1. TOP
  2. ブログ
  3. ジェネレーティブデザイン(GD)と3Dプリンターは相性が抜群 建築分野での取り組みを紹介

ジェネレーティブデザイン(GD)と3Dプリンターは相性が抜群 建築分野での取り組みを紹介

コンピューターによる新たな設計手法として注目を集めているのがジェネレーティブデザイン(GD)です。
強度や重量といった設計条件を指定することで、コンピューターが数百~数千個に及ぶ設計案を提示してくれます。
時間外労働の削減が喫緊の課題である建設業界において、設計者の工数削減に貢献できる技術であるといえるでしょう。

一方、ジェネレーティブデザインによる最適な形状は製作が難しいという課題を抱えているケースが多々あります。
その問題を解決するのが、3Dプリンターです。

この記事では、ジェネレーティブデザインの課題と建設業界における3Dプリンターの技術を紹介します。
両者の優れた関係性を理解し、効率的に活用する方法をイメージしてみてください。

ジェネレーティブデザイン(GD)の課題

まずはジェネレーティブデザインの課題についてみていきましょう。

建築におけるジェネレーティブデザインの課題として挙げられるのが、複雑な形状の製作です。
ジェネレーティブデザインやトポロジー最適化といったコンピューターによる自動設計では、強度や重量を設計条件に指定することで、軽くて強い形状を設計できます。
これらのデザインは、強度に寄与しない不要な部分を肉抜きしたような形状が多く、従来の施工方法では製作が難しいケースが一般的です。

わかりやすくイメージしてもらうため、「ハチの巣」を例に挙げてみましょう。
ハチの巣は、「ハニカム構造」と呼ばれる六角形が隙間なく並べられた形状をしています。
ハニカム構造は六角形特有の形状により強度が向上する構造であり、少ない材料で高い強度を実現できるとしてさまざまな方面で応用されています*1。
しかし、このハニカム構造を型枠とコンクリートでつくったり、鉄を溶接してつくったりするのは困難です。

ジェネレーティブデザインによりハニカム構造を提案されても実現が難しかったわけですが、3Dプリンターの技術の発展により明るい未来が展望されています。
3Dプリンターは材料を積層して立体を製作するので、ハニカム構造のような空隙が多い形状を難なく製作可能です。
3Dプリンターはジェネレーティブデザインの課題を解決するよいパートナーといえるでしょう。

3Dプリンターで使える建材

3Dプリンターの材料として一般的なのは樹脂ですが、建設業界ではさまざまな材料での活用が研究開発されています。

ここでは、3Dプリンターで使える研究・開発されている建材を紹介します。
なお、日本の建築で使える材料は建築基準法で指定されており、3Dプリンター向けの特殊材料は大臣認定を取得しないと使用できません。
留意しておきましょう。

樹脂

前述のとおり、3Dプリンターで一般的な材料は樹脂(プラスチック)です。
建築に携わっている方であれば、樹脂を使って3Dプリンターで製作した建築模型に触れたことのある方も多いのではないでしょうか。

竹中工務店は、2014年に慶応義塾大学環境情報学部の田中浩也教授と共同で、樹脂でコンクリート型枠を製作する3Dプリンター「ArchiFAB」を開発しています*2。
樹脂そのものを建材として使うのは難しいものの、コンクリートの自由形状を手軽に実現できる優れた技術であるといえるでしょう。

モルタル系材料

コンクリートに近いモルタル系材料は、3Dプリンターでの活用が積極的に試行されている建材です。
大手ゼネコンは3Dプリンター向けの新たなモルタル系材料を開発して大臣認定を取得するなど、さまざまな取り組みをしています。
コンクリートの型枠で使用したり、モルタル系材料そのもので建築をつくったりと幅広い使用用途が検討されています。

コンクリートは型枠さえつくることができれば、自由形状と相性のよい材料です。
3Dプリンターにより型枠を使用せずに自由形状をつくれれば、ジェネレーティブデザインへの対応力が向上するでしょう。

金属

最後に紹介するのは金属です。
金属3Dプリンターは自動車や小型衛星などのさまざまな分野で注目を集めています。

トヨタ自動車は新たなものづくりに向け、ジェネレーティブデザインと3Dプリンターによる設計に挑戦しています*3。
建設業ではありませんが、日本のものづくりの最先端を走るトヨタ自動車が注目しているという点は非常に印象的です。

金属の自由形状は、従来であれば鋳造(鋳型に金属材料を流し込んで目的の形状をつくる製作方法)によって製作していました。
しかし、鋳型の製作にかかるイニシャルコストが高く、手軽に採用できる製作方法とはいえません。
3Dプリンターで手軽に金属の自由形状をつくれれば、ジェネレーティブデザインの可能性がさらに広がるでしょう。

大手ゼネコンが研究・開発している3Dプリンターの活用方法

ここでは、日本の施工分野の最先端である大手ゼネコンが研究・開発している3Dプリンターの活用方法を紹介します。
3Dプリンターによる自由な建築の実現が近づいてきていることを感じてみてください。

大林組「3dpodTM」*4

大林組は、3Dプリンターによるセメント(モルタル)系材料を用いた建築物「3dpodTM」を施工しました。
すべての地上部材を3Dプリンターで製作し、壁は現地で直接プリントしているのが特徴です。

