AutoCADにおけるブロック機能の実行方法とは|作成・挿入・編集の手順を解説
1. はじめに
AutoCADにおけるブロック機能は、複数のオブジェクトを1つの部品としてまとめ、図面作成やオブジェクト管理を効率化できる重要な仕組みです。特に、同じパーツを多用する建築設計や設備、機械分野では、ブロックを使いこなすことで図面の作業時間を大幅に短縮できます。
しかしながら、初めてAutoCAD ブロックの作成手順を学ぶ際には、AutoCAD コマンドの操作やブロック定義の考え方、サイズ変更や尺度変更など、覚えることが多いと感じるかもしれません。また、ブロックに追加情報を持たせる「属性定義」や、より柔軟に形を変える「動的ブロック」に関してはさらに深い理解が必要です。
本記事では、中学生にもわかりやすいシンプルな言葉づかいを心がけつつ、AutoCAD ブロック機能の基本から複雑なカスタマイズ例まで順を追って解説します。AutoCAD ブロック作成やブロック挿入・編集の流れを実践的に示すことで、スムーズにブロックを導入できるようにすることが狙いです。ブロックを活用すれば、AutoCADで図面を扱う時間を大幅に減らし、精度の高い出図が可能になるでしょう。
この記事が、ブロック機能に初めて触れる方や、既にAutoCAD経験はあるもののブロックの高度な機能をさらに活用したい方の一助となれば幸いです。これからステップごとに、AutoCAD ブロックのメリットや作成・挿入・編集の手順を一緒に確認していきましょう。
2. AutoCADブロック機能の基本理解
ブロック機能を活用することで、図面内の重複したオブジェクトを1回の作業で一括管理できるようになります。これにより設計修正のコストが下がり、AutoCAD 図面管理の効率が飛躍的に向上するのが魅力です。
そもそもブロックとは、AutoCAD上で「部品」として定義したグループを何度でも再利用できる仕組みであり、図面内のオブジェクトを一つ一つ追加する手間を省略できます。さらに、ブロック再定義やAutoCAD ブロックの書き出しを行うことで、より多彩な活用領域が広がります。
ここからはブロックの全体像を正しく押さえるために、ブロック機能の概要や種類、そしてAutoCAD 2024年から導入された新しいスマートブロックの特徴を順に解説します。正しい把握ができると、設計者のニーズにあわせてブロックを使い分ける基盤が整うはずです。
設計者の皆さんがブロックの恩恵を最大限に受けられるように、まずは基礎固めとして以下の小見出しを読み進めてみてください。
2.1. ブロック機能の概要
ブロック機能とは、複数のオブジェクトをまとめて「1つのアイテム」として取り扱うためのAutoCADの機能です。別名「AutoCAD ブロック定義」と呼ばれる場合もあります。これを利用する最大のメリットは、繰り返し利用が必要な形状を1度まとめるだけで済み、必要な数だけ配置する際に一瞬で挿入できる点です。
例えば建築図面の場合、ドアや窓、家具、設備機器などを数多く配置するシーンが多いでしょう。それらのオブジェクトを1つの部品としてブロック化すると、図面作業を効率化できるばかりか、AutoCAD ブロックの再定義を通じて形状を一括更新することも可能になります。これはAutoCADの効率的な図面作成を支える大きな利点です。
さらに、AutoCADではブロックをファイルとして書き出す(外部ブロック)ことができ、他の図面やプロジェクトでも共有できるので、オブジェクト管理の側面でも有用です。AutoCAD コマンドやAutoCAD ブロックエディタを覚えておけば、多様な現場のニーズに柔軟に対応できるようになります。
2.2. ブロックの種類と特徴
AutoCADには、大きく分けて「標準ブロック」「動的ブロック(ダイナミックブロック)」「属性ブロック」の3種類があります。まず標準ブロックは、別名普通のブロックとも呼ばれ、1つのまとまりとして固定的に使う最も基本的な形態です。もちろん尺度変更は可能ですが、決められた範囲での編集が前提になることが多いでしょう。
