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BIMと自動化で未来の建設プロセスが現実に 事例を紹介

建設業界では、技能者の高齢化や若手の流入不足から、生産性向上の必要性が叫ばれています。そのため、BIMやCDEを活用したデジタルベースの新たな建設プロセスの実用化が進められています。なかでも近年急速に進められているのが、建設プロセスの自動化です。

建設プロセスの自動化が実用に向けて大きく動き始めているのは、建設情報がBIMに集約されるようになったことが一因であるといえます。そこで、今回は、BIMと自動化で実現している未来の建設プロセスを紹介します。

BIMと自動化で実現する未来の建設プロセスとは

BIMは、さまざまな観点で建設業界における生産性向上への寄与が期待されています。具体例としては、デジタルな手法による建設プロセスの合理的なマネージメントや、作図工数の削減、デジタルツインによる施工段階の手戻り防止などが挙げられるでしょう。

BIMと並行して注目を集めているのが、建設プロセスの自動化です。製造業の自動化は、建設分野に限らず積極的に推進されている取り組みですが、建設分野においては、BIMの登場が自動化の実現に拍車をかけています。ここでは、「BIM×自動化」で実現している新たな建設プロセスを紹介します。

モデリング・設計の自動化*1*2

最初に紹介するのが、モデリングや設計の自動化です。従来は、CADを使った手作業による設計や作図が主流でした。しかし、近年は、BIMやAIなどの技術の向上により、自動的な設計や図面・モデル化が実現しています。

イメージしやすいのが、部材の干渉チェックを実施するシーンです。今までは、設計者や施工者が、2次元の図面を頭の中で3次元化しながら部材の干渉を確認し、全ての図面を手作業で修正していました。今は、BIMの3次元干渉チェック機能を使うと、ソフトウェアが自動的に干渉チェックを実施し、回避する設計まで行ってくれます。

BIMのデータを活用したさまざまな自動化が注目を集めていますが、BIMを作成する作業自体の自動化が、建設DXの推進力になっているといえるでしょう。

自動数量積算および見積もり*3*4

数量積算・見積もり作業の自動化は、建設プロセスの生産性向上に大きな影響を与えています。従来の建設プロセスでは、精度の高い見積もりをタイムリーに提示することが、設計者や施工者に大きな負担になっていたからです。

建設業の見積もりでは、図面にない仮設なども想定しながら数量を積算し、物価の変動を加味して単価を設定する必要があります。計画段階では見積もりや調達の専門部署がしっかりと時間を確保して業務を行うのが一般的です。しかし、施工段階の変更に対する見積もり作業は、現場に配属された担当者が行うことも珍しくありません。施工段階では、建築主の判断を促すために素早くコストを提示することを求められるので、担当者の時間外労働の超過に繋がります。

BIMのデータを活用して自動的に数量積算や見積もりを行うことができれば、担当者の負担が減るだけでなく、建築主の早期判断によりスムーズに計画を進められるようになります。

ICT建機やロボットによる自動施工*5*6

これから建設現場で実用化が進められるのが、ICT建機による自動施工です。国は、「建設機械施工の自動化・自律化協議会」を立ち上げ、2024年3月に「自動施工における安全ルールVer.1.0(案)」を公表しています7。国土交通省が、令和6年度を現場実証の年とし、年度末には「自動施工における安全ルールVer.2.0」の策定を予定していることからも、自動施工の実現が急がれていることを感じ取れるでしょう8。

ICT建機による自動施工はこれからの取り組みですが、小型の建設ロボットによる施工支援は、多くの企業で実現しています。BIMのデータをもとに自動・自律化を実現しているケースも多く、建機やロボットとBIMの連携は、今後も目を離せない技術といえるでしょう。

モデリング・設計の自動化の事例

ここからは、BIMを活用した自動化にフォーカスした事例を紹介します。まずは、「モデリング・設計の自動化」の事例をみていきましょう。

Autodesk「LODに応じた自動モデル化」*1

ビム・アーキテクツは、Autodesk主催イベント「Autodesk University」のなかで、Revitを活用した自動設計プロセスを紹介しています(*1_P.1)。

自動モデル化を取り入れた効率的なデータの作成と管理

*1

引用」Autodesk「Revitで実現。建築設計プロセスを自動化プログラムで効率化!