3dpod(TM)

(引用)3Dプリンター実証棟「3dpodTM」が完成

株式会社大林組

https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20230425_1.html

材料には独自開発の3Dプリンター向け特殊材料「3Dプリンター用特殊モルタル」や、超高強度繊維補強コンクリート「スリムコンクリート」などを使っています。

鉄筋や鉄骨を使用せずに高い強度を実現できる材料です。

3Dプリンターで施工する建築物としては国内で初めて国土交通大臣認定を取得し、注目を集めました。

竹中工務店「トポロジー最適化と金属3Dプリンターによる自由形状接合部」*5

竹中工務店は、トポロジー最適化で導き出された自由形状を3Dプリンターで製作する技術を研究開発しています。

トポロジー最適化と金属3Dプリンターによる自由形状接合部

(引用) トポロジー最適化と金属3Dプリンターによる自由形状接合部

株式会社竹中工務店

https://www.takenaka.co.jp/rd/numerical-analysis/05/index.html

上図のように少ない柱で大きな屋根を支える場合、柱を木の枝のように分岐させる架構が有効です。

しかし、分岐部分の製作は難しく、さらに、ボルトや溶接による接合では美観が損なわれるといったデメリットがありました。

美観を重視して鋳造による製作を行えば、コストが問題になります。

トポロジー最適化による美しく、軽量かつ高強度な形状を金属3Dプリンターで製作できれば、従来の課題に対するソリューションになりえるでしょう。

ジェネレーティブデザインX3Dプリンター、清水建設「3次元曲面ガラススクリーン構法」*6

最後に、清水建設の「3次元曲面ガラススクリーン構法」を紹介します。
ガラスの支持金物にジェネレーティブデザインと金属プリンティングを活用しているのが特徴です。

3次元曲面ガラススクリーン構法

(引用) 自由なガラスファサードを実現する「3次元曲面ガラススクリーン構法」

清水建設株式会社

https://www.shimz.co.jp/solution/tech372/index.html

ジェネレーティブデザインを金属3Dプリンターで実現した支持金物

(引用) 自由なガラスファサードを実現する「3次元曲面ガラススクリーン構法」

清水建設株式会社

https://www.shimz.co.jp/solution/tech372/index.html

ガラスが3次元自由曲面を有しているため、ガラス同士を繋ぐ支持金物の設計が複雑になります。

そこで、風圧や地震などの外力を入力し、ジェネレーティブデザインによる検討を行ったとのことです。

ジェネレーティブデザインにより短時間で最適な形状を導き出せたこと、金属3Dプリンターで複雑な形状を精密に製作できたことなどを利点に挙げています。

支持部材の検討は構造計算に手間がかかり、特注品になると製作コストが上がるなど、設計者の頭を悩ませてきた課題です。

自由形状となると難易度はさらに跳ね上がります。

ジェネレーティブデザインと3Dプリンターの組み合わせによるこの解決方法は、自由形状の建築を実現しやすくなる未来を示唆するものであるといえるでしょう。

おわりに

ジェネレーティブデザインやトポロジー最適化などのコンピューターによる最適化設計は便利である一方、製作に難しさがあるというデメリットがあります。
3Dプリンターは複雑な形状を製作するのが得意であり、最適化設計の弱点を補う存在であるといえるでしょう。
大手ゼネコンやスタートアップ企業が積極的に研究開発を進めているので、これからの動向をチェックしてみてください。

建築・土木業向け BIM/CIMの導入方法から活用までがトータルで理解できる ホワイトペーパー配布中!

❶BIM/CIMの概要と重要性
❷BIM/CIM導入までの流れ
❸BIM/CIM導入でよくある失敗と課題
❹BIM活用を進めるためのポイント
についてまとめたホワイトペーパーを配布中

*1

(参考) ニッセイ基礎研究所「ハニカム構造について-ハチの巣はなぜ六角形なのか?-」

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=68292?site=nli

*2

(参考)日経BP「意匠性を追求した樹脂型枠を製造、竹中工務店の3Dプリンター活用」

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00820/070800011/

*3

(参考) ITmedia「トヨタが挑戦する3Dプリンタxジェネレーティブデザインによる次世代モノづくり」

https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2106/21/news028_2.html

*4

(参考) 株式会社大林組「3Dプリンター実証棟「3dpodTM」が完成」

https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20230425_1.html

*5

(参考)ITmedia「竹中工務店の建築向け”金属3Dプリンタ製接合部”にきわめて有効、アルテアの構造解析ソフトウェアが果たす役割」

https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2209/26/news005.html

*6

(参考)清水建設株式会社「自由なガラスファサードを実現する「3次元曲面ガラススクリーン構法」」

https://www.shimz.co.jp/solution/tech372/index.html

    ホワイトペーパーフォームバナー

    【DL可能な資料タイトル】

    • ・プログラムによる建築/土木設計のQCD(品質/コスト/期間)向上
    • ・BIM/CIMの導入から活用までの手引書
    • ・大手ゼネコンBIM活用事例と建設業界のDXについて
    • ・デジタルツイン白書
    • ・建設業/製造業におけるデジタルツインの実現性と施設管理への応用

    詳細はこちら>>>

    PAGE TOP