一方、動的ブロック(AutoCAD ダイナミックブロック)は、部品を配置した後でも、ある程度形状を変更できるのが特長です。例えば同じドアパーツでもサイズや長さ変更を簡単に切り替えたいときに活躍します。AutoCAD ブロックエディタを用いて設定し、回転や伸縮、姿勢の切り替えが行いやすくなります。
そして、属性ブロック(AutoCAD 属性定義)は、部品に文字情報などのメタデータを埋め込むことができます。例えば建具の品番や価格、部品名などのデータをまとめて管理し、後で表にまとめたり数を自動で集計したりするのに便利です。AutoCAD ブロックの挿入手順に合わせて属性を入力する流れになるため、部品管理や図面の一貫性を保つために重宝します。
種類 | 代表用途 | 基点設計のコツ | 推奨レイヤ/色 | 主な作成要素 | 運用メリット | 注意点/よくある失敗 |
標準ブロック | 記号・部品・凡例 | 取り付け中心/丁番端など“置きやすい一点” | 形状はレイヤ0+BYLAYER | BLOCK / ライブラリ化はWBLOCK | 軽量化・一括変更 | 形状内に色固定が混在→見た目統一不可 |
属性ブロック | 品番・数量・記号番号 | 基点は記号の基準点 | 同上 | 文字は属性でATTDEF→BLOCK/変更反映はATTSYNC | 集計・ラベル自動化 | ATTDIA=0で入力ダイアログが出ない/タグ名の揺れ |
動的ブロック | 可変長・左右勝手・表示切替 | 変更の起点になる端点・中心 | 同上 | BEDITでパラメータ+アクション(距離/回転/フリップ/可視性/配列) | 1定義で多用途化・差し替え不要 | ストレッチの選択セット漏れ/可視性状態の未設定 |
2.3. スマートブロックとは
スマートブロックは、AutoCAD 2024年から登場した比較的新しいブロックの機能です。ブロックを挿入した際のプロジェクト状況や配置条件をAutoCADが学習し、次に挿入するブロックの最適な配置ポイントを提案してくれます。
たとえばドアブロックを壁際に配置すると、その位置や向きに関する情報を記憶し、次回ドアを挿入しようとしたときに半自動的に最適な場所を提示します。これにより、繰り返し同じようなレイアウト作業が求められるときに時間短縮が叶います。
スマートブロックはAutoCAD ブロックの最適化をさらに進めた機能といえますが、動作は基本的に動的ブロックや属性ブロックなどと組み合わせて使うことも可能です。こうした先端機能はAutoCAD ブロック機能を最大限活かすうえで覚えておくと非常に便利です。
3. ブロックの作成手順
ブロックを正しく作るためには、事前の設定やレイヤ管理の仕組みを理解しておくことが欠かせません。適切なレイヤで図形を作成し、AutoCAD ブロックの作成手順を踏むことで、後々の編集や再定義がスムーズに行えます。ここではブロックの作成プロセスを詳しく見ていきましょう。
作成手順の基本は、対象となるオブジェクトをすべて選択してブロックコマンドを実行する流れです。しかしブロックの種類によって入力すべき項目が異なるため、標準ブロック・属性ブロック・動的ブロックそれぞれの応用ポイントに注意してください。
3.1. 必要な前提条件と設定
ブロックを作成する前に、以下の点を確かめるとよいでしょう。
1つ目は、レイヤ0と他のレイヤをどのように使うかです。AutoCAD ブロックのメリットの1つは、挿入するレイヤを変えることで見た目や線種を柔軟に切り替えられることにあります。ブロック内のオブジェクトはレイヤ0(かつ色や線種をBYLAYER)にしておくと、最終的に挿入先のレイヤ属性に合わせて色や線タイプが連動するため便利です。
2つ目は、図面単位(UNITS)や挿入単位(INSUNITS)の整合です。他の図面とやり取りしながらAutoCAD ブロックのコピーや共有をする場合、単位の違いが大きなズレやスケールエラーの原因になることがあります。必要に応じて事前にUNITSコマンドなどで単位設定を統一しておきましょう。
