ジェネレーティブシェイプデザインとは?CATIAの曲面デザインツールで設計をもっと合理的に!
「ジェネレーティブデザイン」といえば、AIを使った設計機能のことですね。
では、「ジェネレーティブシェイプデザイン」とは、一体どんなものでしょうか?
ジェネレーティブシェイプデザインとは、曲面をデザインするツールセットのことで、3DCADソフトウェアの「CATIA」で使える機能です。(*1)
曲面が多いデザインの設計には欠かせない機能で、機械設計や自動車設計などで多く利用されています。
この記事では、ジェネレーティブシェイプデザインについての概要をご紹介します。
機能の使い方というよりも、使うメリットや導入事例についてくわしく解説しています。
CATIAのジェネレーティブシェイプデザインがどのように役立つのか、事例から見ていきましょう。
この記事を読むと以下の3つのことがわかります
1.ジェネレーティブシェイプデザインってどんなもの?
2.ジェネレーティブシェイプデザインを使うメリットは?
3.ジェネレーティブシェイプデザインの導入事例
ジェネレーティブシェイプデザインってどんなもの?
まず最初に、ジェネレーティブシェイプデザインがどんな機能なのかをくわしく見ていきましょう。
ジェネレーティブシェイプデザインの機能の概要
ジェネレーティブシェイプデザインとは、3DCADソフトウェア「CATIA」のツールセットです。
このツールセットを使うと、3Dのサーフェスモデリングができます。(*2)
3Dモデルというと、アバターやキャラクターなどのCGデザインや、自動車モデルなどが思い浮かぶのではないでしょうか?
どちらも、ほぼ曲面で作られた非常に滑らかなデザインですよね。
そういった3Dのモデリング手法には、ワイヤーフレーム、サーフェス、ソリッドの3種類があります。(*3)
ワイヤーフレームは、点と線から曲線を作成したモデルです。
点と線だけなので処理が速いのですが、面がないので、複雑な形状になるとわかりづらいのが特徴です。
サーフェスモデリングは、ワイヤーフレームでできたモデルに「面」の要素を入れたものです。
ソリッドは、サーフェスにさらに体積や質量の要素を加えたものです。
自動車の滑らかなボディをデザインするには、ワイヤーフレームだけでは不可能です。
かといって、いきなりソリッドを作成することは難しいため、サーフェスモデリングができるジェネレーティブシェイプデザインのようなツールセットが使われています。
ジェネレーティブシェイプデザインはどのCADソフトでできる?
ジェネレーティブシェイプデザインは、3DCADソフトウェア「CATIA」の機能です。
機能名の「ジェネレーティブシェイプデザイン」はCATIA独自のものですが、曲面をデザインするサーフェスモデリングの機能自体は、ほかの3DCADソフトウェアでも使えます。
同じダッソー・システムズのCAD「SOLIDWORKS」や、AUTODESKの「AutoCAD 2023」にも、3Dサーフェスを作成する機能があります。(4)(5)
では、CATIAのジェネレーティブシェイプデザインと、ほかのCADソフトウェアの3Dサーフェス機能は何が違うのでしょうか?
次の項目で見ていきましょう。
ジェネレーティブシェイプデザインのメリットは?
ここからは、ダッソー・システムズの3DCADソフトウェア「CATIA」で使える、ジェネレーティブシェイプデザイン機能のメリットについてご紹介します。
デザインを検討しながらのバーチャルレビューが可能
デザインを検討するとき、いくら画面の中で完璧に仕上がっていても、試作品を作るまでは細部の確認ができないですよね。
CATIAを含むソフトウェアプラットフォーム「3DEXPERIENCE」では、画面上でデザインの検討をしながら、すぐにバーチャルレビューが可能となっています。(*6)
設計者がバーチャルグラスをかけると目の前に画面上の製品が現れるので、デザインや使い勝手をリアルにレビューすることができます。
また、レビューしながらすぐにデザインの変更ができるので、「変更した結果はまた次回のミーティングで」などといった余分な時間がかかることもありません。
このように、ジェネレーティブシェイプデザインのツールセットを使うと、精巧でスピーディーなレンダリングが可能になり、新製品リリースまでの時間を大幅に短縮できます。
テンプレートで建築設計の作業時間を短縮できる
「CATIA」のジェネレーティブシェイプデザイン機能は、機械設計だけでなく、建築設計の時間も短縮できます。(*7)
建物の構成要素を3Dモデル化してテンプレートを作ることで、モデリングの作業時間を短縮することができます。
テンプレートを使うと、メンバーそれぞれに経験や技術の差があっても同じところからスタートすることができる上に、設計作業そのものがよりわかりやすくなります。
また、CATIAの機能で設計ツールの処理を自動化することにより、さらに設計時間の短縮が可能です。
ジェネレーティブシェイプデザインの導入事例
ジェネレーティブシェイプデザインは、曲面デザインの設計効率が上がることから、多数の企業が導入しています。
ここからは、日本国内でのジェネレーティブシェイプデザインの活用事例をご紹介します。
復興支援の人材育成事業でCAD講座の教材に
2013年に行われた、東日本大震災の復興支援の人材育成事業では、自動車の設計をテーマとしたCAD講座の教材として、CATIAが使われました。(*8)
テキストでは、CATIAのジェネレーティブシェイプデザイン機能の使い方のほかにも、ソフトウェアの概要や自動車業界の動向といった幅広い知識を紹介しています。
こうした機械設計業務の即戦力を育成する講座で使われていることから、CATIAの汎用性や将来性がうかがえますね。
パナソニック株式会社はCATIAで大幅な時間短縮を実現
白物家電と呼ばれる、冷蔵庫や洗濯機などの家電を手がけるパナソニック株式会社の導入事例です。(*9)
パナソニックでは、CATIAの導入により大幅な設計時間の短縮を実現しました。
従来は、部署間での設計データのやりとりに、変換をするひと手間がかかっていました。
そこで、ソフトウェアをCATIAに統一したところ、データ変換の工程をすべて省くことができました。
また、図面を全面的に2Dから3Dへ移行することで、2Dで設計されたデータの3D化の手間をなくし、大幅な工数の削減が可能になりました。
ジェネレーティブシェイプデザインの導入費用は?
