構造図とは?誰が作る?どう使う?ほかの図面との違いや構造図の種類をざっくり解説
構造図とは、建物の構造について書かれた図面のことです。(*1)
とは言っても、構造図は一種類だけではありません。
建物を上から見た図や、柱の組み合わせを書いた図や、組み合わせ部分の詳細を書いた図面など、構造に関する図面をまとめて「構造図」と呼びます。
この記事では、構造図のことをできるだけ簡単に理解するための基礎知識を解説しています。
最初に構造図とはどんなものかを確認して、次に構造図の具体的な種類や、構造図の見方を学ぶ方法をご紹介します。
これから仕事で構造図を扱う方や、構造図のことを簡単に理解したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を読むと以下の3つのことがわかります
1.構造図とはどんなもの?ほかの図面との違い
2.構造図はどんな種類がある?
3.構造図の見方を学ぶ方法
構造図とは?
まず最初に、構造図とはどんなものかを見ていきましょう。
構造図には何が書いてある?誰が作成する?
構造図とは、建物の構造について書かれた図面のことで、実際の工事になくてはならない図面です。
構造図は通常、建物のデザインが書かれた外観の設計図ができてから作成します。(*2)
構造図の作成には、専門的な知識と技術が必要です。
一定規模以上の建築物については、「構造設計一級建築士」の資格を持つ設計者が設計、もしくは確認を行わなければなりません。(*3)
構造設計一級建築士の資格は、一級建築士として、構造設計に従事して5年以上の実務経験がある設計者が、講習を受けて取得します。(*3)
構造図を使うのはどんなとき?
構造図を使うのは、建築物の最初の工事のときだけではありません。
例えば、一般住宅でリフォームや耐震補強工事を行うときも、構造図が必要です。
住宅やマンションは、建ってしまえば中の構造を見ることができません。
しかし、リフォームで壁や柱を動かさなければならなくなったとき、「この壁を動かしても問題ないかどうか」を判断するには、構造を確認する必要があります。
そこで、構造図を使います。
構造図があれば、天井や壁をはがしたりしなくても、中にある鉄骨の位置がわかります。
こんなふうに、構造図があることで、改築やリフォームがスムーズに進められます。
構造図とほかの図面との違いは?
構造図のほかにも、同じような名前の図面の種類がいくつかあります。
ここでは、構造図とほかの図面の違いについて見ていきましょう。
構造図と平面図の違いは?
平面図とは、間取り図とも呼ばれる図面です。(*4)
建物の各階の床から、高さ1メートルほどの水平面で、スパッと輪切りにした図面をイメージしてみてください。
平面図には、壁、建具、開口部などの詳細な寸法が書き込まれていて、家づくりなどでは「プラン」「設計図」とも呼ばれます。
構造図と平面図の違いは、書かれている内容の違いです。
構造図は建物の構造を詳細に書いた図面であり、平面図は建物の各階の間取りを詳細に書いた図面です。
構造図と意匠図の違いは?
意匠図とは、建物のデザインを書いた図面のことです。(*5)
先ほどの「平面図」も、意匠図の一部に含まれます。
意匠図には平面図と立面図があり、立面図は、建物の東西南北からの立体的な見た目を表します。
家づくりで考えると、平面図と立面図は、間取り図と外観図となります。
構造図と意匠図との違いは、図面を作る順番と、書かれている内容の違いです。
建物の設計は通常、建物のデザインを決める「意匠図」から作成します。
構造図は、意匠図ができて、建物のデザインが決まってから着手します。
また、意匠図に書かれているのは建物の外観と間取りで、構造のことまでは書かれていません。
対して、構造図に書かれているのは建物の構造部分なので、外観と間取りはイメージしにくいものとなっています。
構造図にはどんな種類がある?