3つ目は、基点(ベースポイント)の決め方です。ドアであればヒンジ側や中心線など、後で挿入するときに分かりやすい位置を基点にするのが推奨されます。AutoCAD ブロックの尺度変更や回転中心を指定しやすい基点だと、挿入時に迷わずにすみます。
3.2. 標準ブロックの作成プロセス
標準ブロックを作る場合、まずは図面上でまとめたいオブジェクトを全て選択し、その後にAutoCAD コマンド「BLOCK」(もしくは「B」)を実行します。これにより「ブロック定義」ダイアログボックスが開きます。
ダイアログ内では、ブロック名の入力と挿入基点の指定、オブジェクトをブロック化した後どう扱うか(ブロックに変換するのか、コピーを残すのかなど)を設定します。名前は後からの管理を意識し、用途やサイズが分かりやすいものにしておくと良いでしょう。
OKボタンを押すとブロックが作成され、図面内にブロック定義として保存されます。もしこのブロックを別のファイルとして共有したい場合は、AutoCAD ブロック書き出し(WBLOCK)を使うことでDWG化できるので、何度も再利用するデータはライブラリとして保存するのがおすすめです。
3.3. 属性ブロックの詳細
属性ブロックは、AutoCAD 属性定義を用いてブロック内にテキスト情報を持たせる方法です。例えば、建具のドア型番や部品価格などを一括で管理したい場合に便利です。属性情報は後から一括変更したり一覧出力したりできるため、AutoCAD 図面管理の質を高められます。
具体的には「ATTDEF」コマンドを使ってタグ名・プロンプト・デフォルト値などを設定し、それを図面内に配置した上でブロックコマンドを実行します。ブロックを挿入した際には、属性値を入力するダイアログが表示され、各項目を入力することで部品ごとに異なる情報を割り当てられるという仕組みです。
この入力ダイアログが表示されない場合は、AutoCAD設定で「ATTDIA」が0になっていたり、「ATTREQ」が無効化されている可能性があります。正しく出るように設定を見直すことで、品番や数量などを間違いなく入力し、後から表に集計できるでしょう。
3.4. 動的ブロックの設定方法
動的ブロックを使うと、挿入後にオブジェクトを自由度高く調整できるようになります。AutoCAD コマンド「BEDIT」を使うことで、「ブロックエディタ」画面に入り、そこから動的ブロック用のパラメータやアクションを設定します。
たとえば「距離パラメータ」と「ストレッチアクション」を関連付けておけば、ブロックを挿入した後で、長さ変更や伸縮を簡単に行えます。ドアにおける左右勝手の反転(実質的な鏡像)をヒンジ周りで行いたい場合は、「フリップ」パラメータを追加するとワンタッチで向きを切り替えられて便利です。
動的ブロックの設定は慣れるまで少し試行錯誤が必要ですが、AutoCAD ブロックの自動配置や形状変更をスマートに実行できる点が大きな強みです。より複雑な図面を扱う機械設計や建築設備分野で効率的な設計を求める際に有用なテクニックといえるでしょう。
4. ブロックの挿入と使用
ブロックを作成した後は、実際の作図やレイアウトでそのブロックを挿入する段階に進みます。AutoCADでは、ブロック挿入コマンドやDesignCenter、ツールパレットなど、複数の挿入方法が用意されています。
挿入方法によってはブロックの“基点”や“尺度”、回転角度を個別に指定できるため、正確な図面作成に役立ちます。また、繰り返し同じ要素を配置する場合にはスマートブロックの仕組みが時短に直結するでしょう。以下で挿入の基本的な手順と、効率的に配置する際のポイントを解説します。
4.1. ブロックの挿入基本手順
AutoCAD ブロック挿入の最も一般的な方法は、「INSERT」または「I」と入力してEnterを押すことです。挿入ダイアログが表示されたら、挿入したいブロックを選択し、座標の指定や尺度、回転などのオプションを設定します。単位設定が合っていれば、意図したサイズでスムーズに配置されるでしょう。
