PLMコンサルティングで建築業務を効率化!選び方や事例もご紹介
この記事を読むと、以下の3つのことが分かります。
1.ものづくりにおける「PLM」という考え方について
2.PLMの導入でコンサルティングを利用するメリット
3.建築業界におけるPLMの取り組み事例
「ものづくりの“PLM”とは何だろう?」
「PLMコンサルティングではどのようなことをしてもらえるのだろう」
とお悩みの方へ。Product Life Cycle Managementの略である「PLM」は製品ライフサイクル管理のことであり、データを一元管理して無駄を省いたり工程を最適化したりすることを指します。
ものづくりでよく使われるPLMですが、最近では建築業界での導入が始まっており、PLMシステムを構築するゼネコンが出てきているほどです。
この記事ではPLMについて、その考え方やコンサルティングを活用するメリットを解説します。
PLMとは?コンサルティングを活用するメリットについて
PLMとは「製品ライフサイクル管理」とも呼ばれ、特に製造業におけるDXのトレンドとなっています。PLMでは、生産から廃棄、再資源化までの一連の流れを包括的に捉える点が特徴です。
設計データ以外にも物流や販売・保守といった製品のライフサイクル全体の技術を集約させ、情報共有や作業の効率化を図って製品の開発力を上げ、企業競争力を高めることが大きな目的です。
ものづくりの効率化を目指し、CADデータや図面、ドキュメントなどを一元管理する動きは1990年代初めごろからありました。その後ソフトウェア管理やAI/IoTという技術の進化により、今ではPLMプラットフォームを構築し、異業種間で連携しようという段階まで進化しています。
PLMコンサルティングとは
PLMコンサルティングとは、前述したようなPLMをスムーズかつ適切に導入するために、外部の専門家からアドバイスや支援を受けることを指します。
PLMコンサルタントを活用すると、主に以下のようなサービスを受けられます。
- PLMシステムの導入支援
- 既存システムの見直しや最適化
- 業務プロセスの改善やアドバイス
PLMは製造業などで広く知られており、多くのコンサルタント会社があります。
建築業界がPLMコンサルティングを活用するメリットとは
建築業界がPLMコンサルティングを活用すれば、社内にノウハウやリソースが足りなくても、PLMを導入しやすくなります。企業が抱える建築業界特有の課題解決にもつながり、DXや働き方改革にもつながるでしょう。
建築業界でPLMを導入することで期待できるメリットは、以下の通りです。
- 生産性アップ
- 人手不足による業務負担の緩和
- コスト削減
PLMでは製品の企画開発から保守・廃棄に至るまで、それまでバラバラだった一連の製造プロセスを一元管理します。これは建築業界におけるBIM/CIMの考え方と似ており、生産性アップが期待できます。
また各工程の情報をデジタル化したり一元管理したりすると、必要な情報を探す手間が省けます。新旧で錯綜するデータを追ったりする時間が無くなる分効率化でき、人手不足による業務負荷を改善できるのです。
上記のように各工程の情報を正しく正確に、スピーディーに共有できれば、人件費や原材料費の情報も共有できます。どの工程にどれくらいのコストがかかっているか把握できるので、コスト削減に効果的です。
PLMのノウハウがない場合、自社や建築プロジェクトに導入することは容易ではありません。そのため、専門家であるPLMコンサルティングサービスを活用することでよりスムーズかつ最適な仕組みづくりが可能となります。
建築業界におけるPLMコンサルティングの選定ポイント
建築関連企業がPLMコンサルティングを選定する際は、以下の3つがポイントです。
- 建築業界のノウハウや経験があるか
- 課題分析力や提案力がある
- 手厚いサポート体制がある
PLMは主に製造業で広がっている考え方であり、コンサルタントによっては建築業界のノウハウや経験がありません。同じものづくりではありますが、建築業界特有の課題や知識を持っているコンサルタントの方が安心です。
建築業界を知っている人なら自社が抱えている課題を理解しやすく、よりよい提案を期待できます。
また、PLMでは新しいソフトを導入することも多いものです。新しいソフトの導入は社内でスムーズに運用できるまで時間が必要なので、導入や運用においてしっかりサポートしてくれるコンサルタントを選びましょう。
