイメージ
(出所:「初めてのBIM/CIM」国土交通省)
https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcim1stGuide_R0109___hidaritojiryomen_0909.pdf p3

そしてコンカレントエンジニアリングとは、製造業などでの開発プロセスを構成する複数の工程を同時並行で進める手法です。開発状況に合わせて全ての部門がリアルタイムで情報を参照できるため、開発期間の短縮・コスト削減といった効果があります(図4)。

図4 コンカレントエンジニアリングのイメージ
(出所:「初めてのBIM/CIM」国土交通省)
https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcim1stGuide_R0109___hidaritojiryomen_0909.pdf p3

BIMの導入により、シンガポールでは生産性が全体で2割向上したとのデータが得られています(図5)。

図5 シンガポールでのBIMによる生産性向上
(出所:「やさしい!設計-施工連携BIMの特徴と拡張性」日本建設業連合会資料)
https://www.nikkenren.com/kenchiku/bim/seminar/pdf/impact2020_05.pdf p18

また、各工程で情報が共有されることで、資材の適切な仕入れも可能になるでしょう。

人手不足・労働環境の改善

また、建設現場が抱える大きな課題として、人手不足と高齢化があります。技能者数を年齢別に見ると65歳以上が最も多く、また、60歳以上の人が全体の4分の1を占めているのが現状です(図6)。

図6 年齢階層別の建設技能者数
(出所:「最近の建設業を巡る状況について」国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001493958.pdf p6

60歳以上の人たちは10年後にはその大半が引退すると見込まれており*1、若い人の確保・育成が喫緊の課題です。若い人を呼び込むためには処遇や労働条件を改善する必要があり、そのためには生産性の向上は欠かせないものになっています。

幅広いデータ共有で各工程の合理化

また、建物に関する情報が大量の図面ではなくひとつのデータベースの中に盛り込まれることで、発注者があらかじめ外見や設備の配置などを把握しやすくなります。行き違いを初期段階から防ぐことが可能になります。

また、従来は竣工後も維持管理者が同じデータベースを参照できるため、管理計画が立てやすくなります。災害が頻発する日本では、修繕・改修にあたってもデータは役立つことでしょう(図7)。

図7 3次元モデルによるデータ共有の形
(出所:「初めてのBIM/CIM」国土交通省)
https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcim1stGuide_R0109___hidaritojiryomen_0909.pdf p3

計画段階から施工、その後の維持管理でもひとつのデータベースをもとに進められるのです(図6)。

BIMの将来像

国土交通省は今後のBIMについて、「BIM-Level2」や「BIM-Level3」といったステップを視野に入れています*2。

BIMの利用が進んだBIM-Lebel2においては「建築確認のオンラン化」など審査にかかる時間・人手が省力化される想定です。
建築確認や許可にあたって、BIMの属性情報を利用し審査を自動化するという手法はすでにシンガポールなど一部の国で実際に使われています*3。

またBIM-Level3の段階では、建設分野と他分野(都市、不動産、交通、物流、観光、福祉、エネルギー等)の情報を連携し、都市全体でBIMのデータを活用できる社会が構築されるとしています。

BIMは建設業界を合理化させる手法であるだけでなく、「価値を持つデータ」でもあります。
多くのBIMデータが蓄積されることでビッグデータとなれば、さまざまな活用方法が見つかっていくことでしょう。

 

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*1
「最近の建設業を巡る状況について」国土交通省
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001493958.pdf p6

*2
「建築BIMの将来像と工程表の改訂について」国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001573458.pdf p2

*3
「BRI NEWS Vol.37 BIMと建築確認検査業務への応用」国立研究開発法人建築研究所)
https://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/epistura/pdf/73.pdf p2

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