外部DWGとして書き出したブロックを挿入したい場合は、「参照ファイルを指定」で目的のDWGを選ぶか、DesignCenter(ADCENTERコマンド)を開いて該当ファイルからブロックをドラッグアンドドロップすることも可能です。AutoCAD ブロックの再定義が発生する場合には、既存ブロックを上書き更新するかどうかを確認されます。
配置先を指定するとき、基点はブロック作成時に設定した位置になりますが、場合によっては「画面で尺度を指定する」「回転角度を指定する」といったオプションをオンにしておくと微調整がしやすいです。特に作図規模の大きい建築設計などでは、正確な位置合わせが求められるため、オブジェクトスナップなども積極的に活用してください。
4.2. ブロックの効果的な配置方法
ブロックを効率良く配置するためには、まずレイヤ管理のルールを明確にしておくことが重要です。基本的にはブロックの中の要素をレイヤ0に設定し、挿入時に必要なレイヤを切り替えて使うやり方が一般的です。例えば「建具レイヤ」「家具レイヤ」などで運用すると、後から色や線種を一括変更しやすくなります。
大量に同じブロックを配置する場合、コピーコマンドで複製する選択肢もありますが、もしスマートブロックや動的ブロックで挿入している場合は、繰り返し使用するほど学習機能やパラメータ操作のメリットを感じるでしょう。AutoCAD ブロックの自動配置や提案機能を活かすと、大型プロジェクトでも図面作成がスピーディーになります。
配置後の編集としては、移動、回転、伸縮などを修正コマンドで行えますが、動的ブロックなら選択後にグリップを操作するだけで長さ変更や角度設定が可能です。AutoCADが提供するさまざまなブロック関連機能をうまく使い分けて、煩雑なレイアウト作業を軽減してみてください。
5. ブロックの編集と管理
ブロックは作成・挿入して終わりではありません。図面修正の途中でブロックの形状を変えたい場合や、他のプロジェクトで使えるようにバージョンを整えたいこともあります。AutoCAD ブロック編集では「ブロックエディタ」と呼ばれる専用画面や、その場で編集するREFEDITモードなどを使えます。
また、ブロック定義を更新すれば既に配置済みの全インスタンスを一括で変更できるので、大幅なレンダリングや設計変更があっても最小限の手数で対応可能です。ここでは、ブロックを編集・再定義・共有するときの代表的な手順を紹介します。
5.1. ブロックの編集手順
ブロックを編集するときは、まず目的に応じて3つの方法から選ぶとよいでしょう。1つ目は「BEDIT」コマンドです。これはブロックエディタ画面に切り替わり、内部の図形を直接編集し、動的ブロック設定なども変更できます。編集完了後に保存すると、図面内の同名ブロック全てが自動で更新されます。
2つ目は、図面内のブロックをダブルクリックして「ブロック定義を編集」を開く方法です。これはBEDITコマンドと同様の画面に移行します。3つ目は「REFEDIT」コマンドで、その場でブロックを編集中に周囲がうっすら暗くなり、ブロック以外も見ながら変更できるモードになります。
形状変更には、尺度変更(SCALE)や長さ変更(LENGTHEN)、ストレッチ(STRETCH)などのAutoCAD コマンドが必要に応じて使われます。特に「AutoCAD ブロックの尺度変更」や「AutoCAD ブロックの長さ変更」はパラメータを指定する動的ブロックと組み合わせることで高度な図面修正が行える点が特徴です。
5.2. ブロックの再定義と更新
ブロックを再定義すると、既に図面に挿入されている同名のブロックがまとめて更新されます。これは、例えば外部から新しいブロックファイルをINSERTコマンドで挿入する際、「同名のブロックを再定義しますか?」と聞かれる場合に「はい」を選択すると実行されます。
