CIMを導入した土木開発とは?国土交通省の活用ガイドラインをもとにわかりやすく解説
CIM(Construction Information Modeling)とは、設計情報をCIMモデル(3Dモデル)にして共有することで、建設生産システムを効率化する仕組みです。(*1)
例えば、道路やトンネルなどの建設計画をCIMモデルで作成して、そのデータを関係者間で共有できれば、設計と施工の効率化が図れます。
こうした取り組みのことを「CIM」といいます。
この記事では、CIMを活用した土木開発の仕組みについて解説します。
CIMの概要と活用事例のほか、自社にCIMを導入する方法についてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を読むと以下の3つのことがわかります
1.CIMとは?
2.CIMを活用した土木開発の活用事例
3.CIMを活用した土木開発を自社で始めるには
CIMとは?
まずは、CIMとはどんなものなのかを見ていきましょう。
BIMとCIMとの違いや、いつから義務化されるかについてもご紹介します。
CIMは土木開発工事でどう役立つ?
CIMとは、Construction Information Modeling(コンストラクション インフォメーション モデリング)の略で、CIMモデルを使った情報共有システムを使って、建設工事の効率化を図る取り組みです。(*1)
これまでの建設工事では、現場に赴いて手作業で測量を行ったり、紙の2D図面で設計を行うなど、時間がかかる割には生産性が向上しづらい作業がほとんどでした。
CIMを導入すると、すべての工程において生産性が向上します。(*2)
衛星システムやドローンを使うことで、短時間で精度の高い測量図が作成できます。
設計の共有や記録も、関係者が同じCIMモデルを使うことで容易になり、作業時間が大幅に短縮できます。
このように、CIMはこれからの建設工事の生産性向上に欠かせない取り組みとなっています。
BIMとCIMとの違いは?
ところで、CIMについて調べていくと目につくのが「BIM/CIM」ではないでしょうか。
「BIM」は、「Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)」の略で、ビルなどの建築工事において、BIMモデル(3Dモデル)を使って生産性の向上を図る取り組みです。(*3)
対して、CIMは道路やトンネルなどの建設工事において、生産性向上を図る取り組みです。
BIMとCIMとの違いは「建築」と「建設」のどちらの分野かの違いです。
工事対象の3Dモデルを共有して生産性向上を図るという概念は、変わりありません。
CIMの義務化はいつから?
2023年4月から、建設工事におけるCIMの適用が義務化されました。
義務化の範囲は、工事の規模を問わず「すべての詳細設計と工事」で原則適用となっています。(*4)
CIMモデルの活用場面は、測量・概略設計・予備設計・詳細設計・工事の5段階がありますが、このうちの「詳細設計」と「工事」での活用が義務化されています。
CIMモデルは受注者が作成するものとされ、解析などの高度な内容については推奨項目となっています。
また、CIMモデルの活用目的は「資格化による効果」とされ、完成イメージの確認や、施工計画の検討、現場作業員への説明などに使われます。
CIMを導入した土木開発の活用事例
CIMの概要について、把握していただけましたでしょうか。
ここからは、国土交通省の事例を参考に、CIMを導入した土木開発工事の活用事例を見ていきましょう。
CIMの活用で工期を4日短縮
平成29年度のCIM活用事例です。(*5)
福岡県みやま市の楠田川築堤護岸工事では、CIMの活用で、工期を従来より4日間短縮することができました。
CIMモデルを活用することで、2D図面で行っていた図面の修正作業を2日間短縮しています。
さらに、地元住民への説明会でCIMモデルを使うことで、協議期間を2日短縮することができました。
取り合い部分が可視化され、わかりやすくなったことで、設計品質も向上しています。
CIM活用の課題としては、CIMモデルの大きなデータを扱うためのPC環境の整備を挙げています。
CIMの活用で安全対策が充実
平成27年度、愛知県でのCIM活用事例です。(*5)
佐久間・三遠道路池場地区道路建設工事では、CIMを活用したことで施工内容がわかりやすくなり、関係者間での打ち合わせ時間を短縮することができました。
また、作業員の安全教育にもCIMモデルを利用することで、これまでより危険個所を理解しやすくなり、安全対策を充実させることができました。
課題としては、CIM開発のためのCIMモデルを作成するPCソフトウェアの購入費用を挙げています。
さらに、CIMモデルを作成する人材の育成と作業時間も考慮する必要があるとのことでした。
CIMを導入した土木開発のメリットと課題
2つのCIM導入事例から、次のようなメリットがわかりました。
・工期全体の時間短縮
・設計精度の向上
・施工管理、安全管理の効率化
また、次のような課題があることもわかりました。
・PC環境の整備
・ソフトウェアの購入費用が高額
・CIMモデル作成のための人材育成と作業時間の確保
これらのメリットと課題をふまえて、次の項目ではCIMの導入方法についてご紹介します。
CIMを導入した土木開発を自社で始めるには
CIM開発を始めるために、どのような準備が必要でしょうか?