CATIAのジェネレーティブシェイプデザイン機能は、設計時間を大幅に短縮できるため、全体のコスト削減にもつながります。
ところで、ジェネレーティブシェイプデザイン機能が使えるCATIAの導入費用はどれくらいでしょうか?
CATIAの購入方法は個別見積りかオンラインで
ダッソー・システムズのソフトウェアは、基本的にはお問い合わせから営業担当者に相談し、個別の見積りを取り寄せての購入となりますが、オンラインストアで購入できるソフトウェアもあります。
オンラインストアで購入できるCATIAには、機械設計の「CATIA Mechanical Designer」と板金設計の「CATIA Sheet Metal Designer」の2つのバージョンがあります。(*10)
ジェネレーティブシェイプデザイン機能が使えるのは、機械設計の「CATIA Mechanical Designer」です。
そのほかにも、CATIAには電気設計や駆動型設計などさまざまなシリーズがあります。
さらに、上の項目でご紹介した導入事例のバーチャルレビューなどを行うには、CATIAに加えてクラウドプラットフォームソフトウェアの「3DEXPERIENCE プラットフォーム」の購入が必要です。(*11)
CATIAの価格は月12万円ほど、体験版は要お問い合わせ
CATIAの価格は、3か月のサブスクリプションで381,600円となっています。(記事執筆時点2024年4月11日)(*12)
このサブスクリプションには、15日間の返金可能期間が設けられています。
体験版もありますが、ダウンロードするには、メールフォームに入力してお問い合わせをする必要があります。(*13)
まとめ
ジェネレーティブシェイプデザインは、3DCADソフトウェア「CATIA」の曲面をデザインするサーフェス機能です。
サブスクリプションの価格は月12万円程度と高額になりますが、航空宇宙や自動車などの業界で標準ソフトとなっており、機能の高さは世界的に評価されています。(*14)
曲面デザインがうまくいかない方や、作業時間の短縮を目指している方は、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
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❸DXレポートについて
❹建設業界におけるDX
◆参考URL
*1 ダッソー・システムズ 2024 ユーザー アシスタンス『Generative Shape Design ユーザー ガイド』
*2 ダッソー・システムズ『CATIA デザイン/スタイリング』
*3 MONOist『3D CADのサーフェスモデリングの用途がイマイチ分からない……』
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2112/15/news010.html
*4 AutoCAD 2023ヘルプ『概要 – 3D サーフェスを作成する』
https://help.autodesk.com/view/ACD/2023/JPN/?guid=GUID-8218FF9A-6F05-47E7-A39C-47D342B942EB
*5 CAD Japan.com 大塚商会『自由曲面を容易に作成できるSOLIDWORKSサーフェス機能』
https://www.cadjapan.com/products/items/solidworks/topics/2019/190628_01.html
*6 ダッソー・システムズ CATIA R2023X の新機能『Appearance & Rendering Designer 統合化されたモデリング機能、視覚化機能、欠陥検出機能を使用して、増加する製品バリエーションの材料やパッケージの定義を加速』
*7 ダッソー・システムズ CATIA R2023X の新機能『Building Design Engineer 精緻な建物構成要素を設計、モデル化し、建物全体の3DEXPERIENCEツイン作成を自動化』
*8 株式会社 日本教育ネットワークコンソシアム『平成 25 年度 「東日本大震災からの復興を担う専門人材育成支援事業」自動車 CAD 基礎講座テキスト 』
http://www.jenc.co.jp/h25_fukkou_jc-21/h25_3_CADtext.pdf
*9 ダッソー・システムズ お客様活用事例『パナソニック株式会社 ホームアプライアンス社 様』
https://www.3ds.com/ja/insights/customer-stories/panasonic-home-appliances
*10 ダッソー・システムズ『オンラインストア』
*11 ダッソー・システムズ 『3DEXPERIENCE プラットフォームで未来をデザインする』
https://www.3ds.com/store/design-future-3d-experience-platform
*12 ダッソー・システムズ オンラインストア『CATIA メカニカルデザイナー』
https://www.3ds.com/store/catia-mechanical-designer
*13 ダッソー・システムズ『デモ動画を入手』
https://www.3ds.com/ja/how-to-buy/get-a-demo
*14 ダッソー・システムズ『CATIA V5』