再定義は、同じ部品を大幅に作り替えたい場合や別の図面で作っていたブロックと図面内ブロックを入れ替えたい場合などに効果的です。ただし属性ブロックの場合は、属性項目の変更があったときに「ATTSYNC」コマンドで既存挿入箇所を同期する必要があります。同期を行わないと、新しく追加した属性が過去のブロックに反映されないことがあるため注意が必要です。
ブロック再定義により、AutoCAD ブロック編集の二度手間を省けるだけでなく、大規模プロジェクトでの一貫した部品管理にもつながります。特にAutoCAD オブジェクト管理やAutoCAD 図面管理を効率化したい場合には重要な機能といえます。
5.3. ブロックの共有と書き出し
ブロックを別の図面に移したいときは、「ブロックの書き出し(WBLOCK)」コマンドを使います。これにより、内部ブロックを外部ファイル(DWG)として保存し、ほかのユーザーと共有したり自分のライブラリへ追加したりできるわけです。AutoCAD ブロックの書き出しを行うときは、書き出す対象ブロックを選んで、基点やファイル保存場所を指定しましょう。
また、プロジェクトチームやクライアントと図面を交換する場合に備えて、社内で標準的なブロックライブラリを作っておくのもおすすめです。何度も使うオブジェクトなら「建築用ドア」「設備用配管シンボル」「機械部品アイコン」などをフォルダにまとめ、それをWBLOCKで管理しておくと、AutoCAD ブロックのコピーや再定義をスムーズに行えます。
ブロックの共有が進むことで、作図ルールの統一が図れ、結果的にAutoCAD 図面管理が楽になります。業務の標準化や自動化を進めたいと考える設計者にとって欠かせないフローとなるでしょう。
フェーズ | 目的 | 具体操作/コマンド | 要点 | チェック |
事前整備 | 単位整合 | UNITS / INSUNITS | 図面間の尺度化け防止 | ☐ 揃えた |
事前整備 | 見た目統一 | レイヤ0+BYLAYER | 挿入先レイヤの色・線種を継承 | ☐ 確認済 |
作成 | 標準ブロック | BLOCK | 名前規則/基点厳密指定/分解可否 | ☐ 基点OK ☐ 分解設定 |
作成 | 属性定義 | ATTDEF → BLOCK | タグ/プロンプト/既定値、ATTDIA=1 | ☐ 入力ダイアログ出る |
作成 | ライブラリ化 | WBLOCK | フォルダ階層と命名統一 | ☐ 登録済 |
挿入 | 図中配置 | INSERT / ADCENTER / ブロックパレット | 挿入点/尺度/回転を現場で指定 | ☐ サイズ正常 |
編集 | その場編集 | REFEDIT → REFCLOSE | 周囲参照しつつ部分修正 | ☐ 期待通り |
編集 | 定義編集 | BEDIT | パラメータ+アクション設定/テストブロック | ☐ テストOK |
再定義 | 全体更新 | 同名ブロック挿入 or BLOCK上書き | 再定義承認→全インスタンス更新 | ☐ 反映済 |
属性反映 | 属性同期 | ATTSYNC | 既存配置に新属性を適用 | ☐ 同期完了 |
片付け | 不要定義削除 | PURGE | 未使用ブロックやスタイルを掃除 | ☐ クリーン |
緊急時 | 名前入替 | RENAME | 安全に置換(退避名→本名) | ☐ 完了 |
6. 高度なブロック操作の実践
ここでは、さらに発展的なブロック操作の事例を学びます。特に、複雑な動的ブロックの形状変更や、属性ブロックを使ったデータ管理などは、AutoCAD ブロック機能を極めたい設計者には非常に興味深い分野です。
複雑な部品を動的ブロック化しておくと、様々なパラメータを現場の都合にあわせて即時変更できるため、建築設計の世界では特に重宝されています。また、大量の情報を伴う部品に属性を付与しておけば、部品一覧やコスト計算などにも転用しやすくなり、プロジェクト全体の品質とスピードが向上します。
6.1. 複雑な動的ブロックの作成
動的ブロックをより複雑に使いこなしたい場合、複数のパラメータを組み合わせたり、可視性パラメータでいくつかの形状パターンを切り替え可能にしたりする方法があります。例えば同じブロックに、ドアの左右勝手を切り替える機能と、開口幅を変化させる機能を同時に組み込むといったイメージです。