構造図とは構造についての詳細が書かれている図面のことで、建物のデザインを決める「意匠図」ができてから作成することがわかりました。
次に、構造にはどんな種類があるのかを見ていきましょう。
基礎・床・屋根構造を表す「伏図(ふせず)」
伏図とは、建物の構造部分を上から見下ろすようにして書かれた平面図のことです。(*6)
先ほどの「意匠図」(間取り図)は、床から高さ1メートルほどのところで水平面にスパッと切った図面でしたが、今度は建物の基礎や床のところを切った図面をイメージしてみてください。
基礎の構造を表した図面を「基礎伏図」、床の構造を表した図面を「床伏図」、屋根の構造を表した図面を「小屋伏図」と呼びます。(*7)(*8)
伏図には構造部材の組み合わせが書かれていて、柱や梁の詳細や、補強方法が記載されています。
柱と梁の組み立て方を示す「軸組図」
軸組図とは、軸組工法の構造を表す図面のことです。(*9)
軸組工法とは、木造建築で使われる工法で、柱と梁を使った構造で建物を建築します。(*10)
軸組工法は日本の伝統的な建築方法で、壁で補強する「ツーバイフォー工法」よりも間取りの自由度が高いことなどから、住宅市場で人気を集めています。(*11)
軸組図には、建物を建てるための柱や梁の位置が詳細に書き込まれています。
しかし、最近ではあらかじめ部材をカットして組み立てる「プレカット」が増えていることから、軸組図が使われることは少なくなっています。
構造部材の詳細がわかる「部材リスト図」
部材リスト図とは、柱や梁などの形状と寸法についてまとめられた図面です。(*12)
柱や梁の形状は、断面の形で表します。
例えば、水平面で切断したとき「H」の形になっている鉄骨はH型鋼といい、「H」の記号で表されます。
また、部材リスト図の部材がどこで使われているかは、伏図を見ればわかります。
伏図の柱に「C1」などの記号が書かれているので、部材リスト図で対応する「C1」を探すと、伏図のC1柱に使う部材の詳細がわかります。
建築物の標準仕様をまとめた「標準図」
標準図とは、その建築物の基本仕様がまとめられた図面です。(*13)
特に、仕上がり具合を示す「納まり」について書かれています。(*14)
標準図は、建築物の仕様について書かれた「特記仕様書」と同様に、設計図の一部として扱われます。
標準図では、柱や梁などの構造材の加工方法を指示しています。
しかし、部材リストなどのほかの図面内で指示がある場合は、そちらを優先します。
標準図は、あくまでも図面内に特別な指示がない場合の仕様書となっています。
建築物の仕上がりを指示する「詳細図」
詳細図とは、建築物のなかでも特に重要な部分について、詳細に示した図面です。(*15)
詳細図には、階段詳細図、建具リスト、部分詳細図などの種類があります。
詳細図は仕上げにかかわる図面なので、伏図や意匠図などのほかの図面が仕上がってからの作成となります。
建具の取り付けなど、納まり部分の詳細が記載されているため、実際の工事でよく使われる、特に重要な図面です。
構造図の見方を学ぶ方法
構造図の見方を身につけるには、実際に構造図を見ることが一番です。
そこで、お住まいの建築物の構造図を確認してみてはいかがでしょうか。
持ち家の場合、ハウスメーカーや工務店に図面を渡されているはずなので、家の中を探してみましょう。
賃貸の場合は、管理会社または大家さんに頼むと見せてもらえるはずです。
ただ、「建物の図面を見たい」だけだと、なにか勝手にリフォームでもされるのではと不安にさせてしまうかもしれないため、「構造の勉強をしたいけど身近によい教材がないので、とりあえず自室の構造を見てみたい」などと正直に理由を伝えて、お互いに誤解のないように進めましょう。
「そこまでしたくない」という場合は、建築構造入門などの参考書がおすすめです。
プロ向けの専門書から、初心者向けの読み物まで、構造図に関する書籍は多数出版されています。
まずは、図解入りの読みやすい参考書を手に取ってみてはいかがでしょうか。
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まとめ
構造図とは、建築物の構造についてまとめられた数種類の図面のことです。
間取りを示す平面図や、外観を表す意匠図とは違い、建築物の構造を記載しているため、それだけを見ても建築物をイメージすることが難しいものです。
構造図の見方を学ぶには、身近な建物の構造図を確認したり、参考書を使うことがおすすめです。
普段の生活では目にする機会がほぼないものなので、できるだけ多くの構造図にふれて、図面の見方を身につけていきましょう。
◆参考URL
*1 東建コーポレーション『構造図(コウゾウズ)』
https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016&wid=29249&wdid=01
*2 Construction DX Solutions『図面の種類(意匠図・設備図・構造図)について:5回目②』
https://constdx.com/const-blog-5/
*3 公益財団法人 建築技術教育普及センター『構造設計一級建築士』
https://www.jaeic.or.jp/koshuannai/koshu/s1k/index.html
*4 東建コーポレーション『平面図』
https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016&wid=00404&wdid=01
*5 つながる家づくり plantable『【平面図と立面図とは?】各種図面の違いは? 設計図書・図面の基礎知識』
https://www.fdc-inc.co.jp/plantable/design_documents_basic_knowledge/
*6 東建コーポレーション『伏せ図(フセズ)』
https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016&wid=03378&wdid=01
*7 家づくりを応援する情報サイト『基礎伏図(きそふせず)とは【住宅建築用語の意味】』
https://polaris-hs.jp/zisyo_syosai/kisohuse.html
*8 東建コーポレーション『小屋伏図(コヤフセズ)』
https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016&wid=29298&wdid=01
*9 東建コーポレーション『軸組図(ジクグミズ)』
https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016&wid=29510&wdid=01
*10 東建コーポレーション『軸組工法(ジクグミコウホウ)』
https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00172&wid=03277&wdid=01
*11 一般社団法人 全国木材組合連合会『2-1.11 木造在来工法でプレカットという言葉をよく聞きますが、どのようなものですか。』
https://www.zenmoku.jp/ippan/faq/faq/faq2/224.html
*12 建築学生が学ぶ構造力学『部材リストとは?1分でわかる意味、描き方、鉄骨部材リスト、見方』
http://kentiku-kouzou.jp/kouzoukeisan-buzairisutozu.html
*13 施工管理求人サーチ『現場監督なら知っておこう!設計図の種類と内容【構造図】』
https://www.sekoukyujin-yumeshin.com/learn/22145/
*14 東建コーポレーション『納まり(オサマリ)』
https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00015&wid=28075&wdid=01
*15 東建コーポレーション『詳細図(ショウサイズ)』
https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016&wid=29473&wdid=01