自動作図システムとはどんなツール?活用メリットや今後の可能性を解説
作図業務は負担の大きな作業が伴いますが、近年は便利な効率化サービスが登場していることもあり、従来よりもその効率は改善されつつあります。
中でも便利なのが自動作図システムで、導入によって様々な負担の解消に役立てることが可能です。
この記事では、そんな自動作図システムとはどのようなツールなのかについて、その活用メリットや機能に触れながら、運用の可能性を紹介していきます。
目次:
- 作図業務の課題
- 自動作図システムとは
- 自動作図システムの活用メリット
- 主な自動作図ツール
- 自動作図ツールの今後
作図業務の課題
作図は設計業務の代表格とも言える、ウェイトの大きい仕事として知られています。設計要件に基づいて、データを図面におこし、視覚的に把握できるような形に仕上げることが求められます。
作図作業の良し悪しは、その後の業務の品質や、関係者との意思疎通のやりやすさにも大きな影響を与えるため、担当者はそれなりの時間をかけて取り組む必要があるでしょう。
一方、設計プロセスにおいては作図作業だけをやっていれば良いというものではありません。作図以外にも多くの業務が発生するため、できる限り短い時間で効率よく業務を遂行できるのが理想です。
ただ、作図業務を手動で行う場合は
- 作業時間の短縮が難しい
- 業務が属人化しやすい
といった課題が残ります。
作図作業は手作業で行うと、どれだけソフトの扱いに長けていたとしても、スピードには限界があります。また、修正の際には再度作業をやり直す必要もあるため、そういった時間も踏まえると、やはり時間短縮にも限度があると言えるでしょう。
加えて、作図作業は担当者の経験やスキルに応じて、その品質やスピードは大きく影響しやすいという問題も抱えています。全ての作図オペレーターが最高レベルのクオリティと速度をいきなり発揮できるわけではなく、そのような技術を身につけるまでには時間がかかります。
よって、単純に人の手を増やせば作業効率は増やした分だけ倍になっていくというわけではないのが現状です。
自動作図システムとは
このような問題に対処するために登場したのが、自動作図システムと呼ばれる技術です。この技術は、専用のソフトに設計データを流し込むだけで、自動的に図面をその通りに仕上げてくれるという、夢のような機能を備えています。
自動作図システムで用いるのは、Excelなどの表計算ソフトです。Excelに設計データを移し替え、それを読み込ませると、極めて正確な図面をごくわずかな時間で仕上げることができます。
自動作図システムは、AIなどの新しいテクノロジーが登場したことにより、近年急速に導入が進められている技術です。また、建設業界を中心として、非常に需要が高いという背景も開発を後押ししています。
自動作図システムが求められるようになっているのには、人材不足の懸念が広がっていることが理由の一つです。業務改善のためには人材を確保するのが手っ取り早いアプローチですが、一方で市場の人材が不足していることで、人件費が高騰し費用対効果の悪い手法となっています。
一方で自動作図システムであれば、システム導入のコストはかかるものの、人件費負担などを気にすることなく運用することができます。担当者の負担を最小限に抑え、それでいてさらに高いパフォーマンスを目指せるようになるでしょう。
自動作図システムの活用メリット
自動作図システムの導入は、具体的にどのようなメリットを現場にもたらしてくれるのでしょうか。主なポイントとしては、以下の3つの利点が挙げられます。
人材不足を解消できる
上でも少し触れていますが、自動作図システムは人材不足の解消に役立ちます。人手不足のために作図スピードを改善できないところを、自動作図システムがあれば瞬時に解決できるからです。
担当者の数はそのままに、作図効率のみを向上できるため、他の部門から人材を配置するような手間もかからないため、リソース配分の最適化にも貢献するでしょう。
コスト削減につながる
自動作図システムを導入することで、人件費を抑えたり、人手が増えることによるオフィスの拡張なども検討する必要がなくなったりします。
自動作図システムの便利なところは、既存の担当者のパフォーマンスを飛躍的に高められる点にあります。人材の配置はそのままに、用いるツールをアップデートする取り組みであるため、ツール導入以外のコストはかかりません。
負担を最小限に抑えた上での生産性向上で、収益性を改善することが可能です。
短期間で高いパフォーマンスを実現できる
自動作図システムの導入は、新しい人材を獲得して育成するよりもスピーディに成果を生み出すことができます。
人材確保によって問題に対処しようとすると、人材の育成に時間をかけることになります。指導のための負担がかかる上、成果が得られるようになるまでの時間的な負担もかかり、問題を短期で解決するには難しい選択肢です。
一方の自動作図システムの場合、導入して使い方さえ覚えてしまえば、すぐに成果を出すことができます。使い方もデータを読み込ませるだけなので難易度は低く、迅速に現場改善を進めることができるでしょう。
主な自動作図ツール
自動作図ツールは、すでに複数の企業から製品がリリースされています。ここではどのようなツールが登場しているのか、確認しておきましょう。
自動作図システムKAKUZO
自動作図システムのKAKUZOは、ブラウザから施工参考例とプランシートを同時に出力できる、便利なサービスです*1。組み合わせたい製品とその仕様を選択していくだけで、簡単に提案に最適な書類を出力することができます。
A5-AD2020system Ver.1
A5-AD2020system Ver.1は、BIMを使った自動作図システムです。ARCHICADと連携して使用することにより、設計データを2D・3Dを問わずスピーディに出力することができます*2。
BIMモデルに情報を集約できるため、図面データと3Dモデルを別個に管理するような負担もかからないのが特徴です。
AutoCAD
AutoCADは2D・3D対応の汎用CADとして知られていますが、自動作図ツールを備えている点も強みの一つです。
Excelを使ってパラメータ入力を行い、AutoCAD図面上で自動作図ができるようカスタマイズ運用ができます。国内における導入事例もあるため、ケーススタディに基づいてスムーズにシステムを導入できるでしょう*3。
まとめ:自動作図ツールの今後
この記事では、自動作図システムとはどのようなツールなのか、導入によってどのような効果が期待できるのかについて、具体的なサービスと合わせて紹介しました。
自動作図システムは多様なツールが登場していますが、AI技術の普及に伴い、今後ますます高度かつ多様な製品が登場することが予想されます。最終的にはアバウトな理想を伝えるだけで、非常に正確な図面を瞬時に作成できるようなサービスも出てくるでしょう。
とはいえ、自動作図ツールを扱うのはある程度スキルのあるオペレーターであり、彼らのスキルは以前として必要になります。専門的な能力のある人間のもとで管理運用することで、優れたパフォーマンスを発揮するからです。
業務の自動化は時として人の仕事を奪ってしまう可能性も危惧されます。自動作図ツールに至っては、そのようなリスクは小さい技術と言えるでしょう。
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出典:
*1 自動作図システムKAKUZO
https://kakudai.jp/manual/kakuzo
*2 Arch 5「A5-AD2020system Ver.1」
http://www.arch5.jp/ad2020_system/index.html
*3 AutoCAD「クボタシステムズ株式会社」
https://www.autodesk.com/support/partners/success-stories/autodesk-autocad/7232