設定手順としては、ブロックエディタの「パラメータ」パレットから「距離」「フリップ」「可視性」などを必要なだけ追加し、対応する「アクション」を関連付ける流れになります。設定内容の範囲(ストレッチの対象や回転範囲など)を正しく指定しないと、形状が正しく追従しないケースがあるため、テストブロックでの確認を忘れずに行いましょう。
複雑な動的ブロックが活きる場面は、多様なサイズの換算が必要な家具レイアウトや、配管径の違いがある機械設備、図面中に高頻度で出現する標準パーツなどです。AutoCAD ブロックの最適化を図りたい設計者にとっては、作り込む工程そのものは少し手間がかかりますが、完成すると作業時間の削減に大きく貢献します。
6.2. 属性ブロックでのデータ管理
属性ブロックでは、部品ごとに価格や型番、材料などの情報を埋め込み、それらのデータを後から一括管理できます。AutoCADの表機能や外部ソフトと連携して属性情報をテーブル化すると、見積書作成や部品の承認プロセスが大幅に効率化されます。
具体的には、図面上に挿入された属性ブロックから属性値のみを抽出する「EATTEXT」などの機能でCSVやエクセル形式へデータを書き出すことが可能です。たとえば建築設備の部材リストや機械部品の部品表など、必要に応じて一覧化することで、AutoCAD 図面管理だけでなく、外部関係者との連携がスムーズになります。
企業内でブロックライブラリを標準化し、属性項目を統一しておけば、次のプロジェクトからはすぐ同じテンプレートを使い回せます。これは業務の自動化や品質向上に直結し、結果的にコスト削減や納期短縮といった現場ニーズも満たせるため、使わない手はないでしょう。
7. まとめと次のステップ
ここまで解説してきたように、AutoCAD ブロック機能には標準ブロック、動的ブロック、属性ブロック、そして新機能のスマートブロックなど多彩な使い道があります。これらをうまく活用することで、AutoCAD ブロックの挿入手順や編集手順が大幅にスピードアップし、図面作業の効率化に貢献します。
特に、ブロック再定義や書き出しによるファイル共有は、チーム間での情報伝達をスムーズにし、同じ要素を多部署・多案件で使いまわせるメリットをもたらします。属性ブロックを使えば、設計に必要な数値や品番をAutoCAD図面上だけでなく集計データとしても管理でき、それがさらに大きな自動化やコスト削減、納期短縮につながるでしょう。
次のステップとしては、まずご自身の業務フローに合ったブロックライブラリの作成・整理に着手してみるとよいかもしれません。また、動的ブロックやスマートブロックの実装例を参考に、より複雑な形状をセミオートマチックに扱えるようにカスタマイズしていくと、クライアントや社内チームからの評価も高まります。ぜひブロックを積極的にとり入れて、AutoCADによる効率的な図面作成を実践してみてください。
建築・土木業向け BIM/CIMの導入方法から活用までがトータルで理解できる ホワイトペーパー配布中!
❶BIM/CIMの概要と重要性
❷BIM/CIM導入までの流れ
❸BIM/CIM導入でよくある失敗と課題
❹BIM活用を進めるためのポイント
についてまとめたホワイトペーパーを配布中

<参考文献>
「AutoCAD 2023|概要-ブロックを定義する」
「AutoCAD 2024|スマートブロック:配置(2024の新機能)」
https://help.autodesk.com/view/ACD/2024/JPN/?guid=GUID-60D2011A-FB12-4B45-B2FC-0A6E4159D294
「AutoCAD 2023|BLOCK[ブロック登録](コマンド)」
「AutoCAD 2023|INSERT[ブロック挿入](コマンド)」
「AutoCAD 2023|BEDIT[ブロック エディタ](コマンド)」
「AutoCAD 2023|WBLOCK[ブロック書き出し](コマンド)」