LOD100・200・300への対応。 P.4」

https://static.au-uw2-prd.autodesk.com/Class_Handout_AS472830.pdf

この設計プロセスでは、自動モデル化を取り入れながら、各建設プロセスにおけるLODの変化にシームレスに対応しています(*1_P.1)。LODを上げていくには、他の図面やモデルへの影響を考慮しながらモデル修正を行う必要があり、そのためには多くの時間と予算が必要です。そこで、この自動設計プロセスでは、ルール化できる修正作業を自動モデル化機能に任せ、時間短縮と人件費削減を図っています(*1_P.4)。

その他にも、図面リストの90%の自動化、入力作業の80%削減、仕様変更による作業の30%削減を実現し、Revitのモデル・図面に関する作業期間を2ヶ月から2週間に縮めたとのことです(*1_P.1)。

長谷工コーポレーション「給水給湯配管の自動設計システム」*2

マンション事業を得意としている長谷工コーポレーションは、BIMデータを活用したマンションの「給水給湯配管の自動設計システム」の開発を発表しました。このシステムは、BIMデータから配管設計に必要な情報を抽出し、給水給湯の配管のルーティングおよび3次元のBIMモデルの作成を自動で行うとのことです。

給水給湯配管の自動設計システムによる業務の変化

*2

引用)長谷工グループ「長谷工コーポレーション、カワトT.P.C.とKICONIA WORKSが連携 BIMデータを活用した「給水給湯配管の自動設計システム」を開発~設計品質の向上と約70%の生産性向上を実現~ P.1」

https://www.haseko.co.jp/hc/information/upload_files/20240510_1%20.pdf

このシステムの効果として、設計品質の向上と従来比約70%の生産性向上を謳っています。また、自動設計されたBIMモデルを活用することで、見積作業や部材発注資料作成の業務を自動作成できるようになり、さらなる業務フローの改善が期待できるとのことです。

自動数量積算および見積もり

次に、「自動数量積算および見積もり」の事例を紹介します。

東急建設「BIM積算連携」*3

東急建設は、2022年に業界初となるBIM積算連携の実用化を発表しています。BIMデータ、工事項目、コードなどをRevitのアドオンを介して積算システム連携用データに変換しているのが特徴です。

建築BIM積算連携システムの概念図

*3

引用)東急建設株式会社「業界初、BIM積算(精算見積)連携の実用化へ  業務の大幅な省力化を実現」

https://www.tokyu-cnst.co.jp/topics/2126.html

BIM積算連携によりBIMデータから自動的に数量積算が行われ、精算見積もりの明細が作成されるとのことです。そのため、計画時の積算業務だけでなく、変更時のコスト算出をスピーディーに行い、精度の高い見積もりをタイムリーに提示することができます。東急建設は、数量拾いから集計までの作業において、約70%の省力化効果を得たとしています。

大成建設「CO2排出量予測システム」*4

BIMやCDEといったデジタル技術は、建設業における環境への配慮という観点でも注目を集めています。なかでも、環境指標の代表格であるCO2排出量は、BIMを活用して管理する手法が広く取り入れられています。このような背景から大成建設は、BIMを活用し、建材や設備などの製造・調達、施工時のCO2排出量を短時間かつ高精度で算出できる予測システム「T-CARBON BIMシミュレーター」を開発しました。

T-CARBON BIMシミュレーターによるCO2排出量算出フロー

*4

引用)大成建設株式会社「BIMを用いた建築物新築時CO2排出量予測システム「T-CARBON BIMシミュレーター」を開発」

https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2023/231215_9809.html

今後は、建設費の自動積算と連携させ、CO2排出量と建設費を比較検討しながら設計できるようにシステムを改良していくとのことです。環境配慮に価値を見出すクライアントが増えているなか、CO2排出量を常に把握しながら設計できるシステムは、大きな武器になるかもしれません。

