CATIA MagicとはどのようなMBSE製品?概要を整理して解説
CATIAシリーズといえば最先端のテクノロジー領域で活躍する3DCADソフトが有名ですが、実際にはその周辺業務に適用可能な製品も存在します。中でもMBSE環境の構築に役立つ「CATIA Magic」は、自動車や航空宇宙の領域でも採用されるような、高度なシステム情報の構造化を支援する製品です。
この記事では、そもそもMBSEとはどのようなものを指すのかに触れつつ、CATIA Magicが持つ独自の強みについて、解説します。
目次:
- MBSEとは
- CATIAシリーズについて
- CATIA Magicとは
- システムモデリング言語(SysML)の概要
- CATIA Magicの主な特徴
MBSEとは
そもそもMBSEとは「Model Based Systems Engineering」の略称で、複数種類のモデルを使用しながらシステムズエンジニアリングを実施する方法を指します。
元々は1960年代から米国の航空宇宙や軍事領域で採用されはじめた研究開発手法の一種で、複雑な開発プロジェクトにMBSEを採用することで、その負担の軽減を実現しようというのが目的です。
視覚的な理解がしやすい図表を使ったシステムモデルや、システムの妥当性を検証するためのシミュレーションモデルなど複数のモデルを使いながら、高度に複雑化したプロジェクトを要件ごとに整理し、複数の工程を連携しつつ作業を進められるようにします。
従来手法では縦割りに考えられていた複数の専門分野の取り組みを統合して管理し、一つのプロジェクトの達成に向けて合理的な意思決定や業務遂行ができるようになることから、近年は世界中のハイテク産業で採用されている手法です。
CATIAシリーズについて
CATIAシリーズと聞いて多くの人が想像するのは、フランスのダッソー・システムズ社が開発したハイエンド3DCADソフトでしょう。フランス最大級のソフトウェア会社が提供するこの製品は、製品企画から設計、生産に至るまでの一貫したサポートを提供していることが最大の強みで、高度かつ複雑なプロダクト開発においては強力なパフォーマンスを発揮します。
高機能でありながら、比較的使いやすさにも優れるCATIAシリーズは現在CATIA V6シリーズまで登場しており、クラウドを使ったオンラインでの作業やコラボレーションにも対応しています。自動車産業や航空宇宙産業といった、世界でも最先端の産業分野において導入が進んでおり、国内外を問わず人気の高い製品です。
CATIA Magicとは
そんなCATIAシリーズの関連製品でもあるのが、今回紹介するCATIA Magicです。CATIA Magicは他のCATIAシリーズとは異なり3DCADソフトではなく、上で紹介したMBSEを実現するためのツールとなっています。
CATIA Magicは元々No Magic社が開発・提供していたMBSE製品ですが、2018年にダッソー・システムズが同社を買収し、現在のCATIA Magicに至ります*1。
ハイエンドな3DCADソフトのパフォーマンスを引き出す上で、プロジェクト開発環境の整備とCATIAシリーズとの高い互換性の確保は不可欠なプロセスです。No Magic社の買収によって実現したCATIA Magicの登場は、CATIAシリーズに準拠したMBSE環境を整える上での強力な武器となりました。
システムモデリング言語(SysML)の概要
CATIA Magicが備える特徴の一つとして、システムモデリング言語(SysML)に準拠しているという点が挙げられます。SysMLはソフトウェア設計の領域で活用されるUML(Unified Modeling Language)、いわゆる統一モデリング言語をシステム設計向けに昨日の拡張を行なったもので、そのための記述方法の追加が行われている言語です。
UMLはエンジニア間、およびエンジニアと非エンジニアのコミュニケーションを円滑にするために活用されている言語で、ソフトウェアの構造に対してのスムーズな理解を促すことができます。SysMLはUMLの説明力の高さを残しつつ、既存のアクティビティ図やシーケンス図に加えて要求図やパラメトリック図を付与し、様々な側面からプログラムを視覚的に把握できるようにしました。
システムの開発が大規模になると、目視だけではどうしても要件漏れなどが行なってしまいやすくなりますが、SysMLを導入することにより、未然に回避することができます。SysMLを使ってシステムモデルを作成・使用することで、高度なトレーサビリティを確保しながら開発と実装を進めていくことが可能です。
CATIA MagicはこのようなSysMLに準拠した仕様のMBSEツールであるため、プロジェクト開発における上流から下流まで、首尾一貫して情報を整理し構造化できる製品です。
CATIA Magicの主な特徴
CATIA Magicの特徴を整理すると、
- 世界標準の構造化が可能
- 情報整理特化のフレームワーク「Magic Grid」を実装
- CAEの情報整理に活躍
といった強みが挙げられます。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
世界標準の構造化が可能
前述の通り、CATIA MagicはSysMLを採用したMBSEツールですが、そもそもSysMLはすでに世界中で採用されている言語です。
そのため、SysMLの導入やCATIA Magicの採用が他社との互換性の問題で本来のパフォーマンスを発揮できない、といったトラブルに巻き込まれるリスクが小さく、積極的に導入を進めることで、むしろ他社とのコラボレーションの機会の増加にも恵まれるでしょう。
情報整理特化のフレームワーク「Magic Grid」を実装
CATIA Magicは、独自の情報整理に特化した「Magic Grid」と呼ばれるフレームワークを備えています。
実装済みのテンプレートに情報を当てはめるだけで高度な構造化が実現するので、CATIA Magicを使いこなせずに悩む心配はありません。
CAEの情報整理に活躍
CATIA MagicはCAEの情報整理においても活躍する製品です。これまでCAEモデルはモデルの内情がわからなかったり、モデルの本来の持ち主がわからなかったりする側面が強く、必要のたびに作り直すケースが一般化していました。
しかしCAEにもCATIA Magicを導入することで、そのモデルの所在や作成意図などを整理して保存することができるため、何度もモデルを再利用可能です。
CAE業務の効率化において、CATIA Magicは欠かせない製品となるでしょう。
まとめ
この記事では、3DCADソフトであるCATIAシリーズの運用と相性の良いMBSEツールのCATIA Magicについて解説しました。
情報の整理や構造化はデジタル活用を高いレベルで実現するには欠かせないプロセスですが、グローバルで導入実績のあるCATIA Magicであれば、十分な活躍が見込めるはずです。
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❹建設業界におけるDX
出典:
*1 PRTIMES「ダッソー・システムズ、No Magic の買収を完了しシステムズ・エンジニアリング基盤を強化、新時代のコネクテッド エクスペリエンスを促進」