点群データとは?収集する仕組みと建築業界でも注目される理由をご紹介
無数の点が集まって構成される点群データ。点群データには3次元情報が含まれており、デジタルデータとしての活用が期待されています。
この記事では「点群データとは何?」と疑問に思っている方に向けて、点群データの概要と特徴、データを収集する方法やメリットについて解説していきます。
この記事を読むと、以下の3つのことがわかります。
1.点群データの概要
2.点群データのメリット
3.建築業界における点群データの活用事例
点群データとは
点群データとは点の集まりで構成されるデータで、R,G,Bの色の情報と3次元の座標であるX,Y,Zで表現されるものです。
点群データとは3次元測量によって取得できるデータであり、膨大な数の細かい点が集まって構成されています。そのため、一見すると写真より荒い印象を受けるかもしれません。
しかし写真や図面と違い座標位置や色情報を持っている点群データは、データ活用が進む多くの業界で活用されはじめているのです。
取得するデータの範囲によって大きく変わりますが、点群データは数百万、数億といった無数の点の集まりで構成されている点が特徴です。情報量としては膨大なものであり、取得したデータをそのまま別の作業に流すことはできません。
例えば地形の点群データを取得した時は、利用したい部分のみを残し、樹木や対象外の建物といった不要なデータを削除します。このようなデータ処理には点群編集ソフトが必要ですし、適切なデータ形式への変換や取り込みといった工程が続きます。
点群データを収集する方法
https://kensetsu-ict.com/column/5391/
https://besterra3d.com/blog/knowledge/002459.html
点群データを取得するには、専用の機器が必要です。様々な方法がありますがよく知られているものとして「3Dレーザースキャナー」が挙げられます。3Dレーザースキャナーにはレンズがついており、真下を除いた360度の範囲を測定します。
計測機からはレーザーが照射されており、そのレーザーの跳ね返りで計測するという方法が3Dレーザースキャナーの仕組みです。近ければ早く跳ね返り、遠くなるほどに遅く跳ね返るという性質を利用して、計測機からの距離でデータ化します。
3Dレーザースキャナーの場合、1か所だけで計測すれば点群データの収集が終わりというわけではありません。陰になったり重なったりして正しく計測できない部分があるので、一般的には計測器を移動させ4か所ほどから計測することで、より正確なデータを取得しています。
点群データの収集には、3Dレーザースキャナー以外にもいくつかの方法があります。例えば道路を走る自動車にスキャナーを搭載したMMS(モービルマッピングシステム)。ドローンに搭載して空からデータ収集するタイプ、水中で計測できるものなどがあり、計測したい対象物や状況に応じて様々な機器が活躍しています。
国交省は点群データの販売を開始
2022年、国土交通省は道路管理の効率化を図る目的で点群データの提供を開始しました。(※1)
国土交通省は平成30年からモービルマッピングシステム(MMS)による三次元点群データの収集・活用に取り組んでおり、令和2年までに処理が終わった約9,000㎞分のデータを公開しています。(2023年1月時点)
販売単価は5,100円/kmで、提供データは今後も拡大予定です。提供事業者は公募で選定しており、国土交通省は多彩なアプリケーション開発の促進も目的としています。
国土交通省の点群データ提供により、データ収集が困難な企業や開発者でも入手可能です。国を挙げて点群データの活用に前向きである理由については、次でご紹介します。
点群データが注目されている理由
国土交通省もデータ提供を始めており注目が集まっている点群データには、以下のようなメリットがあります。
・デジタルデータとして様々な活用ができる
・人の立ち入りが難しい場所のデータも取得できる
・BIM/CIMに活用できる
三次元の位置情報や色の情報を持っている点群データは、デジタルデータとして様々な分野で活用できます。点群データは測量時点でデジタル化されているため流用も比較的スムーズで、ICTが進む様々なシーンで活用できる点が大きな魅力です。
また産業無人ヘリコプターやドローンにスキャナーを搭載すれば、ビルの高層階の外壁や断崖絶壁の谷、山間部や湖畔といった人の立ち入りが難しい場所のデータ収集もできます。測量士や関係者を危険にさらすことなくデータ収集ができるので、安心安全に測量できる点も魅力です。
建築業界で推進されているBIM/CIMでも点群データが注目されています。3次元データを関係者と共有して作業の効率化を図るBIM/CIMは国土交通省も推進しており、国内でも大手ゼネコンを始め多くの建築企業が導入しています。
点群データが取得できるようになると、既存の建物を三次元モデル化することも可能です。既存建物のモデリングには現地調査や図面のデータ化など多くの労力を必要とするので、すでにデジタル化されている点群データがあれば、大幅な効率化が期待できます。
建築業界で進む点群データの活用
点群データは、建築業界で急務となっているBIM/CIMの推進にも大きく貢献します。ここでは国内における建築業界の点群データ活用について、その事例と活用のポイントをご紹介いたします。
大林組は点群データを活用して建物を改修
大林組では、2020年に点群データを活用して建築物を改修した事例があります。大林組は築35年の古い建物に対し、点群データをはじめとするデジタル技術を駆使して改修工事を行いました。(※2)
そして2020年3月に完成したものが「プラウド上原フォレスト」という分譲マンションです。ただの分譲マンションではなく、1戸当たりの価格は最低2億円台、最高は5億円台といういわゆる“億ション”で、新築同様の美しい改修に成功しました。
大林建設では3Dレーザースキャナーによる点群データ収集を行っています。延べ床面積約3000平米と広い物件で、この建物では合計約940か所を1か月以上かけてスキャン・測定しました。
点群データなら図面で書かれていない鉄骨の穴の位置や大きさも正確にわかるため、改修後の配管の再配置などの検討にも大きく貢献しています。
竹中工務店は原寸データで進捗と出来形を管理
竹中工務店は、同社が設計施工を手掛けたメルセデス・ベンツの体験型展示施設「EQ House」においてBIMをフル活用しており、その一環で点群データの活用も試行しています。(※3)
例えば工場で製作した鉄骨フレームの製品検査や進捗管理において、3Dレーザースキャナーで取得した点群データを活用しています。点群データを使った差分比較によって、作業の効率化や透明性の確保に成功しました。
点群データを活用するポイント
写真や図面よりも多くの情報を持つ点群データですが、活用には以下のようなポイントがあります。
・目的に合わせてデータを取る
・複数のソフトを使い分ける→点群データは後処理やBIMモデル化、図面化など多くの作業フローを必要とする
他のデータにも言えますが、点群データも「何に活用したいのか」という目的を明確にしてから取得しなければ成果は得られません。他のデータよりも容量が大きい点群データは、やみくもに取得しても膨大な量で扱いきれず逆効果になってしまいます。
例えば、図面化目的として色の情報は省いて部屋の形が明確にわかる外形ラインのみ取得する、プレゼン目的なら色の情報は残して説明しない箇所のデータは省くといった具合に、目的に合わせた無駄のないデータ収集が大きなポイントとなります。(※4)
まとめ
点群データについて、その概要やメリット、建築業界における事例や活用のポイントを解説しました。位置情報や色情報を持っている点群データはあらゆる業界で活用が進んでおり、国も点群データを公開するなど注目されているデータの1つです。
これからどのように活用が進んで私たちの生活を便利にしてくれるのか、注目していきましょう。
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■参照サイト
※1 https://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_001577.html
※2 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00565/00048/