ICT建機・ロボットによる自動施工の事例

最後に、BIMとICT建機・ロボットを連携させ、自動施工を実現する取り組みを紹介します。

前田建設工業「自動施工計画・管理システム」*5

前田建設工業は、2024年3月に複数台の油圧ショベルを自律運転させる「自動施工計画・管理システム」の開発および実証試験における実用性の確認を発表しました。自動施工計画・管理システムは、BIM/CIMの施工計画モデルから詳細な作業計画モデルを自動生成し、その計画に基づいて複数台の油圧ショベルを自律制御するシステムです。

自動施工計画・管理システムの概念図

*5

引用)前田建設工業株式会社「油圧ショベルの自律運転を可能にする「自動施工計画・管理システム」を開発、実用性を確認~BIM/CIMより生成した作業計画モデルに基づく複数台自律制御を可能に~」

https://www.maeda.co.jp/news/2024/03/25/5484.html

2024年問題を背景に建設現場では生産性向上が求められていますが、安全性を高めるには相応の人員が必要というジレンマを抱えていました。このシステムは、1人が複数台の自律油圧ショベルを管理することで、安全性の確保と生産性向上を両立しています。

竹中工務店「建設ロボットプラットフォーム」*6

竹中工務店が開発したのは、BIMデータを活用した「建設ロボットプラットフォーム」です。建設ロボットプラットフォームは、クラウド上で稼働し、ロボットの自立走行ルート・範囲のシミュレーション、遠隔操作・監視を行います。

*6

出所)株式会社竹中工務店「ロボットの自律走行と遠隔管理を実現する「建設ロボットプラットフォーム」を開発」

https://www.takenaka.co.jp/news/2020/02/03/

従来は、建設ロボットを運用するには作業範囲をカラーコーンなどで指定する必要がありました。建設ロボットプラットフォームは、BIMデータを地図情報として活用することにより、カラーコーンなどの設置作業が不要になるほか、より広い範囲を指定できるようになるとのことです。

おわりに

BIMをはじめとしたデジタル技術の進歩により、建設プロセスの自動化は着々と進んでいます。自動施工などを核としたi-Constructonは、国土交通省が掲げる「新3K」に向けた主要な取り組みでもあります。魅力ある建設業界の実現のため、積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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*1

出所)Autodesk「Revitで実現。建築設計プロセスを自動化プログラムで効率化!

LOD100・200・300への対応。 P.2-4」

https://static.au-uw2-prd.autodesk.com/Class_Handout_AS472830.pdf

*2

出所)長谷工グループ「長谷工コーポレーション、カワトT.P.C.とKICONIA WORKSが連携 BIMデータを活用した「給水給湯配管の自動設計システム」を開発~設計品質の向上と約70%の生産性向上を実現~ P.1」

https://www.haseko.co.jp/hc/information/upload_files/20240510_1%20.pdf

*3

出所)東急建設株式会社「業界初、BIM積算(精算見積)連携の実用化へ  業務の大幅な省力化を実現」

https://www.tokyu-cnst.co.jp/topics/2126.html

*4

出所)大成建設株式会社「BIMを用いた建築物新築時CO2排出量予測システム「T-CARBON BIMシミュレーター」を開発」

https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2023/231215_9809.html

*5

出所)前田建設工業株式会社「油圧ショベルの自律運転を可能にする「自動施工計画・管理システム」を開発、実用性を確認~BIM/CIMより生成した作業計画モデルに基づく複数台自律制御を可能に~」

https://www.maeda.co.jp/news/2024/03/25/5484.html

*6

出所)株式会社竹中工務店「ロボットの自律走行と遠隔管理を実現する「建設ロボットプラットフォーム」を開発」

https://www.takenaka.co.jp/news/2020/02/03/

*7

出所)国土交通省「建設機械施工の自動化・遠隔化技術」

https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/sosei_constplan_tk_000049.html

*8

出所)国土交通省「自動施工の今後の取組について P.4」

https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001730016.pdf

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