ここでは、CIM導入の進め方についてご紹介します。
PCとソフトウェアの準備
CIMを活用するには、「CIMモデル」と呼ばれる工事対象の3Dモデルの作成が必要です。
まずは、CIMモデルを作成するためのPCとソフトウェアを準備しましょう。
CIMの活用で利用可能なソフトウェアは、国土交通省によって指定されています。
指定のソフトウェア一覧の中から選びましょう。(*6)
CIMのソフトウェアは、国土交通省が標準化を進めている土木開発設計の設計・測量データのデータ形式(略称「J-LandXML」)が利用できるソフトウェアで、一般社団法人OCFの認証を得ているもののみとされています。(*7)
世界的シェアのソフトウェアでは、Autodeskの「 Revit」と「Civil3D」が利用できます。(*8)
利用するソフトウェアが決まったら、ソフトウェアの推奨スペックに応じたPCを準備しましょう。
発注者・受注者間の協議
工事計画の着手前に、発注者と受注者で事前協議を行います。(*6)
この協議では、CIM活用の目的や、CIMモデルの作成範囲と詳細度を決定します。
さらに、CIMを利用するソフトウェアや、共有方法の確認、納品方法についても決定します。
発注者と受注者でCIMを利用するソフトウェアが異なっている場合は、この段階で共有方法を確認しましょう。
作図するソフトウェアが異なっていても、無料のビューアソフトがあればCIMモデルのレビューとコメントが可能な場合もありますので、あわせて検討してみてください。
CIMモデル作成技術者の育成
CIMの運用では、CIMモデルの作成・修正などのPC作業が多くを占めることになります。
社内にCIMモデルを作成できる人材がいれば問題ないのですが、いない場合は若手の育成から始めましょう。
若手社員のほうがPC操作に抵抗がないため、ソフトウェアを使いこなすスピードが早い傾向があります。
これまでベテラン社員が担当していた設計部分を若手社員に任せることで、社内の活性化と技術の向上が図れたという事例もあります。(*9)
講師の派遣やセミナー受講など、外部からの協力も仰ぎつつ、社内のCIM運用に向けて取り組みましょう。
まとめ
CIMを活用するには、これまでの社内の土木開発システムを大きく変える必要があります。
導入コストも大きいため、最初は負担に感じることも多いかもしれませんが、スムーズに運用できれば生産性が飛躍的に向上します。
CIMの導入で課題となるのは、PC・ソフトウェアの購入費用と社内技術者の育成です。
まずは社内のPC環境を確認するところから取り組んでみてはいかがでしょうか。
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◆参考URL
*1 国土交通省『CIMの取り組み』
https://www.mlit.go.jp/tec/it/pdf/cimnogaiyou.pdf
*2 国土交通省『初めてのBIM/CIM』
https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcim1stGuide_R0109___hidaritojiryomen_0909.pdf
*3 Autodesk 『BIM/CIM(ビム/シム)』
https://www.autodesk.co.jp/solutions/bimcim
*4 国土交通省『令和5年度BIM/CIM原則適用について』
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001510002.pdf
*5 国土交通省 国土技術政策総合研究所『BIM/CIM 事例集 ver.1』
https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimExamplesR1.pdf
*6 国土交通省『BIM/CIM 活用ガイドライン(案)第 1 編 共通編』
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001472848.pdf
*7 国土交通省『LandXML1.2・J-LandXMLについて』
https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/training/pdf/2/2.2.4.pdf
*8 一般社団法人OCF『OCF検定認証ソフトウェア一覧 (J-LandXML検定)』
https://ocf.or.jp/kentei/land_soft/*9 AUTODESK BIM Design 土木・インフラ向け『若手社員がBIM/CIM活用をリードするアサヒコンサルタント iPadによる点群計測や設計の自動化で急速に生産性を向上』
https://bim-design.com/infra/case/asahi-consultant.html