BIMの7D活用が秘める可能性とは?CADとの違いを解説
BIMは高度な3Dモデル活用を推進するための技術として、高い注目度を有しています。ただ、これまでのCAD運用しか体験したことのない人にとって、BIMのポテンシャルを理解することは難しく、導入前にはその可能性について知識を深めておくことが重要です。
この記事では従来のCADでは到達できなかった、BIMの7D活用とはどのようなものかについて、そのポテンシャルや実現に必要なことなどに触れながら解説します。
目次:
- BIMとは
- BIMとCADの違い
- BIMを使った3D〜6D活用について
- BIMの7D活用で実現すること
- BIMの7D実現に必要なことは?
BIMとは
そもそもBIMとはBuilding Information Modelingの略称で、3Dモデルの中にあらゆる設計情報を内包し、一括運用ができるという技術です。
これまで設計図と3Dモデルは別個に運用するということが一般的で、設計や施工においてはこれらのデータを別々に共有したり修正したりする必要がありました。
しかしこのような運用プロセスの場合、データのバージョンにギャップが発生してしまったり、3Dモデルに正しく設計内容が反映されていなかったりなどの問題が発生しうることから、面倒が多いものでした。
BIMモデルは、こういったデータ共有の問題を丸ごと解決するのに最適な技術です。設計から施工、維持管理に至るまで、作成したデータを一気通貫で利用することができるため、何度も設計データを作り直す必要がありません。
BIMとCADの違い
3Dモデリングが発生するという点で、BIMはCADと同じではあるものの、その運用方法については大きな違いがあります。
まず、BIMの場合はCADとは異なり、3Dモデルに直接設計情報が反映されているので、高度な3Dモデル運用が可能です。
CADで作った3Dモデルは、あくまで手動で寸法などを入力しているため、シミュレーションなどに適用する際には参考値程度の信頼性しか担保されていません。一方でBIMは設計図面の情報が極めて丁寧に反映されており、修正の際も自動で修正情報が反映されるので、モデル分析の結果は高い精度を誇ります。
このようなBIM運用を実現するためには、CADのスキルだけではなく、ある程度データを分析したり入力したりといったノウハウが求められる点も特徴です。CADのオペレーティングスキルがあっても、それに追加する形でBIM運用のスキルを身につける必要がある点は注意しておきましょう。
BIMを使った3D〜6D活用について
BIMを使ったモデル活用については、3D以上のアプローチもある点には注目しておくべきでしょう。ここではCADモデルでは実現ができなかった、BIMを使った3Dから6Dまでの活用方法について解説します。
BIMを使った3D活用
BIMを使った3D活用は、従来のCADを使った3D活用よりも高い利便性を誇ります。
上述したように、BIMの3Dモデルデータには設計データがリアルタイムで反映されるので、修正が発生した際もその負担は非常に小さく抑えられます。またデータ共有の際にも単一のBIMモデルだけでデータのやり取りができるため、コミュニケーションコストの削減につながるでしょう。
BIMにおける4D活用
4D活用とは、3DのBIMモデルに時間の概念を付与したものです。例えば時間経過でBIMモデルがどのように変化していくのかを、正確にシミュレーションするような使い方ができます。
4Dを有効活用することで、正確にBIMモデルによって再現した建築物の耐久性を確認したり、設計上の課題を把握したりすることを正確に行えるようになるのが強みです。
また、施工スケジュールを正確に把握し、円滑なプロジェクトの遂行にも役立てることができます。
BIMの5D活用
BIMの5D活用とは、4Dの概念に対してさらにコスト管理の概念を加えたものです。
実際の建設プロジェクトにおいて、最も重要な要素の一つがコストです。プロジェクトにかかるコストの計算は、そのプロジェクトが頓挫するのを回避したり、プロジェクトに関わる事業者の収益性を担保したりする上で大きな意味を持ちます。
BIMの5D活用によって、そのプロジェクトにかかる正確なコストを各プロセスにおいて把握し、予算の無駄を削除したり、リソースを投入すべき箇所を把握したりできます。
BIMの6D活用
BIMの6D活用は、上で紹介した5D活用に加えて、エネルギー消費の概念を加えたものです。
近年の急速な気候変動に対抗すべく、あらゆる業界においてエコロジカルなビジネスモデルの構築が求められるようになってきました。中でも建設・建築業界は多くのエネルギー消費が発生する領域であることから、温室効果ガスの排出削減などによるSDGsの達成が強く社会から求められています。
BIMを活用して6Dの概念を採用することで、プロジェクトの完成に向けてどれくらいのエネルギー消費が発生するのか、リアルタイムで計算することができるようになります。
設計した建物の断熱性を分析し、空調を少ない電気消費で稼働させることができたり、施工段階におけるエネルギーの無駄な排出を抑制するためのアプローチを検討したりといった取り組みです。
このようなエネルギー消費に対する意識の高いプロジェクトの実現は、CSR対策につながるのはもちろんのこと、コストの削減においても非常に有効です。
BIMの7D活用で実現すること
そして、6Dへさらに維持管理の概念を加えたのが、BIMの7D活用です。建物の維持管理における効率化や利便性向上は、新規建設プロジェクトが減少傾向にある最近になって強く求められるようになってきた取り組みで、BIMの導入はその達成に大きく貢献します。
まず、BIMを使った建物の維持管理は、設計段階から使用してきた図面やモデルをそのまま流用できるので、新たに図面を作成するコストなどがかかりません。
加えて施工当時の図面を使えるということで、点検や補修工事の際に必要な部材やコストなども正確に把握することができます。
メンテナンスのタイミングや工事のタイミングも、BIMを使用することで正確に計算し、実行可能です。
建物の設計から施工、そして維持管理に至るまでをBIMデータで完全にワンストップで対応できるようになれば、7Dを実現できたと言えるでしょう。
BIMの7D実現に必要なことは?
このような7Dの実現事例はまだまだ限られており、達成のためにはいくつかの課題をクリアしなければなりません。知っておくべきポイントとしては、
- BIMの導入コストをクリアする
- 導入に伴う研修コストをクリアする
- 多くの事業者がBIMを導入する
といった問題です*1。
まずBIMは従来のCADソフトでは運用ができないため、新たにBIMを扱うための設備投資が必要です。また、それらを運用するための人員の確保やスキリングも必要になることから、ソフトを導入すればすぐにパフォーマンスが得られるというわけではない点も覚えておくべきでしょう。
加えて、BIMは複数の関係者が同時に活用することで効果を発揮する技術でもあります。まだBIMを導入している事業者は限られており、今後その数が増えることによりさらに使いやすい技術となっていくことは間違いありません。
まとめ
この記事では、BIMを使った7D活用とはどのような取り組みなのかについて紹介しました。3Dから6Dまでの使い方を踏襲した上で、7DまでをBIMの導入によって実現できれば、現場のハイテク化は一気に進むことが期待されます。
BIM導入に伴う課題を一つずつクリアし、建設DXを実現しましょう。
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出典:
*1 BUILT「施工BIMの未来のために―BIM活用の実態調査からみえてきた諸課題と在るべき姿」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2301/18/news016.html