AutoCADの形状認識機能とは?3Dモデル運用について解説
AutoCADは高度なモデリング機能を備えたCADソフトで、3Dモデル運用の課題解決につながる各種機能を実現しています。3D運用においては形状認識が課題となることも多く、CADソフトのポテンシャルがパフォーマンスに大きな影響を与えます。
この記事では、AutoCADが3Dモデリングにおける形状認識の問題をどのような機能で解決しているのかについて、技術的な課題の概要とともに解説します。
目次:
- AutoCADとは
- 3Dモデルの種類
- 3DCAD運用における形状認識について
- 3DCAD運用の効率化を促進するAutoCADの各種機能
AutoCADとは
AutoCADはAutodesk社が提供している、2D・3Dの両方に対応している汎用CADソフトです。CADソフトには大きく分けて特定の業務に特化している専門CADと、あらゆる業務に対応する汎用CADの2種類が存在しますが、AutoCADは後者に分類されます。
汎用CADの懸念点は、特定業務における専門性の高さに機能がついていけない点が挙げられます。ただ、AutoCADの場合は別途提供されるツールセットを活用して、特定業務における専門性をカバーすることができます。
建築設計や設備設計、プロダクトデザインなどあらゆる業務に対応できる機能拡張によって、高度な業務を実現可能です。今では国内外で広く採用されているCADソフトであり、CADソフトの代名詞とも言えるでしょう。
3Dモデルの種類
AutoCADで扱うことのできる3Dモデルには、大きく分けて
- ワイヤフレーム
- ソリッド
- メッシュ
- サーフェス
の4種類が存在します。
ワイヤフレームは3D空間に点と線分、曲線を配置して、擬似的に3Dオブジェクトに仕上げたものです。面や体積の概念がないため3Dモデルとして活用するには制限があるものの、軽量かつ簡単に設計ができることから、活用機会は少なくありません。
ソリッドは最も情報量の多い完全な3Dモデルを指します。面や体積の概念が存在し、仮想空間に現実的な立体オブジェクトを落とし込んだ場合、ソリッドモデルとして扱うことが可能です。3Dモデルを仕上げたい場合、最終的にはソリッドモデルに変換する必要があります。
メッシュモデルは、平面を組み合わせて網状に仕上げた3Dモデルです。体積の概念が存在しませんが、感覚的にモデリングが行いやすい点が特徴とされています。
サーフェスモデルは、ワイヤフレームに面を張った状態の3Dモデルです。ディテールの細かい面の作成に適しており、複雑な表面加工や曲線の作成に適しています。
3Dモデリングは、主にこれらの種類を使い分けながら作成を進めます。
3DCAD運用における形状認識について
上記のような3Dモデリングの使い分けによって作業を進める3DCADですが、この際、対処しなければならないのが3DCADソフトの形状認識の問題です。3Dモデルは、人間の目からは立体的に見えていても、実際に作業を行うのは2次元の画面上であるため、実際に見えている様子とデータの実態には乖離がある可能性もはらんでいます。
具体的に起こりうる課題としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。
モデルの方向を正しく把握しづらい
3Dモデリングの形状認識に関する懸念事項として、まず挙げられるのがモデルの方向が正しく把握できない問題です。
例えば円の面を含んだモデルの場合、2Dであれば縦と横の概念しか存在しないため、円形が書かれていればそれは間違いなく円として認識することができます。
一方の3Dモデルの場合、例えユーザーからその物体が円を有しているように見えても、実際には角度によって円に見えているだけであり、角度を変えてみると円柱であるという可能性も残されてしまいます。
3Dモデリングにおいてはあらゆる方向からオブジェクトを捉え、正確にその形状が何であるかを把握することが求められます。
モデルを正しく表示できているかがわからない
形状認識におけるもう一つの懸念事項が、モデルが正しく表示されているかが分かりづらい、という問題です。上で紹介した通り、3Dモデルにはいくつかの種類があり、オブジェクトがどのような形式で表示されているかによって、把握できる情報は異なります。
複数の表示形式を切り替えながら3Dモデルを確認することで、実際に現実世界に3Dモデルをアウトプットした場合、どのような状態であるのかを正しく捉えることができるでしょう。
空間を正しく把握できない
形状認識の問題とは少し異なりますが、3Dモデルが仮想空間の中のどの位置に存在しているのかが分かりづらい、というのも3Dモデリングにおける悩みの一つです。
一番手前に見える面はそもそも上面なのか底面なのか、屋根は正しく空の方を向いてモデリングできているかなど、無限に続く仮想空間の中でも空間認識能力を正しく持てるよう機能を有効活用しなければなりません。
3DCAD運用の効率化を促進するAutoCADの各種機能
上記のような形状認識や空間認識の問題に対処するため、AutoCADでは主に以下の2つの機能を使い分けることで、質の高いモデリングを実現しています*1。
3D画面操作
1つは、3D画面操作機能です。マウスホイールをドラッグしながらユーザーが求める角度へ簡単にカメラを移動できるオービット操作機能を活用することで、複雑な操作をせずとも作業中、いつでも画面操作が可能です。
3D画面操作関連機能には、他にもビューの方向を面基準で簡単に切り替えることのできる「ViewCube」や、名前のつけられたビューをすぐに呼び出すことのできる「ビューポートコントロール」を使い分けることで、面操作を効率化できます。
UCS
UCSとはユーザー基準の新しい座標系を設定できる機能のことで、基準となる絶対座標系以外の角度から3Dモデルをコントロールすることができます。
AutoCADにはUCSコマンドと呼ばれる機能が備わっており、これを扱うことで3Dモデルに合わせて任意の座標軸を定義し、モデル作成を行えます。設定したユーザー座標系は保存することができ、別のプロジェクトにおいてもすぐに呼び出せるのが特徴です。
3Dオブジェクトスナップ
3Dオブジェクトスナップは、オブジェクトにおける特定の頂点や中心を指定するための機能です。2D図面において使用する機会の多いこの機能は3Dにおいても使用ができ、特定の点をあらかじめ可視化しておくことで、3Dモデルの把握を円滑にできるよう促します。
まとめ
この記事では、3Dモデリングにおける形状認識の課題とはどのようなものかについて解説しながら、AutoCADではどのように課題を解消できるかについて紹介しました。
AutoCADは高品質なモデリングツールということもあり、3Dモデリングを円滑に実施するための機能が多様に含まれています。これらの使い方を覚えて、生産性の高いCAD活用を実現しましょう。
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出典:
*1 Autodesk「AutoCAD 3 D の機能と概念 【 初心者向け 】」