建築業界への導入が進むPLMについて
PLMでは、生産アップなどの成果を出すために「情報の一元管理」がポイントとなります。建築業界のBIM/CIMを知っている方はお気づきかと思いますが、BIM/CIMでも「情報の一元管理」が重要です。
同じものづくりである建築業界でもPLMを活用することで生産性を上げ、深刻な人手不足や長時間労働を解消しようと取り組みが始まっているのです。
製造業では製品の企画や設計、物流から廃棄までが1つのライフサイクルとなります。そして建築業では、企画設計からものづくりが始まり、施工や運用を経て解体までがライフサイクルです。
上記2つのライフサイクルの中には、クライアントのニーズや要望の変更が多々ありますし、生産性や品質アップといった同じ課題を持っています。
そのため製造業で重視されていたPLMという考えを建築業界にも導入することで、より高い生産性や品質を実現しようとしているのです。
PLMとCADの違い
CADは計画案を作成することが範囲で、PLMではCADで作った計画案や設計図をもとに、製造から販売までのコストについて計画案を作成します。CADは設計やデザインが主な役割で、これはPLMにおける工程の1つです。
PLMとPDMの違い
PDMはProduct Data Managementの略で、1990年代に生まれた考え方です。設計データや製品データを一元管理して設計業務を効率化することが目的で、主にCADデータや図面、設計部品といったデータのみを一元管理していました。
時代が進み最新技術が増えたことでPDMが進化して、今ではPLMが主流となっています。
建築業界におけるPLMの取り組み事例
最後に、国内の大手ゼネコンにおけるPLMの取り組み事例を2つご紹介します。
大林組
2024年8月、大林組は建設PLMシステムの構築を発表しました。すでに積極的に取り組んでいるBIMを起点として建物の構成情報をプロセス横断で活用しようとしています。(※1)
大林組ではBIMの活用が進んでいるものの、構成情報は部門やシステムごとに個別で管理しており、プロセスを横断した活用が困難でした。そのため業務プロセスを横断した管理を実現するために、建築PLMシステムの開発に着手しました。これによりデータの整合性を確保したり、業務を迅速化・効率化したりすることが狙いです。
建設PLMシステムの構築では、NECのPLMソフトウェア「Obbligato(オブリガート)」を採用しています。オブリガードはBIMから抽出した部材情報を格納でき、各マスターと関連付けて一元管理できるソフトです。
大林組では上記の取り組みをDX戦略に基づく業務プロセス変革の中核として位置づけ、取り組みを続けています。
竹中工務店
2024年1月、竹中工務店ではPLMソリューションを手掛けるAras(本社:米国マサチューセッツ州)とともにPLMによる建設デジタルプラットフォームを構築し、生産性向上に取り組んでいることを公表しました。(※2)
基盤としているものはAras社の「Aras Innovator」です。竹中工務店は2021年11月にBIMシステムを中核として、プロジェクト管理システムやデータ基盤を連携させ、営業・調達といった既存システムや顧客管理ができるデジタルプラットフォームを構築しています。
しかしプロジェクトの途中で運用主体が変わる、という建築業界特有の事情で情報が途切れやすい課題が顕在化しました。この課題を解決するために、Aras社と協業してPLMシステムの構築を行ったのです。
建築業界でPLMを活用する、という取り組みは少し前まで非現実的でした。しかし竹中工務店では社内で実現したこのPLMシステムを、業界を超えた枠組みに広げていきたいと考えています。
PLMコンサルティングについて、建築業界で導入するメリットや選び方、実際の建築企業におけるPLMの取り組みをご紹介しました。建築業界ではDXやBIM/CIMなど変化の時期を迎えています。この記事が、これから会社をどう進化させるか悩んでいる方の参考になれば幸いです。
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参照サイト:
※1 https://it.impress.co.jp/articles/-/26002
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